異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家

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第三.五章 開拓! アマゾーナの里!

ここはどこ?

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 どうも。アマゾロリアです。
 ついにこの深緑の森を脱出する時がやってきました。

「聞きたいんですけど、ルルクス森林ってどこなんですか?」
「この森林はドリムナメア聖神国の西に広がってるんだ」
「ドリムナメア?」

 アンナを見やる。
 アンナは「トニス教会のお膝元だよ」とつぶやく。
 
「アーカムも聞いたことあるでしょ、トニス教会」
「ええ、まあ」

 大陸全土に広がるトニス教を広める組織のことだ。聖神トニスを絶対神とする一神教である。
 単純に『教会』と呼んだら、このトニス教会を示す。
 圧倒的な分布地域と信仰者の数を誇っている。
 
「他宗派の存在は絶対に許さない。ほかの神も認めない。そういう連中だよ」

 アンナは声をひそめて続ける。
 
「ドリムナメア聖神国はトニス教会が統治する国で、国民の98%がトニス教信者だからさ。大陸の西側に位置していて、複数の司祭たちが広大な領土を管理してる。教皇がそれらをまとめてドリムナメアという神に守られた国土を保っているんだよ」

 なるほど……すなわち普通の国ではないということか。

「大陸の西って具体的にどこらへんなんですか」

 オーレアへたずねる。
 地図を広げて見せてくれる。
 用意が良い。流石キャラバンのリーダー。

「君たちのローレシア魔法王国は大陸の中央分離した『ウィザーズ半島』に位置しているよ。一方でドリムナメア聖神国は大陸の最西端だ。そして、ルルクス森林はそんな聖神国の最西端だよ」

 地図を見る限りとんでもなく遠くにいることに気がつく。
 信じられない距離の移動だ。
 常識的な手段ではとても移動できない距離である。
 やはり、血界侵略の発動に巻き込まれたというのだろうか。
 だとしたら、絶滅指導者クトゥルファーンの思惑は成功したと言える。
 死んだあとも厄介な奴だ。

「どうやって戻れば……」
「まずはドリムナメアの最西端の町ルールーへ行き、第三聖都、第二聖都を経由して、ペグ・クリストファ都市国家連合へ。そこからウィザーズ半島へ入れるだろうね。アーケストレス魔術王国までいければ、あとは隣国のローレシアへ戻れるというわけだね」

 オーレアは指で地図面をなぞり説明してくれた。
 大陸の半分を横断する形になる。
 相当な時間がかかりそうだった。

 脱力して椅子に座りこむ。
 
 しかし、戻らねばなるまい。
 アルドレア家があるのだ。
 きっとアディもエヴァも、エーラもアリスも俺の失踪に困惑している。
 それに師匠に会わなければなるまい。
 あれだけタフなじいさんだ。 
 死んでいるとはとても思えない。
 ローレシアへ戻れば、必ず再会できるはずだ。

「わかりました」

 俺はキャラバンのツリーハウスを出る。

「アーカム」

 アンナに呼び止められる。
 一度足をとめ、ふりかえり「まだ里に残ってるんです。やれることをしようと思って」と言って、自分が最後の時間でできることはなにかを考えることにした。

 残された時間は4日。
 キャラバンの里滞在の日数だけだ。

「あたしも行く」

 アンナと一緒に里をまわる。
 霊木の間を繫ぐつり橋を歩いていると、いろいろなものが見える。

 畑を耕す子供立ち。
 部隊長に怒鳴られながら戦闘訓練に精をだす戦士たち。
 
 部屋にこもって勉強しているカティヤの姿も見つけた。
 よしよし。
 ちゃんと毎日単語練習しているな。

「アンナは川を流したいって言ってましたよね」
「まあね。でも、無理ならしかたないよ」
「たぶん、できますよ」
「できるの?」
「畑の灌漑水路を延長するっていう意味ですけどね。だから厳密に言えば川じゃないです」
「いいと思う。それやろうよ。あたしたちの最後の仕事にさ」

 というわけで、最後の4日間は、霊木の水脈を活用してジュブウバリ族の里に小川を通すことにした。
 それまで霊木の2本から水を引いていたのを、5本から引くことで、水の供給量は増えて、里をぐるっと一周めぐる水路を作ることができた。

 忙しくしていると、4日間はすぐに過ぎてしまった
 そうして最後の夜はあっという間にやってきた。
 
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