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300・魔王祭の合間
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いよいよ魔王祭も終わりが見えてきた。順当にいけば、準決勝でローラン。決勝でファリスと当たる事になるだろうけれど……まだわからない。
次の試合はレイアと雪雨だし、彼らなら――
いや、あまり意味のない妄想はやめよう。今までの戦いを見た限り、ファリスが決勝まで進んでくる。レイアと雪雨に実力がないとは言わない。二人とも決勝まで上がってこれるほどの実力を秘めている。
だけど……あのファリスはそれ以上だ。国の最終兵器だと言われても不思議じゃないくらいの力を隠している。
あの子はまだ人造命具を使っていない。隠している――というよりも、使う必要がないのだろう。それこそ私と同じように。
ローランも似たような感じだし、本当にあの二人は得体が知れない。けれど懐かしい気もする。やっぱり、転生前に最期をくれた彼と重ねてみているからだろう。その内の一人――ローランとは戦う事になるだろう。
彼の強さも底知れない。まだまだ隠している部分が多いし、真っ向からぶつかるにはまだ情報が足りない。
なにせローランはあまり強敵と戦っていない。実力の5割も見せていないだろう。
「エールティア様、また考え事ですか?」
ある程度慣れ親しんできた宿の一室で、夜空の月を見上げながら考え事をしていた。別に風情を求めて……という訳じゃないけれど、考え事をする時には一番だ。
「今後の事を考えると、ね」
「あのファリスという少女の事ですか」
本当は違うんだけれど、一応そういうことにしておいた。ファリスの事も考えていたしね。
「彼女の強さは底知れませんからね。ですが、まずは目の前の事から対処していくのが一番だと思います」
「……そうね」
私の次の対戦相手は――アルフやファリス達の影に隠れた形になっているけれど、猫人族の実力者で、私の初めての友達のリュネーのお兄様のベルンだった。
前回の魔王祭ではライニーに大敗を喫していたけれど、今年の魔王祭に向けて自身をかなり鍛えてきたみたいだ。
ほぼ無傷で勝ち上がってきたし、今ライニーと戦わせれば彼の方に軍配が上がるだろう。
だけれど……レイアと戦った時のアルフと同等かそれより若干下回る、というのが私の正直な感想だ。
何度か戦っているのを見ているからわかる。彼の魔導はあまり怖いところが無い。
カイゼルのように突出した技能がある訳でも、ファリスやローランのように豊富な魔力で徹底的にねじ伏せる訳でもない。
恐らく、人造命具を切り札として隠し持っているだろう。今回の魔王祭はそこまで至っている人が多い。ベルンの対戦相手にも使っている人物がいた。
その時も彼は逡巡するような表情をしていたし、魔王祭に向けて用意していると考えても間違いじゃないだろう。
決して油断出来ない。けれど、気負う必要はない……というのが私の素直な評価だった。
「ベルン……そういえば、リュネーはここに来ているの?」
「いえ、今はティリアースにいるでしょう。まだ学園があります。今年の有望な一年生は来るでしょうが……」
そういえば、私達も去年は魔王祭の見学に行ったんだっけ。
一年というのは早い。それも、イベントが目白押しだと余計にね。
「それじゃあ、後輩に侮られないように気を引き締めないとね」
「ふふふ、エールティア様なら心配ありませんよ。しかし、三年生も本戦参加は叶いませんでしたから、レイアとエールティア様に期待が掛かっているでしょうね」
「……三年生。ハクロ先輩も、破れてしまったのね」
聞いた話では、ファリスが出場している予選にいたらしい。
レイア、ジュール、雪風、私。他にもフォルスにウォルカにリュネー。二年生は実力派揃いだから、近場の予選に出るのを嫌った結果だろう。
そういえば、他の面々も適当な予選に出て、カイゼルやベルンとかち合ってしまったらしい。
ベルンやアルフも、ドラグニカや周辺国の予選じゃなくて、別の国のに出ていたらしい。
それを最初に聞いた時、通りでなんだか聞いた事のない人が勝ち上がってるな、と思った。
別の地方の他の国で修行の一環として出ていたそうだ。
正直、今回の三年生は運がなかったと言わざるを得ないだろう。
……そんな簡単に終わらせるには、行かないだろうけどね。
「私かレイアのどちらかが優勝すれば、少しは先輩達の無念も晴らせるでしょうね」
「お二人は今や、学園の期待を背負っているんですから、間違いありませんね」
雪風が期待に胸を膨らましていそうな感じで目を輝かせているけれど、重圧の掛け方が凄い。
それだけ彼女が私に期待をしているって事なんだろう。
なんて話してたら、ノックの音が聞こえてきた。
知り合いとは何も話していないはずだし、ジュールは今も病院で治療中だ。
ティリアースから誰かが来たって話も伝わってないし……一体誰なんだろう?
雪風が気を利かせて扉を開けてくれたけれど――驚愕の表情を浮かべて数歩下がっていた。
「……雪風、どうしたの?」
何かを答えようとしていた雪風よりも早く、その訪問者は姿を現した。
「ティアちゃん、こんばんは」
「……ファリス」
まさか向こうから訪ねてくるとは思わなかったから、ぽかんと口を開けて呆けてしまった。
一体、何の用事でほとんど面識のない私に会いに来たんだろう?
次の試合はレイアと雪雨だし、彼らなら――
いや、あまり意味のない妄想はやめよう。今までの戦いを見た限り、ファリスが決勝まで進んでくる。レイアと雪雨に実力がないとは言わない。二人とも決勝まで上がってこれるほどの実力を秘めている。
だけど……あのファリスはそれ以上だ。国の最終兵器だと言われても不思議じゃないくらいの力を隠している。
あの子はまだ人造命具を使っていない。隠している――というよりも、使う必要がないのだろう。それこそ私と同じように。
ローランも似たような感じだし、本当にあの二人は得体が知れない。けれど懐かしい気もする。やっぱり、転生前に最期をくれた彼と重ねてみているからだろう。その内の一人――ローランとは戦う事になるだろう。
彼の強さも底知れない。まだまだ隠している部分が多いし、真っ向からぶつかるにはまだ情報が足りない。
なにせローランはあまり強敵と戦っていない。実力の5割も見せていないだろう。
「エールティア様、また考え事ですか?」
ある程度慣れ親しんできた宿の一室で、夜空の月を見上げながら考え事をしていた。別に風情を求めて……という訳じゃないけれど、考え事をする時には一番だ。
「今後の事を考えると、ね」
「あのファリスという少女の事ですか」
本当は違うんだけれど、一応そういうことにしておいた。ファリスの事も考えていたしね。
「彼女の強さは底知れませんからね。ですが、まずは目の前の事から対処していくのが一番だと思います」
「……そうね」
私の次の対戦相手は――アルフやファリス達の影に隠れた形になっているけれど、猫人族の実力者で、私の初めての友達のリュネーのお兄様のベルンだった。
前回の魔王祭ではライニーに大敗を喫していたけれど、今年の魔王祭に向けて自身をかなり鍛えてきたみたいだ。
ほぼ無傷で勝ち上がってきたし、今ライニーと戦わせれば彼の方に軍配が上がるだろう。
だけれど……レイアと戦った時のアルフと同等かそれより若干下回る、というのが私の正直な感想だ。
何度か戦っているのを見ているからわかる。彼の魔導はあまり怖いところが無い。
カイゼルのように突出した技能がある訳でも、ファリスやローランのように豊富な魔力で徹底的にねじ伏せる訳でもない。
恐らく、人造命具を切り札として隠し持っているだろう。今回の魔王祭はそこまで至っている人が多い。ベルンの対戦相手にも使っている人物がいた。
その時も彼は逡巡するような表情をしていたし、魔王祭に向けて用意していると考えても間違いじゃないだろう。
決して油断出来ない。けれど、気負う必要はない……というのが私の素直な評価だった。
「ベルン……そういえば、リュネーはここに来ているの?」
「いえ、今はティリアースにいるでしょう。まだ学園があります。今年の有望な一年生は来るでしょうが……」
そういえば、私達も去年は魔王祭の見学に行ったんだっけ。
一年というのは早い。それも、イベントが目白押しだと余計にね。
「それじゃあ、後輩に侮られないように気を引き締めないとね」
「ふふふ、エールティア様なら心配ありませんよ。しかし、三年生も本戦参加は叶いませんでしたから、レイアとエールティア様に期待が掛かっているでしょうね」
「……三年生。ハクロ先輩も、破れてしまったのね」
聞いた話では、ファリスが出場している予選にいたらしい。
レイア、ジュール、雪風、私。他にもフォルスにウォルカにリュネー。二年生は実力派揃いだから、近場の予選に出るのを嫌った結果だろう。
そういえば、他の面々も適当な予選に出て、カイゼルやベルンとかち合ってしまったらしい。
ベルンやアルフも、ドラグニカや周辺国の予選じゃなくて、別の国のに出ていたらしい。
それを最初に聞いた時、通りでなんだか聞いた事のない人が勝ち上がってるな、と思った。
別の地方の他の国で修行の一環として出ていたそうだ。
正直、今回の三年生は運がなかったと言わざるを得ないだろう。
……そんな簡単に終わらせるには、行かないだろうけどね。
「私かレイアのどちらかが優勝すれば、少しは先輩達の無念も晴らせるでしょうね」
「お二人は今や、学園の期待を背負っているんですから、間違いありませんね」
雪風が期待に胸を膨らましていそうな感じで目を輝かせているけれど、重圧の掛け方が凄い。
それだけ彼女が私に期待をしているって事なんだろう。
なんて話してたら、ノックの音が聞こえてきた。
知り合いとは何も話していないはずだし、ジュールは今も病院で治療中だ。
ティリアースから誰かが来たって話も伝わってないし……一体誰なんだろう?
雪風が気を利かせて扉を開けてくれたけれど――驚愕の表情を浮かべて数歩下がっていた。
「……雪風、どうしたの?」
何かを答えようとしていた雪風よりも早く、その訪問者は姿を現した。
「ティアちゃん、こんばんは」
「……ファリス」
まさか向こうから訪ねてくるとは思わなかったから、ぽかんと口を開けて呆けてしまった。
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