異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家

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第二章 怪物殺しの古狩人

13歳の誕生日

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 新暦3060年 冬一月

 しんしんと雪のふる夜だった。
 俺はアンナに呼び出されていた。

「あんたに贈り物を用意したの。これを受け取るか、捨てるかはあんた次第よ」

 そんな口上とともに、袋を渡される。
 
「ありがとうございます、アンナ」
「前もらったから。返しておこうと思ってね」
「開けてもいいですか?」
「だめよ」
「え?」
「先生のところに行ってからにしてよ」
「なんでですか」
「いいから。ほら、行こ」

 手を引かれて俺はつんのめりながら走りだす。
 やってきたのはバンザイデスで最も高級な食事処だ。

「待っていたよ、二人とも」

 師匠がすでに待っていた。
 アンナと並んで席につく。
 向かいの席で師匠は剣をとりだす。
 食事処なのに平気だろうか。

「授業で話した銀の剣だ」

 剣を受け取る。
 銀の剣。伝統的な狩人の武器だ。

「この剣は1,500年も昔から原型が変わっていない。太古より狩人が使ってきた武器だ。刃は剣気圧を通しやすく工夫され、血の魔術による吸血鬼の硬質皮を貫くのに適している。銀の輝きはあらゆる厄災を退ける効果がある」

 師匠はそう言って、銀の剣のもう一本をアンナへ。

「黒の狩人と白の狩人の最大の違いがなにかわかるかかな」
「厄災を狩る覚悟をしたかどうか、ですか」
「良い答えだ。白の狩人も勇敢だ。常人では倒せない怪物に挑むのだから。だがね、黒の狩人はより過酷な運命に身を投じることになる。迷えば敗れる。逃せば報復に来る。そうして武器すらもっていない狩人が自宅で家族もろとも殺される報告は決して少なくない」

 知性ある厄災の恐ろしさか。

「……とまあ、怖がらせるようなことばかり言ったが、それほどビクビクする必要はないよ。狩人協会の情報網は非常に優秀だ。人間に化けた厄災が狩人を探しまわれば、どこかで必ず足がつく。そういうマヌケな復讐者は近辺の狩人を複数動員して袋叩きさ。ほっほほ、つまり向こうも人類という強大な敵地に乗りこむ覚悟が必要と言うわけだ。そんなやすやすとは来れない」

 厄災にとっては群れ成す人間は恐いのか。

「協会装束は君たちが狩人になったら渡そう。というか、いまここにないのさ」
「銀の剣はあったんですね」
「それは私のお古だよ。狩人になったら新しい物を支給してもらうといい。もっと性能がよくなってるだろう。人間の技術は日進月歩だからねぇ」

 5日後だ。俺たちは人類保存ギルド:狩人協会に登録するため、王都へ出発することが決まった。
 今晩は師匠のおごりで食べ放題だった。
 
 これでひと段落つく。
 王都へ行けるのもいい。
 アルドレア家に帰るのはまたすこし遠くなるだろうが、みんな元気にしているとの話だし、それほど急がなくてもいいだろう。
 それよりも今は、レトレシア魔法魔術大学だ。
 そこで四式魔術を学び、ゲンゼの手がかりも探す。

 師匠と会った帰り道。
 雪に足跡をつけながら、静かに駐屯地へ戻る。

「ねえ、あたしの贈り物開けないの?」

 アンナに言われて包みをあらためることにした。
 中には古びた指輪が入っていた。
 緑色の綺麗な石がはまっている。

「これは?」
「風霊の指輪。あんた風が一番得意でしょ」
「ああ、まあ」

 魔法発動にアドバンテージを付与するのは杖だけではない。
 基本スペックは落ちるが、指輪やアクセサリー状のものが普及している。

────────────────
・消費魔力軽減20%
・魔力還元10%
・魔力装填量増加20%
(風属性式魔術の発動にかぎる)
────────────────

 最大火力は杖を手に持たなくても1.20倍か。
 リング状で携帯性にも優れているし悪くないな。
 
「品質は1等級だけど、あって悪い物ではないでしょ?」
「すごく嬉しいですよ」
「そう? よかった。その指輪、剣の柄にぴったりはまるよ」

 言われた通りはめるとピッタリだった。
 サイズを合わせて選んでくれたのか。
 剣を握りながら風魔術の威力が挙げられるのはありがたい。
 ただ、普通に指にはめてた方が使いやすいので人差し指に装備することにした。

「こんな良い物もらっちゃっていいんですか?」
「もちろん。あんたにはこれ貰ったから」

 アンナはアミュレットを胸元から「よっと」と取り出す。
 こらこら、最近なにかと女の子らしい造形になって来てるんだから、気を使ってくださいね。そういう無防備なことされると、ビンテージ童貞49世のおじさんはドキドキしちゃうから。て、え、俺って中身もう49歳なの? まじ光陰矢の如しすぎね?

「火除けのアミュレット。可愛いし役に立つ魔道具だったから、あたしも実用性のある贈り物を選んだだけよ」
「なるほど、でも、本当に嬉しいです。ありがとうございます、アンナ」
「……うん、別に」

 出会ってから3年。
 それなりに仲間としてふさわしい間柄になれた気がした。

「仲間っぽいですね、こういうの」

 ちょっと浮かれて言ってしまう。
 かつての俺はこんなくさい言葉嫌いだったが、今はそうでもない。
 ともに地獄の鍛錬を乗り越えて狩人流四段に至った同志だ。
 同じ釜の飯を食い、同じ屋根のしたで眠った。
 仲間という実に照れ臭い言葉の本質が、ようやく俺にもわかる時が来た──そんな感慨深い思いさえ抱いてしまう。

「そうだ、あたし、忘れ物思い出した」
「それじゃあ、僕も行きますよ。仲間ですしね」
「いいから。先帰ってて」
「え、でも僕たち仲間じゃ」
「一緒にいると恥ずかしい人になってるから離れてよ。あーもう、そういうとこウザいなぁ」

 アンナは耳まで赤くなって迷惑そうに言った。
 俺たちナカーマ……。

「じゃ、またあとで」

 アンナはマフラーを耳元まで隠す様にもちあげると、来た道を引きかえして行った。
 俺、恥ずかしい人になってたかな?

「仲間なのに……なぜだ?」

 今回のはふざけて言った訳じゃないのに。
 真剣に考えても答えは見つからなかった。
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