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515・作戦参謀達との対立(ファリスside)
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あまり意図せず対立する事になったファリスとルォーグだが、その理由は単純明快。ファリスは自分がルォーグを信用していない事に他にならない。そもそも彼女がルォーグと初めて出会ったのは今回の援軍要請が初めてだったのだ。今まで面識もなかった彼に慣れるという事自体がファリスにはそもそも無謀だった。
「……ファリス様、私の事が気に食わないのはわかりました。貴女には戦う術を持たない私達が鬱陶しいのでしょう。話合えばなんとか出来ると思いましたが……貴女は聞く耳すら持たないと。そういう事ですか」
震える拳を握り締め、睨みつけるルォーグの視線を涼し気な表情で受け止めるファリス。それに更に血が昇るのは彼らだった。
――一触即発。張りつめた空気が場を支配し、ファリス派と反ファリス派はいつ戦いが始まってもおかしくない状況にあった。唯一中立を保っている者達が一歩距離を置いた様子で見守っていた。
「はっきり言わないとわからない?」
「……どういう意味ですか」
「私達は命を賭けているの。命のやり取りをしているのに、貴方達は外から安全な場所で物を言うだけ。随分楽な仕事よね」
その言葉にファリスに賛同している者は頷き、怒りと共に参謀達を睨む。中には甘い汁を吸おうとするふざけた輩がいるのも事実だが、純粋に彼女を慕っている者もいる。彼らはそういう類の集まりだった。
「確かに、私達は戦っている間は戦場とは無関係です。ですが、私達の役目はその先や間にあります。貴方達が戦っている間、どれだけ被害を少なくするか……それを考えるのが私達のはずです」
うんうんと頷くのはルォーグと同じようにファリスの個人主義に賛成できず、ファリス派と対立している参謀を中心としている者達。それが火に油を注ぐ結果になったのか、更に剣呑な雰囲気になっていく。
「そう。それで、実際被害は減ってるの?」
「それは……」
「今わたしが戦わないって言ったら、どれだけ被害を抑える事が出来る?」
「まさか、傍観するつもりなのかにゃ!?」
見当違いの暴論を繰り出した猫人族だが、それは許さないと言いたげな視線は彼らの心境を如実に語っていた。
「別にそれでもいいけど……わたしがいたからここまでほとんど無傷でいられたのを忘れていないかってこと。今まで王子様の指揮があったからなんとかなっていたけれど、それがなかったらなんとか出来た? 援軍で一緒に来た人たちはともかく、猫人族の人たちはどうにか出来る自信なんてあったの?」
「それは――」
「なかったよね。この人たちはそれを知ってるからわたしを頼っているの。使い捨てにされるにしても、ただ無為に死ぬよりはずっとマシ。そんな風に思っているからわたしを支持している。それだけの人が多いの」
反ファリス派の魔人族は不満げな表情を続けているが、猫人族の方は黙って下を向いてしまった。彼らはベルン王子が合流するまで軍をいたずらに浪費し、合流後は作戦に参加すらさせてもらう事も出来ずに傍観させられていた連中だった。
今回の行軍に同行させてもらったのはなんとか汚名返上を目論んでいたからであり、ベルン王子もファリスの意見に触れれば目を覚ますだろうと思って送られてきたメンツだった。
いわば町の守りに組み込んでも役に立ちそうもない連中を体よく押し付けられたということなのだが、ファリスにとってはどうでもよかった。
「わたしは後ろで何も考えずに『作戦』を練っている連中の言う事なんてこれっぽっちも信じていない。だって、彼らは机の上でうんうん唸ってるだけで何とかなると思っているような人たちなんだもの。これまでの戦いだって、あなたたちは何か言った? わたしが先陣切って敵を蹴散らして、勢いに乗った彼らが残党処理をする。その間でも何か一つでも案があった?」
その言葉に誰もが沈黙してしまう。全てファリスを矢面に立たせ、彼女の持つ圧倒的な戦力で敵をねじ伏せ、残った敵を兵士達が討伐していた。その間、参謀はただ付いて行くだけ。非常に楽な移動を行っていたと言える。もちろん何もしなかったわけではない。食糧の管理や陣形の確認。洗い出された敵の兵力を参考に様々な作戦を立案。彼らがしている仕事は数多くある。
しかし、それはどれも直接戦場に結び付くものではなかった。作戦の立案も、ファリスという戦力さえいれば必要としない。目に見える成果がなければ、こうなる事もまた必然だった。
「し、しかし、私達の仕事は決して疎かにしていいものではありません。貴方達が戦場を駆け抜けている間、町や拠点の守りを務めるのも私達のやり方です!」
「だったら納得できるほどの戦果を見せて。わたしは譲歩した。魔導で拠点一帯を全て灰にしてもいいところを、それじゃ困るからっていうからやめた。隠密の二人が戻った後も状況によってはあなたたちに任せる。あまりにひどい作戦じゃなかったら従ってあげる事も約束する。それでも文句を言うのなら、付き合ってられないから勝手にやって」
「まっ――」
言いたいだけ言って去ったファリスの後ろ姿を、ルォーグを含めた参謀達は悔しそうに見つめていた。猫人族の彼らはなんともやるせなく、言い返す事も出来ずに情けない気持ちに。
残った魔人族などの他の種族の参謀はここまで言われて言い返す事の出来ない程度の功績しかない事への歯がゆさに……それぞれ苛まれるのだった。
「……ファリス様、私の事が気に食わないのはわかりました。貴女には戦う術を持たない私達が鬱陶しいのでしょう。話合えばなんとか出来ると思いましたが……貴女は聞く耳すら持たないと。そういう事ですか」
震える拳を握り締め、睨みつけるルォーグの視線を涼し気な表情で受け止めるファリス。それに更に血が昇るのは彼らだった。
――一触即発。張りつめた空気が場を支配し、ファリス派と反ファリス派はいつ戦いが始まってもおかしくない状況にあった。唯一中立を保っている者達が一歩距離を置いた様子で見守っていた。
「はっきり言わないとわからない?」
「……どういう意味ですか」
「私達は命を賭けているの。命のやり取りをしているのに、貴方達は外から安全な場所で物を言うだけ。随分楽な仕事よね」
その言葉にファリスに賛同している者は頷き、怒りと共に参謀達を睨む。中には甘い汁を吸おうとするふざけた輩がいるのも事実だが、純粋に彼女を慕っている者もいる。彼らはそういう類の集まりだった。
「確かに、私達は戦っている間は戦場とは無関係です。ですが、私達の役目はその先や間にあります。貴方達が戦っている間、どれだけ被害を少なくするか……それを考えるのが私達のはずです」
うんうんと頷くのはルォーグと同じようにファリスの個人主義に賛成できず、ファリス派と対立している参謀を中心としている者達。それが火に油を注ぐ結果になったのか、更に剣呑な雰囲気になっていく。
「そう。それで、実際被害は減ってるの?」
「それは……」
「今わたしが戦わないって言ったら、どれだけ被害を抑える事が出来る?」
「まさか、傍観するつもりなのかにゃ!?」
見当違いの暴論を繰り出した猫人族だが、それは許さないと言いたげな視線は彼らの心境を如実に語っていた。
「別にそれでもいいけど……わたしがいたからここまでほとんど無傷でいられたのを忘れていないかってこと。今まで王子様の指揮があったからなんとかなっていたけれど、それがなかったらなんとか出来た? 援軍で一緒に来た人たちはともかく、猫人族の人たちはどうにか出来る自信なんてあったの?」
「それは――」
「なかったよね。この人たちはそれを知ってるからわたしを頼っているの。使い捨てにされるにしても、ただ無為に死ぬよりはずっとマシ。そんな風に思っているからわたしを支持している。それだけの人が多いの」
反ファリス派の魔人族は不満げな表情を続けているが、猫人族の方は黙って下を向いてしまった。彼らはベルン王子が合流するまで軍をいたずらに浪費し、合流後は作戦に参加すらさせてもらう事も出来ずに傍観させられていた連中だった。
今回の行軍に同行させてもらったのはなんとか汚名返上を目論んでいたからであり、ベルン王子もファリスの意見に触れれば目を覚ますだろうと思って送られてきたメンツだった。
いわば町の守りに組み込んでも役に立ちそうもない連中を体よく押し付けられたということなのだが、ファリスにとってはどうでもよかった。
「わたしは後ろで何も考えずに『作戦』を練っている連中の言う事なんてこれっぽっちも信じていない。だって、彼らは机の上でうんうん唸ってるだけで何とかなると思っているような人たちなんだもの。これまでの戦いだって、あなたたちは何か言った? わたしが先陣切って敵を蹴散らして、勢いに乗った彼らが残党処理をする。その間でも何か一つでも案があった?」
その言葉に誰もが沈黙してしまう。全てファリスを矢面に立たせ、彼女の持つ圧倒的な戦力で敵をねじ伏せ、残った敵を兵士達が討伐していた。その間、参謀はただ付いて行くだけ。非常に楽な移動を行っていたと言える。もちろん何もしなかったわけではない。食糧の管理や陣形の確認。洗い出された敵の兵力を参考に様々な作戦を立案。彼らがしている仕事は数多くある。
しかし、それはどれも直接戦場に結び付くものではなかった。作戦の立案も、ファリスという戦力さえいれば必要としない。目に見える成果がなければ、こうなる事もまた必然だった。
「し、しかし、私達の仕事は決して疎かにしていいものではありません。貴方達が戦場を駆け抜けている間、町や拠点の守りを務めるのも私達のやり方です!」
「だったら納得できるほどの戦果を見せて。わたしは譲歩した。魔導で拠点一帯を全て灰にしてもいいところを、それじゃ困るからっていうからやめた。隠密の二人が戻った後も状況によってはあなたたちに任せる。あまりにひどい作戦じゃなかったら従ってあげる事も約束する。それでも文句を言うのなら、付き合ってられないから勝手にやって」
「まっ――」
言いたいだけ言って去ったファリスの後ろ姿を、ルォーグを含めた参謀達は悔しそうに見つめていた。猫人族の彼らはなんともやるせなく、言い返す事も出来ずに情けない気持ちに。
残った魔人族などの他の種族の参謀はここまで言われて言い返す事の出来ない程度の功績しかない事への歯がゆさに……それぞれ苛まれるのだった。
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