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第三章〜世界へと旅立つ〜

第39話 〜勇者とドラゴン!?〜

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 今回ヒイロが訪れたのはイバール国の王都、ミトにあるイバール国冒険者ギルドの本部だった。理由はもちろん、イバール国に在籍している天職《勇者》を授かった者と、同じくSSランク冒険者で、天職《魔法使い》でユニーク属性 《重》を持つと言われるエルフに会うためだ。

 ヒイロは、今回の遠征をかなり楽しみにしていた。何故なら前世の子ども時代から、一度は夢見た憧れの存在である勇者に会えるからだ。すでに少年の頃の気持ちになっていたヒイロは、内心会えることを楽しみにしながら、久しぶりにミトのギルド本部に入った。早歩きで受付に行き、2階にある応接間へと招かれる。

 そこに待っていたのはヒイロと同じSSランク冒険者で、白い肌と長い銀色の髪で、細身のスタイルの良い美しい女性だった。理想通りのエルフ族に、目を輝かせているヒイロ。

(うわぁドワーフに続き、本物のエルフだ~漫画みたい!)

「はじめまして、ヒイロです!」

「シルフという、はじめまして。貴方が噂の 《神降ろし》さんか?」

「一応、そう言われています。シルフさんの二つ名は何でしょうか?」

「私は《天空の魔女》などと呼ばれている。風魔法だけではないのだが、こうして空中に浮くことが出来るからつけられた二つ名だろう」

 シルフは、魔力を込めて、自身を少しだけ宙に浮かせる。

「なるほど……重力を魔法で調節して無重力にし、さらに風魔法で浮遊の制動を操作しているのですね!」

 ヒイロの言葉に驚いた顔をしながらシルフは綺麗な笑顔で笑う。

「……すごいな、初見でそこまで理解できる者は、初めてだよ。普通は風魔法のみでの浮力を考えるからな。それにまず重力という言葉すらわからない者が多い……」

 ヒイロは、まずいと思い誤魔化しながら話題を変えていく。

「……あ、いや、たまたま読んだ本の中にありまして……そ、それより《勇者》の方はまだ来ていないんですかね?」

 それから自己紹介を兼ねた他愛のない話をしているところに、金髪で少し小柄だが、見るからにキラキラとしたカリスマ的雰囲気を持った青年が入ってきた。

「はじめまして、皆さん。ロイと申します。一応ではありますが天職 《勇者》を授かった者です。」

 ロイと名乗った、その青年は明らかに《勇者》と呼べる存在的オーラを放っており、ヒイロは本物の勇者に興奮しながらさらに目を輝かせていた。

(本物の勇者……)

「はじめまして!冒険者をしているヒイロと言います!ロイくんはまだ17歳なんだって?」

「あっ、はい!なのでまだ、見習いとして王都の騎士団の中で戦闘訓練をしていました。確か……ヒイロさんも最年少でSSランク冒険者になったとか?」

「あ、そう言えばこの間そんなことも言われたかも……。まぁ見た目で言ったら同じSSランクの《ゴーレムマスター》エメルさんは、俺より何倍も年上みたいだけど、見た目は子どものような女性もいるよ。」

「確か……ドワーフ族の方とか!でも、良かったです。歳が近い人がいて。トキオ文明国にいる《賢者》の方も、確か同じ年齢らしいですが、まだ会ったことがなくて。」

「そうらしいね。俺もまだ会ったことがないんだ。」

 ロイもまた、勇者に相応しい優しい性格であり、興奮気味のヒイロのどうでもいい質問を丁寧に返答してくれていた。それから、シルフを交え3人である程度の情報交換を含めた世間話をしていると、リーゼント頭のかなりいかついおっさんが応接間に入ってきた。

(……ヤ、ヤンキー!?)

「待たせたな。全員集まったか?俺がイバール国王都、ミト本部のギルドマスター、ナットだ。これからよろしく頼む。それといきなりで悪いが、お前達にさっそくイバール国の王からワールドクエストの通達が来ている。」

「通達?なんだそれは。私達は今日は顔合わせだけのはずじゃないのか?」

「僕も知らなかったです。なんでしょう?」

「知らん!!俺も今知ったところだ。通達の内容は……何!?イバール国の北側にある魔物の森から、更に奥に進んだところにドラゴン族が住む山脈があるのだが……その付近からドラゴンが出てきて近くの村や森で暴れているらしい。」

「ドラゴン!?って、あの……ドラゴン!?」

 ヒイロは、前のめりで聞き返す。

「あ、あぁ。ドラゴンが……魔物と呼べるどうかはわからんが、一番弱い種でもSSランクはある。だが、ドラゴン族は種によって、人族並みに知能が高く、縄張りを無闇に荒らさない限りは、他種族に害を与えない種族でもあるんだが……。」

「えっ……ドラゴン族って、ただその属性によって色が違うだけじゃないのですか?」

 ロイの質問に興奮気味のヒイロが話し出す。

「ちがうぞロイくん!例えば火属性なら赤龍種《レッドドラゴン》、雷なら黄龍種《イエロードラゴン》、水なら青龍《ブルードラゴン》と言われるのが、一般的な若いドラゴン。別名カラードラゴンとも言われているんだ!それから強さや年齢によって進化したドラゴンをグレイトドラゴンと言って、さらに限られた進化をしたドラゴンがカイザードラゴンと言って、龍王クラス!……確か伝説だと古龍種……エンシャントドラゴンていうドラゴン種もいて、それだと炎龍種《フレイムドラゴン》とか風属性なら嵐龍種族《ストームドラゴン》とか言われていたらしいよ!……その他にもユニーク種でクリスタルドラ……」

 ヒイロの怒涛の説明にロイは若干引き気味で頷いている。そんな2人を置いて、シルフは話しを続ける。

「確かに……私がいたエルフ族も、種族間で交流していたこともあるのだが、平和主義であり、無闇に襲う他種族を襲う種族ではない。もし、何か相手に非があれば、きちんとその理由を伝えてくるはずだが……じゃあ、これからそのドラゴンが住む山脈への調査となるのか?」

「そうだな。俺を含めてこの4人で行くしかあるまい。今からの都合はだいじょ……」

「はい!もちろん!!」

「ぶか……。あ、あぁ。眩しっ!?……あ、ありがとな……」

 食い気味で即答するヒイロは、眩しいくらいに目を輝かせていたのだ。それは、勇者に続いてドラゴンと、子どもの時の初めて魔法を使った時と同じような感覚ではしゃいでいた。

「ふっ、私も大丈夫だ。」

「ドラゴンですか……今の僕に止められるかは分かりませんが……大丈夫です。」

 こうして、ヒイロ達4人はドラゴン族が住む山脈へと向かうこととなった。魔物の森の中腹までは、ヒイロが行ったことがあったため、全員を転移魔法で運ぶ。そこからドラゴンが住むと言われている山脈までは徒歩で向かうしかなく、もちろん魔物も多数遭遇したが、テンションMAXのヒイロが全て一人で対処し、ハイペースで進んでいった。

 あともう少しで魔物の森を抜けるところまで来ていた時、1匹の若い赤龍種《レッドドラゴン》が森の中で暴れているのを見つける。情報通りの展開に、4人はそのままドラゴンへ接触を試みたが、いくら接触を図ろうとしても、ドラゴンの反応は全くなかった。

(赤いドラゴン……レッドドラゴン!!)

 一人、目を輝かせながらうっとりとドラゴンを見つめてるヒイロを無視して残りの3人が話し始める。

「やはり様子がおかしい。ドラゴン族の目は基本、人族と同じように白目と黒目があり、白目部分はドラゴンの種族によって違いはあるものの、あのドラゴンのように全て黒くなっている目は見たことも聞いたこともないぞ。」

「確かに……何かに操られてるというか、自我を失っているように感じます。」

「どうする?あの大きさじゃ、押さえようにも難しいぞ。」

「そうだな……倒しても良いのだが、状況がわからない今、変にドラゴン族を刺激することはできないし……かと言ってこのまま無視するのも被害が大きくなるだけか……。」

 しばらくして満足したのか、我に戻ったヒイロが提案をする。

「あっ俺、光属性を持ってるので呪いや混乱、毒などの状態異常を治す魔法をかけてみますか?」

「なるほど状態異常か……頼む、やってみてくれ」

「SSランクのドラゴンにもかかる状態異常なら、上級魔法でも無理だよな。それじゃぁ妖精魔法 《フェアリーディスペル》」

 ヒイロの魔法によってレッドドラゴンが白い光に包まれる。ドラゴンは、一瞬動きが止まったかに思われたが、すぐに暴れ出し、見境なく炎のブレスで辺り一面を焼き尽くす。

「効かない……多分、状態異常や呪いの類いでないと思います。そしたら何かに使役……操られている可能性の方が高いですね」

「仕方ない……少し無理矢理だけど私が大人しくさせるわ。重力魔法 《グラビティフィールド》」

 シルフの唱えた重力魔法により、レッドドラゴンは急に何かに押しつぶされたかのように地面へとめり込む。そして、その一撃で気絶したのか、息はしているものの動かなくなっていた。

 その後、今度はヒイロが創造魔法で、新しい魔法 《モンスターボックス》を作る。生き物を生きたまま入れる事ができる魔法だ。もう一つのストレージボックスでは、生き物は入れられないために、以前から考えていた魔法でもあった。それにより、そのままレッドドラゴンを生きたまま回収する。

「すごい威力ですね!これが噂に聞く重力魔法!」

「お前もな……さっきの転移魔法もそうだが、珍しい魔法をよく使う……」

 なんでもないかのように、この世界においてかなりのレアスキルとされる時空魔法の一つ、収納魔法や転移魔法を簡単に使えているヒイロに、ロイ以外のナットとシルフはかなり驚いているのだった。
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