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第七章 魔法王国の動乱

毎日お肉生活

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 村長を見つけて捕まえる。
 
「仕事を手伝いましょうか。小屋を貸してもらっている分働かせてください」
「いえいえ、アルドレアさまは王国のために戦ってくれた身、どうかお休みになられて──」
「働かせてください。お願いします」

 プレッシャーをかけて、畑仕事をやや強引に手伝うことにした。母親のワクワクから逃れるには口実が必要だからだ。
 農作業。剣気圧が使えないとはいえ、普段から鍛えているし、クルクマ時代はたまに畑仕事を手伝ったりもしていた。
 ゆえにそれなりの即戦力としてわりと役に立てた。
 魔術のたぐいは使わない。肉体労働オンリーだ。
 というのも魔力の回復速度は遅いので、平時では魔術の鍛錬以外では、極力使わないことにしてるためだ。
 クリスト・カトレアの聖域で高速魔力回復を行えたらよいのだが、あれほどの神秘領域がそこらじゅうにあるわけもない。

 そんなこんなで俺は日々、村での仕事に励んだ。
 とはいえ畑仕事は最初の1日だけだった。
 森のなかへ入っていく弓矢を担いだ狩り人たちを見つけたからだ。
 狩り人たちは鳥やら狐、うさぎにイノシシなどの狩りをして、村に肉をもたらす重要な役目を持っている。俺はそんな彼らに同行することにした。

「アルドレア様は魔術師なのでしょう? 流石に狩りにまではお詳しくないのでは?」

 狩り人衆のなかでも気の強そうな娘さんに、いたずらな顔で言われたので、快く挑戦を受け、狩りの腕を競うことにした。
 俺が超直観で大量の獲物をほそくし、氷の短剣を撃って仕留めて見せると、狩り人衆の評価は一転した。

「アルドレアさまは凄いんだ、獲物がどこにいるのかすべてわかってるかのようにおしえてくださる!」
「アルドレアさまがいれば毎日お肉が食べれるぞ!」
「どうですか、うちの子を嫁にやりますので、村に住むというのはいかがでしょうかな?」

 超直観の恩恵はやはり凄まじい。
 これがなければ森をよく知る狩り人たちには敵わなかっただろう。

 そんなこんなで俺は毎日お肉を手に入れ、夜になれば、旅のなかで磨きをかけた料理スキルでエヴァに肉々しいスタミナメニューをご馳走をした。
 たくさん食べて、たくさん栄養を取れば、どんな傷だって治る。
 脳筋の論理だがあながち間違ってもいないはずだ。

 そうして辺鄙な村での日々は瞬く間に過ぎ去っていった。
 15日ほどが経った頃、村に異変が起こった。
 
「た、大変ですッ、アーカム様! 村に騎士たちが!」

 村人たちが恐怖とともに小屋に駆けこんできた。
 思ったより遅かったが、やはり略奪に来たか。
 
「皆は下がってて、決して戦おうとはしないでください」
「アーク、ママも戦うわ」
「いや、母様もさがっててください。つい先日まで死にかけてたのに何言ってるんですか」

 もうまだ包帯取れてないのに。
 ほら、立たないで、剣も持たない。めっ、じっとしてて。
 ムッとしてもだめです。

 なんとかエヴァを押しとどめて、俺は村の中心へ。
 村人たちが一致団結して人だかりをつくり、騎馬たちの侵攻を喰いとめていた。
 俺が来ると、村人らの表情は明るくなる。
 人混みが勝手に割れていき、村へ来た騎士たちと向かい合う形になる。

「アルドレア殿、こんなところにいらっしゃったか」
「ん、あなたは確か……」

 騎士の顔に見覚えがあった。
 やや後退の激しい薄毛、細い糸目。
 ああ、そうだ、戦場で会った。

「魔法騎士隊隊長マーヴィン・テンタクルズ。お久しぶりです、貴方を探していました」

 かの騎士が名乗りをあげると、村人たちはドっとざわめいた。
 マーヴィン・テンタクルズ……どこかで聞いたと思ったら、そうかこの人が、魔法王国最強の騎士とうたわれる『王の剣』なのか。
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