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660・決着?
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ジフとの戦いが終わったのはいいけれど、ジュールを閉じ込めた檻は未だに解除される様子はない。既に他の幹部も倒しているみたいなのにこれはおかしい。発動者が死ねば魔導は解除される。つまりまだ【プリズン】を使用した者は生きている……という事になる。
「ど、どうしましょう……」
ジュールも一応魔導を発動させてなんとか破壊しようとしているみたいだけど、全く効果がない。かなり頑丈な檻で作られているようで苦労している様子だった。
「ジュール。離れていて」
私の魔導でなんとかしてもいいけれど、あまり強い威力だと中の彼女も消し炭にしかねない。残った手段は猫剣で何とか切断できないか試してみる事だった。
大人しく出来るだけ檻の奥に下がったジュールに一度頷いて猫剣で斬ってみる。あの【ウォール】で生み出した壁でも容易く切断する事が出来たこれが、たかだか檻で作られた鉄の棒をなんとか出来ないはずがなかった。
檻は無事に斬る事が出来たおかげでジュールは嬉しそうに外へと出てきた。
「ありがとうございます!」
嬉しそうに飛び跳ねていたジュールだったけど、ひとしきり喜んだ後は気持ちが沈んだように落ち込んでいた。
「どうしたの?」
「最後の戦いでは役に立てなかったから落ち込んでいるのですよ。実際僕とヒューも助ける事が出来ませんでしたから……」
申し訳なさそうに頬を掻く雪風の言葉でようやく合点がいった。あまり気にしなくてもいいのに……と言っても無駄なのだろう。ジュールも雪風も私の役に立とうと頑張ってくれていたのだから。
「でもこれで……終わったのですね」
感慨深そうにしみじみと呟いたそれで徐々に実感が湧いてきた。ジフが最後に意味深な事を言っていたけれど、今何もしてこない以上終わったと考えても問題ないだろう。そう思うと気持ちが自然に上がってきた。
「帰りましょう。私達の場所に」
――
全員で遺跡の外に出た私は、どこか晴れ渡る気持ちだった。まだ地下の世界でしかないけれど、これで地上に戻ればさぞかし気分が良いだろう。そんな事を想っていた時。
『ふ、ふふふふ、ははははは! 随分気分がよさそうではないか』
どこかから聞こえてきた声に思わず歩みを止める。周囲を見回しても誰もいない。それなのに確かに声が聞こえてくる。
「ちっ、どこにいやがる!」
『ふふふ、まだ気付かないのか? ここだ』
ここだ……と言われてもよくわからない。特にめぼしいものも存在しないし、強いて言うなら遺跡ぐらいしか――
「まさか……遺跡の中にまだ残っている?」
『ふふ、気付くのが遅いな。よく今まで生き残れてこれたものだ』
「あの中にはもう何も残っていないはずだ!」
『そう思い込んでいただけだ。我らは最初から遺跡の中にいた。そして――』
大きな揺れが再び発生して立っていられなくなるほどの振動を与えてくる。地面に伏せて様子を見る事になった私達は、しばらく耐え続ける事になって……ようやく揺れが収まると同時にその変化に気付いた。
「な、なにこれ……?」
ジュールが呆然と呟く程の意外性。それは今までのどんな出来事よりも驚きに満ちていた。まず私達がいたはずの遺跡がなくなっていた。いや、正確には宙に浮いているようだ。
そこにあったのは巨大な……空を飛ぶ何か。具体的に何も言えないのだけど、遺跡の入り口は既にはるか遠くにある。
『ふふふ、残念だったな。お前達が帰る場所は消えてなくなる。跡形もなくな!!』
ジフの声が空から降ってくるようだ。
「くそ……まさか空を飛ぶなんてよ」
「だけどここはずっと地下ですよ? とても空を飛ぶなんて……」
確かにここは地下で到底空へと飛べるような場所じゃない。それを覆すのは地下の天井が大きく開いていく様子だった。大きな魔方陣みたいなものが表れていて、その魔方陣に魔力を注ぐことによって使用できる仕組みになっているようだ。だけどそんな空を飛ぶ兵器の上が開く造りになっているなんて……まるで最初から仕組まれているようだ。
「……どうしますか?」
「追いかけるしかないでしょう。まずは地上に行きましょう」
天井はどんどん開いて行って空を浮く兵器はなんなく浮上していく。このまま行ったら間違いなく地上の空を舞う事になるだろう。だったらその前に乗り込むしかない。まだ地下にいる今がチャンスという訳だ。
「……わかりました。何があってもティア様をあの場所にお連れいたします!」
「そうするしかないみたいだな。俺達より姫様が行ってくれた方が確実だろう」
「僕達が道を切り拓いてみせます!」
各々納得してくれたようで、今まで温存していた魔力を可能な限り身体強化に回す。あの飛行物体が地上の空へと到達する前にこちらも上に戻ってあれに乗り込まないと……。そんな気持ちが否応なく高まっていく。
陽の光も差さない地の底から一変。今度はさんさんと太陽の光が降り注ぐ場所へといかなければいけない。
あちらこちらと振り回されている気もするけれど……。
これが終われば概ね解決したと同じ。そう思って新たに気を引き締める事で気合を入れるのだった。
「ど、どうしましょう……」
ジュールも一応魔導を発動させてなんとか破壊しようとしているみたいだけど、全く効果がない。かなり頑丈な檻で作られているようで苦労している様子だった。
「ジュール。離れていて」
私の魔導でなんとかしてもいいけれど、あまり強い威力だと中の彼女も消し炭にしかねない。残った手段は猫剣で何とか切断できないか試してみる事だった。
大人しく出来るだけ檻の奥に下がったジュールに一度頷いて猫剣で斬ってみる。あの【ウォール】で生み出した壁でも容易く切断する事が出来たこれが、たかだか檻で作られた鉄の棒をなんとか出来ないはずがなかった。
檻は無事に斬る事が出来たおかげでジュールは嬉しそうに外へと出てきた。
「ありがとうございます!」
嬉しそうに飛び跳ねていたジュールだったけど、ひとしきり喜んだ後は気持ちが沈んだように落ち込んでいた。
「どうしたの?」
「最後の戦いでは役に立てなかったから落ち込んでいるのですよ。実際僕とヒューも助ける事が出来ませんでしたから……」
申し訳なさそうに頬を掻く雪風の言葉でようやく合点がいった。あまり気にしなくてもいいのに……と言っても無駄なのだろう。ジュールも雪風も私の役に立とうと頑張ってくれていたのだから。
「でもこれで……終わったのですね」
感慨深そうにしみじみと呟いたそれで徐々に実感が湧いてきた。ジフが最後に意味深な事を言っていたけれど、今何もしてこない以上終わったと考えても問題ないだろう。そう思うと気持ちが自然に上がってきた。
「帰りましょう。私達の場所に」
――
全員で遺跡の外に出た私は、どこか晴れ渡る気持ちだった。まだ地下の世界でしかないけれど、これで地上に戻ればさぞかし気分が良いだろう。そんな事を想っていた時。
『ふ、ふふふふ、ははははは! 随分気分がよさそうではないか』
どこかから聞こえてきた声に思わず歩みを止める。周囲を見回しても誰もいない。それなのに確かに声が聞こえてくる。
「ちっ、どこにいやがる!」
『ふふふ、まだ気付かないのか? ここだ』
ここだ……と言われてもよくわからない。特にめぼしいものも存在しないし、強いて言うなら遺跡ぐらいしか――
「まさか……遺跡の中にまだ残っている?」
『ふふ、気付くのが遅いな。よく今まで生き残れてこれたものだ』
「あの中にはもう何も残っていないはずだ!」
『そう思い込んでいただけだ。我らは最初から遺跡の中にいた。そして――』
大きな揺れが再び発生して立っていられなくなるほどの振動を与えてくる。地面に伏せて様子を見る事になった私達は、しばらく耐え続ける事になって……ようやく揺れが収まると同時にその変化に気付いた。
「な、なにこれ……?」
ジュールが呆然と呟く程の意外性。それは今までのどんな出来事よりも驚きに満ちていた。まず私達がいたはずの遺跡がなくなっていた。いや、正確には宙に浮いているようだ。
そこにあったのは巨大な……空を飛ぶ何か。具体的に何も言えないのだけど、遺跡の入り口は既にはるか遠くにある。
『ふふふ、残念だったな。お前達が帰る場所は消えてなくなる。跡形もなくな!!』
ジフの声が空から降ってくるようだ。
「くそ……まさか空を飛ぶなんてよ」
「だけどここはずっと地下ですよ? とても空を飛ぶなんて……」
確かにここは地下で到底空へと飛べるような場所じゃない。それを覆すのは地下の天井が大きく開いていく様子だった。大きな魔方陣みたいなものが表れていて、その魔方陣に魔力を注ぐことによって使用できる仕組みになっているようだ。だけどそんな空を飛ぶ兵器の上が開く造りになっているなんて……まるで最初から仕組まれているようだ。
「……どうしますか?」
「追いかけるしかないでしょう。まずは地上に行きましょう」
天井はどんどん開いて行って空を浮く兵器はなんなく浮上していく。このまま行ったら間違いなく地上の空を舞う事になるだろう。だったらその前に乗り込むしかない。まだ地下にいる今がチャンスという訳だ。
「……わかりました。何があってもティア様をあの場所にお連れいたします!」
「そうするしかないみたいだな。俺達より姫様が行ってくれた方が確実だろう」
「僕達が道を切り拓いてみせます!」
各々納得してくれたようで、今まで温存していた魔力を可能な限り身体強化に回す。あの飛行物体が地上の空へと到達する前にこちらも上に戻ってあれに乗り込まないと……。そんな気持ちが否応なく高まっていく。
陽の光も差さない地の底から一変。今度はさんさんと太陽の光が降り注ぐ場所へといかなければいけない。
あちらこちらと振り回されている気もするけれど……。
これが終われば概ね解決したと同じ。そう思って新たに気を引き締める事で気合を入れるのだった。
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