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エスタ再訪
しおりを挟む──10日後
エージェントGの言伝通り、俺たちは結晶ダンジョンへ戻って来ていた。
「加納さん、まだ約束の日付まで時間がありますね」
芽吹さんはそう言うと、意を決したように口を開いた。
「レベリング……してもいいですかね?」
「もちろんですよ」
なんでなどとは訊くまい。
俺はひとつ返事で約束の期日まで、芽吹さんのレベリングに付き合うことにした。
「あ、待ってください」
午後3時になってしまった。
俺は紳士なので、この時間になると5分15秒の仮眠を取ると決めているのだ。
「出ましたね。加納さんの謎」
ダンジョンハウスへ足を踏み入れ仮眠を取る。
目が覚めた時、目の前に見覚えのある顔があった。
「おや、ハウスマスター。また会いましたね」
「やはりカノウ君だったか!」
寝起き1番に猛烈に握手を求められた。
「聞いてくれたまへ、結晶ダンジョンを管理できるノウハウを持った者がいないからと、またこのダンジョンへの配属が決まったんだ!」
左遷されたり、戻って来たり、忙しい人だな、このハウスマスターも。
「まあ、ぶっちゃけると私がいく先々でダンジョンが崩壊するものだから、これ以上被害が広がらないように封じ込められてるだけなのだがね」
「封じ込め? でも、S級ダンジョンである『結晶』のほうが、ダンジョン崩壊が起きた時の被害は大きいのでは」
「そうとも限らない。十分な対策がされていればね」
ハウスマスターは得意げに指を鳴らす。
すると、カウンターの奥から助手の少女たちがでてきて、いかめしい大砲をガタゴトと運んできた。
「これは騎士団の最新兵器・魔導砲だ」
「魔導砲ですか。すごそうですね」
「すごいね。この魔導砲ならば以前暴れに暴れた『ザ・マーチ』の甲殻を破壊することができると証明されているからね。ネックはとんでもなくお高いことだ。まあ、またあんな大災害が起こるよりはいいけどね」
「魔導砲さまさまじゃないですか」
「はは、まだこれだけじゃない。エスタの町に騎士団の駐屯地が設置されることになったのだね、これが」
話によると、ジェスター王の崩御を受けて、就任した新王が「S級ダンジョン攻略に関する議定書」を元老院で批准した結果、『結晶』の攻略が国家をあげた大事業になったんだとか。
実はかねてよりS級ダンジョンという神聖なる迷宮への対策と攻略姿勢が問題視されていたらしく「S級ダンジョンとかもうソロ攻略家に頼ってたら1,000年経っても攻略できないっしょ」ということで、このような形になったんだとか。
これがエージェントGの言っていた”特別な攻略部隊”という戦力だろう。
秘密結社ダークスカイは、名前こそふざけているが、国家を動かすほどのおおきな力を持った組織のようである。
結果として、騎士団や公金で集められた攻略家たちがエスタの町にぞくぞくと集まってきており、10日後にはさっそく『第一次攻略』が予定されているらしい。
「芽吹さん、間に合わせましょう」
「はい、加納さん」
「あ、ところで、ハウスマスター」
「なんだね、カノウ君」
「査定をお願いできますか?」
「いいだろう、どれ」
俺は岩窟ダンジョンでたんまりと集めた虹色の魔力クリスタルをカウンターに置いた。
ハウスマスターは目を点にして「なんだね、このあからさまに高級な魔力クリスタルの数々は……」と虹色のクリスタルを手に取った。
「と、とりあえず査定してみようか……」
ハウスマスターは奥の資料室へひっこんでいき「これは伝説の魔力クリスタル、虹色の結晶……ッ!」と迫真の声をもらしていた。
以下、査定結果である。
小さな虹の魔力クリスタル×60個
20,000×60=1,200,000マニー
虹の魔力クリスタル×21個
40,000×21=840,000マニー
大きな虹の魔力クリスタル12個
80,000×12=960,000マニー
合計 3,000,000マニー
「ええ、なにそれぇぇ……」
ハウスマスターは算出された結果を見て、目を輝かせながらも「はじめての金額だ」と査定額にビビっていた。
とはいえ、円換算で300万円なので俺からすれば小銭もいいところだ。
庶民な生活を送る分には困らないので、これでいいのだが。
「す、すごいですよ、加納さん、お金が、お金がこんなに……!」
大興奮の芽吹さんにお金のを数えるのを任せて、俺はアーティファクトの数々をハウスマスターに見せた。
「ッ、こ、今度はいったいなにをするつもりだね!」
「そんな危ない事をする常習犯みたいに言わないでくださいよ。査定をしてほしいだけです」
深淵アーティファクト『深淵の狂想曲』
アーティファクト『七人の騎士』
アーティファクト『岩竜の魂』
深淵アーティファクト『深淵の画布』
これらが俺の持ち物で効果の判明していないアーティファクトたちだ。
これらを持ち込み、俺はハウスマスターに査定を依頼することにした。
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