外れスキル【観察記録】のせいで幼馴染に婚約破棄されたけど、最強能力と判明したので成りあがる

ファンタスティック小説家

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怪物学会視察

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 ──数日後

 その日は晴れだった。
 澄み渡る快晴に祝福された日……というわけでは無い。

 すべては魔術の力だ──。

「おい、見ろよアレ」

 そう言って、常なら考えられもしない来訪者を指差すのは、ドラゴンクランの学生。

「っ、魔術協会じゃん。やばくね?」

 誰かがこそっと答えると、まわりにいた生徒たちは、皆が緊張の面持ちでその方向へ視線を向けた。

 ここはジャヴォーダン城の中庭。

 ジャヴォーダン城で、特別学生としての時間を過ごす生徒たちは、こんなよく晴れた日には″練習″をする。毎月行われる使役術の競い合い「月間決闘大会』のための練習だ。

 練習はジャヴォーダン城の中庭や魔術決闘用の教室で行われる。

 数日前にジャヴォーダン城入りしたノエルもまた、中庭に来て、魔術決闘の練習とやらを見学していた。

 現場に居合わせたノエルは、厳粛な雰囲気を漂わせて中庭に横のレンガ道を歩いていく集団を見ていた。

 紺色のローブをまとった上級貴族たちが、中庭で楽しそうに励む生徒たちへ向ける視線は、心地よいものではない。

 ノエルは特に目を合わせないよう、視線を切って、ササっと人混みに隠れた。

 見つかりたくなかったのだ。魔術協会からやってきた、その上級貴族だけには。

「血の一族、サウザンドラの王」
「っ」

 怯えるノエルの背後から、その声は彼女に話しかけた。

 ノエルが振り返ると、そこには異様な風貌の少女が立っていた。

 顔を縦に二分するように髪の毛の色が、灰色と黒で分かれている。

 ただ、面妖ではあるが、えらく美しい顔立ちをしていた。すれ違えば、誰しもが振り返り、ついつい視線を奪われてしまうだろう。

 白衣は着ていないが、白を基調とした動きやすそうな服を着ている。

 ノエルはなんとなく、怪物学会の人間な気がした。

「私はリン。あなたがノエルね?」
「あ、は、はい……どうして私の名前を?」
「あなたは怪物学会に友好的だから」
「はぁ」
「特に第一種の奨学金を受けてる子たちは、みんな怪物学会の庇護下にある」
「は、はぁ」

 リンと名乗った少女との、謎の会話にノエルは納得したのかしてないのか、曖昧な相槌を打つ。

「ノエル、あなたは学期途中でここへ来たからまだ必要な手続きを受けてない」
「え? そうなんですか? たくさん小難しい書類は書きましたけど……」

 リンはポケットからバッジを取り出す。
 金属製のバッジには、『怪物学会・研究員』と書かれており、ノエル・ラヴータ』と名前もしっかりと刻まれていた。

「これを付けてれば安全」
「名札ですか。確かにみんな付けてますね」

 ノエルは何故こんなタイミングで、人混みの中で、怪物学会側の人間が、直接名札を渡してきたのか不思議に思いつつも、受け取る。

 胸元につける。
 
 ふと、ノエルが腰につけていた小さな檻がガラガラと揺れた。

 ノエルは詠唱者でありながら、使役術の学徒でもある。特に彼女が専攻する、ゴースト系モンスターが、小さな檻の中には入っていた。

 ノエルは″ユーちゃん″と名付けた愛霊が、どうして騒がしくなったのか分からなかった。

 彼女がより優秀で、ゴースト系モンスターへの造詣が深ければ、このユーちゃんが、バッジに付与された守護霊の魔術に反応していると気が付けたかもしれない。
 
 幽霊は、善性の霊とは相まみえないものだ。

「はい、これでもう平気」
「平気って……名札がないとまずかったですかね。昨日は名札をもらってなかったので普通に構内を歩いてたんですけど……」
「そうね。これがないと死んでいたかも」
「死んでた?!」
「それは今日の話ね」
「ぇ? ど、どういう意味ですか??」
 
 ノエルは目を白黒させる。
 リンは無垢な詠唱者の問いには答えず、視線を中庭を闊歩する、血の一族の王へと向けた。



 ─────────────────


 アルバートは指をつまんで離して、空間にアナザーウィンドウを表示する。

 ───────────────────

 アルバート・アダン
 スキル:【観察記録Ⅴ】
 レベル100+85(ex)
 体力50/2500
 魔力7,650/1,000,000
 スタミナ124/3710

 ───────────────────
 
 ウィンドウを横から眺めていたユウは、表示されるマトモじゃないステータスに顔をしかめた。

 日頃から暗殺者の警戒をするため、アルバートの影に潜むユウは、彼が穏やかな休息をとっているところをしばらく見ていなかった。

 ただ、休まずして活動を続けられる人間などいない。

 ユウは自分の知らないところで、アルバートはきっと休んでるのかと思っていた。

 アナザーウィンドウのステータスは、ユウのごく当たり前の想像が、アルバートの非常識さに砕かれたことを示していた。

「……」
「安心しろ。最近、睡眠をとった」
「マスター、exって、何」
「他の人間が持ち得ないレベルだ」
「……。?」
「二段階目の証ということだ」
「さっぱりわからない。魔術師じゃなくてもわかるように言って欲しい」

 ユウは初めて見せてもらったアルバートのアナザーウィンドウを指差して抗議するように言う。

 しかし、アルバートはそれに対して「また今度だ」と軽くあしらうだけで、すぐにアナザーウィンドウを閉じてしまった。

「客人が来てる」

 そう言い立ち上がると、アルバートは「リンを守ってやれ」と言う。

 ユウはこくりと頷き、久しぶりの護衛対象の更新に新鮮味を感じながら、部屋の影に溶けるように姿を消した。

 対暗殺者を見送り、アルバートは椅子にかけておいた白衣と名札を手に取り、研究室をあとにする。部屋を出たところで、正面に立つ老紳士と顔を合わせる事となった。

「アルバート様、魔術協会の視察団がいらっしゃいました」
「わかった。すぐに迎えよう。向こうも俺に会いたくて仕方ないはずだ」
「よろしいのですか」
「なにがだ」
「協会とは近頃、”揉め事”が絶えないようですが」
「怪物学会と魔術協会の間にはなんのトラブルもない──少なくとも今日まではそういう事になっている」

 アルバートは、アーサーの瞳を見つめる。
 アーサーは憂いの表情をして「もう休まれてもよろしいのでは」と、珍しくも主人の意向に提案するように言った。

 アルバートはずっと昔からついてきてくれた彼の、まるで本当の祖父からのような穏やかな言葉に逡巡する。

 しかし、彼の意思が変わることはなかった。
 
「平穏を望むならば、それに向かって進まなければならない。裏切者には死を。悪意には制裁を。攻撃には報復を。そして、怨敵には後悔を、だ」
「やはり、アルバート様はエドガー様によく似ておられます。本当にそっくりです」
「……。もう行く。魔術協会のやつらに勝手なことをさせるな」

 アルバートは最後にそれだけ言い残して、歩き去っていった。
 アーサーは主人の背中に、在りし日の偉大な怪物学者の姿を幻視しながら、「かしこまりました、アルバート様」と深々と頭をさげた。


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