上 下
39 / 46

エスタ再訪

しおりを挟む

 ──10日後

 エージェントGの言伝通り、俺たちは結晶ダンジョンへ戻って来ていた。

「加納さん、まだ約束の日付まで時間がありますね」

 芽吹さんはそう言うと、意を決したように口を開いた。

「レベリング……してもいいですかね?」
「もちろんですよ」

 なんでなどとは訊くまい。
 俺はひとつ返事で約束の期日まで、芽吹さんのレベリングに付き合うことにした。

「あ、待ってください」

 午後3時になってしまった。
 俺は紳士なので、この時間になると5分15秒の仮眠を取ると決めているのだ。

「出ましたね。加納さんの謎」

 ダンジョンハウスへ足を踏み入れ仮眠を取る。
 目が覚めた時、目の前に見覚えのある顔があった。

「おや、ハウスマスター。また会いましたね」
「やはりカノウ君だったか!」

 寝起き1番に猛烈に握手を求められた。

「聞いてくれたまへ、結晶ダンジョンを管理できるノウハウを持った者がいないからと、またこのダンジョンへの配属が決まったんだ!」

 左遷されたり、戻って来たり、忙しい人だな、このハウスマスターも。

「まあ、ぶっちゃけると私がいく先々でダンジョンが崩壊するものだから、これ以上被害が広がらないように封じ込められてるだけなのだがね」
「封じ込め? でも、S級ダンジョンである『結晶』のほうが、ダンジョン崩壊が起きた時の被害は大きいのでは」
「そうとも限らない。十分な対策がされていればね」

 ハウスマスターは得意げに指を鳴らす。
 すると、カウンターの奥から助手の少女たちがでてきて、いかめしい大砲をガタゴトと運んできた。

「これは騎士団の最新兵器・魔導砲だ」
「魔導砲ですか。すごそうですね」
「すごいね。この魔導砲ならば以前暴れに暴れた『ザ・マーチ』の甲殻を破壊することができると証明されているからね。ネックはとんでもなくお高いことだ。まあ、またあんな大災害が起こるよりはいいけどね」
「魔導砲さまさまじゃないですか」
「はは、まだこれだけじゃない。エスタの町に騎士団の駐屯地が設置されることになったのだね、これが」

 話によると、ジェスター王の崩御を受けて、就任した新王が「S級ダンジョン攻略に関する議定書」を元老院で批准した結果、『結晶』の攻略が国家をあげた大事業になったんだとか。
 実はかねてよりS級ダンジョンという神聖なる迷宮への対策と攻略姿勢が問題視されていたらしく「S級ダンジョンとかもうソロ攻略家に頼ってたら1,000年経っても攻略できないっしょ」ということで、このような形になったんだとか。
 
 これがエージェントGの言っていた”特別な攻略部隊”という戦力だろう。
 秘密結社ダークスカイは、名前こそふざけているが、国家を動かすほどのおおきな力を持った組織のようである。

 結果として、騎士団や公金で集められた攻略家たちがエスタの町にぞくぞくと集まってきており、10日後にはさっそく『第一次攻略』が予定されているらしい。 

「芽吹さん、間に合わせましょう」
「はい、加納さん」
「あ、ところで、ハウスマスター」
「なんだね、カノウ君」
「査定をお願いできますか?」
「いいだろう、どれ」

 俺は岩窟ダンジョンでたんまりと集めた虹色の魔力クリスタルをカウンターに置いた。
 ハウスマスターは目を点にして「なんだね、このあからさまに高級な魔力クリスタルの数々は……」と虹色のクリスタルを手に取った。

「と、とりあえず査定してみようか……」

 ハウスマスターは奥の資料室へひっこんでいき「これは伝説の魔力クリスタル、虹色の結晶……ッ!」と迫真の声をもらしていた。

 以下、査定結果である。

 小さな虹の魔力クリスタル×60個
  20,000×60=1,200,000マニー
 虹の魔力クリスタル×21個 
  40,000×21=840,000マニー
 大きな虹の魔力クリスタル12個
  80,000×12=960,000マニー
  
  合計 3,000,000マニー

「ええ、なにそれぇぇ……」

 ハウスマスターは算出された結果を見て、目を輝かせながらも「はじめての金額だ」と査定額にビビっていた。
 とはいえ、円換算で300万円なので俺からすれば小銭もいいところだ。
 庶民な生活を送る分には困らないので、これでいいのだが。

「す、すごいですよ、加納さん、お金が、お金がこんなに……!」

 大興奮の芽吹さんにお金のを数えるのを任せて、俺はアーティファクトの数々をハウスマスターに見せた。

「ッ、こ、今度はいったいなにをするつもりだね!」
「そんな危ない事をする常習犯みたいに言わないでくださいよ。査定をしてほしいだけです」

 深淵アーティファクト『深淵の狂想曲』
 アーティファクト『七人の騎士』
 アーティファクト『岩竜の魂』
 深淵アーティファクト『深淵の画布』

 これらが俺の持ち物で効果の判明していないアーティファクトたちだ。
 これらを持ち込み、俺はハウスマスターに査定を依頼することにした。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...