異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家

文字の大きさ
110 / 306
第五章 都市国家の聖獣

俺は童貞じゃない

しおりを挟む
 
 ルールー家をあとにしたアーカムたちは、アンナのクエスト報告をしにギルドへやってきていた。

「おめでとうございます! C級冒険者昇格ですよ!」

 アーカムの下水道での頑張り、アンナが野山を駆け回って長期間かかるはぅだったクエストを数日で仕上げた功績、それらに加え、町で力を持つルールー司祭家のさりげない後押しもあり、2人はごく短期間でC級冒険者へと昇格した。

 受付嬢にE級のメダルを返納して、かわりにC級メダルを受け取った。メダルは鋼が混ぜられた銀で作られているようで、高級感があった。
 
 アーカムはギルドをでて、馬たちを見張っていたアンナへC級メダルを渡してあげる。

「見てください、アンナ。C級メダルですよ。カッコいいでしょう」
「S級じゃない」
「無茶言わないでください」
「むう」
「なんですかその顔は。僕にそんな顔してもダメです」

 不満げなアンナは頬を膨らませるが、アーカムはつーんして無視をつらぬいた。
 アンナは実力を認められないことにいたくご不満なのである。

 アーカムとアンナは馬にまたがり旅立つ。
 あっという間に聖神国最西端ルールーの町がちいさくなっていく。
 やがて、丘陵地帯に向こう側に町は沈んでいき見えなくなった。
 
 アーカムたちの旅は順調そのものだった。

 たびたびモンスターに遭遇しはしたが、2人にとって脅威となるほどの存在は現れなかった。
 どちらかといえば、町に入ってからの方が緊張だった。

 アーカムは宣教師に正体がバレている。
 もしかしたら宣教師たちが迷子の狩人を捕まえにくるかもしれない。そんな懸念があった。
 教会に所属する皆が、アーカムが出会った神父たちのように温和で、使命にひたむきで、同じ方向を見据えているとは限らない。

 ちいさな町や村を渡り歩き、ルールーから10日の旅を経て、第三聖都フィギラに到着した。
 消耗した物品を買い集めて、数日休憩したら、すぐに次の目的地へ出発する。

 本来なら聖神国の踏破に1年はかかると考えられていた。
 お金を稼ぎながら、徒歩で移動すると思っていたからだ。
 だが、ルールー家の嬉しい報酬のおかげで、予定はずっとスムーズに進んだ。

 ある夜のこと。
 ちいさな町の宿で、アーカムとアンナは葡萄酒に手をつけてみることにした。

「アーカム、それ美味しい?」
「渋みがありますけど。味わい深いです」

 アーカムが最初に飲み「ほー」と感想をもらすと、アンナは無言で手をだして、ボトルを要求してきた。

「まずい」

 一口飲んで、ぼそっとそんなことを言うアンナ。

「アーカム、嘘ついたの?」
「いやいや……まあ、子供にはすこし早かったかもしれないですね」
「その言葉、そっくりそのまま返すよ」

 アンナは得意げに笑みを深めると、アーカムに背後から抱き着いた。
 発育たくましい豊穣なる双丘が卑猥に歪む。
 童貞ではとても耐えられない攻撃力だ。
 しかし、アーカムは──
 
「はいはい」
「っ」

 自分の首に後ろから回される手を、優しくほどいて「そういうのはふざけてやっちゃだめですよ」とアンナをさとした。
 アンナは途端に自分がやったことが恥ずかしくなった。
 色仕掛けしたら説教されたのだ。
 静かな激情型は、黙したまま、頬を赤く染め「寝る」とベッドへ飛び込んでしまった。

(アーカム、やっぱり、性欲が完全にないんだ。昔は動揺してたような気がするけど……気のせいだったのかな。でもいいことだよね。性欲がないということは、アーカムが色仕掛けに落ちて、ほかの女に篭絡されることはないんだから)

 アンナは恥ずかしいやら、嬉しいやら、高揚した気分のせいでしばらく寝むれなかった。

 
 ────


 ──アーカムの視点
 
 とんでもなくえっちなことをしよるッ!
 危うく好きになっちゃうところだった。というかその先までいっちゃうところだった。
 アンナさんは大きいから基礎攻撃力は目を見張る領域にある。

 しかし、俺はもう童貞じゃない。
 精神的にも童貞を卒業した。
 悪いがアンナ、この俺が全能力を動員し、舌を噛み切る勢いで耐えれば、乳圧ごときで慌てふためくことはないんだよ。

 翌朝。
 隣のベッドでアンナさんが胸元をはだけさせていらっしゃいました。
 そこらへんの童貞ならきっと大喜びで見るんだろう。しかし、俺は見なかった。何故なら、童貞じゃないから。

『アーカム、嘘は好きじゃない』

 超直感くん!? もう普通に喋るのな……。

 ……まあ、多少はね? 多少は見したよ。でも1秒だけです。本当です。……5秒くらいだったかも。え? 10秒? それはない! ははは。困りますね。まったく。谷間くらいでそんなテンションあがってるなんて。童貞じゃあるまいしね(※2分間に渡りいつ起きるかビビりなから、75回のチラ見)


 ──20日後

 
「あそこが第六聖都フクスムリです」
「ようやくだよ。長かったね」
「お疲れ様です、アンナ」
「ん。アーカムもね」

 ルールーから実に40日。
 まる一ヵ月ひたすらに移動し続けて、アーカムとアンナはドリムナメア聖神国を横断した。
 いよいよ一行は、聖神の大地の最東端の都市へやってきた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...