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第七章 魔法王国の動乱
王族派貴族会議3
しおりを挟むこんなことになっている最たる原因は王家の求心力が落ちているためだ。
国の分裂を嫌がり、穏便に穏便にことを済ませようとし、貴族たちの不信をつのらせ、その姿勢は彼らを助長させた。一部には侵略国家である帝国から賄賂を受け取り、内部分裂を働きかける貴族もいる。水面下でどれほどの取引が行われたか知る者はいない。
腐敗はつのり、いよいよ王族派貴族のなかにも露骨に裏切ることはせずとも、おかしな挙動を見せる貴族たちが現れ始めた。戦争に負けた時の損失を少なくし、新しい王を迎える準備すら密かにはじめているのだ。
貴族派貴族筆頭ポロスコフィン卿がもしその地位に着いた時、王族派として強固に派兵していては、粛清されるのは必至、ゆえに貴族たちは保身に走る。
「ですが、ご安心をキンドロ卿、このアーケイン領ではいま緊急的に試算のやりなおしをしております。どれほどの時間が掛かるかはまだなんとも言えませんが、準備が整い次第騎士団を派兵いたしますゆえ」
口では言うが、その言葉のどれほどが信用できるのか、キンドロは疑っていた。
結局、会議は平行線をたどり、派兵を実質的に拒否した3人の領地貴族からはいくらかの譲歩を引き出すばかりで、実質的な参戦を断られてしまった。
王族派軍は王領より民兵45,000、騎士5,000。
キンドロ領より民兵5,000、騎士2,000。
ハーヴェイン領より民兵3,000、騎士1,500。
ナーサリキッフ領より民兵1,000、騎士800。
クンティエリア領より民兵1,500、騎士600。
あわせて民兵55,500、騎士9,900。
これが王族軍の兵力となった。
対する貴族派貴族。
全5領地貴族からなる貴族軍は、
ポロスコフィン領より民兵40,000、騎士5,000。
マジック領より民兵35,000、騎士4,000。
ルーツ領より民兵5,000、騎士2,800。
ファゴッド領より民兵35,000、騎士2,000。
エルドラン領より民兵3,000、騎士2,500。
あわせて民兵118,000、騎士16,300。
これが貴族軍の兵力である。
合戦4カ月前の時点で推定にして倍以上の戦力差があった。
さらなる懸念は貴族派には伝統的な魔術師の家系が多くある事だ。
戦争にどれだけの魔術師が派兵されるのか、それを考えただけで、ヴォルゲル王は夜も眠れずにいた。
この日の会議もまた大きな進捗は得られずに終わった。
キンドロは頭を抱えた。
会議が終わったあと、キンドロは秘密裏に王のもとへ呼び出された。かねてよりキンドロ家には王家の忠臣として長い事魔法王国を支えて来た歴史があった。
王が熱く信頼を置く腹心なのだ。ゆえになにか大事な話をしてもらえるのだろうと、キンドロは気を引き締めた。それがおおよそ良い話ではないことも覚悟した。
呼び出しに応じ、キンドロは王の私室へやってきた。
部屋のなかではヴォルゲル王とマーヴィン魔法騎士隊長が待っていた。
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