150 / 306
第五章 都市国家の聖獣
2人なら
しおりを挟む「アーカムどうすればいい?」
「どうしますかね」
『とりあえず殴ってみればいいじゃないか、アーカムッ!』
(超直観くんがこう言ってるのでまあ殴ってみますか)
アーカムはアンナの顔をちらりと見て「攻撃あるのみです」とつぶやいた。
アンナはうなづく「2人なら何とでもなるよ」表情には強い信頼が宿っている。
「なにをこそこそと──」
荒垣が肩をすくめて、余裕ぶってそう言おうとした瞬間、アンナは駆けだしていた。
同時にアーカムは《イルト・ポーラー》の詠唱を開始した。
アンナは素早く斬りこむ。
サイコウィップが迎撃せんと襲い掛かる。
斬り返し、なお突撃するアンナ。
荒垣は眉根をひそめる。
(ダブルのせいで、ストレージの圧迫が続いてる。脳も熱くなってきた……慣れないクリオキネシスは、氷魔術で攻撃された際の防御に使うことしかできない……コストの計算を厳密にした方がいいね──ただ、とにかく今はダブルとサイコウィップで伊介天成本体《アンナ》を無力化するのみに思考を割くべきだね)
2人の荒垣は優先順に敵を片付けることにした。
それぞれがサイコウィップを展開し、4つの変幻自在の鞭で攻撃をはじめる。
アンナは短く息を吐き、集中力を高める。さあ勝負だ。
一撃、二撃、火花を散らし、カトレアの祝福で迎撃した。
先ほどよりもはるかに洗練された、正確無比かつ、キレのある剣裁きだ。
天才アンナ・エースカロリは、攻撃を見るたびに、敵へ適切にアジャストすることができるのだ。
しかし、いま相手しているのは遥かなる超越者だ。
サイコウィップの三撃目で足がとまり、四撃目で体勢がくずされてしまった。
この間、1秒にも満たない。
「チッ」
顔をしかめるアンナ。
1人の時でさえ、接近が精一杯だったアンナにとって、ダブルの荒垣は手に余る敵であった。
だが、アンナが大勢を崩すと同時に、アーカムの高速詠唱も完了する。
「白の星よ、氷雪の力をここに
あまねく神秘を、聖獣の御手へ還せ
彼が目を覚まさぬうちに、世界を零へ導きたまへ
──《イルト・ポーラー》」
放たれる氷雪の輝線。
光を乱反射し、まばゆい奔流がダブル荒垣を襲う。
「二度も同じ手を喰らうものか」
荒垣の片方はニヤリと笑い、片割れが一歩前へでて、手をかざす。
(やつの氷の放射に対して、サイコキネシスでの受けはコストパフォーマンスが悪い。同時に低温によるマナニウムの運動力の低下が、念力層の著しい弱化を引き起こす。だからサイコキネシスではいけない。となると、やはり、クリオキネシスしかあるまい)
「砕けろ──クリオキネシス」
アーカムの放った《イルト・ポーラー》は、飛翔するさなか、もつれるようにエネルギーを分散させてしまった。
アーカムは思う「どうやら本当にパワーで行くしかないみたいだ」──と。
そこからのアーカムは弾幕係に徹することにした。
(《ウィンダ》《ウィンダ》《ウィンダ》《ウィンダ》《ウィンダ》《ウィンダ》)
『《ウィンダ》《ウィンダ》ッ!』
(超直観くんッ?!)
どうやらアーカムの超直観が詠唱した分も、ちゃんと魔術を撃てるらしく、アーカムの連射速度は秒間8発にも及ぶようになっていた。直観とは。
「っ、なんて連射速度だ……」
荒垣はちょっと気圧されることになった。
体勢を崩していたアンナはその隙に持ち直す。
相棒の弾幕を背負って突進する彼女の瞳には、不機嫌と赤い血の香りが漂っていた。
0
お気に入りに追加
573
あなたにおすすめの小説
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~
白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた!
もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する!
とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する!
ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか?
過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談
小説家になろうでも連載しています!
勇者に恋人寝取られ、悪評付きでパーティーを追放された俺、燃えた実家の道具屋を世界一にして勇者共を見下す
大小判
ファンタジー
平民同然の男爵家嫡子にして魔道具職人のローランは、旅に不慣れな勇者と四人の聖女を支えるべく勇者パーティーに加入するが、いけ好かない勇者アレンに義妹である治癒の聖女は心を奪われ、恋人であり、魔術の聖女である幼馴染を寝取られてしまう。
その上、何の非もなくパーティーに貢献していたローランを追放するために、勇者たちによって役立たずで勇者の恋人を寝取る最低男の悪評を世間に流されてしまった。
地元以外の冒険者ギルドからの信頼を失い、怒りと失望、悲しみで頭の整理が追い付かず、抜け殻状態で帰郷した彼に更なる追い打ちとして、将来継ぐはずだった実家の道具屋が、爵位証明書と両親もろとも炎上。
失意のどん底に立たされたローランだったが、 両親の葬式の日に義妹と幼馴染が王都で呑気に勇者との結婚披露宴パレードなるものを開催していたと知って怒りが爆発。
「勇者パーティ―全員、俺に泣いて土下座するくらい成り上がってやる!!」
そんな決意を固めてから一年ちょっと。成人を迎えた日に希少な鉱物や植物が無限に湧き出る不思議な土地の権利書と、現在の魔道具製造技術を根底から覆す神秘の合成釜が父の遺産としてローランに継承されることとなる。
この二つを使って世界一の道具屋になってやると意気込むローラン。しかし、彼の自分自身も自覚していなかった能力と父の遺産は世界各地で目を付けられ、勇者に大国、魔王に女神と、ローランを引き込んだり排除したりする動きに巻き込まれる羽目に
これは世界一の道具屋を目指す青年が、爽快な生産チートで主に勇者とか聖女とかを嘲笑いながら邪魔する者を薙ぎ払い、栄光を掴む痛快な物語。
とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~
剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる