異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家

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第五章 都市国家の聖獣

天の火

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 超直観の声が響き、アーカムは荒垣が何をしようとしているかを悟った。同時に攻撃の規模を感じ取る。

(ここにいたら当たりそうだな)

 アンナの方へ視線を向ける。
 
 荒垣の頭を剣で斬り落とし「ふんす」っと満足げなアンナは、直上からの謎の大規模攻撃に気が付いていないようであった。
 
「アンナ!」
「?」

(《イルト・ウィンダ》!)

 アーカムは風でアンナの体を強力に引き寄せた。

 直後、天井が赤熱に火照った。
 かと思うと、青白く薄明るい寒々しい通路を飲み込んでしまった。

(っ、このエネルギー量は……まずいッ!)

 万物を無に返す熱線。
 その本質が如何なるかまではわからなかったが、アーカムの直感は、決して触れてはならない警告してきていた。

 
 ────


 ──ハブレス・ブラスマントの視点

 クリスト・カトレアには、ペグ・クリストファ都市国家連合に名を轟かせる美しい姫がいた。

 名をハブレス・ブラスマント。
 艶やかな焦げ茶色の長髪に、透き通る水色の瞳が美しい国民皆から慕われる王女だ。
 清く、美しく、そして、稀少な氷魔術を行使するほどの知性もあわせもつのだから、これほどに完璧な存在もそうそういない。

 クリスト・カトレアをおさめる王家ブラスマントの長女ハブレスは、都市中央に築かれた王家の城から、天空から注がれる光を目撃した。
 
 ある昼下がり、執務に筆を走らせている時のことであった。

「あぁ、なんということでしょう」
 
 執務の手を止めて、腰をあげ、窓辺に寄った。
 天からの光柱は地面の中へ吸い込まれるように消えていく。
 
 光柱がどこから来ているのかを目で追ってみる。すると、発生源は雲の上──ということはなく、意外にも低く、都市の上空を取り囲むようにしていた黒い巨人たちが、発生源だとわかった。

 今まさに、王城から800m先の宙空にて、黒い巨人たち10体ほどが、市街地の上空に集まり、ふわりふわりと浮いて円を描いている。
 異様なのは、巨人たちは、それぞれが腹部から伸びる黒いひも──へその緒でそれぞれが繋がっていることだ。

 黒い巨人たちはへその緒で繋がった隣の者たちと手を取り合い、大事そうに光柱の始まりを囲み、それが地上へ垂れ流されていくのをじーっと守っている。
 
 やがて光がおさまった。
 巨人たちが守っていた光柱は、どうやらすべてのエネルギーを使いきり霧散してしまったようだ。
 
 巨人たちは糸が切れた人形のように、市街地へ落ちてゆく。抜け殻のようであった。ひとつの命の終わりを感じさせる最後である。
 ハブレスは戦々恐々とした表情で、執務室の窓からそのさまを見つめていた。
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