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282・盛り上がる魔王祭
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闘技場の控え室には見覚えのある透明な魔導具が設置されていて、そこから会場の様子が見えた。
「去年、ドラグニカで見た時は大きかったけれど……小型化出来たのね」
「これならここにいても会場で何をしているかわかりますね」
大画面の方が詳細がわかる……と言っても、こっちでも十分伝わるか。
今は司会兼実況のマイクパフォーマンスと決闘官の自己紹介が行われていた。
司会兼実況は、去年も魔王祭で同じ役を務めたシャーリア。そして決闘官は……何故かガルドラとオルキアの二人だった。
『それで、なんで今回は決闘官が二人も? って疑問があると思うんですけど~……そこのところ、どうなんです?』
相変わらずの話し方のシャーリアだ。思っている事や口に出す言葉がそれなりにまともだからいいんだけど。
『今回の魔王祭は実力者揃いな上に、会場となるこの闘技場も、ごく最近に建てられた物だ。万が一の事態が起こった時に迅速に対応出来るよう、我とオルキア最上級決闘官殿が派遣されてきた……という訳だ』
『くふふ、ガルドラさん、ちょっと堅いですよ? もう少し柔らかく言ったら、みんなも喜ぶかと』
『そうだよー! ガルちゃんはちょっと、堅物すぎる! わたしなんて、こんな大きな舞台の司会を任されてどっきどきなんだから!』
また話が逸れていってるけど、観客達には受けているようだ。少しの間三人の雑談が花咲いて……一番最初に時間が押してきている事に気付いたのは、やっぱりシューリアだった。
『――とと、あまりお喋りしてる場合じゃないよね。今回も魔王祭のルールは同じで、勝ち抜きトーナメント! 一対一で戦って、最後まで勝ち抜いた人が優勝だよ!』
『今回は前魔王祭の優勝者のアルフ選手に加えて、実力者が多いですからね。ガルドラさんは誰に注目しているのですか?』
『そうだな。やはり、今年の夏に正式にティリアースの後継者となったエールティア・リシュファスだろう。未だにあの者の実力は底知れぬ』
意外にもガルドラの評価が高い。というか、真っ先に私の名前が挙がるとは思わなかった。
『ガルちゃんが真っ先に名前挙げるなんて珍しいね』
『シューリアさんは誰が気になりますか?』
『ええと、そうですね。カイゼルくんかな。やっぱり同じミスタリクス学園に通ってるから、応援したくなるんだよね』
『ああ、わかります。彼は実に銃捌きが素晴らしいですからね。他の選手とは違う武装をしている事も相まって、見るものを飽きさせない新鮮さがあります』
カイゼルの戦い方は私も気になる。あの時は結局的当てしか見た事ないから、本当はどんな風に戦うのか見てみたい。
出来れば観戦とかせずに私が肌で感じたいんだけど……こればっかりは運次第だろう。
『それで、オルキアちゃんは誰が気になるの?』
『ガルドラさんが挙げたエールティア姫殿下を除くなら……ファリスさんですね。まだまだ底知れない実力がここで見られるかも知れません。後はアルフさんと雪雨さんも気になりますね』
『やっぱり優勝したアルフくんと、彼と互角以上に戦った雪雨くんは外せないですよね』
むしろ最後まで彼らの名前が出なかった、というのはどうなのだろう? それだけこの魔王祭には実力者が揃っているという事なのだろう。
結局雑談に戻って盛り上がってるけど、観客の方は文句ひとつなく、彼女達の予想を聞いていた。
『色々と気になる人達が多くて、見たい組み合わせもあるんだけど……そろそろトーナメント表を発表しようと思いまーす』
シューリアの声と共に画面が変わって、そこに映し出されたのは対戦表のようだった。選手名鑑に載っていたからわかっていたけれど、改めて見ると結構な人数が参加しているのがわかる。
雪風とアルフはまた決勝戦前に当たる事になるみたいだ。私は……ローランやカイゼルとは途中で当たるけれど、レイア、ジュール、ファリスとは最後まで当たる事はなさそうだ。
正直、少し残念ではあるけれど……二人の成長を見る事も出来るし、それはそれでいいのかもしれない。
『左から順番に決闘を行なっていくことになってるから、最初の人達はこの後試合開始なので移動始めちゃってくださいねー。開始は……今から1時間後になるからね!』
「最初の決闘は……ファリスとエグゼスって魔人族の子ね」
「いきなり『一撃殺の女王』の決闘ですね」
雪風もあの選手名鑑を読んだのだろう。あのあだ名で呼ばれるのは少し恥ずかしい物があるけれど……彼女がどう戦うのかはかなり気になる。流石に本選に出てきた相手を一撃で終わらせるなんて出来ないだろうから、少しは手の内を見る事が出来るだろう。
「エールティア様。飲み物をご用意いたしますね」
「ありがとう」
使用人やジュールがいないからなのか、雪風は私の世話を率先してやりだかる。こういう事をさせる為に彼女を配下にした訳じゃないんだけど……言っても聞いてくれなさそうだから、好きにさせている。
嫌々やっているのじゃなかったら、それでもいいしね。
さてと、せっかくだから雪風の好意に甘えて、私はファリスの戦い方を見るのに集中するとしよう。
「去年、ドラグニカで見た時は大きかったけれど……小型化出来たのね」
「これならここにいても会場で何をしているかわかりますね」
大画面の方が詳細がわかる……と言っても、こっちでも十分伝わるか。
今は司会兼実況のマイクパフォーマンスと決闘官の自己紹介が行われていた。
司会兼実況は、去年も魔王祭で同じ役を務めたシャーリア。そして決闘官は……何故かガルドラとオルキアの二人だった。
『それで、なんで今回は決闘官が二人も? って疑問があると思うんですけど~……そこのところ、どうなんです?』
相変わらずの話し方のシャーリアだ。思っている事や口に出す言葉がそれなりにまともだからいいんだけど。
『今回の魔王祭は実力者揃いな上に、会場となるこの闘技場も、ごく最近に建てられた物だ。万が一の事態が起こった時に迅速に対応出来るよう、我とオルキア最上級決闘官殿が派遣されてきた……という訳だ』
『くふふ、ガルドラさん、ちょっと堅いですよ? もう少し柔らかく言ったら、みんなも喜ぶかと』
『そうだよー! ガルちゃんはちょっと、堅物すぎる! わたしなんて、こんな大きな舞台の司会を任されてどっきどきなんだから!』
また話が逸れていってるけど、観客達には受けているようだ。少しの間三人の雑談が花咲いて……一番最初に時間が押してきている事に気付いたのは、やっぱりシューリアだった。
『――とと、あまりお喋りしてる場合じゃないよね。今回も魔王祭のルールは同じで、勝ち抜きトーナメント! 一対一で戦って、最後まで勝ち抜いた人が優勝だよ!』
『今回は前魔王祭の優勝者のアルフ選手に加えて、実力者が多いですからね。ガルドラさんは誰に注目しているのですか?』
『そうだな。やはり、今年の夏に正式にティリアースの後継者となったエールティア・リシュファスだろう。未だにあの者の実力は底知れぬ』
意外にもガルドラの評価が高い。というか、真っ先に私の名前が挙がるとは思わなかった。
『ガルちゃんが真っ先に名前挙げるなんて珍しいね』
『シューリアさんは誰が気になりますか?』
『ええと、そうですね。カイゼルくんかな。やっぱり同じミスタリクス学園に通ってるから、応援したくなるんだよね』
『ああ、わかります。彼は実に銃捌きが素晴らしいですからね。他の選手とは違う武装をしている事も相まって、見るものを飽きさせない新鮮さがあります』
カイゼルの戦い方は私も気になる。あの時は結局的当てしか見た事ないから、本当はどんな風に戦うのか見てみたい。
出来れば観戦とかせずに私が肌で感じたいんだけど……こればっかりは運次第だろう。
『それで、オルキアちゃんは誰が気になるの?』
『ガルドラさんが挙げたエールティア姫殿下を除くなら……ファリスさんですね。まだまだ底知れない実力がここで見られるかも知れません。後はアルフさんと雪雨さんも気になりますね』
『やっぱり優勝したアルフくんと、彼と互角以上に戦った雪雨くんは外せないですよね』
むしろ最後まで彼らの名前が出なかった、というのはどうなのだろう? それだけこの魔王祭には実力者が揃っているという事なのだろう。
結局雑談に戻って盛り上がってるけど、観客の方は文句ひとつなく、彼女達の予想を聞いていた。
『色々と気になる人達が多くて、見たい組み合わせもあるんだけど……そろそろトーナメント表を発表しようと思いまーす』
シューリアの声と共に画面が変わって、そこに映し出されたのは対戦表のようだった。選手名鑑に載っていたからわかっていたけれど、改めて見ると結構な人数が参加しているのがわかる。
雪風とアルフはまた決勝戦前に当たる事になるみたいだ。私は……ローランやカイゼルとは途中で当たるけれど、レイア、ジュール、ファリスとは最後まで当たる事はなさそうだ。
正直、少し残念ではあるけれど……二人の成長を見る事も出来るし、それはそれでいいのかもしれない。
『左から順番に決闘を行なっていくことになってるから、最初の人達はこの後試合開始なので移動始めちゃってくださいねー。開始は……今から1時間後になるからね!』
「最初の決闘は……ファリスとエグゼスって魔人族の子ね」
「いきなり『一撃殺の女王』の決闘ですね」
雪風もあの選手名鑑を読んだのだろう。あのあだ名で呼ばれるのは少し恥ずかしい物があるけれど……彼女がどう戦うのかはかなり気になる。流石に本選に出てきた相手を一撃で終わらせるなんて出来ないだろうから、少しは手の内を見る事が出来るだろう。
「エールティア様。飲み物をご用意いたしますね」
「ありがとう」
使用人やジュールがいないからなのか、雪風は私の世話を率先してやりだかる。こういう事をさせる為に彼女を配下にした訳じゃないんだけど……言っても聞いてくれなさそうだから、好きにさせている。
嫌々やっているのじゃなかったら、それでもいいしね。
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