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Chapter.53
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並んで洗い物をして、お茶を淹れソファでくつろぐ。
「そうだ。はい、これ」
攷斗がソファの脇に置いたバッグから、小さな手提げ袋を取り出し、ひぃなに渡した。
「ありがとう……」
両手でそれを反射的に受け取ったひぃなは不思議そうな顔をしている。
「開けてみて」
言われるがままに中から取り出した包みを丁寧に開けると、横に長い手のひらサイズのジュエリーボックスが見えた。
(あれ? 納期明日なんじゃなかったっけ?)
と思いつつその箱を開けると、
「わぁ……!」
そこには結婚指輪と、誕生石が付いたベビーリングのネックレスが入っていた。
「それなら、石ついてても大丈夫でしょ? どっちもプラチナだけど、ネックレスはお風呂のときは外したほうがいいと思う」
「うん」
ひぃなと攷斗、それぞれの誕生石が埋め込まれた小さな指輪が二重に組まれ、トリニティリングのようになっている。ベビーリングは良くある立て爪のものではなく、指輪自体に石が埋め込まれていて段差がない。どこかに引っ掛けてしまう心配がないので、どんな服にも合わせることが出来る。
「で、俺のは……じゃーん」
ネックレスのかわりにブレスレットが入っている。留め具に二人の誕生石が配置された、シンプルなシルバーチェーンのデザインだ。
「わぁ、ブレスもかわいいね」
「でしょ? たまに交換しよ」
「うん」
どちらもユニセックス対応のデザインなので、交換しても違和感はない。
嬉しそうに指輪を取り出そうとするひぃなから「ちょいちょい」攷斗がボックスを取り上げた。
「自分でしちゃうかな」
攷斗が苦笑して、二人分のケースを並べる。一方に二本の指輪を、もう一方にネックレスとブレスレットを入れる。
ひぃな用のリングをケースから出して、「はい」左手を差し伸べた。乗せて、という意味だろう。
嬉しさと恥ずかしさが混ざって、くすぐったい気持ちになる。
無意識にはにかみながら左手を乗せると、攷斗はその薬指に指輪を付けた。そのまま緩やかにひぃなの手を握って、嬉しそうに、感慨深そうにその指を眺めて微笑む。
いままでに見たことがないその穏やかな表情が、ひぃなの身体の奥をきゅんと締め付けた。
「俺も、いい?」
「うん」
攷斗に倣って指輪を取り、左手の薬指にはめる。
表面に少しのねじれを加えたシンプルな結婚指輪が、二人の左手、薬指に同じように輝く。
「これからも、よろしくね」
「こちらこそ」
言って、気付く。
これは偽装結婚なんだ、と。
頭から冷や水をかけられた気分だが、それを攷斗に気取られないよう笑顔を浮かべる。
いっそこのタイミングで聞いてみようか。
この結婚には、どういう意味が込められていますか?
私はあなたのことが好きだけど、あなたは私のことをどう思っていますか?
(……重いわ……)
誰とでも良かったわけじゃないと言うその言葉の裏を、つい読んでしまう。
私とが良かったわけじゃないのでは、と。
それでも、こんなにも心を尽くしてくれているのだから……。
気持ちを確認するような質問をしたら、攷斗を傷つけることになるだろう。
それに、こんな表情を見せててくれるのに信じられないのは、自分に自信がないせいなのだ。
「ひな?」
黙りこくるひぃなに、攷斗が声をかけた。
「えっ?」
「どうしたの?」
「あっ、ごめん。ちょっと、感慨深くて……」
攷斗はその言葉に少し笑って、
「そうだね」
照れくさそうにうつむいた。
「そうだ。はい、これ」
攷斗がソファの脇に置いたバッグから、小さな手提げ袋を取り出し、ひぃなに渡した。
「ありがとう……」
両手でそれを反射的に受け取ったひぃなは不思議そうな顔をしている。
「開けてみて」
言われるがままに中から取り出した包みを丁寧に開けると、横に長い手のひらサイズのジュエリーボックスが見えた。
(あれ? 納期明日なんじゃなかったっけ?)
と思いつつその箱を開けると、
「わぁ……!」
そこには結婚指輪と、誕生石が付いたベビーリングのネックレスが入っていた。
「それなら、石ついてても大丈夫でしょ? どっちもプラチナだけど、ネックレスはお風呂のときは外したほうがいいと思う」
「うん」
ひぃなと攷斗、それぞれの誕生石が埋め込まれた小さな指輪が二重に組まれ、トリニティリングのようになっている。ベビーリングは良くある立て爪のものではなく、指輪自体に石が埋め込まれていて段差がない。どこかに引っ掛けてしまう心配がないので、どんな服にも合わせることが出来る。
「で、俺のは……じゃーん」
ネックレスのかわりにブレスレットが入っている。留め具に二人の誕生石が配置された、シンプルなシルバーチェーンのデザインだ。
「わぁ、ブレスもかわいいね」
「でしょ? たまに交換しよ」
「うん」
どちらもユニセックス対応のデザインなので、交換しても違和感はない。
嬉しそうに指輪を取り出そうとするひぃなから「ちょいちょい」攷斗がボックスを取り上げた。
「自分でしちゃうかな」
攷斗が苦笑して、二人分のケースを並べる。一方に二本の指輪を、もう一方にネックレスとブレスレットを入れる。
ひぃな用のリングをケースから出して、「はい」左手を差し伸べた。乗せて、という意味だろう。
嬉しさと恥ずかしさが混ざって、くすぐったい気持ちになる。
無意識にはにかみながら左手を乗せると、攷斗はその薬指に指輪を付けた。そのまま緩やかにひぃなの手を握って、嬉しそうに、感慨深そうにその指を眺めて微笑む。
いままでに見たことがないその穏やかな表情が、ひぃなの身体の奥をきゅんと締め付けた。
「俺も、いい?」
「うん」
攷斗に倣って指輪を取り、左手の薬指にはめる。
表面に少しのねじれを加えたシンプルな結婚指輪が、二人の左手、薬指に同じように輝く。
「これからも、よろしくね」
「こちらこそ」
言って、気付く。
これは偽装結婚なんだ、と。
頭から冷や水をかけられた気分だが、それを攷斗に気取られないよう笑顔を浮かべる。
いっそこのタイミングで聞いてみようか。
この結婚には、どういう意味が込められていますか?
私はあなたのことが好きだけど、あなたは私のことをどう思っていますか?
(……重いわ……)
誰とでも良かったわけじゃないと言うその言葉の裏を、つい読んでしまう。
私とが良かったわけじゃないのでは、と。
それでも、こんなにも心を尽くしてくれているのだから……。
気持ちを確認するような質問をしたら、攷斗を傷つけることになるだろう。
それに、こんな表情を見せててくれるのに信じられないのは、自分に自信がないせいなのだ。
「ひな?」
黙りこくるひぃなに、攷斗が声をかけた。
「えっ?」
「どうしたの?」
「あっ、ごめん。ちょっと、感慨深くて……」
攷斗はその言葉に少し笑って、
「そうだね」
照れくさそうにうつむいた。
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