異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家

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第五章 都市国家の聖獣

装備調達

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 丸1日30時間ほどが経った。
 信じられないことに魔力の充足を感じた。
 これまで魂がすかすかだったような寂寥感がどことなく存在していたのだが、いまは満ち足りている。

 もしかして、100%回復したのではないだろうか。
 ちょっと力を入れてハイパーモードへ片足を突っ込もうとして見る。
 しかし、こちらは上手くいかなかった。
 体調は目覚めてから最高だとは思うのだが……。

 つまるところ、魔力は回復したけれど、今ある保有量が最大値まで達しただけで、回復量が元に戻ったわけではないのだろう。
 回復量は依然として95%ほどを深淵の渦に間引かれている。
 前借した代償として。

 立ちあがり、異空間をあとにする。
 聖獣を最後にちらりと見上げ、いつもどおりの体勢で静かにしているのを確認する。

「あなたのおかげですか?」
 
 なにも答えてはくれない。
 ただ、俺の直観が沈黙のなかに答えを見つけた。

「ありがとうございます」

 王城の地下へ移動する。

「アーカム」
「アンナ、調子が良さそうです」
「うん。そっちも顔色が良い感じだね」

 湯あみをしてきたのか、アンナさんホカホカしていらっしゃいます。

「見て、カッコいいでしょ」

 まわりの視線を気にして、手に持つ布にくるまれた長物を見せて来る。
 剣だ。それも業物だとひと目見てわかる。

「良い剣ですね。カイロさんにもらったんですか」
「違う。拾ったんだ」

 嘘つくんじゃありません。
 こんないい剣が落ちてるわけないでしょうが。

「もしかしてアンナ……どこかから盗んできたんじゃ」
「違う。全然違う」
「正直に言ってください。怒りませんから」
「……実はカクカクシカジカン」
「え、100人組手的なやつですか? それ、カトレア家に伝わる宝剣だったりしませんかね……」
「だから黙ってて。あのわんわんに気が付かれると奪われるかもしれない。あたしが拾ったのに」
「……」
 
 俺はアンナの後ろをチラッと見やる。
 アンナも振り返る。
 ちいさな狼がおすわりしてじっと見つめてきていた。
 青白い毛並み。わんわんの眷属ですね。ええ。

「カトレアの祝福。それはもっとも優れた剣闘士のもとへ姿を現すと言われる伝説の霊剣だ。……わん」

 青白もふっと尻尾をふりふりして、曲がり角の向こうからカイロさんが姿を現します。はい、アウト。アンナさんアウトです。

「すべて聞こえている。たわけが。だわん」
「……」
「そう険しい顔をするな、アンナ・エースカロリ。その剣に選ばれたのならば、その剣は貴様の物だ。貴様が剣にふさわしくなくなれば、その剣も運命の導きで、カトレアのもとへ戻るだろう」

 まったく信頼できない理屈だが、カイロさんにとっては必然の理屈なのだろう。
 聖獣などという神のような存在がいて、運命をコントロールできるとしたら、広い世界の一個人に王家の宝をかしだそうとも、いづれ必ず自分たちの手もとに帰ってくる。そう彼女は確信しているのだろう。

「よかったですね、アンナ」
「うん」

 ぴっかぴかのカトレアの祝福を、自慢げに帯剣ベルトに引っさげる。
 アンナはぺかーんと自慢げに胸を張った。おおきいです。

 カイロは眷属のちいさな狼を抱き上げ「ついてこい」と言って、俺とアンナを書庫に案内した。

「言われていたものを準備をした」

 書庫のおおきな机には布が敷かれ、そのうえに武器とアイテムがずらっと並んでいた。
 映画で見る装備調達するスパイの気分になる。

「事前に言われた通りにそろえたが、不備がないか確認してくれ」

 アンナはポーション各種を検分していく。
 
 俺も回復ポーションをいくつか懐におさめる。
 次に剣を二本、刃を確認して十分な品質があることを認めたうえで帯剣ベルトにひっさげる。

 アマゾディアほどの剣ではない。
 せいぜい、二等級と言ったところ。品質は高級にとどまる。
 だが、即日用意できる範囲でもっとも良いものだ。

 次に確認するのは魔法の杖だ。

「良い物ですね」
「我が昔使っていたものだ。使用人に探させたわん」
「消費軽減系のオプションは?」
「消費魔力軽減20%、魔力還元10% 、高等魔術最適化 60%。わん」
「攻撃強化系オプションは?」
「魔力装填量増加70%、攻撃魔術強化 40%……わん」
「等級は?」
「三等級わん」
「杖芯は?」
「深緑に自生する魔樹メレオレから削り出した霊幹だ。攻撃強化系の比重が高い。戦闘を専門にする魔術師がにぴったりだ。魔術王国への留学時に、名匠オズワール・オザワ・オズレの手によってオーダーメイドされた杖だわん」
「パーフェクトです、カイロさん」

 まとめるとスペックは以下の通り。

 ──────────────────
 メルオレの杖
 ・消費魔力軽減20%
 ・魔力還元10%
 ・魔力装填量増加70%
 ・攻撃魔術強化40%
 ・高等魔術最適化60%
 ──────────────────

 ──────────────────
 コトルアの杖
 ・消費魔力軽減50%
 ・魔力還元20%
 ・魔力装填量増加55%
 ・高等魔術最適化 70%
 ──────────────────

 以前使っていたコトルアの杖と比較するとこんな感じだ。
 同じ三等級どうしだが、コトルアの杖より、メレオレの杖のほうが攻撃強化系オプションが多い。カテゴリー5の超能力者が持つサイコアーマーにも十分な威力を発揮してくれるだろう。
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