上 下
8 / 96
第一章〜元男性保育士の異世界転生〜

第8話 〜やっぱり異世界でも一番大切なのは〜

しおりを挟む
 ヒイロは、この異世界《シャングリラ》のことを少しずつ把握できるようになっていた。そして一番最初に感じたことは、前世の日下部だった頃、何より子どもが好きで保育士になったヒイロとしては、一番耐え難いこと……この世界では、子ども達にとって必ずしも良い世界とは言い難いことだった。特に貧しい家庭による捨て子や望まれずに生まれてしまった子ども達……。

 街のどこを歩いていても、時々、そういう物乞いの子ども達や、万引きをして捕まる子どもなどの、そういう姿が嫌でも目についた。たぶん……ヒイロの両親もきっと感じるところはあるだろうが、仲が良いのにも関わらず2人目を作らないところを見ると、ヒイロ一人を養うだけで余裕がないのだろう。

 このシャングリラという異世界に転生をしてきた日下部(クサカベ)こと、ヒイロもすでに13歳になり、もうすぐ祝福を受けられるようにな年頃になっていた。体格も立派になり、親の大工仕事を時々手伝いしたり、内緒の修行も行動範囲が広くなり、猛獣が出る、街の郊外にある森や山で修行することも増えていった。

 その頃には、普通ではありえないのことなのだが、使える魔法もさらに増え、冒険者でいう属性上級魔法や珍しい転移魔法、収納魔法など色々出来るようなっていた。

 またスキルも知識や感覚強化による、鑑定スキルや模倣を超えるスキルコピーなるスキルも使えるようにになっていた。ちなみにそのスキルコピーは相手の動きや魔力の流れを見て覚え、そのまま自分で使えるようになるスキルで、相手となる様々な猛獣の動きやスキルをコピーしまくっていた。

 そしてまた、比較的ヒイロが住んでいるオオタルの街から近く、危険の少なく目立つことがない東の森の中に、1つの大きな家を、ヒイロは自分で作り上げていた。そしてその家には、街で身寄りがいない孤児達の姿があった。この家に来たばかりの時は今にも餓死してしまいそうな子ども達だった。

 ヒイロは、そんな子ども達のために住む家と、そして商家の娘のミーナの力も借りて、食料などを無償で提供したのだ。その他にもヒイロが森で収穫してきた猛獣や薬草類をお金や食べ物に替え、また衣服や家具などはヒイロが、大工や裁縫のスキルを使い整えていた。

 合計16人の3歳~10歳前後の子ども達が、幼いながらもヒイロとミーナの援助の元、この森で暮らしていた。比較的安全だが、猛獣が出なくもない森での暮らしを安全に過ごす為にも、ヒイロは新しい結界魔法を構築して家の周りに猛獣や不審者除けの結界を施していた。それにより、安全な生活が保たれていたが、大人がいない暮らしは食べ物に困らなくても難しいことは、たくさんあった。それにヒイロとミーナは親に内緒にしていたため、その家にずっといるわけにも行かず、やはり子ども達の自立生活が課題だった。

 そのためこの頃ヒイロは、その保育士だった前世の宿命からか、世界を救うための修行よりも、目の前にいる子ども達をどう自立させるかを日々考えながら過ごしていた。


 まず考えたのは、生活する上でのグループ作りだった。年齢をバランスよく分けて4グループを作り、リーダーを4名決めた。グループを作ることで子ども同士での援助や役割りをわかりやすくし、また全員に目が届くようにしていった。

 普段の生活では、食べ物は不足していないため、主に自立に向けての生活を整えていった。まず各グループの1番小さい子ども達は、自分の身の周りこと身辺の自立を目指し、自分で着替えや食事をできるように、歳上の子に援助してもらいながら練習をしていった。

 そして中間の子ども達は、掃除や洗濯といった簡単な家事を、1番年上の子ども達には料理と食料調達の仕方を伝えていった。元孤児だったこともあってか、生活力、そして生きる力が強かったためか、一年もしないうちに、生活は軌道にのり、ヒイロとミーナが数日いなくても大丈夫なレベルにまで成長していた。

 特に1番年上の子ども達は責任感も合わさってか、より熱心にヒイロやミーナの話を聞いて、薬草から果実、ウサギや小動物の捕獲、手入れの仕方まで、十分にこなせるようになっていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

平凡な人生の後は

non
ファンタジー
日本で生まれ、平凡な学生時代、社会人になっても大きな成功や失敗があるわけではなく、80歳で老衰によって平凡すぎる人生の幕を閉じた1人の男が、神様によって転生させられて、平凡とはかけ離れた人生を送るストーリー 初投稿です。よろしくお願いします。 7/10追記 タイトルを詳しく書いた方が読みやすいという方がいたら感想に書いてくれるとありがたいです。

可愛いあの子は溺愛されるのがお約束

猫屋ネコ吉
ファンタジー
酷い虐待を受けてクリスマスの夜死んだ主人公が異世界の神様によって転生した。 転生した先は色々な種族と魔物がいる剣と魔法と呪いがある世界。 そこで転生チートとして大きな魔力と最強の治癒魔法と魔法道具を貰った主人公がいく先々で最強の魔物や勇者に各種王族、民達に美味しい料理や治癒しては溺愛されていくお話し。 主人公は男の子です!女子に間違えられるのがテンプレですけど結構男前な性格かな? 結構テンプレです。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...