392 / 676
392・先祖の複製(レイアside)
しおりを挟む
最初はお馴染みの近接戦が展開されていく。
右、左、斜め右にアッパー。それすらかわされ、そのままの勢いを回転に利用しつつ裏拳。知りある限りの技術と動きを行使して戦うレイアに対し、フレルアは超反応と言っても差し支えない動きで避け、拳を解き放つ。
「つっ……!」
頰を掠め、僅かに痛みが走る。それを更なる闘志に変換してレイアの動きはキレを増していく。
「ふむ、面白い。戦いながら学習しているようだな。だが……その速度では我に追いつけぬぞ」
感心しながらもその成長を軽く笑い、より強い攻撃を繰り広げていくフレルアの言葉は、レイアの心に刺さる。
いくら学びながら強くなっても、その成長速度には限界がある。
楽しげに戦うフレルアは加減しながら相手をしている。ファリスと戦っていた時よりも鋭く、力強い一撃を次々と繰り出し、彼女はまだ追って避けるのがやっとだったのだ。
これではいずれか力尽き、あっという間に拳の嵐にその身を晒すことになる。一撃一撃が必殺の威力を誇るそれをまともに浴びれば、数発も耐えきれずに黄泉幽世へと旅立ってしまう事は間違いないだろう。
「魔導は使わぬのか?」
「なら……お望み通り……!」
近接戦は圧倒的にレイアの不利。そんな事は最初からわかっていた事だ。だからこそ、彼女の中の闘志は一層の燃え上がりを見せる。
「【ガイアプレス】!」
距離を取ったレイアの放った魔導が大きな土塊を作り、フレルアの頭上から落下させる。避けるには大きく動く必要があり、それは新たな隙を生むことに繋がる。
しかし――
「ほう、中々展開が早い。イメージがよく練られている証拠。なるほど。魔導使い寄りか」
速やかに作られた【ガイアプレス】に感心するフレルアは避ける選択を取らなかった。迫り来る大きな土塊に真っ向から挑むように立ち止まるその姿に、観客の三人は驚きを隠さずにいた。
「相殺するつもりなのか?」
アルフの呟きに応えるかのように佇むその姿は悠然としていた。
「【アネイブル・トゥタッチ】」
腕を組み、威風堂々と佇むフレルア。彼は確かに魔導を発動した……が、特に何も出ない。一切変化無く、【ガイアプレス】によって押し潰されてしまった。
土塊が床に接触し、ぼろぼろと崩れて瓦礫を作り上げる。
あまりな光景に発動したレイアの方が呆然としてしまう。それは観客の三人にも伝染し、到底信じられない光景が広がった。
「え? え? お、おわり……?」
「……いや、結界は解除されていない。まだ戦いは終わっていない」
あっけなさに目をパチパチさせるレイアの呟きをローランが否定した。
決闘ではないにせよ、一度死なない限りこの結界は決して解除される事はない。つまりフレルアは土塊に埋もれてしまったという事になる。
「……どうし――」
戸惑いながら声をあげたレイアの目の前でそれは起こった。
まるで土が道を作るかのように割れていき、フレルアが何事もなく歩いてくる。
確かに【ガイアプレス】は直撃した筈だ。そんな考えがレイアの頭の中に湧き上がる。
「……なんで?」
「さてな。それを考えるのも貴様の学ぶことだ」
悠然とした態度で腕組を解いたフレルアは、好戦的な笑みを浮かべてレイアに襲い掛かる。
鋭く伸びた爪で振り下ろされた一撃は、レイアの魔力や服を容易く切り裂いて、血に塗れた肩を露出させる。
「ぐっ……! くぅっ……!!」
「どうした? たかだかこれしきで呆けていては勝負にならぬぞ?」
笑みを深め、たてつづけに繰り出される爪撃。その一撃は並の剣の斬撃よりも鋭く、速い。レイアは翻弄され、中々魔導を発動する隙を与えてもらえずに回避を強いられてしまう。
「どうした? その程度か?」
「【フレアレイ】!」
辛うじて放たれた炎の光線は、フレルアになんなく回避され、上手く潜り込まれてしまう。
更に近接戦の距離を保たれつつ、レイアが魔導を発動する際に距離を詰められ、思うままに攻撃する事が出来ないもどかしさが続いていく。
(どうする? どうすれば……)
的確に弱点を突いてくるフレルアの動きに翻弄されている上、勝利への道筋を見出すことも出来ずに苦戦を強いられているレイア。このままでは確実に手痛い形での敗北を迎えるのは必至。もはやどうする事も出来ない状況に追いやられた彼女に残された方法はただ一つだった。
「……【人造命冠・パイソウィーク】!!」
切り札の一つ。レイアの頭上に透き通る程に輝く王冠が出現し、フレルアの興味は一気にそちらの方に向いた。
「……ほう、中々美しい物を持っているではないか」
ここでフレルアも人造命具を出してくることを期待していたレイアだったが、そう上手く話は進まない。
彼はレイアの人造命具を物珍しげに見るだけで特に行動を起こすことはなかった。
それは『だからどうした?』と言わんばかりの表情で仁王立ちするだけだった。
その様は風格すら感じられる程で、レイアの威圧するには十分だった。
「……征け!」
パイソウィークによって生成された複数の魔力の球体が一斉にフレルアに襲いかかる。
その様子を楽しげに見ていたフレルアは、未だ実力の全てを見せてはいなかった。
右、左、斜め右にアッパー。それすらかわされ、そのままの勢いを回転に利用しつつ裏拳。知りある限りの技術と動きを行使して戦うレイアに対し、フレルアは超反応と言っても差し支えない動きで避け、拳を解き放つ。
「つっ……!」
頰を掠め、僅かに痛みが走る。それを更なる闘志に変換してレイアの動きはキレを増していく。
「ふむ、面白い。戦いながら学習しているようだな。だが……その速度では我に追いつけぬぞ」
感心しながらもその成長を軽く笑い、より強い攻撃を繰り広げていくフレルアの言葉は、レイアの心に刺さる。
いくら学びながら強くなっても、その成長速度には限界がある。
楽しげに戦うフレルアは加減しながら相手をしている。ファリスと戦っていた時よりも鋭く、力強い一撃を次々と繰り出し、彼女はまだ追って避けるのがやっとだったのだ。
これではいずれか力尽き、あっという間に拳の嵐にその身を晒すことになる。一撃一撃が必殺の威力を誇るそれをまともに浴びれば、数発も耐えきれずに黄泉幽世へと旅立ってしまう事は間違いないだろう。
「魔導は使わぬのか?」
「なら……お望み通り……!」
近接戦は圧倒的にレイアの不利。そんな事は最初からわかっていた事だ。だからこそ、彼女の中の闘志は一層の燃え上がりを見せる。
「【ガイアプレス】!」
距離を取ったレイアの放った魔導が大きな土塊を作り、フレルアの頭上から落下させる。避けるには大きく動く必要があり、それは新たな隙を生むことに繋がる。
しかし――
「ほう、中々展開が早い。イメージがよく練られている証拠。なるほど。魔導使い寄りか」
速やかに作られた【ガイアプレス】に感心するフレルアは避ける選択を取らなかった。迫り来る大きな土塊に真っ向から挑むように立ち止まるその姿に、観客の三人は驚きを隠さずにいた。
「相殺するつもりなのか?」
アルフの呟きに応えるかのように佇むその姿は悠然としていた。
「【アネイブル・トゥタッチ】」
腕を組み、威風堂々と佇むフレルア。彼は確かに魔導を発動した……が、特に何も出ない。一切変化無く、【ガイアプレス】によって押し潰されてしまった。
土塊が床に接触し、ぼろぼろと崩れて瓦礫を作り上げる。
あまりな光景に発動したレイアの方が呆然としてしまう。それは観客の三人にも伝染し、到底信じられない光景が広がった。
「え? え? お、おわり……?」
「……いや、結界は解除されていない。まだ戦いは終わっていない」
あっけなさに目をパチパチさせるレイアの呟きをローランが否定した。
決闘ではないにせよ、一度死なない限りこの結界は決して解除される事はない。つまりフレルアは土塊に埋もれてしまったという事になる。
「……どうし――」
戸惑いながら声をあげたレイアの目の前でそれは起こった。
まるで土が道を作るかのように割れていき、フレルアが何事もなく歩いてくる。
確かに【ガイアプレス】は直撃した筈だ。そんな考えがレイアの頭の中に湧き上がる。
「……なんで?」
「さてな。それを考えるのも貴様の学ぶことだ」
悠然とした態度で腕組を解いたフレルアは、好戦的な笑みを浮かべてレイアに襲い掛かる。
鋭く伸びた爪で振り下ろされた一撃は、レイアの魔力や服を容易く切り裂いて、血に塗れた肩を露出させる。
「ぐっ……! くぅっ……!!」
「どうした? たかだかこれしきで呆けていては勝負にならぬぞ?」
笑みを深め、たてつづけに繰り出される爪撃。その一撃は並の剣の斬撃よりも鋭く、速い。レイアは翻弄され、中々魔導を発動する隙を与えてもらえずに回避を強いられてしまう。
「どうした? その程度か?」
「【フレアレイ】!」
辛うじて放たれた炎の光線は、フレルアになんなく回避され、上手く潜り込まれてしまう。
更に近接戦の距離を保たれつつ、レイアが魔導を発動する際に距離を詰められ、思うままに攻撃する事が出来ないもどかしさが続いていく。
(どうする? どうすれば……)
的確に弱点を突いてくるフレルアの動きに翻弄されている上、勝利への道筋を見出すことも出来ずに苦戦を強いられているレイア。このままでは確実に手痛い形での敗北を迎えるのは必至。もはやどうする事も出来ない状況に追いやられた彼女に残された方法はただ一つだった。
「……【人造命冠・パイソウィーク】!!」
切り札の一つ。レイアの頭上に透き通る程に輝く王冠が出現し、フレルアの興味は一気にそちらの方に向いた。
「……ほう、中々美しい物を持っているではないか」
ここでフレルアも人造命具を出してくることを期待していたレイアだったが、そう上手く話は進まない。
彼はレイアの人造命具を物珍しげに見るだけで特に行動を起こすことはなかった。
それは『だからどうした?』と言わんばかりの表情で仁王立ちするだけだった。
その様は風格すら感じられる程で、レイアの威圧するには十分だった。
「……征け!」
パイソウィークによって生成された複数の魔力の球体が一斉にフレルアに襲いかかる。
その様子を楽しげに見ていたフレルアは、未だ実力の全てを見せてはいなかった。
0
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる