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419・エールティア達の拠点侵入
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ヴァティグ達と分かれ、私と雪風は先程の場所へと戻ってきた。
「それで、どう攻略しますか?」
「そうね……ここは見つからないように行きましょう。私が魔導を掛けるから、雪風も見つからないように、ね」
「わかりました」
倒した方が後々の戦いに影響を与えるけれど、それよりも極力体力を温存して侵入する事に決めた私達は、早速魔導の構築を始める。
夜は『シャドーウォーク』は発動出来ない。あれは太陽が出ている時限定で効果を発揮する魔導だからね。なら――
「【ナイトハイド】」
今度は逆に夜限定で効果を発揮する魔導を発動させる。夜闇に紛れて私達の姿と気配を極力薄める。
明かりがあるところだと効き目が薄いから注意して行動しないといけない。雪風にもきちんと掛かっている事を確認する。
「【闇風・隠形疾風】」
雪風の発動した魔導は私と同系統のものみたいだけれど、身体が軽く感じる。恐らく夜闇に紛れて行動するのに最適な魔導なのだろう。
「それじゃ、行きましょう」
「はい」
静かに移動を開始する私達は、見張りに気付かれないように明かりを避けて壁を登る。想像以上に身体能力が上昇していて、壁をなんなく飛び越える事が出来た。
「……ん? 今何か物音が聞こえたか?」
「気のせいだろう。それより暇だな。こんなに一生懸命見張って意味あるのか?」
「だよな。ここには我らが同士以外が訪れる事はない。聖黒族の連中もここに拠点があるなんて思いもしまいよ」
お互いに顔を合わせて談笑しているけれど、その思いもしない人物がここにいる事に全く気付かない彼らは間抜けていると言えるだろう。
少し笑いがこみ上げてくるけれど、そんな事で見つかったら元も子もない。速やかに中に入り込む。
部屋の中に入った私達は、扉を閉めて部屋の中に誰もいない事を確認する。
「成功ですね」
「……そうみたいね。気は抜けないけれど、まずは上手くいったと言えるでしょう」
ここはどうやら休憩所みたいで、見張りが交代で休めるようにベッドまで置かれている。あんまりここに長居するべきじゃないだろう。
「エールティア様、僕の魔導は部屋では効果が薄いので注意してください」
「……わかった。こっちも似たようなものだから注意してね」
こくんと頷いた雪風と一緒に部屋を出て、注意深く周囲を窺う。
索敵系の魔導を使用しても良いのだけれど……向こうがそれを読んで妨害や探知系の魔導や道具を使っていたら、私達の侵入がたちまちバレてしまうだろう。そうなっては元も子もない。
砦の中は簡素で、生活空間も最低限整えられているくらいだった。薄暗い中での探索は暗視魔導の【ヴィシディリティ・ノーマリゼーション】が最大限の効果を発揮してくれる。これのおかげで、私達は明かりをつけずに探索をする事が出来た。
「流石エールティア様です。こんな魔導まで使いこなせるなんて……!」
感動している雪風の目がくすぐったくて、照れ臭くなる。羨望の視線というのは、相変わらず慣れないものだ。
「雪風。何かあったら教えてね」
「わかりました!」
小声でだけど、あまりにも静かな時はそれでも響く事がある。極力言葉を交わさずに探索を進める私達は、ある一つの部屋へと辿り着いた。
「ここは……?」
「何かの作戦室……でしょうか」
見慣れない部屋に思わずきょろきょろと見回してしまう。ボードが存在して、何かの資料を複数収めた本棚があり、机の上には大きな地図が複数枚広げられていた。
一枚はサウエス地方の事が詳しく書かれている物で、他のはまた違う地方。一番大きいのは全国図のようで……各地図には黒い点と青い点。それと赤い点の三つが描かれていた。
全国図と見比べると、全く同じ場所にあるようだった。
「これは何でしょうか?」
「……詳しく調べてみないことにはなんとも言えないわね。とりあえずこれは持って帰りましょう」
多少嵩張るけれど、何かの役に立ちそうだ。
「雪風、こっちは貴女が持って」
「わかりました。全部でなくていいのですか?」
「ええ。分散した方が残る確率は高いだろうしね」
それにヴァティグに分け前を要求された時、これの写しを渡す必要があるだろう。最悪手元に無くてもいいものを選ばないといけない。
私は全国図とこれから役に立つであろう中央と西の地図を。雪風には南と北の地図を持ってもらうことにした。
「【ツールプロテクション】」
念には念を。というわけで道具を保護する魔導を全ての地図に発動させておく。これで燃えたり濡れたりする事はない。一応斬撃にも保護されているけれど、完全に防ぐほどの劇的な効果はない。
その筋の達人相手だったら一切効果を及ばさないから、その点だけには気をつけておいた方がいいだろう。
「なんだか拍子抜けする程簡単に見つかりましたね」
雪風の言う通り、私たちが細心の注意を払ってここまで来た。その結果……かどうかはわからないけど、見回りの兵士があまり多くない。夜だから……というのもあるかもだけど、ここは侵略を軸としている拠点のはずだ。戦いの幕が開けた今ならもう少し起きていてもいいくらいなのに、安らかささえ感じる。
何か妙な感じがする。隠し玉でもあるのか……何があるかわからない以上、警戒するに越した事はないだろう。
「それで、どう攻略しますか?」
「そうね……ここは見つからないように行きましょう。私が魔導を掛けるから、雪風も見つからないように、ね」
「わかりました」
倒した方が後々の戦いに影響を与えるけれど、それよりも極力体力を温存して侵入する事に決めた私達は、早速魔導の構築を始める。
夜は『シャドーウォーク』は発動出来ない。あれは太陽が出ている時限定で効果を発揮する魔導だからね。なら――
「【ナイトハイド】」
今度は逆に夜限定で効果を発揮する魔導を発動させる。夜闇に紛れて私達の姿と気配を極力薄める。
明かりがあるところだと効き目が薄いから注意して行動しないといけない。雪風にもきちんと掛かっている事を確認する。
「【闇風・隠形疾風】」
雪風の発動した魔導は私と同系統のものみたいだけれど、身体が軽く感じる。恐らく夜闇に紛れて行動するのに最適な魔導なのだろう。
「それじゃ、行きましょう」
「はい」
静かに移動を開始する私達は、見張りに気付かれないように明かりを避けて壁を登る。想像以上に身体能力が上昇していて、壁をなんなく飛び越える事が出来た。
「……ん? 今何か物音が聞こえたか?」
「気のせいだろう。それより暇だな。こんなに一生懸命見張って意味あるのか?」
「だよな。ここには我らが同士以外が訪れる事はない。聖黒族の連中もここに拠点があるなんて思いもしまいよ」
お互いに顔を合わせて談笑しているけれど、その思いもしない人物がここにいる事に全く気付かない彼らは間抜けていると言えるだろう。
少し笑いがこみ上げてくるけれど、そんな事で見つかったら元も子もない。速やかに中に入り込む。
部屋の中に入った私達は、扉を閉めて部屋の中に誰もいない事を確認する。
「成功ですね」
「……そうみたいね。気は抜けないけれど、まずは上手くいったと言えるでしょう」
ここはどうやら休憩所みたいで、見張りが交代で休めるようにベッドまで置かれている。あんまりここに長居するべきじゃないだろう。
「エールティア様、僕の魔導は部屋では効果が薄いので注意してください」
「……わかった。こっちも似たようなものだから注意してね」
こくんと頷いた雪風と一緒に部屋を出て、注意深く周囲を窺う。
索敵系の魔導を使用しても良いのだけれど……向こうがそれを読んで妨害や探知系の魔導や道具を使っていたら、私達の侵入がたちまちバレてしまうだろう。そうなっては元も子もない。
砦の中は簡素で、生活空間も最低限整えられているくらいだった。薄暗い中での探索は暗視魔導の【ヴィシディリティ・ノーマリゼーション】が最大限の効果を発揮してくれる。これのおかげで、私達は明かりをつけずに探索をする事が出来た。
「流石エールティア様です。こんな魔導まで使いこなせるなんて……!」
感動している雪風の目がくすぐったくて、照れ臭くなる。羨望の視線というのは、相変わらず慣れないものだ。
「雪風。何かあったら教えてね」
「わかりました!」
小声でだけど、あまりにも静かな時はそれでも響く事がある。極力言葉を交わさずに探索を進める私達は、ある一つの部屋へと辿り着いた。
「ここは……?」
「何かの作戦室……でしょうか」
見慣れない部屋に思わずきょろきょろと見回してしまう。ボードが存在して、何かの資料を複数収めた本棚があり、机の上には大きな地図が複数枚広げられていた。
一枚はサウエス地方の事が詳しく書かれている物で、他のはまた違う地方。一番大きいのは全国図のようで……各地図には黒い点と青い点。それと赤い点の三つが描かれていた。
全国図と見比べると、全く同じ場所にあるようだった。
「これは何でしょうか?」
「……詳しく調べてみないことにはなんとも言えないわね。とりあえずこれは持って帰りましょう」
多少嵩張るけれど、何かの役に立ちそうだ。
「雪風、こっちは貴女が持って」
「わかりました。全部でなくていいのですか?」
「ええ。分散した方が残る確率は高いだろうしね」
それにヴァティグに分け前を要求された時、これの写しを渡す必要があるだろう。最悪手元に無くてもいいものを選ばないといけない。
私は全国図とこれから役に立つであろう中央と西の地図を。雪風には南と北の地図を持ってもらうことにした。
「【ツールプロテクション】」
念には念を。というわけで道具を保護する魔導を全ての地図に発動させておく。これで燃えたり濡れたりする事はない。一応斬撃にも保護されているけれど、完全に防ぐほどの劇的な効果はない。
その筋の達人相手だったら一切効果を及ばさないから、その点だけには気をつけておいた方がいいだろう。
「なんだか拍子抜けする程簡単に見つかりましたね」
雪風の言う通り、私たちが細心の注意を払ってここまで来た。その結果……かどうかはわからないけど、見回りの兵士があまり多くない。夜だから……というのもあるかもだけど、ここは侵略を軸としている拠点のはずだ。戦いの幕が開けた今ならもう少し起きていてもいいくらいなのに、安らかささえ感じる。
何か妙な感じがする。隠し玉でもあるのか……何があるかわからない以上、警戒するに越した事はないだろう。
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