615 / 676
615・竜型兵器
しおりを挟む
相対するそれを眺めていると自分の小ささが改めて実感できる。しかも聖黒族というのは幼さが残りやすい種族だから尚更だ。そんなのが五体もいるのだから少し感心してしまう。よくもこんなものを誰にも知られずに大事にとっておいたな……と。
「さて、と……」
どう戦うか。首の長い竜で翼も生えているけれど……たたんだまま飛ぶ気配がないところからワイバーンのように自由に空を飛ぶことは出来ないと推察できる。生物というより誰かに作られた兵器だからそういうところまで気が回らなかったのかもしれない。
以前に戦った狼のゴーレム――クーティノスと比べると遥かに大きいから武器による攻撃はあまり効果がないだろう。ということは必然的に魔導に頼るしかない。元よりそういう戦い方しか出来ないのだけどね。
「……【トキシックスピア】」
結構悩んだ末に以前にゴーレムの身体を溶かした酸性の強い毒の槍を放つ事にした。分割したら毒性が弱まる可能性があったから一発に魔力を込めて解き放つ。真っ直ぐ竜の一体に向かっていく。反撃されるかもしれないといつでも対応できるように身構えていた……けれど、特に何の反応もない。むしろ私に気付いていないぐらいこちらを気にも留めていない。
長い首に当たった【トキシックスピア】はじゅわじゅわと音を立ててゴーレムの材料を溶かしていく。あまりにも無防備で本当に動いているのか疑問に思えてきたけれど、その理由も納得出来た。
「なるほどね」
ほとんど溶けていない上に攻撃されたことに気付いたのかその顔がゆっくりとこちらを向いていた。それも五体全部に。
「ガギャアアアアア!!」
耳の奥底まで響くような雄叫びと同時に襲い掛かってくる。相変わらず魔導などの攻撃は出来ないみたいだ。竜族特有のブレス攻撃もないし、動作もクーティノスよりは遅い。身体の大きさと頑丈さと引き換えに俊敏性を失った……そんな感じだろう。なら問題ない。
一斉にこちらを敵として視認してきた首長竜共はその首を活かして振り回してくる。一度、二度と襲い掛かってくる首をしゃがんで避け、魔導で身体能力を強化して跳んで避ける。
「【プロトンサンダー】!」
私の十八番である魔導を解き放つと、その中の一つが雷の光線の中に飲み込まれて行った。
最大限魔力を込めた一撃は流石に耐え切れなかったのだろう。魔導が収まると頭と首が吹き飛んだ無残な姿を晒していた。
「まずは一つ」
これで問題なく処理できただろう……そう思った直後。頭を失った竜のゴーレムはその大きな図体で私に向かって突撃を仕掛けてきた。想定していなかっただけに回避が間に合わず、横薙ぎに振るわれた手が打ち付けられる瞬間に【フィジカルガード】で衝撃を最小限に留めた。ごろごろと転がって着ている服が汚れるが、そんな事を気にしている場合じゃない。まさかまだ活動出来るとは思っていなかった。クーティノスのように魔力を吸収して魔導の威力を落とす、というのは見られなかったから仕留めたと安心してしまった。目の前にいるのは生き物じゃない。それだけにこの判断は余計に悪手としか思えない。
「……【フレアフォールン】!」
胴体の方に核があると踏んで一気に破壊する事が出来るだろう魔導を発動させる。襲い掛かってくる首や腕をなんとか掻い潜りながら発動した太陽はゆっくりと降りてきて胴体だけで動く竜のゴーレムを飲み込んで……跡形もなく焼き尽くしてしまった。
「……よし」
今後こそ確実に仕留めた。思わず声が漏れたけど、流石にこれで動いていたら恐ろしいことこの上ない。
続いて追撃を仕掛けてきた首長竜に同じように【フレアフォールン】を発動させて二体目のゴーレムを仕留めた。ここまで来るともはや作業に近い。
ゴーレムの大きさに威圧された人たちがいたが、魔導を発動させることが出来ない以上、遠距離を保っていればこんなものだろう。これなら問題なく――
「……!?」
悠長に考えていると同時にそんな妄想は容易く撃ち抜かれる。生き残った竜の口内に魔力が溜まり、ブレス攻撃が放たれる。まさかそんなものを使うとは全く想定していなかった。
「くっ……【カラフル・リフレクション】!」
確実に魔力によって作られたものだ。ならこっちは防御しつつ反撃すればいい。そう考えていたのだけど、その判断も甘かったと思い知らされた。
ぶつかったブレスと【カラフル・リフレクション】の反射が激しくぶつかり合って、その間にも何を考えているのかこちらに攻撃を仕掛けてくる残りの二体。
「もうちょっと!」
ちょっとはゆっくり思考を巡らせて戦いたい。そんな訴えなんて通じるはずもない。結局跳ね返していたブレス攻撃は途中で受け止める事が出来ず、回避に専念する事に。
少しずつ動きが鋭くなってきて、そこからなんとか物理攻撃ばかりしてくる首長竜を一体仕留め、後はブレス攻撃を使ったのと何か嫌な予感がするリーダーっぽいのが一体。五体からは大分減らすことが出来たし大分こちら側有利なはずなんだけど……この胸騒ぎは何だろう?
「さて、と……」
どう戦うか。首の長い竜で翼も生えているけれど……たたんだまま飛ぶ気配がないところからワイバーンのように自由に空を飛ぶことは出来ないと推察できる。生物というより誰かに作られた兵器だからそういうところまで気が回らなかったのかもしれない。
以前に戦った狼のゴーレム――クーティノスと比べると遥かに大きいから武器による攻撃はあまり効果がないだろう。ということは必然的に魔導に頼るしかない。元よりそういう戦い方しか出来ないのだけどね。
「……【トキシックスピア】」
結構悩んだ末に以前にゴーレムの身体を溶かした酸性の強い毒の槍を放つ事にした。分割したら毒性が弱まる可能性があったから一発に魔力を込めて解き放つ。真っ直ぐ竜の一体に向かっていく。反撃されるかもしれないといつでも対応できるように身構えていた……けれど、特に何の反応もない。むしろ私に気付いていないぐらいこちらを気にも留めていない。
長い首に当たった【トキシックスピア】はじゅわじゅわと音を立ててゴーレムの材料を溶かしていく。あまりにも無防備で本当に動いているのか疑問に思えてきたけれど、その理由も納得出来た。
「なるほどね」
ほとんど溶けていない上に攻撃されたことに気付いたのかその顔がゆっくりとこちらを向いていた。それも五体全部に。
「ガギャアアアアア!!」
耳の奥底まで響くような雄叫びと同時に襲い掛かってくる。相変わらず魔導などの攻撃は出来ないみたいだ。竜族特有のブレス攻撃もないし、動作もクーティノスよりは遅い。身体の大きさと頑丈さと引き換えに俊敏性を失った……そんな感じだろう。なら問題ない。
一斉にこちらを敵として視認してきた首長竜共はその首を活かして振り回してくる。一度、二度と襲い掛かってくる首をしゃがんで避け、魔導で身体能力を強化して跳んで避ける。
「【プロトンサンダー】!」
私の十八番である魔導を解き放つと、その中の一つが雷の光線の中に飲み込まれて行った。
最大限魔力を込めた一撃は流石に耐え切れなかったのだろう。魔導が収まると頭と首が吹き飛んだ無残な姿を晒していた。
「まずは一つ」
これで問題なく処理できただろう……そう思った直後。頭を失った竜のゴーレムはその大きな図体で私に向かって突撃を仕掛けてきた。想定していなかっただけに回避が間に合わず、横薙ぎに振るわれた手が打ち付けられる瞬間に【フィジカルガード】で衝撃を最小限に留めた。ごろごろと転がって着ている服が汚れるが、そんな事を気にしている場合じゃない。まさかまだ活動出来るとは思っていなかった。クーティノスのように魔力を吸収して魔導の威力を落とす、というのは見られなかったから仕留めたと安心してしまった。目の前にいるのは生き物じゃない。それだけにこの判断は余計に悪手としか思えない。
「……【フレアフォールン】!」
胴体の方に核があると踏んで一気に破壊する事が出来るだろう魔導を発動させる。襲い掛かってくる首や腕をなんとか掻い潜りながら発動した太陽はゆっくりと降りてきて胴体だけで動く竜のゴーレムを飲み込んで……跡形もなく焼き尽くしてしまった。
「……よし」
今後こそ確実に仕留めた。思わず声が漏れたけど、流石にこれで動いていたら恐ろしいことこの上ない。
続いて追撃を仕掛けてきた首長竜に同じように【フレアフォールン】を発動させて二体目のゴーレムを仕留めた。ここまで来るともはや作業に近い。
ゴーレムの大きさに威圧された人たちがいたが、魔導を発動させることが出来ない以上、遠距離を保っていればこんなものだろう。これなら問題なく――
「……!?」
悠長に考えていると同時にそんな妄想は容易く撃ち抜かれる。生き残った竜の口内に魔力が溜まり、ブレス攻撃が放たれる。まさかそんなものを使うとは全く想定していなかった。
「くっ……【カラフル・リフレクション】!」
確実に魔力によって作られたものだ。ならこっちは防御しつつ反撃すればいい。そう考えていたのだけど、その判断も甘かったと思い知らされた。
ぶつかったブレスと【カラフル・リフレクション】の反射が激しくぶつかり合って、その間にも何を考えているのかこちらに攻撃を仕掛けてくる残りの二体。
「もうちょっと!」
ちょっとはゆっくり思考を巡らせて戦いたい。そんな訴えなんて通じるはずもない。結局跳ね返していたブレス攻撃は途中で受け止める事が出来ず、回避に専念する事に。
少しずつ動きが鋭くなってきて、そこからなんとか物理攻撃ばかりしてくる首長竜を一体仕留め、後はブレス攻撃を使ったのと何か嫌な予感がするリーダーっぽいのが一体。五体からは大分減らすことが出来たし大分こちら側有利なはずなんだけど……この胸騒ぎは何だろう?
0
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい
りゅうじんまんさま
ファンタジー
かつて、『神界』と呼ばれる世界では『女神ハーティルティア』率いる『神族』と『邪神デスティウルス』が率いる『邪神』との間で、永きに渡る戦いが繰り広げられていた。
その永い時の中で『神気』を取り込んで力を増大させた『邪神デスティウルス』は『神界』全てを呑み込もうとした。
それを阻止する為に、『女神ハーティルティア』は配下の『神族』と共に自らの『存在』を犠牲にすることによって、全ての『邪神』を滅ぼして『神界』を新たな世界へと生まれ変わらせた。
それから数千年後、『女神』は新たな世界で『ハーティ』という名の侯爵令嬢として偶然転生を果たした。
生まれた時から『魔導』の才能が全く無かった『ハーティ』は、とある事件をきっかけに『女神』の記憶を取り戻し、人智を超えた力を手に入れることになる。
そして、自分と同じく『邪神』が復活している事を知った『ハーティ』は、諸悪の根源である『邪神デスティウルス』復活の阻止と『邪神』討伐の為に、冒険者として世界を巡る旅へと出発する。
世界中で新しい世界を創造した『女神ハーティルティア』が崇拝される中、普通の人間として平穏に暮らしたい『ハーティ』は、その力を隠しながら旅を続けていたが、行く先々で仲間を得ながら『邪神』を討伐していく『ハーティ』は、やがて世界中の人々に愛されながら『女神』として崇められていく。
果たして、『ハーティ』は自分の創造した世界を救って『普通の女の子』として平穏に暮らしていくことが出来るのか。
これは、一人の少女が『女神』の力を隠しながら世界を救う冒険の物語。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる