71 / 306
第三.五章 開拓! アマゾーナの里!
ここはどこ?
しおりを挟むどうも。アマゾロリアです。
ついにこの深緑の森を脱出する時がやってきました。
「聞きたいんですけど、ルルクス森林ってどこなんですか?」
「この森林はドリムナメア聖神国の西に広がってるんだ」
「ドリムナメア?」
アンナを見やる。
アンナは「トニス教会のお膝元だよ」とつぶやく。
「アーカムも聞いたことあるでしょ、トニス教会」
「ええ、まあ」
大陸全土に広がるトニス教を広める組織のことだ。聖神トニスを絶対神とする一神教である。
単純に『教会』と呼んだら、このトニス教会を示す。
圧倒的な分布地域と信仰者の数を誇っている。
「他宗派の存在は絶対に許さない。ほかの神も認めない。そういう連中だよ」
アンナは声をひそめて続ける。
「ドリムナメア聖神国はトニス教会が統治する国で、国民の98%がトニス教信者だからさ。大陸の西側に位置していて、複数の司祭たちが広大な領土を管理してる。教皇がそれらをまとめてドリムナメアという神に守られた国土を保っているんだよ」
なるほど……すなわち普通の国ではないということか。
「大陸の西って具体的にどこらへんなんですか」
オーレアへたずねる。
地図を広げて見せてくれる。
用意が良い。流石キャラバンのリーダー。
「君たちのローレシア魔法王国は大陸の中央分離した『ウィザーズ半島』に位置しているよ。一方でドリムナメア聖神国は大陸の最西端だ。そして、ルルクス森林はそんな聖神国の最西端だよ」
地図を見る限りとんでもなく遠くにいることに気がつく。
信じられない距離の移動だ。
常識的な手段ではとても移動できない距離である。
やはり、血界侵略の発動に巻き込まれたというのだろうか。
だとしたら、絶滅指導者クトゥルファーンの思惑は成功したと言える。
死んだあとも厄介な奴だ。
「どうやって戻れば……」
「まずはドリムナメアの最西端の町ルールーへ行き、第三聖都、第二聖都を経由して、ペグ・クリストファ都市国家連合へ。そこからウィザーズ半島へ入れるだろうね。アーケストレス魔術王国までいければ、あとは隣国のローレシアへ戻れるというわけだね」
オーレアは指で地図面をなぞり説明してくれた。
大陸の半分を横断する形になる。
相当な時間がかかりそうだった。
脱力して椅子に座りこむ。
しかし、戻らねばなるまい。
アルドレア家があるのだ。
きっとアディもエヴァも、エーラもアリスも俺の失踪に困惑している。
それに師匠に会わなければなるまい。
あれだけタフなじいさんだ。
死んでいるとはとても思えない。
ローレシアへ戻れば、必ず再会できるはずだ。
「わかりました」
俺はキャラバンのツリーハウスを出る。
「アーカム」
アンナに呼び止められる。
一度足をとめ、ふりかえり「まだ里に残ってるんです。やれることをしようと思って」と言って、自分が最後の時間でできることはなにかを考えることにした。
残された時間は4日。
キャラバンの里滞在の日数だけだ。
「あたしも行く」
アンナと一緒に里をまわる。
霊木の間を繫ぐつり橋を歩いていると、いろいろなものが見える。
畑を耕す子供立ち。
部隊長に怒鳴られながら戦闘訓練に精をだす戦士たち。
部屋にこもって勉強しているカティヤの姿も見つけた。
よしよし。
ちゃんと毎日単語練習しているな。
「アンナは川を流したいって言ってましたよね」
「まあね。でも、無理ならしかたないよ」
「たぶん、できますよ」
「できるの?」
「畑の灌漑水路を延長するっていう意味ですけどね。だから厳密に言えば川じゃないです」
「いいと思う。それやろうよ。あたしたちの最後の仕事にさ」
というわけで、最後の4日間は、霊木の水脈を活用してジュブウバリ族の里に小川を通すことにした。
それまで霊木の2本から水を引いていたのを、5本から引くことで、水の供給量は増えて、里をぐるっと一周めぐる水路を作ることができた。
忙しくしていると、4日間はすぐに過ぎてしまった
そうして最後の夜はあっという間にやってきた。
0
お気に入りに追加
588
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!
京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。
戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。
で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
黒いモヤの見える【癒し手】
ロシキ
ファンタジー
平民のアリアは、いつからか黒いモヤモヤが見えるようになっていた。
その黒いモヤモヤは疲れていたり、怪我をしていたら出ているものだと理解していた。
しかし、黒いモヤモヤが初めて人以外から出ているのを見て、無意識に動いてしまったせいで、アリアは辺境伯家の長男であるエクスに魔法使いとして才能を見出された。
※
別視点(〜)=主人公以外の視点で進行
20話までは1日2話(13時50分と19時30分)投稿、21話以降は1日1話(19時30分)投稿
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる