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第四章〜六大魔王復活〜

第71話 〜魔王筆頭ルキフゲロフォカレ〜

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 ヒイロ達は、魔王城四階にて、SSSランクの魔物が大量にいるモンスターハウスと化した大広間で激しい戦闘を繰り広げていた。魔王との戦いに備えて、出来るだけ魔力を温存したいヒイロ達は、エングとロイ、そしてヒイロが中心となって、SSSランクの魔物達と戦い、その3人をシルフとイスカリオテが援護する形となっていた。

 もちろんSSSランクは、魔王配下程の強さはないにしろ、最高ランクの魔物であり、一匹一匹が癖のある魔物が多く、いくら勇者やSSランクの冒険者でもあっても、そう易々と倒すことのできない実力を持っていた。ここでのかなりの足止めを覚悟したヒイロ以外の4人だったが、ヒイロ無双のおかげで、そこまで時間や魔力をを消耗せずに戦いが終わりそうだった。

 一緒に戦っていく中で、その圧倒的な力にロイやイスカリオテだけでなく、エングやシルフまでもが、驚いていた。そして魔物の数が少なくなる事で余裕が出てきた5人は戦いの中でヒイロから、衝撃の話しを聞く。

 そして、その話が終わる頃、5人は最上階と思われる5階へとたどり着く。そこには予想通り2体の魔王が待ち構えていた。

「ようこそ、我が魔王城へ。自己紹介をいたします。私は六大魔王筆頭、ルキフゲロフォカレと申します。そしてこちらは六大魔王最強のお方、魔王サタナキア様でございます。」

 ルキフゲロフォカレが丁寧に自己紹介をしている隣で、腕を組むサタナキアと呼ばれた魔王が凄まじい覇気を放ち、その覇気にロイやイスカリオテが汗ばむ。

「ヒイロという者はおるか?」

「オレだが?さっきから外のやつと言い、なんで俺の名前がそう出てくる。」

「ほぉそうか……アモンに会ったか。では戦ったのか?」

「いや、アンタと同じように聞かれ、戦おうと言われたが、俺より強い奴がいると伝えたら簡単に引き下がってくれた。」

「ハッハッハ、あやつらしい。ではルキフゲロフォカレよ、悪いが魔王ネビロスを倒した男は俺がもらうとしよう。」

「良いですよ。じゃあ私達は残りの雑魚をいただきます」

「雑魚だと!僕達をなめるなよ!」

 ルキフゲロフォカレの言葉にロイが怒りを見せる。だが、ルキフゲロフォカレは何事もないかのように、ロイを無視し、話を続ける。

「あぁ……忘れていました。せっかく道具を持参していただいたのに使わない手はありませんからね。サタナキア殿の能力を使っていただきましょう。」

 既にヒイロとの戦闘態勢に入ろうとしていたサタナキアは、ルキフゲロフォカレの言葉で思い出したようにシルフを見つめながら話し出す。

「ん、あぁそうか。おい、そこの女、俺のしもべとなれ」

 魔王サタナキアが赤い眼を紫色へと変え、シルフと目を合わせる。その瞬間、シルフは気を失ったように倒れ込む。そして、すぐに自身で立ち上がると、そこにはエルフ族特有の緑色の眼から紫色へと変り、表情を無くしたシルフの姿があった。そしてそのままシルフはエング達に戦闘態勢をとる。

「……サタナキア様、ご命令を」

「ヒイロという者と、魔王ルキフゲロフォカレ以外はお前の敵だ殺せ。」

 シルフは急にサタナキアの言いなりになってしまい、エング達の方をみて戦闘態勢をとりながら殺気を放っていた。

「なんだと!?どういうことだ!?」

 エングが魔王サタナキアを睨む。だが、既にサタナキアはヒイロにしか眼中にないのか、エングの言葉を無視して、ヒイロとの戦闘態勢に入ろうとしていた。

「仕方ないですね……私から説明いたしましょう。魔王サタナキア様の能力は、性別がメスなら、理性のあるどの種族でも、自分のより能力が下の者なら思い通りに操る能力……呪いや催眠などではない絶対的な女人支配。解放する手段はあの方を殺すしかないのですよ」

 ヒイロは既にサタナキアとの戦闘態勢に入ってしまい、エングが代わりにイスカリオテとロイに指示を出す。

「まずいな……イスカリオテ!シルフを出来るだけ傷付けないように相手を頼めるか?」

「はい!分かりました!」

「サタナキアという魔王はヒイロに任せて、俺とロイでこっちの魔王を倒すぞ!」

「はい!」

 シルフが魔王サタナキアの特殊能力にて操られてしまったことにより、初めから劣勢となる戦いとなった。魔王サタナキアのこの能力に対し、ヒイロならハーデスの神具・アダマスの鎌があるが、ヒイロ自身ではないため、一旦、支配の事象を切断してもサタナキアを倒さない限り、すぐにまた支配され直してしまう。
 
 魔王サタナキアを倒すまで、シルフに対し、誰か一人が相手をしなければならないため、出来ればシルフを傷付けないようにするためには、一番攻防にバランスの取れたイスカリオテが適任とエングは判断したのだった。

 そして、ヒイロはその魔王サタナキアと、エングとロイは魔王ルキフゲロフォカレと対峙することになった。

 魔王ルキフゲロフォカレは六大魔王筆頭であり、その姿は、頭に山羊の様な捻じり角が3本生え、下半身も山羊の足と尻尾が生えていた。ルキフゲロフォカレがロイに問う。

「勇者とその仲間よ。何故ゆえ、我々と戦うのだ?」

 ルキフゲロフォカレの問いにロイが反射的に答える。

「お前たちは人の魂を喰らうと聞いた。当たり前だろう!」

「そう言うことではない。別に戦うのなら他の者でも良かろう?何故、君たちが戦うのだ?」

「僕は勇者だ!勇者は人のために戦ってこそ勇者だ!」

「……なるほど。勇者ゆえ……か。その隣の者は?」

「大切な……守るべき者がいる。そして私にはその大切なものを、守れるだけの武を高めてきたつもりだ。」

「守るべき者……か。つまらん、実につまらんなぁ。人という種族はもっと強欲で傲慢、そして嫉妬で他者を滅し、自身を滅ぼす生き物だろう?……そうであろう?現に君たちが身を挺して戦っている今も、人間どもの中には自分自身のためだけに、人を騙し、殺し、富を蓄える者も多かろう。それでも貴様らは戦うのか?」

「確かに中にはそう言う人もいる。だが、そうでない人達だってたくさんいる。ヒイロさんじゃないけど……ましてや、子ども達は純粋にこの世界で必死に前を見て生きようとしているんだ!」

「……なら、私がその子ども達に財をやろう。私は捨てるほど財を持っている。理由は簡単だ。私が好きな魂は先程も言ったように強欲で傲慢な者たち。その者達は限って財を集めたがる。私はそのような醜い者どもしか食べない。どうだ?財があれば人は幸せでないのか?では、どこに我々と戦う必要がある?勇者も一つ間違えれば魔王と一緒だ。力を持ちすぎた特異点。他の者とは違う、我ら魔王がいなくなれば、その持ちすぎた力は人々……特に財を持つ欲深い者共の恐れとなろう。」

「……確かにそうかもしれない。財があれば大抵の人は幸せになる。強欲で傲慢な人がいなくなれば、平和になることも増えるだろう。そして、勇者は魔王がいなくなれば必要のない存在……確かにそうかもしれない……。少し前の自分なら、そう感じていたかもしれない。でも、ヒイロさんは違う。ヒイロさんは財があってもなくても、子ども達のために苦労も厭わず努力してる。傲慢で強欲な人間が近くにいようとも、勇者である僕以上の力があっても、魔王や魔物の脅威がなかったとしても、この世界の子ども達のために常に動き、この世界を良い方向に導こうとしてる。たぶん、ヒイロさんは見返りを求めてる訳じゃない。ただ真っ直ぐに子ども達のために生きている。だから、僕も迷わない。魔王がいなくなって、世界が平和になって、勇者がこの世界から必要とされなくたって、僕にはやれることが、やらなきゃいけないことが他にもたくさんある……そう教えてもらったんだ!」

「……そうか。君ほど迷いがない勇者も初めて会った。そのヒイロという人間のおかげということか……。ふっ、それではやはり、魔王は戦って滅びる運命か……。悲しいものだな……。では……世界を守りたくば、勇者と強き者よ、この魔王ルキフゲロフォカレを倒してみせろ。」

「言われなくてもそのつもりだ!!」

 魔王ルキフゲロフォカレ。闇の深淵を司り、地の精霊獣を使役する魔王。その魔王ルキフゲロフォカレの能力により、エングとロイは闇の空間に引きずり込まれる。
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