外れスキル【観察記録】のせいで幼馴染に婚約破棄されたけど、最強能力と判明したので成りあがる

ファンタスティック小説家

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帰還

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 ──数週間後

 アダンの遠征隊はラ・アトランティスでの様々な仕事を終えた。

 貿易ギルドとの契約。
 船乗りたちの雇用。
 冒険者ギルド経由での、国からのクラーケンの討伐報酬を受け取り。

 アダンの躍進を間近で見ていた港湾都市の商人たちは、それぞれが、この数週間の間で、個人的にアルバートに会いたがった。

 アルバートは心良く彼らに応接し、複数の商談を成立させ、ジャヴォーダンに次いで、ラ・アトランティスでの存在感を高めた。

 この都市には貴族が少ない。
 代わりに街を支配するのは商人たちだ。

 そんな商人たちの信頼を買ったアルバート──魔術家アダンは、実質的にごくわずかな期間で都市の支配者となっていた。

 今日は、数々の飛躍をこなした遠征隊が、ジャヴォーダンへと帰還する日だ。

 同行する事になったさかな博士は、港に集められたアダンの馬車を、楽しそうに眺めてはしゃいでいる。

 使用人たちを困らせ、メイドたちに汚物を見る目でにらまれているのは気にしてない。

「よかったの、マスター」
「何がだ」

 ユウは心配そうな顔をする。

「あれは、敵」
「お前もかつてはそうだった」
「私はプロ、彼は違う。狂人、否、変態」
「複製できない以上、仲間に引き入れるしかない」

 アルバートは怪書の『スーパーナチュラル』の項目を開く。

 そこに描かれた生成コストは、一言で言えば異質であった。
 『100,000,000』という数字を、わずかに上下し続けており、生成コストが定まっていないという破天荒ぶりである。

 そもそも、桁がおかしい。

 現在のアルバートの魔力量の最大値は10,000を突破し、すべての魔力を使い切った場合は、魔力が全回復するのに、2日もかかるようになってしまった。

 凡才の魔術師ではとっくに成長限界が来てもおかしくない領域だ。

 しかして、そんな魔力量オバケのアルバートをもってして、未知のモンスター『スーパーナチュラル』の召喚は困難を極める。

 ゆえに、スーパーナチュラルに対する理解を深めるには、現存するスーパーナチュラル──さかな博士を味方にするしかなかった。

「港は手に入れた。興味深い聖遺物も拾った。さかな博士も、わずかに理性が残ってると判断できた」
「理性……?」
「ほんの少し、だけだがな」
「でも、彼はクズ」
「知ってる。クズ人間だが、利用価値はある。よくいる壊れた魔術師だ。だからこそ──」

 アルバートは馬車に積んだ水槽でニコニコしてる人魚に微笑み返す。

「スーパーナチュラルが消えると、人体変態させられた個体にどんな影響が出るかわからん。魔術研究の犠牲になった、こいつには少なくとも安らぎを得る資格がある」
「もっともらしい言葉ですけど、アルバート様……結局、その子連れて行くんですね…」
「放っておかない。それに魔術的価値が高い。彼女は目の届くところに置いておきたいんだ」
「本当にそれだけですか?」
「あと……懐かれたからな。仕方なくだ」
「本当にそれだけなんですか?」

 ティナの視線が鋭い。

「こほん。それじゃ、ジャヴォーダンに帰ろうか」
「アルバート様、ティナはこの質問をはぐらかしたことを忘れませんよ」

 ティナはアルバートの袖をひっぱり、ぷくーっと頬を膨らませた。

「パッパラパラあ~っ、さあさあ、アルバートくうん、みんなを馬車の中へ乗せたまへぇ~! ワッチが炸裂するよぉーん、にょにょにゃにゃー、どこからかキャッツッ!!」

「……アルバート様、本当にあの変なおじさん連れて行くんですか?」

 さかな博士の狂った号令で、馬車へ、使用人全員が乗り込んだ。

 さかな博士は、白衣の袖をまくしあげ「我が魔術の深きを見たまへ──」と、低い声でつぶやくと、刻印を青白く輝かせた。

 魔術の発動だ。

 彼は、大きく手を振って、走りだす。
 同時に馬車列も、彼と並走して走りだす。

 向かう先は、港の端──すなわち海だ。

「え?! え?! ゔぇええ?! あ、あああ、アルバートしゃまぁあああ!? 落ちま、おち、海に向かってますよッ?!」
「落ち着け」
「助けてくだしゃいっ! あのじいさん、本当にイかれて、あがああああっ、落ちるぅうううううッ!」
「うるせぇ」

 力一杯抱きつくティナの事を、頭を撫でて落ち着かせながら、アルバートは正面を見据える。

 馬車の列は、さかな博士を先頭に、次々と数メートル下の海面に突っ込んでいった。

 

─────────────────────────────────────




 ──ジャヴォーダン近郊・アルバート湖

 静かな湖のほとりに黒服の人物たちが集まっていた。

 アダン家執事長アーサー率いる、戦闘訓練を施された近衛執事隊たちだ。

 かつてはアンデットが自然発生する地獄のような場所だったが、いまでは湖のすべてのアンデットが、アルバート・アダンの使役下におかれた事で、危険は一切なくなった。

「そろそろですね」

 老齢の紳士──アーサーはモノクルの位置を直し、懐中時計を胸元にしまう。

 すると、

 湖面が下から爆発した。

 飛び出してきたのだ、馬車が。
 それも一つでは無い。
 二つ、三つ──否、それは隊列だ。

 びしょ濡れの馬車は計25台出てくると、隊列は湖のほとりに止まった。

 馬車のうちのひとつが開く。
 近衛執事隊とアーサーは、すぐさま姿勢を正しくし、主人の帰還を迎えた。
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