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Chapter.34

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 リビングで一休みしつつ、次の算段を考える。
「まだこまかいとこ片付けるよね?」
「うん。でももう一人でできるよ」
「そっか。じゃあ、家は一旦落ち着いたし……お茶飲んだら結婚指輪買いに行こうか」
「えっ、いいよそんなの」
「ダメだよ。リアルにしとかないとバレるじゃん」
「う……」
 確かに黒岩に指摘されたなと思い出す。
「なーんてね。単純にひなとおそろいの指輪が欲しいだけなんだけど」
 なんで? もう何十回と抱いた疑問。攷斗の本心がどこにどういう形であるのか、ひぃなにはまだわからない。
「あと、誕生日プレゼントの追加も兼ねてさ」
 一瞬なんのことかわからずに、無意識にテーブルの上の花を見やる。
「……あぁ、いいのに。お花、長持ちしてるし」
 それを受け取ったときの会話を思い出して、気にしないでいい旨を伝えるが
「俺があげたいの。いいでしょ?」
 攷斗が人懐っこい笑みで顔を覗き込んだ。
 ひぃなはこの表情かおに弱い。
「……うん」
「やったー。じゃあ、俺デザインするわ。作ってもらいに行こ」
「えっ」
 思っていたより大げさな話になって、思わず声をあげてしまう。
「これでもデザイナーの端くれなんで、デザインできるし作ってくれる人脈だってあるんですよ」
 確かに攷斗が被服以外のデザインが出来るのは初耳だが、
(驚いたのはそこのポイントじゃないんだけど……)
 言葉には出さず、思ってみる。
 攷斗はご機嫌で鼻歌を歌いながら、ソファの傍らに置かれたマガジンラックからA5サイズの小さなスケッチブックと色鉛筆一式を取り出した。
「どんなのがいい?」
「えー……」
 急な話でイメージが湧かず、テーブルの上に置いてあったスマホを手に取った。【結婚指輪】と入力をして検索をかける。
「婚約のほうは調べないの?」
「婚約してなくない?」
「……したよ……二時間くらい」
 二人で思い返して、笑ってしまう。
 攷斗が内心思っている“男避けの結界”という意味合いには及びもつかないひぃなは、
「ほんとは気持ちだけで充分なんだけど……」
 言いながら検索結果の画像をスクロールさせていく。
「けど?」
「いや……聞かれちゃって…。指輪してないんですねって」
「誰に?」
「黒岩さん」
 名前を聞いた瞬間、攷斗の顔がこわばる。けれど、小さな画面に集中しているひぃなはそれに気付かない。
「…そういえば聞いてない」
「なにを?」
「社長がどんな風に報告したのか」
「どんなもなにも……」
 と、かいつまんで当日の出来事を説明した。
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