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664・最強の魔導 前
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クロイズを見送った私達は再度遺跡の内部へと足を踏み入れた。
堂々と正面から入ったのにも関わらずゴーレムの一つも出てくる様子はない。それだけでも十分不気味な感じなのに、外とは違って中には静寂が満ちていた。
あの時戦った状態のまま残っていて、本当にジフ達が生きているのか疑問に感じるほどだ。
「……なんだか静かですね」
「気をつけろよ。いつ襲ってくるかわからないんだからな」
クロイズを見送ったからだろうか、ヒューは気を引き締めた顔をしている。
「ですが――」
『【カノン】』
ジュールの言葉を遮るように聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「みんな散開!」
大声で指示を飛ばして自分も正面から横にずれるようにステップを踏んで避ける。それから数瞬経ってから大きな光線が私達がいた場所を焼き払う。
「【プロトンサンダー】!」
『【チェイス】』
光線の射線から砲台の位置を予測して反撃を行うと、今度は左右から三つずつ細長い光線が襲いかかってきた。
「ちっ、こいつも追跡してきやがる!」
避けた途端に曲線を描いて追ってくる光線に舌打ちをするヒューを横目に【フリーズレイン】を発動させて光線の動きを阻害する。幾つか当たった途端威力と速度が落ちるところを見ると、あまり強い魔導ではないのだろう。
「随分な歓迎の仕方じゃない。ジフ」
『気安く呼ばないでもらいたいな。劣等種風情が』
名前を呼ぶと案の定反応があった。彼らは私達の事を下に見ているから凄く威圧的だ。
「はっ、調子に乗りすぎて死にかけてる馬鹿な種族に言われたくはねぇな」
『……図に乗るなよ。【ランチャー】!』
ガゴン、という音共に中くらいの大きさの光の弾丸が四つ程襲い掛かってきた。さっきの【チェイス】とはまた違う。幾つ引き出しがあるのやら。
「はっ! 【ゲイルスラッシュ】!」
ヒューは苛立ちを紛らわすように風の刃を放って【ランチャー】を迎撃する。光の弾丸は真っ二つになって左右に分かれながらも爆発する。剣で防いでいたらダメージを受けていただろう。
「姿を見せたらどう?」
『ふん、そんなに姿がみたいのならばここまで来るがいい。来れるものならな! 【プリズン】【カノン】【ランチャー】【チェイス】!!』
ジフの声以外が聞こえてきてその魔導に応じた力が顕現する。檻を上手く避けても大きな光線がこちらに迫ってきて、それをなんとか回避してもまるで見透かしたかのように光弾が襲い掛かる。
「【カラフルリフレクション】!」
檻や光線が終われば防御の魔導で防げる。【ランチャー】が薄い防御膜に触れるとそれを優しく包み込んで発動者に跳ね返す……のだけど、光弾が飛んできた方向にそのまま帰っていった。残った【チェイス】と呼ばれていた追跡する光線も同じように跳ね返すけれど、あの魔導を発動させる為に使用された魔導具が壊れるだけまだマシだけど、どれほど効果があるか――
『【ランチャー】! 【カノン】!』
『【ショット】! 【バリスタ】!』
――全く効果はなかったようだ。いくらでも替えが効くという事なのだろう。
「きゃああ!?」
「ジュール!」
徐々に弾幕が厚くなって、避け続ける事に限界が見え始めたころ。ジュールの悲鳴と雪風の声が聞こえた。様子が気になるけれどこっちも今はそれどころではない。
「【プロトンサンダー】!」
互いの光線がぶつかりあって激しい爆発が引き起こされる。相殺したかと思ったら新しく加わった大きな光の矢が襲い掛かって【カラフルリフレクション】の膜を貫通する。上半身を動かして軌道から外れる事は出来たけれど、次いで小さな弾丸が幾つも飛んでくる。
「ああもう! しつこい!」
猫剣を抜いて命中する軌道を取っている弾丸だけ防ぎ、斬り捨てる。なんとか潜り抜けた先に一呼吸入れる間が出来たけれど、こうも攻撃が激しかったら他人を気にしている余裕もない。
明らかにジリ貧になる事は見えていて、私はともかくジュール達は限界が近いはずだ。
――あまり使いたくはなかったけれど、手段は選んでいられない!
「【ガシングフレア】!」
毒霧に光線を遮断することは出来ない。だけどその後の爆発なら話は別だ。雨のように襲い掛かる光線を一時的ではあるものの、食い止めることに成功する。
「全員私の後ろに下がりなさい!!」
また攻撃で声が聞き取りにくくなる前に指示を出して、返事を待たずに魔導に集中する。鮮明なイメージと膨大な魔力。その全てを注ぎ込む。このまま遺跡のことを気にしていては私以外死んでしまいかねない。もう私には……それが耐え切れるものではなくなっていた。
「滅びなさい。一欠片も残さず!! 【エアルヴェ・シュネイス】!!」
解放されたそれは世界のモノクロに染め上げる。恐らく今、空にひび割れた空間が生み出されているはずだ。
『なんだ……? 何が起きている!?』
狼狽する声。彼らの顔が今なら容易く思い浮かぶ。既に始まってしまったものを止めることはできない。今、私は……どうしようもなく本気だった。
堂々と正面から入ったのにも関わらずゴーレムの一つも出てくる様子はない。それだけでも十分不気味な感じなのに、外とは違って中には静寂が満ちていた。
あの時戦った状態のまま残っていて、本当にジフ達が生きているのか疑問に感じるほどだ。
「……なんだか静かですね」
「気をつけろよ。いつ襲ってくるかわからないんだからな」
クロイズを見送ったからだろうか、ヒューは気を引き締めた顔をしている。
「ですが――」
『【カノン】』
ジュールの言葉を遮るように聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「みんな散開!」
大声で指示を飛ばして自分も正面から横にずれるようにステップを踏んで避ける。それから数瞬経ってから大きな光線が私達がいた場所を焼き払う。
「【プロトンサンダー】!」
『【チェイス】』
光線の射線から砲台の位置を予測して反撃を行うと、今度は左右から三つずつ細長い光線が襲いかかってきた。
「ちっ、こいつも追跡してきやがる!」
避けた途端に曲線を描いて追ってくる光線に舌打ちをするヒューを横目に【フリーズレイン】を発動させて光線の動きを阻害する。幾つか当たった途端威力と速度が落ちるところを見ると、あまり強い魔導ではないのだろう。
「随分な歓迎の仕方じゃない。ジフ」
『気安く呼ばないでもらいたいな。劣等種風情が』
名前を呼ぶと案の定反応があった。彼らは私達の事を下に見ているから凄く威圧的だ。
「はっ、調子に乗りすぎて死にかけてる馬鹿な種族に言われたくはねぇな」
『……図に乗るなよ。【ランチャー】!』
ガゴン、という音共に中くらいの大きさの光の弾丸が四つ程襲い掛かってきた。さっきの【チェイス】とはまた違う。幾つ引き出しがあるのやら。
「はっ! 【ゲイルスラッシュ】!」
ヒューは苛立ちを紛らわすように風の刃を放って【ランチャー】を迎撃する。光の弾丸は真っ二つになって左右に分かれながらも爆発する。剣で防いでいたらダメージを受けていただろう。
「姿を見せたらどう?」
『ふん、そんなに姿がみたいのならばここまで来るがいい。来れるものならな! 【プリズン】【カノン】【ランチャー】【チェイス】!!』
ジフの声以外が聞こえてきてその魔導に応じた力が顕現する。檻を上手く避けても大きな光線がこちらに迫ってきて、それをなんとか回避してもまるで見透かしたかのように光弾が襲い掛かる。
「【カラフルリフレクション】!」
檻や光線が終われば防御の魔導で防げる。【ランチャー】が薄い防御膜に触れるとそれを優しく包み込んで発動者に跳ね返す……のだけど、光弾が飛んできた方向にそのまま帰っていった。残った【チェイス】と呼ばれていた追跡する光線も同じように跳ね返すけれど、あの魔導を発動させる為に使用された魔導具が壊れるだけまだマシだけど、どれほど効果があるか――
『【ランチャー】! 【カノン】!』
『【ショット】! 【バリスタ】!』
――全く効果はなかったようだ。いくらでも替えが効くという事なのだろう。
「きゃああ!?」
「ジュール!」
徐々に弾幕が厚くなって、避け続ける事に限界が見え始めたころ。ジュールの悲鳴と雪風の声が聞こえた。様子が気になるけれどこっちも今はそれどころではない。
「【プロトンサンダー】!」
互いの光線がぶつかりあって激しい爆発が引き起こされる。相殺したかと思ったら新しく加わった大きな光の矢が襲い掛かって【カラフルリフレクション】の膜を貫通する。上半身を動かして軌道から外れる事は出来たけれど、次いで小さな弾丸が幾つも飛んでくる。
「ああもう! しつこい!」
猫剣を抜いて命中する軌道を取っている弾丸だけ防ぎ、斬り捨てる。なんとか潜り抜けた先に一呼吸入れる間が出来たけれど、こうも攻撃が激しかったら他人を気にしている余裕もない。
明らかにジリ貧になる事は見えていて、私はともかくジュール達は限界が近いはずだ。
――あまり使いたくはなかったけれど、手段は選んでいられない!
「【ガシングフレア】!」
毒霧に光線を遮断することは出来ない。だけどその後の爆発なら話は別だ。雨のように襲い掛かる光線を一時的ではあるものの、食い止めることに成功する。
「全員私の後ろに下がりなさい!!」
また攻撃で声が聞き取りにくくなる前に指示を出して、返事を待たずに魔導に集中する。鮮明なイメージと膨大な魔力。その全てを注ぎ込む。このまま遺跡のことを気にしていては私以外死んでしまいかねない。もう私には……それが耐え切れるものではなくなっていた。
「滅びなさい。一欠片も残さず!! 【エアルヴェ・シュネイス】!!」
解放されたそれは世界のモノクロに染め上げる。恐らく今、空にひび割れた空間が生み出されているはずだ。
『なんだ……? 何が起きている!?』
狼狽する声。彼らの顔が今なら容易く思い浮かぶ。既に始まってしまったものを止めることはできない。今、私は……どうしようもなく本気だった。
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