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201・初恋話
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気づけば日が過ぎるのはあっという間で、いよいよ待ちに待ったコルドラの20の日。毎年の事だけれど、やっぱり今年もいつもやってる事をしながら今日を迎えた。
転生前は誕生日なんてどうでも良かった。けれど、両親に祝福されて、知り合いに『おめでとう』と言われるのは、心に響くものがある。だから……コルドラの1の日になると、つい日付を数えてしまう。
「ティア様、おはようございます」
そしてそれはジュールも同じようだった。普段よりそわそわちらちらとこちらを見ている。何というか、小動物みたいだ。
「おはよう、ジュール。今日はいい天気ね」
「はい、そうですね!」
いつもと同じように挨拶をしてきたジュールは、私の挙動を気にするように後ろについて回ってきた。
そわそわとしている彼女を見ると、ちょっと呆れる。けれど、それ以上に私の誕生日を祝おうとしてくれている姿勢に嬉しさを感じるんだけどね。
「ティア様、今日は外出なさらないんですか?」
最近はみんなのプレゼントを選びに、よく外出する事も多かった。だけどもうみんなの分は選び終わったし、ジュールがどんな思いで聞いてきてるのかわかってる。
「今日は授業が終わったら、そのまま家に帰るつもりだけど……どうかした?」
「せっかくですから、リティアで出来なかったデートの続きをしましょう。あの時は結局、中途半端で終わってしまいましたから」
確かに、あの時は子供の暗殺集団に邪魔されたんだっけか。彼らは今はお父様が率いている密偵や隠密の人達の下で修練を積んでいるとか。そういうのが嫌な子にはメイドや執事といった仕事をさせているらしい。
あの時の続きをやるのは私も賛成だ。多分、準備に時間もかかるだろうし、その間は私がいない方が良いだろう。
「でも、大丈夫? ここだと、普段見慣れた場所も多くなるだろうけど……」
「それでも構いませんよ。私にとって、ティア様と一緒にいるだけで特別な事ですから」
そんな風に言われると、妙にくすぐったくなってしまう。それだけ、彼女の心の中では、私の存在が大きいって事なんだろう。
「わかった。それじゃあ放課後に、ね」
「はい!」
嬉しそうに笑ってくれるジュールと一緒に食堂に行って、いつも通りお父様とお母様に挨拶をして学園に行く。普段の日常と全く変わらないけれど、それも毎年だ。昼の間は色々と準備をする時間で、本格的に祝ってくれるのは夜になってから。それまでは私も向こうも、どこか浮ついた感じで過ごす――。
いつも通りとはいえ、じれったい感じがするけれど……仕方がない。夕方になるまで、この気持ちを抱えたまま待つとしようか。
――
学園に行った私を待っていたのは、いつも以上に挙動不審なみんなだった。リュネーは凄く何か言いたそうにしているし、レイアは熱い視線をこちらに向けてくる。雪風は一緒に登校している間も、どこかそわそわして、少しだけ注意力が乱れているようだ。本当はあまりよくないんだけど……私が言っても多分治らないだろうから仕方がない。
多少護衛に身が入らないくらいなら、大目に見る事にしよう。……いや、本当はしちゃいけないんだろうけど。
「ティアちゃん、やっぱりみんなから慕われてるんだね」
「……そうかもね」
「……あれ? ふふっ」
学生食堂でリュネーと一緒にサンドイッチを食べながら話していると、何故か彼女に笑われてしまった。別におかしい事は言ってないはずなんだけど……。
「ごめんね。だって、前のティアちゃんだったら『そうかしら?』って言ってただろうなって思って」
リュネーに言われるまで気づかなかったけれど、確かに以前なら周りの人の事なんて、あまり気づかなかったろう。敵意とかは常に晒されてきた訳だから、逆に敏感になってたけれど……両親を除けば、他人の好意なんてほとんどわからなかった。
「それだけ私も成長したって事ね」
「んー……そうかも」
自分の成長を実感して、少し誇らしげに胸を張ると、リュネーは何か歯切れの悪い返事をしてきた。
「やっぱり、あまり成長してない?」
「ううん。ティアちゃんも……私達も初めて会った頃よりずっと成長してると思うよ。でも……ティアちゃんの鈍感さはあまり進歩ないかも」
随分と失礼な事を言ってくれるが、それだって少しは進歩している……はずだ。
「ティアちゃんって、誰かを好きになったことある?」
「お父様とかお母様とか、好きだけど」
「そういう事じゃなくて……」
そう――そこまで言われて、ようやく『恋愛』の話なんだと気づいた。
「リュネーはあるの?」
「私は……その……お兄様、かな」
顔を真っ赤にして言う姿は可愛らしいけど、それはちょっと違うんじゃないかな? 私が言った好きと変わらない気がする。
視線に気づいたリュネーがぶすっとした表情でパンを頬張って、それをミルクで押し流した。
「私は本気だったの! いいでしょ……初恋がお兄様でも……。で、ティアちゃんは?」
「そうね……秘密」
「えー、私、ちゃんと言ったのにー!」
にゃあにゃあ騒いでるリュネーを軽く流して、あの日の事を思い出す。戦いの中でしか話をしなかったけれど、最後には殺されてしまったけれど……私は確かに、あの人に惹かれていた。
……そんな初恋をリュネーに言える訳がない。というか、こんな日にそんな話をしないで欲しい。
結構しつこく聞いてきたけれど、私が何も言わないと知って、諦めてくれた。その背中が流石に可哀想だったから、今度何か奢ってあげようかな。
転生前は誕生日なんてどうでも良かった。けれど、両親に祝福されて、知り合いに『おめでとう』と言われるのは、心に響くものがある。だから……コルドラの1の日になると、つい日付を数えてしまう。
「ティア様、おはようございます」
そしてそれはジュールも同じようだった。普段よりそわそわちらちらとこちらを見ている。何というか、小動物みたいだ。
「おはよう、ジュール。今日はいい天気ね」
「はい、そうですね!」
いつもと同じように挨拶をしてきたジュールは、私の挙動を気にするように後ろについて回ってきた。
そわそわとしている彼女を見ると、ちょっと呆れる。けれど、それ以上に私の誕生日を祝おうとしてくれている姿勢に嬉しさを感じるんだけどね。
「ティア様、今日は外出なさらないんですか?」
最近はみんなのプレゼントを選びに、よく外出する事も多かった。だけどもうみんなの分は選び終わったし、ジュールがどんな思いで聞いてきてるのかわかってる。
「今日は授業が終わったら、そのまま家に帰るつもりだけど……どうかした?」
「せっかくですから、リティアで出来なかったデートの続きをしましょう。あの時は結局、中途半端で終わってしまいましたから」
確かに、あの時は子供の暗殺集団に邪魔されたんだっけか。彼らは今はお父様が率いている密偵や隠密の人達の下で修練を積んでいるとか。そういうのが嫌な子にはメイドや執事といった仕事をさせているらしい。
あの時の続きをやるのは私も賛成だ。多分、準備に時間もかかるだろうし、その間は私がいない方が良いだろう。
「でも、大丈夫? ここだと、普段見慣れた場所も多くなるだろうけど……」
「それでも構いませんよ。私にとって、ティア様と一緒にいるだけで特別な事ですから」
そんな風に言われると、妙にくすぐったくなってしまう。それだけ、彼女の心の中では、私の存在が大きいって事なんだろう。
「わかった。それじゃあ放課後に、ね」
「はい!」
嬉しそうに笑ってくれるジュールと一緒に食堂に行って、いつも通りお父様とお母様に挨拶をして学園に行く。普段の日常と全く変わらないけれど、それも毎年だ。昼の間は色々と準備をする時間で、本格的に祝ってくれるのは夜になってから。それまでは私も向こうも、どこか浮ついた感じで過ごす――。
いつも通りとはいえ、じれったい感じがするけれど……仕方がない。夕方になるまで、この気持ちを抱えたまま待つとしようか。
――
学園に行った私を待っていたのは、いつも以上に挙動不審なみんなだった。リュネーは凄く何か言いたそうにしているし、レイアは熱い視線をこちらに向けてくる。雪風は一緒に登校している間も、どこかそわそわして、少しだけ注意力が乱れているようだ。本当はあまりよくないんだけど……私が言っても多分治らないだろうから仕方がない。
多少護衛に身が入らないくらいなら、大目に見る事にしよう。……いや、本当はしちゃいけないんだろうけど。
「ティアちゃん、やっぱりみんなから慕われてるんだね」
「……そうかもね」
「……あれ? ふふっ」
学生食堂でリュネーと一緒にサンドイッチを食べながら話していると、何故か彼女に笑われてしまった。別におかしい事は言ってないはずなんだけど……。
「ごめんね。だって、前のティアちゃんだったら『そうかしら?』って言ってただろうなって思って」
リュネーに言われるまで気づかなかったけれど、確かに以前なら周りの人の事なんて、あまり気づかなかったろう。敵意とかは常に晒されてきた訳だから、逆に敏感になってたけれど……両親を除けば、他人の好意なんてほとんどわからなかった。
「それだけ私も成長したって事ね」
「んー……そうかも」
自分の成長を実感して、少し誇らしげに胸を張ると、リュネーは何か歯切れの悪い返事をしてきた。
「やっぱり、あまり成長してない?」
「ううん。ティアちゃんも……私達も初めて会った頃よりずっと成長してると思うよ。でも……ティアちゃんの鈍感さはあまり進歩ないかも」
随分と失礼な事を言ってくれるが、それだって少しは進歩している……はずだ。
「ティアちゃんって、誰かを好きになったことある?」
「お父様とかお母様とか、好きだけど」
「そういう事じゃなくて……」
そう――そこまで言われて、ようやく『恋愛』の話なんだと気づいた。
「リュネーはあるの?」
「私は……その……お兄様、かな」
顔を真っ赤にして言う姿は可愛らしいけど、それはちょっと違うんじゃないかな? 私が言った好きと変わらない気がする。
視線に気づいたリュネーがぶすっとした表情でパンを頬張って、それをミルクで押し流した。
「私は本気だったの! いいでしょ……初恋がお兄様でも……。で、ティアちゃんは?」
「そうね……秘密」
「えー、私、ちゃんと言ったのにー!」
にゃあにゃあ騒いでるリュネーを軽く流して、あの日の事を思い出す。戦いの中でしか話をしなかったけれど、最後には殺されてしまったけれど……私は確かに、あの人に惹かれていた。
……そんな初恋をリュネーに言える訳がない。というか、こんな日にそんな話をしないで欲しい。
結構しつこく聞いてきたけれど、私が何も言わないと知って、諦めてくれた。その背中が流石に可哀想だったから、今度何か奢ってあげようかな。
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