異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家

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第一章 再誕者の産声

属性適正

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 現在、春一月。
 新暦3051年の春一月である。

 1年の始まりが冬と考えられ、季節は冬→春→夏→秋と移ろいゆく。
 月の名前に春とついているが、温かいわけじゃない。
 体感的に春っぽくなるのは春二月からである。
 ちなみに春三月はすでに真夏のように暑い。
 ので、暦上の季節と、実際の季節はかなり相違がある。
 体感的に本当の春は春二月だけだ。
 本当の夏が春三月~夏一月。残りは冬だ。
 秋? そんなものを感じたことは一度もない。
 異世界は大さじの冬と、小さじの夏、間違えて紛れ込んだ春で構成されているのだ。

 とはいえ、そんな全体的に寒い日の多い一年も、今年も1/4がすでに経過した。
 
 4歳になった俺は変わらず精進していた。
 ≪ウィンダ≫と≪ウォーラ≫、そして≪ファイナ≫の訓練にはげむ日々だ。
 この3つしか練習していないのは、俺には土属性の適性がなかったからだ。

 多少なら使うことはできる。
 土属性式魔術でひざほどの高さの小山をつくるとか。

 でも、適性がないからそれが限界だ。
 だからといって、悲観する必要はまったくない。
 あれは1ヶ月ほど前になるだろうか──

 俺は書斎で難しそうな顔をするアディに質問をした。
 
「ん? 属性式魔術の適性? そんなの知ってどうするんだ、アーク」
「ちょっとした興味です。別に僕の魔術に役立てようとか、そういうんじゃないです。だって、ほら僕って魔術なんて勉強してないですからね」
「まあ、これくらいならいいか。こほん。よく聞けアーク」
「はい」
「お前にはな、風の魔力の適性がある」
「え、なんてわかったんですか?」
「ふふん、すごいだろ」

 アディにはじめて適正の話を聞いた時、こうやって言い当てられてびっくりしたものだ。

「このアディフランツ・アルドレアが何年魔術師やってると思ってるんだ。俺の目にはお前が優れた才能をもってることもまるわかりってわけだ」

 メガネの腹を中指でくいっとあげるアディ。

「父様、御託はいいです。理屈をおしえてください」
「お前ってたまに手厳しいよな……熟達した魔術師にはわかるってことさ。魔感覚っていうんだが、これは魔力を感じる第六感のことで……まあ、要するに、こうなんというか雰囲気で適性がわかるんだよ」
「そうなんですか。それじゃあ、町へ出て、すれ違う人みんなの適性を言い当てることもできますか?」
「それは難しいな。多くの人間はそもそも魔術適正をもってない。それに、俺と同じ属性適正の風以外の適正は吟味してようやくわかるってくらいなんだ」
「なるほど。では、父様はそれほど熟達した魔術師ではないということですね」
「お前ってたまに手厳しいよな。いや、ほんとにさ」

 てな感じで、ひと月ほど前に聞き込みをした。
 結果として、アディが俺に杖を6年がかりでプレゼントしようと思いいたった訳もわかった。

 アディには見抜かれていたんだ。
 俺が1歳の時点で、将来的に風の魔力を操れだろうことを。

 ちなみに、その時アディにはもうひとつ質問をした。

「適性属性が3つあるのって珍しいですか?」
「3つ? 珍しいなんてもんじゃないと思うが。すくなくとも俺は今まで一度も見たことがないな」
「そうですか。ありがとうございました」
「やけに礼儀正しいな……なにか企んでるのか?」
「まさか」

 てな感じの会話もあった。
 とアディが言っていたので、俺に3つの適性があるというのは、かなり珍しい事例であるらしいと判明した。
 才能があるみたいで、なんだか優越感がある。
 
 しかし、なぜ俺は3つも適性があるのだろうか。 
 なにか理由があるのか。

「いや、そもそも、適正ってなんだよ? なにが適性の有無をわける?」

 疑問に思ったが、どうにも実験方法を思いつかなかった。
 そもそも、適正と言うのはおそらく比較検討することで見える才能の有無のようなものだ。

 俺は土属性式魔術で土のお山をつくれる。
 もしまわりに魔術師がいて、そいつらにこんもりした土山が作れなければ、俺がもっとも土属性式魔術の適正があることになるだろう。

「魔術の再現能力の精度・威力、と仮定できるか」

 となると、俺も一概に3つの属性適正があるとは言えないかもしれない。

 俺はこれまで≪ウィンダ≫≪ウォーラ≫≪ファイナ≫を均等に練習してきた。
 魔導書には「発動詠唱式は必ず詠唱する必要がある」と記述があったが、いまでは無言のままでも、魔術を発動できるようになった。確実に練度はあがっている。この魔導書はやっぱり嘘ばかり載っている。

 そんな俺がもっとも得意なのは──

「やっぱり、≪ウィンダ≫、かなぁ」

 俺はそれぞれ同じだけの魔力をこめて、深い森のほうへ魔術を撃ってみる。
 もちろん両親にバレないように注意は怠らない。
 結果としては、一番≪ウィンダ≫が使いやすかった。
 そのほかさまざま調査を進めて、魔術師アーカム・アルドレアの適正を自己分析してみた。

          『基礎詠唱式』
        集積 生成 操作 発射
     火   B  B  B  B  
『属性』 水   A  B  B  A
     風   A+ A  A+ A+
     土   D  D  D  D

 風属性式魔術と水属性式魔術は、あまり差がない。
 もしどっちか選べと言われたら、風が得意、その程度の差だ。

 火と風に関しては差を感じた。
 微妙にだが、火の方は同じ魔力を使っても、気持ちパワーがでにくい。
 それに、扱いにくさのようなものがある。

 土に関しては言及することはない。
 土はいうこと聞いてくれない。嫌いだ。

 にしても、風か。
 さては当たりなのでは? 
 異世界ガチャに勝ったのではないか?
 どこでも戦えるなんて、芝とダートどっちも走れるの同じじゃないか。

 この日以来、やけに風属性に愛着が湧いたので、俺は重点的に才能を伸ばしてやることにした。
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