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第四章〜六大魔王復活〜

第62話 〜福祉施設を作ろう〜

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 ヒイロは施設の中に入り、食堂にいるアルトやウルルの姿を見つける。

「ん、どうした?何かトラブルでもあったのか?」

 今では《森の家》の代表となっているアルトがヒイロの顔を見て、安堵した顔を見せる。

「あ、ヒイロ兄!ちょうどいいところに来てくれた!今日、オリーが《神の祝福》を受けて来たんだけど……」

「おー、オリーもそんな歳か!それで?どんな天職だったんだ?」

「それがね、何度聞いてもわけが分からない天職なの」

 同じように代表となっているウルルも首を傾げながら話しを続ける。

「確かに……オリーはね、この《森の家》の中でも一番頭が回って何でも出来るし、周りの面倒や相談にも良く応じてくれてたから、割と早くグループのリーダーにもなっていたんだけど……。」

「オリー、なんて言う天職だったんだい?」

「ヒイロ兄!おれ、シャカイフクシシって言われた。」

「シャカ…イフク…シシ……?!《社会福祉士》!?まさか!?神殿で何か言われたか?」

「最近、少しずつ新しい天職が出て来たからその一つかも知れないって、神官様もわからないから、自分が一番好きなことをすれば、きっと天職につながるはずですって!」

「そうか、神殿のエストさんにお願いしたのは今日。物理的に他の地方の神殿や他の国の神殿に伝わるには、まだ早いもんな。オリー、それは多分とてもすごい天職で俺が今、もっとも必要としてる天職だよ!うん、すごくオリーに合っていると思う。簡単に言うとこの孤児院の施設や他の施設とかに関わる天職で、何かしら生活に困っている人を《森の家》の施設とか、その人に合った所へつなげたり、助けていく天職なんだ。」

「ほんとに!?俺はこのまま《森の家》のような孤児院で働きたかったんだ!」

「あぁ多分ぴったりだと思う。でもそれ以上におれはオリーに任せたい仕事があるんだ!」

「……なに?出来れば《森の家》のような施設が関わる仕事がしたいと思うけど。」

「大丈夫!これからアルト達にも話そうと思っていたからオリーも一緒に話しを聞いてくれ。」

「ん、話しって?なぁウルル……ヒイロ兄からの相談って少し恐怖心があるのだけれど……気のせいかな?」

「ううん……アルト兄、それは私も同じ気持ちだから気のせいじゃないかも……」

 アルトの不安にウルルも共感しながらエイスとイルミを呼びに行く。

 ヒイロは、アルト達《森のパーティー》4人が集まったところで、オリーを含めて、今回の国王や特級神官、ギルドで話したことを全て話した。

「それはまた……スケールが大きい話ね……」

「でも、イルミ……。確かに困っている子どもをもっと助けていくにはそれぐらいしないとダメなのかも……」

「うん、俺も時々すごく幼い子がいて困っている家族がいるのを聞くよ。」

「あと忌子も俺たちより辛い運命は確かだしな……。」

 オリーはヒイロの予想通り、アルト達よりも深い理解を示していた、

「確かに仕組みが作らないと……子どもを見つけても、それを支援する大人も必要だし、職にあぶれた人の中にも、天職よりも資質……性格とかで適した人がいて、生き甲斐になるかも知れない。そして何より、国や地域との連携、各ギルドとの連携も大切になってくるから、ギルドを作って、調整しないと安定させることが難しい……」

「……やっぱり、考え方は全体を捉えてる。なぁオリー、そのギルドの職員にならないか?」

「えっ?」

「今みたいに全体のバランスを考えながら、これからと出てくる職にあぶれた大人や、オリーのような新しい天職を授かった者、そして、あらゆる困難に困っている人達を施設に結びつけたりする仕事について欲しい。」

「確かにな……俺もオリーがそうだったように、時々孤児を見つけて、その子を助けようと連れてきたはいいけど、その対応はすぐには難しいし、何より限界がある。でも窓口をギルドにすれば人も相談に来やすいし、情報なんかも集まりやすい」

「そうね!」

「……わかったよ、ヒイロ兄。まだ難しいこと見えてないけど、少しずつやってみるよ。」

「ありがとう。とりあえず最初は、俺も手伝うし、商人ギルドに、運営とか細かい事務の仕事を発注したりしていくから!それにあとコイツらも使うし、なんとかやって行こう!」

「ですよねー、途中からきっと俺たちも手伝わされると思ってましたー」

「まぁいいんじゃない!私たちもこの《森の家》がなかったらどうなってたかわからないし、他の子のためにもさ!」

「そうね、きっと私たちの第二の天職よ。」

「それにヒイロ兄の無茶振りは、今に始まったことじゃないしな。」

「さすが俺の自慢の子ども達だ!」

「まぁクエストと違って出来ることは限られるけど、出来るだけ手伝うよ!」

「よろしく頼む。とりあえずすぐには難しいから、ある程度形が出来たらまた頼むよ。オリーはこれから俺と一緒に行動して、ギルドの作成や関係するところとか色々と見てまわろう。明日から同行してもらうからよろしくな。」

「うん、わかった!」

 こうして、身近なところで思いもかけない人選を見つけ、幸先の良いスタートを切ったヒイロだった。

 現在、ヒイロの資産は軽く白金貨1000枚を超えていた。前世の日本円に換算すると大体100億、23歳で資産100億である。もしヒイロが毎日ように狩りをして、もっとお金を稼ぐ生活をしていたら、かるく一桁はさらにあっただろう。施設にもお金を支援していたし、場合によっては報酬をもらわないこともあったが、それでも100億である。

 ミーナとホープとの3人での暮らしは不自由なく過ごせており、それでも、一年間で白金貨一枚、約1000万……いや、その半分も使わない。各国の孤児院も大小合わせて既に100箇所近く出来たが、《森の家》ようにほぼ自立運営が出来ている所もあり、各国の援助を合わせると、年で白金貨10枚、1億程度あれば運営出来てしまうため、金銭面での支援も今はそこまで必要としなかった。

 その理由の一つは、正式な国からの支援を受けられるようになったこともあるが、アルト達のように15歳を過ぎて冒険者になり、そのまま出身施設の支援をしてくれる者も少なくないのだ。子ども達が皆、自分が育った施設自体を家族と思ってくれているようで、働けるようになったら施設を養うことが、施設出身の子ども達の、憧れの一つにもなっているらしい。

 ただ、これからの孤児院以外の施設になると、乳児院、保育所、福祉施設もどれもほとんど収入は見込めず、国からの援助とヒイロの支援がメインになってくる。ただ、神殿や教会、その他のギルドが理解を示してくれ、支援をしてくれたり、同じくSSランク冒険者のエング、グラン、シルフ、エメル、そして勇者ロイも、魔王討伐の高額な報酬を、使い道がないからと支援を約束してくれており、特にその5人の支援は大きく、ヒイロや国家並みの大きな支援となっていた。

「とりあえず新しい施設の運営資金の問題は、クリアできたから、次は大すじのルール作りだな。」

 今日もオリーが一緒に来ていた。天職の影響もあるのか、またはオリー自身が施設で育ったからか、理解力と視野の広さがすごく、まだ15歳だがヒイロの助けになっていた。

「それは孤児院のルールと同じような物?」

「まぁ重なる部分も多い。特にあらゆる差別の禁止、他には社会のルールとも重なる。」

「施設の子どもと、それを支援する大人とのルールを分けた方がいいかな?」

「そうだな。特に支援する大人の方は、新しい人材が入ってくると、人格や考え方など様々だ。それに全ての人が良い人間とも限らない。施設に入る子どもは基本弱者だから、そこをきちんと守れる、尊重できるルール作りが必要だろう。」

「難しいね。こればかりはやって行きながらじゃないときちんと決められないしね。」

 ヒイロは自分の前世の記憶を思い出していた。同じ保育士であっても、虐待をしている保育士や福祉施設等でも毎日のように、不幸なニュースがテレビで流れていた。それは出来るだけそれは避けたい。営利を求めず、働く環境もきちんと整えて行く必要がある。

「テレビかぁ……何か娯楽的なものでも良い収入源やカリキュラムにつながるかもな……。」

 ヒイロがそんなことを呟いているとオリーが不思議そうな顔をしている。

「てれび……?何それヒイロ兄?」

「あ、いやごめん!なんでもない!あとは建物を商人ギルドと職人ギルドに依頼しておいて、各街、各国で敷地と職員の準備が出来たら、施設設立を進めて行こう。」

「僕も出来るだけ全ての施設を把握しておけるようにしなくちゃ。」

「ありがとう。でも、一人で全ては難しいから、一人数ヵ所ずつをきちんと把握出来る形を取っていこう。今は俺が行うけど、オリーが3年後成人になったら、人数も増やして、少しずつ引き継いでいきたい。」

「わかった!出来るだけ努力するよ。」

「後は人材だなぁ。ギルドと施設の管理者までは、出来るだけ人柄からも含めて把握していきたいからな。」

「そうだね、特に施設はトップの人によって左右されちゃうからね。」

「わかってるじゃないか。」

「規模は違うけど、孤児院のグループ分けも同じような感じだった。年齢や身体の大きさ、頭の良さだけでは、グループを引っ張れないからね。」

「そのとおりだな。人材はゆっくり探していくしかないな。ホープがある程度大きくなればミーナは、りっぱな施設長かギルドの代表になってくれそうだけど。」

「そうだね。ミーナ姉はぴったり!後はアルト兄はすでに森の家の代表になってくれてるし、その補佐をしてるウルル姉やイルミ姉、案外エイス兄もできると思うよ。」

「そうだな。各ギルドにも募集をかけているから、人もそのうち集まるだろう。」
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