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395・認められし者(レイアside)
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「レイア、よく頑張ったな」
とぼとぼと戻ってきたレイアに対し、アルフは慰めるようにぽんと肩を叩いた。
ローランはある意味予想していたようで苦笑いをして、ファリスは――
「……はぁ」
深いため息をゆっくりと吐いていた。
それを見たレイアは、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。自分が無理言って一番手を譲ってもらった挙句、このような失態を演じてしまったのだ。無理もないだろう。
男性陣がどこかはらはらした様子で見守る中、ファリスは呆れた表情を浮かべていた。
「あまり情けない姿を見せないで。ティアちゃんの近くにいたいのなら、他人の言葉がなくても本気になれるようにしなさい」
その言葉に男性陣は安堵した様子だった。ファリスは他人への興味が薄く、あまり他人を思いやる気持ちがない。どんな傷口を抉る言葉が出てくるかと冷や冷やしていた。
「それで……次は誰が行く?」
それでも安心できなかったのか、ファリスの意識を逸らす為に次は誰がフレルアと戦うかの話に向けていた。
しかし――
「それは不要だ」
その勢いを殺したのは対戦相手であるフレルア本人だった。
「不要……というのは?」
「最初に言ったはずだろう。我が認めた実力者であることを証明せよ――と。レイア……と言ったな」
「は、はいっ!」
やけに緊張したレイアだが、無理もあるまい。彼女にとって、黒竜人族の祖が複製元である可能性の非常に高い存在だ。更に力を見せられてしまえば、自然と萎縮してしまう。
「戦いが始まった当初はあまり興味も湧かなかったが……最後まで戦うその姿勢を評価しよう。無論、課題も大きい。満点とは程遠いのは事実ではあるが、少なくとも可能性は垣間見えた。今はそれで十分だろう」
少しは認めてもらえた! そんな気分になったレイアだったが、今の自分がほとんど認められたわけではない事がわかり、がっくりと肩を落とした。
「え、じゃあもう戦わないの?」
「そうなるな」
レイアの次に気分が落ちたのはファリス。彼女も最初の格闘戦とこの戦いを見て、少しは自分を満足させられる相手が見つかったかもしれないとわくわくしていた矢先の出来事だった。
これがエールティア絡みでなければ、自分の我を通していたに違いなかったが、彼女にとってエールティアの元に戻るのは他のどんな事よりも優先される事だ。
自分のわがままのせいで合流が遅れる事になってしまえば、恐ろしく後悔する事になる。だからこそ、ここでは黙っておくことに決めたのだった。
「それでは、僕達が探し求めている情報を教えてくれる……と?」
「我に二言はない。付いてくるがいい」
フレルアの案内の元、再び資料室に訪れたレイアとアルフは疑問を抱いていた。
「あの、ここは私達が散々調べた後なんだけど……」
「そう急くな。普通に調べただけではわからぬ事もある」
怪しいものを見るような表情で二人はフレルアの動向を窺う。そんな視線をものともせず、涼しい顔で奥の壁を触るフレルアは、何かを確かめるようにゆっくりと壁の一部を押した。
簡単に沈み込んだ壁に呼応するように奥の壁が動き、更なる地下へと続く扉を出現させた。
「これは……!」
今まで調べて隠し通路なんて見つけられなかった二人は、信じられない顔で驚いていた。
それも当然だ。彼女達は壁も探していた。だが、何の成果も得られなかったのだ。
なのに何故、フレルアがあっさりと隠し通路を見つけられたのか……二人は不思議で仕方なかった。
「なんで? あの時は全然……!」
「簡単だ。地面のスイッチを踏みながらこの壁を押す。そうしなければ何をしても動く事はない」
とんとん、足で先程踏んでいた床のスイッチの存在をアピールする。普通でもほとんど気付く事がないであろうそこには、確かにほんのわずかに盛り上がりが見えた。
「……なるほど」
ようやく全てに合点がいったアルフは、これでは仕方ないとでも言いたげんあ表情を浮かべていた。
そんな彼らに構うことなく、フレルアは黙って隠し通路の奥へと足を進める。
四人ともそれに黙って従い、足元に警戒しながら歩いて行くと……そこには上の資料室が他人の目を欺く綺麗どころである事をはっきりと教えてくれるような場所が存在していた。
「こほっ、こほっ……ちょっと埃っぽいな」
「おまけに部屋は少し薄暗いし……」
圧倒的に光量が足りておらず、部屋全体をカバーしきれていない。明かりの魔導具がちらほら設置されているが、部屋の大きさから考えたらどう考えても足りず、薄暗くせざるをいない。そんな理由もあって、誇りっぽく薄暗く、あまり本の管理が出来ていない。隠すことにだけ特化した部屋だった。
「ここでダークエルフが何を企んでいるか……少しは判明するだろう。ここは自由に使っていいが、炎だけは使わぬように気を付けろ」
忠告だけして、フレルアは自分が最初にいた場所――王座の間へと戻っていった。
残された四人は互いに顔を見合わせ、深く頷く。
他の部屋は全てに調べつくし、残ったのはこの部屋のみ。もちろん何もない可能性があるけれど、僅かな可能性があるなら、それを信じて四人は別々に行動する事になった。少しでも多くの手がかりを得るために――。
とぼとぼと戻ってきたレイアに対し、アルフは慰めるようにぽんと肩を叩いた。
ローランはある意味予想していたようで苦笑いをして、ファリスは――
「……はぁ」
深いため息をゆっくりと吐いていた。
それを見たレイアは、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。自分が無理言って一番手を譲ってもらった挙句、このような失態を演じてしまったのだ。無理もないだろう。
男性陣がどこかはらはらした様子で見守る中、ファリスは呆れた表情を浮かべていた。
「あまり情けない姿を見せないで。ティアちゃんの近くにいたいのなら、他人の言葉がなくても本気になれるようにしなさい」
その言葉に男性陣は安堵した様子だった。ファリスは他人への興味が薄く、あまり他人を思いやる気持ちがない。どんな傷口を抉る言葉が出てくるかと冷や冷やしていた。
「それで……次は誰が行く?」
それでも安心できなかったのか、ファリスの意識を逸らす為に次は誰がフレルアと戦うかの話に向けていた。
しかし――
「それは不要だ」
その勢いを殺したのは対戦相手であるフレルア本人だった。
「不要……というのは?」
「最初に言ったはずだろう。我が認めた実力者であることを証明せよ――と。レイア……と言ったな」
「は、はいっ!」
やけに緊張したレイアだが、無理もあるまい。彼女にとって、黒竜人族の祖が複製元である可能性の非常に高い存在だ。更に力を見せられてしまえば、自然と萎縮してしまう。
「戦いが始まった当初はあまり興味も湧かなかったが……最後まで戦うその姿勢を評価しよう。無論、課題も大きい。満点とは程遠いのは事実ではあるが、少なくとも可能性は垣間見えた。今はそれで十分だろう」
少しは認めてもらえた! そんな気分になったレイアだったが、今の自分がほとんど認められたわけではない事がわかり、がっくりと肩を落とした。
「え、じゃあもう戦わないの?」
「そうなるな」
レイアの次に気分が落ちたのはファリス。彼女も最初の格闘戦とこの戦いを見て、少しは自分を満足させられる相手が見つかったかもしれないとわくわくしていた矢先の出来事だった。
これがエールティア絡みでなければ、自分の我を通していたに違いなかったが、彼女にとってエールティアの元に戻るのは他のどんな事よりも優先される事だ。
自分のわがままのせいで合流が遅れる事になってしまえば、恐ろしく後悔する事になる。だからこそ、ここでは黙っておくことに決めたのだった。
「それでは、僕達が探し求めている情報を教えてくれる……と?」
「我に二言はない。付いてくるがいい」
フレルアの案内の元、再び資料室に訪れたレイアとアルフは疑問を抱いていた。
「あの、ここは私達が散々調べた後なんだけど……」
「そう急くな。普通に調べただけではわからぬ事もある」
怪しいものを見るような表情で二人はフレルアの動向を窺う。そんな視線をものともせず、涼しい顔で奥の壁を触るフレルアは、何かを確かめるようにゆっくりと壁の一部を押した。
簡単に沈み込んだ壁に呼応するように奥の壁が動き、更なる地下へと続く扉を出現させた。
「これは……!」
今まで調べて隠し通路なんて見つけられなかった二人は、信じられない顔で驚いていた。
それも当然だ。彼女達は壁も探していた。だが、何の成果も得られなかったのだ。
なのに何故、フレルアがあっさりと隠し通路を見つけられたのか……二人は不思議で仕方なかった。
「なんで? あの時は全然……!」
「簡単だ。地面のスイッチを踏みながらこの壁を押す。そうしなければ何をしても動く事はない」
とんとん、足で先程踏んでいた床のスイッチの存在をアピールする。普通でもほとんど気付く事がないであろうそこには、確かにほんのわずかに盛り上がりが見えた。
「……なるほど」
ようやく全てに合点がいったアルフは、これでは仕方ないとでも言いたげんあ表情を浮かべていた。
そんな彼らに構うことなく、フレルアは黙って隠し通路の奥へと足を進める。
四人ともそれに黙って従い、足元に警戒しながら歩いて行くと……そこには上の資料室が他人の目を欺く綺麗どころである事をはっきりと教えてくれるような場所が存在していた。
「こほっ、こほっ……ちょっと埃っぽいな」
「おまけに部屋は少し薄暗いし……」
圧倒的に光量が足りておらず、部屋全体をカバーしきれていない。明かりの魔導具がちらほら設置されているが、部屋の大きさから考えたらどう考えても足りず、薄暗くせざるをいない。そんな理由もあって、誇りっぽく薄暗く、あまり本の管理が出来ていない。隠すことにだけ特化した部屋だった。
「ここでダークエルフが何を企んでいるか……少しは判明するだろう。ここは自由に使っていいが、炎だけは使わぬように気を付けろ」
忠告だけして、フレルアは自分が最初にいた場所――王座の間へと戻っていった。
残された四人は互いに顔を見合わせ、深く頷く。
他の部屋は全てに調べつくし、残ったのはこの部屋のみ。もちろん何もない可能性があるけれど、僅かな可能性があるなら、それを信じて四人は別々に行動する事になった。少しでも多くの手がかりを得るために――。
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