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第四章〜六大魔王復活〜

第61話 〜夢への路と現実と2〜

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 イバール国国王との謁見から数日後、ヒイロは首都ミトにあるイバール国で《神の祝福》を行っている最も大きな神殿へと来ていた。

「SSランク冒険者のヒイロと言う者ですが、ギルドマスター ナットの名前で、特級神官様と会う約束していたのですが、その特級神官様はいらっしゃいますか?」

「ヒイロ様ですね……はい、お話しは冒険者ギルドを通して、伺っております。少々お待ち下さい。今、特級神官をお呼びします。」

 まだ若い神官と思われる人が、待合室に案内してくれ、ヒイロがそこで待っていると、少し痩せた老人が待合室に入ってきた。

「お待たせしました。ここで神官長をしております、特級神官のエストと申します。」

「SSランク冒険者のヒイロです。今日は、神殿の方に相談があってきました。」

「お名前は存じております。世界中に孤児院なる崇高な施設を建てている方でございますね。」

「あ、すいません。やっぱり勝手にそのような施設を作るのは不味かったですか?それも許可なく教会の方々にも手伝ってもらっていますし……」

「そんなことはありません。それに貴方様の思想は素晴らしいと思っています。なんせ国王様も直々にお話しをしてくれ、貴方様に手を貸してくれと頼み込まれたくらいですしな」

「!?……そうだったのですね……良かった。それでその相談なのですが、神殿で《神の祝福》を行った際、人によっては望んでなかった天職になった方を孤児院や施設の職員として、斡旋してくれないでしょうか?」

「それは構いませんが……人手が足りていないのですか?それなら我ら神殿や教会の者もご支援致しますが……。」

「いや、すでに神殿や教会の方々にはご協力いただいている施設はあります。どちらかと言うと、天職により、人生を見失ってしまう人を助けたいと思い、相談させていただきました。」

「なるほど……確かに中には、自分が望んでいた天職になれずショックを受けてしまう方もいらっしゃいます。」

「そうなのです。そんな人が新たな希望を持てるような形にしていきたいのです。また最近、私が見ているいくつかの施設の子どもで《神の祝福》を受けた者が、天職で《教師》となる者が出てきました。共通点としては、皆、年下の面倒見があり、責任感が強い子です。私の直感ですが《教師》と言う天職は、子どもに教える、導くことができる天職だと確信しております。ですので、これからそのような者が天職で授かった場合も、ぜひこちらに紹介していただけるとありがたいです。」

「そのような天職が……わかりました。他の神殿にも話を通しておきましょう。」

「ありがとうございます。私の方でも各国の施設の方に共通の理解をさせておきます。」

「噂には聞いておりましたが、本当に新しい考え方、思想を持っていらっしゃるのですね。」

「そんなことはないです。ただの趣味のようなものです。そういえば、新しい天職が生まれるということはやはりあるのですか?」

「最近は稀ですが、記録には残っています。例えば勇者様もその一つで魔王が現れる度に必ず、授かる者が出てくると言われています。また他にも神殿の古い記録には、職人系や生産系もほとんどそうだったようです。例えば魚を取って売る者が現れ、その者の子孫に《漁師》という天職ができたり、大工や鍛治師なども記録にそう残されていますね。」

「やはり……それならもしかすると、子どもに関する天職や福祉関係もこれから増えてくるのかも知れませんね。」

「わかりません……ですが可能性はあると思います。なんせ我々は今まで子どもや老人、そして先天性の障害に対し……世界はこういうものだと諦めていたのは事実ですから……。もし、そのような報告があった時にはヒイロさんにもご相談いたします。」

「よろしくお願いいたします。また逆に神殿の方でも困ったことがありましたら言ってください。力になれることがあれば出来るだけご協力いたします。」

「わかりました。こちらこそよろしくお願いいたします。」

 神殿を後にし、次にヒイロが向かったのはミトのギルド本部である。ギルドにもいくつか種類があり、ヒイロが普段世話になっているのが冒険者ギルド。他に商人で結成されている商業ギルド、職人がまとめている職人ギルドなどがある。それらのギルドをまとめているのがギルド本部であり、ミトの街で言うと、ナットがその代表の一人、冒険者ギルドのマスターとなる。

「ナットさんにお願いがあってきました。」

「……珍しいな!ヒイロから会いにくるのは。」

「新しいギルドを作ってもらいたいのですが」

「ふぅ~ん新しいギルドをね……ん?ま、まて……新しいギルドだと……また、とんでもないことを言い出したな……それで!?どんなギルドだ?」

「福祉ギルドと言って、俺が行っている孤児院やその他の施設を商人ギルドのようにまとめて欲しいんです。あと生活に困っている家庭や病気や障害に苦しんでいる家庭とか困った人を出来るだけ把握し、支援できるギルドにしたいのです。」

「……なるほど。確かにその孤児院とかいう施設は各国に出来ていて、さらにこれから他の施設の種類が増えるとなると、まとめたほうが良いかもしれんな。」

「そうなんです。そして同時に他のギルドで、あぶれたり、怪我や何かで断念した人を職員や技術の講師等として斡旋してくれればありがたいです」

「確かにそういう者がいなくもない。出来るだけ、そのギルド内で出来るだけの支援をしているが、やはり限界があったからな。……予算の収入面などは?他のギルドは極端に言えば、収入がきちんとあるから成り立っている面もある。」

「それは国王に許可をもらったので、国から援助してもらうことになっています。他には施設設立直後は難しいですが、出来るだけ孤児院など施設によっては収入源になるよう物を取り入れています。また他の施設でも、出来たらで良いのですが、簡単な作業……雑用な方でも良いので、他のギルドから下ろしてもらえばありがたいです。」

「……なるほど。確かに連携や色々まとめたり、仕事を受注するには作った方が良いか。代表はヒイロでいいのか?」

「そこが問題で……。今のところ、とりあえずは俺がなるしかないと思っていますが……。そちらでも適した人を探していただけると……。」

「わかった。とりあえず各ギルド代表にも、話しを伝えておく。」

「ありがとうございます。出来ればいずれ、冒険者ギルドのように他国にも同様なギルドを作りたいと思っています。その時にはまたご協力をお願いします」

「わかっている。……大変だが、がんばれよ!」

「はい!」

 こうして、ヒイロは転移魔法で一旦《森の家》に戻り、アルト達の所に会いに行った。理由はもちろんイバール国での福祉ギルドについて、手伝いを頼もうと思っていたからだ。転移魔法ですぐに《森の家》の敷地の前まで飛び、施設の中に入ると、中ではちょっとした騒ぎが起きていた。
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