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口裂けちゃんと体育 2
しおりを挟むその後も、吾輩はバレーボールの授業をおおいに楽しんだ。
しかして、気になることはあった。
それは九千紗さんの隣にいる不健康そうな白肌の不良少女、芥川の存在だ。
芥川はさきほどからチラチラと隣の九千紗さんを気にしている。
吾輩はいつでもバレーボールを投げつけて彼女の行動を阻止できるよう、ボールを掴んだまま待機する。
「おい、遅刻野郎、バレーボールしろ」
「これは失敬、ミスター・顧問」
吾輩はバレーボールを再開する。
「あっ、ごっめーん♡ 大丈夫?」
芥川のくだらない甘さの声が聞こえてくると、となりのコートで倒れふす九千紗さんの姿が見えた。
「穂真田嬢! 平気かぁあああ?!」
吾輩は九千紗さんのもとへ駆け寄ろうとした。
九千紗さんは焦ったような顔つきで口元を押さえている。
鼻血だ。
マスクが赤く滲んでいるのだ。
「ほーまーだー、だいじょーぶー? ほら、可愛い可愛い顔が汚れちゃうから──マスクとってやるよ」
「っ、や、やめ……いいよ……」
芥川はニヤリと醜悪な笑みをうかべて、九千紗さんにつかみかかり、血で汚れたマスクを剥がそうとする。
「やめて……っ」
「んだよ、取れよコンプレックス隠してお高く美少女の仲間入りしてんじゃねーよ!」
気弱い九千紗さんから芥川は強引にマスクを剥ぎ取った。
テレビである美しい顔があらわになる。
「ふつくしい……」
吾輩はつい声を漏らしてしまう。
しかし、芥川にとって九千紗さんの可憐さは忌み嫌う対象に過ぎなかった。
九千紗さんにとっても、都市伝説の怪物としての一部である、『口元の隠匿』を無理やりに剥がされたことはダメージをあたえていた。
九千紗さんは自信のない、情けないともとれる顔で、涙をうかべた。
「ミスター・顧問。吾輩は穂真田嬢を保健室へお連れいたします」
「い、いや、保健委員が連れていけ」
「保健委員はあちらでくたばっています」
吾輩は先ほどワンパンして倒してきた保健委員たちを親指までさししめす。
そうして、吾輩は九千紗さん保健室へ連れていく権利を獲得した。
「穂真田嬢、もう大丈夫だ」
「っ、へ、へんたい……」
吾輩はポケットに常備してある新しい布マスクをつけてあげる。
そうして、吾輩は彼女をお姫様抱っこにして、どうどうと体育館をあとにした。
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