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346・新年を迎える準備
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手紙を書きすぎて手が痛くなってくるのに慣れた頃。王都ガンスラッドの人達が慌ただしく動き出していた。
後三日で新年を迎える。最後の準備にみんな大忙しなのだろう。
私が必死に国々に危険性を伝えている最中も、お祭りの準備は着々と進んでいっているということだ。
やるべきことは大体終わった。後は新年を迎えてからじゃないと動けない。
本当なら今すぐにでも動きたいのだけれど……現在ティリアースの正当な後継者として落ち着いている私が――王族が、気軽にいなくなるわけにはいかないのだ。
ただでさえ、今この瞬間でも自由にさせてもらっているのだしね。
結果、最後の三日は暇を持て余してしまっているというわけだ。
だからといって気軽に観光しようなんて気は起きないのだけれどね。
これから起こる事……そしてそれが終わった後の事。頭の中には色々な考えが湧き上がって過ぎていく。
せっかくファリス関連でのもやもやが大分晴れたのに、シュタインのせいでまた頭の中に霧が立ち込めてきた。
あっちが解決すればこっちから問題が起こる。これじゃあ、満足に学園生活を送ってすらいられない。
「困ったものね……」
深く長い溜息を漏らして天井を見ても、特に何が変わるわけもなく……若干怠惰な時間が――
「ティアちゃん! 遊ぼう!!」
バン! と大きな音を立てて扉が開かれて、外からファリスが飛び込んでくる。
「ま、待ちなさい!」
それを追いかけるように雪風が飛び込んできて、ファリスを捕まえようとする。
それをひらりとかわして私の目の前に躍りでる。
「えへへ」
「……ファリス」
軽く頭を抑えて花開いたかのような笑顔を浮かべているファリスを見つめる。
何か悪い事でもした? と言いたげなあどけない笑みに毒気を抜かれそうになるけれど、その後ろでまさに鬼のように怒っている雪風がいるせいでそれも薄れてしまった。
「二人とも、何をしているの?」
「ティアちゃんのところに遊びに!」
「エールティア様のところに行こうとするのを止めに」
片方はスキップでもしそうな程嬉しそうに。もう一方は冷たい視線を向けたままで。
再び深い溜息を吐いてしまう。
「ね、そんなに机にくっ付いてたら身体に悪いよ。偶には外に出て新年祭の見学に行こう?」
「誰のせいで机にくっつかないといけないのか、よく考えた方がいいかもしれませんね」
ファリスは本当に自由気ままだ。その元気さを少しは分けてもらいたいものだ。
「二人とも、少し落ち着きなさい。ほら、深呼吸」
とりあえず二人を落ち着かせるために息を整えてもらう。
「はぁ……まずファリス。今はまだ忙し――」
「でも、今は暇だろうってローランが言ってたよ?」
ローラン……後で覚えてなさい。
飛んだとばっちりを受けたけれど、今は目の前の現状を何とかする方が先だろう。
「ファリス、今はちょっと……」
「ティアちゃん、少しは遊んだ方がいいよ。あまりコンをつめても逆に体に悪いよ」
一応正しいことを言っているけれど……いや。
「そうね。たまには息を抜くのも大切ね。だけど……もう少しお淑やかな入ってきなさい」
「そ、それじゃ……!」
そんな風に期待感に胸を膨らませているような表情はやめてほしい。最初は断ろうと思ったんだけど……これじゃ断りづらい。
結局――
「そうね。偶には息抜きも大切……ね」
「やった!」
「その代わり、あまりは目を外しすぎないように……ね」
「うん!」
ちらっと雪風にお伺いを立てると、彼女も『仕方ないですね』みたいな声が聞こえてきそうな顔をしていた。
「雪風……ごめんなさい」
「謝らないでください。僕も本当は息抜きしてほしいと思っていましたから」
無理のない純粋な笑顔でいてくれるけど、その瞳の奥には『僕も行きたい』という気持ちが見え隠れするようだ。
ただ、ファリスと一緒というのは嫌みたいだ。
とりあえず雪風には明日一緒に行こうと手紙だけ残しておこう。
……これじゃあシュタインに振り回されて、ファリス達に翻弄がされているような気がする。
好意は感じるけれど、いつシュタイン――ダークエルフ族が攻めてくるのに暢気な事を……と思うけれど、だからこそ気を遣っているのかも知れない。
――
ファリスはウキウキした様子で私を先導してくれている。
周囲は忙しそうに動き回っている。魔王祭で使われていた屋台がそのまま使われているようだった。
「ふふ、楽しいね」
まだ歩いているだけなのに、随分と楽しそうにしている。
「そう? そんなに楽しい?」
「うん! だってティアちゃんと一緒に歩くの、初めてなんだもん」
あまりにも眩しい笑顔を浮かべるファリスは輝いて見える。
ただ、彼女は気づいていないけれど私達はだいぶ目立っていた。
それもそうだろう。魔王祭の一位、二位が平気で歩いているのだから。
人目につくのは当たり前だし、むしろ目立ち過ぎる。
ファリスはよく気づかないな……と思ったけど、気づいていても気にも留めていない。
そこまで神経が太くない為、ついつい気にしてしまうけれど……こればっかりは慣れるしかなさそうだ。
後三日で新年を迎える。最後の準備にみんな大忙しなのだろう。
私が必死に国々に危険性を伝えている最中も、お祭りの準備は着々と進んでいっているということだ。
やるべきことは大体終わった。後は新年を迎えてからじゃないと動けない。
本当なら今すぐにでも動きたいのだけれど……現在ティリアースの正当な後継者として落ち着いている私が――王族が、気軽にいなくなるわけにはいかないのだ。
ただでさえ、今この瞬間でも自由にさせてもらっているのだしね。
結果、最後の三日は暇を持て余してしまっているというわけだ。
だからといって気軽に観光しようなんて気は起きないのだけれどね。
これから起こる事……そしてそれが終わった後の事。頭の中には色々な考えが湧き上がって過ぎていく。
せっかくファリス関連でのもやもやが大分晴れたのに、シュタインのせいでまた頭の中に霧が立ち込めてきた。
あっちが解決すればこっちから問題が起こる。これじゃあ、満足に学園生活を送ってすらいられない。
「困ったものね……」
深く長い溜息を漏らして天井を見ても、特に何が変わるわけもなく……若干怠惰な時間が――
「ティアちゃん! 遊ぼう!!」
バン! と大きな音を立てて扉が開かれて、外からファリスが飛び込んでくる。
「ま、待ちなさい!」
それを追いかけるように雪風が飛び込んできて、ファリスを捕まえようとする。
それをひらりとかわして私の目の前に躍りでる。
「えへへ」
「……ファリス」
軽く頭を抑えて花開いたかのような笑顔を浮かべているファリスを見つめる。
何か悪い事でもした? と言いたげなあどけない笑みに毒気を抜かれそうになるけれど、その後ろでまさに鬼のように怒っている雪風がいるせいでそれも薄れてしまった。
「二人とも、何をしているの?」
「ティアちゃんのところに遊びに!」
「エールティア様のところに行こうとするのを止めに」
片方はスキップでもしそうな程嬉しそうに。もう一方は冷たい視線を向けたままで。
再び深い溜息を吐いてしまう。
「ね、そんなに机にくっ付いてたら身体に悪いよ。偶には外に出て新年祭の見学に行こう?」
「誰のせいで机にくっつかないといけないのか、よく考えた方がいいかもしれませんね」
ファリスは本当に自由気ままだ。その元気さを少しは分けてもらいたいものだ。
「二人とも、少し落ち着きなさい。ほら、深呼吸」
とりあえず二人を落ち着かせるために息を整えてもらう。
「はぁ……まずファリス。今はまだ忙し――」
「でも、今は暇だろうってローランが言ってたよ?」
ローラン……後で覚えてなさい。
飛んだとばっちりを受けたけれど、今は目の前の現状を何とかする方が先だろう。
「ファリス、今はちょっと……」
「ティアちゃん、少しは遊んだ方がいいよ。あまりコンをつめても逆に体に悪いよ」
一応正しいことを言っているけれど……いや。
「そうね。たまには息を抜くのも大切ね。だけど……もう少しお淑やかな入ってきなさい」
「そ、それじゃ……!」
そんな風に期待感に胸を膨らませているような表情はやめてほしい。最初は断ろうと思ったんだけど……これじゃ断りづらい。
結局――
「そうね。偶には息抜きも大切……ね」
「やった!」
「その代わり、あまりは目を外しすぎないように……ね」
「うん!」
ちらっと雪風にお伺いを立てると、彼女も『仕方ないですね』みたいな声が聞こえてきそうな顔をしていた。
「雪風……ごめんなさい」
「謝らないでください。僕も本当は息抜きしてほしいと思っていましたから」
無理のない純粋な笑顔でいてくれるけど、その瞳の奥には『僕も行きたい』という気持ちが見え隠れするようだ。
ただ、ファリスと一緒というのは嫌みたいだ。
とりあえず雪風には明日一緒に行こうと手紙だけ残しておこう。
……これじゃあシュタインに振り回されて、ファリス達に翻弄がされているような気がする。
好意は感じるけれど、いつシュタイン――ダークエルフ族が攻めてくるのに暢気な事を……と思うけれど、だからこそ気を遣っているのかも知れない。
――
ファリスはウキウキした様子で私を先導してくれている。
周囲は忙しそうに動き回っている。魔王祭で使われていた屋台がそのまま使われているようだった。
「ふふ、楽しいね」
まだ歩いているだけなのに、随分と楽しそうにしている。
「そう? そんなに楽しい?」
「うん! だってティアちゃんと一緒に歩くの、初めてなんだもん」
あまりにも眩しい笑顔を浮かべるファリスは輝いて見える。
ただ、彼女は気づいていないけれど私達はだいぶ目立っていた。
それもそうだろう。魔王祭の一位、二位が平気で歩いているのだから。
人目につくのは当たり前だし、むしろ目立ち過ぎる。
ファリスはよく気づかないな……と思ったけど、気づいていても気にも留めていない。
そこまで神経が太くない為、ついつい気にしてしまうけれど……こればっかりは慣れるしかなさそうだ。
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