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183・幼き暗殺集団
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奇襲をかけたはずなのに、あっさりと防がれたことに対して、子供達は焦りの表情を浮かべていた。
それだけで彼らがプロではないことがわかる。こういう手合いの熟練者は、多少の失敗に感情を表すことなんてしない。
相手の油断を誘う芝居……ならやるだろうけど、少なくとも彼らは本当に焦り、戸惑っているようだった。
「ティア様、大丈夫ですか?」
慌てるようにジュールは声を上げているけれど、五人の内、二人が彼女の行く手を阻む様に武器を抜いて警戒していた。あちらの方には毒が塗られていないみたいで、どうやら私を仕留める役目を担ってる子だけがそういう武器を持っているみたいだ。
「私は大丈夫よ。それより、貴女は自分の心配をしなさい」
私の心配をしすぎて、自分の身を危険にさらすような真似だけはやめて欲しい。その思いが強かっただけに、少し強い口調で言う事にした。
「で、ですが……」
「安心しなさい。この程度の相手に私が殺されるなんて、有り得ないから」
「……随分と余裕そうじゃないか」
ジュールを安心させるのと、彼らを挑発するのを兼ねた発言だったけど、どっちも思惑通り過ぎるくらいに乗ってくれた。
五人の中でも一番の年長だと思われる子供が、苛立つような視線を向けてきた。
一応、まだ何か策はあるみたいだけれど……それくらい見抜けない私では無い。大方、それに気づかれないように言葉を掛けたのだろう。
だけど、それくらいわからない私では無い。建物の影に一人。後は遠くから私を狙っている気配を感じる。
「そっちこそ随分小さいけれど、子供のお使いにしては物騒なんじゃない?」
「……言ってろ!」
にやりと笑ったリーダーらしき少年の言葉と同時に、矢にしては鋭く風を切る音が聞こえる。速いけれど、狙いが甘い。
「【カラフル・リフレクション】」
発動した魔導が膜のように私の周囲を包み込んで、飛んできた攻撃を半透明な緑色に変わった膜が優しく受け止める。放たれたそれが、攻撃してきた子に向かって跳ね返っていくのを見届けると、遠くから悲鳴が上がった。
やっぱり魔導か。【カラフル・リフレクション】が緑色に変わったという事は、風に関する系統。半透明なのは私を致死たらしめる事はないってところだ。
「えっ……!?」
隠れていたであろう子供の声と、驚きに顔を歪める三人を横目に、速やかに集団の内側に潜り込む。
一番早く復帰したリーダーの子が対応してくるけれど、反応が遅い。
近くにいた女の子の足を払うように蹴って、バランスを崩す。そのまま地面に倒れる前にかかと落としを浴びせる。まともに頭に当たったからか、くぐもった悲鳴を上げながら、動く事も出来ずに地べた這いつくばった。
「くそっ……子供に向かってそこまでやるかよ!」
「当たり前じゃない。命を狙ってきたのだから、それ相応の覚悟をしてもらわないとね。手加減してあげてるのだから、この慈悲をしっかりと噛み締めなさい」
例え子供だろうと、命を狙ってくるのであれば敵でしかない。レイアの時みたいに誰かに脅されている……というのなら話は別だけど、彼らはその類じゃない。
虐げられている弱者は、常に何かに怯えて生きている。彼らの中にもそれは見えたけど……質が違う。それに、人を殺す事にも躊躇がなさすぎる。そんな暗殺者もどきを優しく扱うことなんて、する訳がない。
――それは、ジュールも例外じゃなかった。彼らの幼さに上手く手が出せず、苦戦すると思っていたんだけれど、倒した子供を魔導で束縛する事で上手く戦っていた。
「ティア様!」
「そこの建物の影にも一人いるから、お願い!」
「はい!」
笑顔を見せながら、周囲の警戒を怠らない彼女の姿に成長を感じて、残った二人を相手にすることにした。
「くそっ、話と違うじゃないか…….!」
「残念だけど、貴方程度じゃ相手にもならないわね。これでおしまい。【フレアミスト】」
遠慮なく炎の霧を生み出す魔導を発動させて、残った二人の身体を焼く――のは流石に後味が悪いから、軽く火傷する程度の火力で留めておいた。
「あっ、ぎゃあぁぁぁ!!」
それでも全身に広がる痛みに耐えられるわけもなく、苦しそうに悲鳴を上げて転がっている二人。炎の霧が収まっても苦しんでいる二人の意識を絶つ為の一撃を浴びせてやった。
このまま痛みにもがき続けるよりはずっとマシだろう。いや、この後の尋問も合わせたら、後の方がずっと苦しいかもしれないけどね。
「ティア様、お怪我はありませんか?」
「ええ。これくらい平気よ。それより……来て早々、面倒な事になったわね」
地面に転がっている彼らを見下ろして、深いため息が出そうになる。
三日もしない内にこんなのが動き出すなんて、本当に先が思いやられる。あらかじめ計画されているって事は、リティアにいる間はいつも以上に気を張る必要があるって事になる。
去年はいきなり襲ってくるなんてなかったのに、これも王位継承争いに加わるのが原因なのかもしれない。
とりあえず……【ナイトメアトーチャー】で情報を引き出してからお父様達に引き渡そう。先に渡してしまったら、どんなのが後ろにいるのか教えてもらえないかもしれないしね。
それだけで彼らがプロではないことがわかる。こういう手合いの熟練者は、多少の失敗に感情を表すことなんてしない。
相手の油断を誘う芝居……ならやるだろうけど、少なくとも彼らは本当に焦り、戸惑っているようだった。
「ティア様、大丈夫ですか?」
慌てるようにジュールは声を上げているけれど、五人の内、二人が彼女の行く手を阻む様に武器を抜いて警戒していた。あちらの方には毒が塗られていないみたいで、どうやら私を仕留める役目を担ってる子だけがそういう武器を持っているみたいだ。
「私は大丈夫よ。それより、貴女は自分の心配をしなさい」
私の心配をしすぎて、自分の身を危険にさらすような真似だけはやめて欲しい。その思いが強かっただけに、少し強い口調で言う事にした。
「で、ですが……」
「安心しなさい。この程度の相手に私が殺されるなんて、有り得ないから」
「……随分と余裕そうじゃないか」
ジュールを安心させるのと、彼らを挑発するのを兼ねた発言だったけど、どっちも思惑通り過ぎるくらいに乗ってくれた。
五人の中でも一番の年長だと思われる子供が、苛立つような視線を向けてきた。
一応、まだ何か策はあるみたいだけれど……それくらい見抜けない私では無い。大方、それに気づかれないように言葉を掛けたのだろう。
だけど、それくらいわからない私では無い。建物の影に一人。後は遠くから私を狙っている気配を感じる。
「そっちこそ随分小さいけれど、子供のお使いにしては物騒なんじゃない?」
「……言ってろ!」
にやりと笑ったリーダーらしき少年の言葉と同時に、矢にしては鋭く風を切る音が聞こえる。速いけれど、狙いが甘い。
「【カラフル・リフレクション】」
発動した魔導が膜のように私の周囲を包み込んで、飛んできた攻撃を半透明な緑色に変わった膜が優しく受け止める。放たれたそれが、攻撃してきた子に向かって跳ね返っていくのを見届けると、遠くから悲鳴が上がった。
やっぱり魔導か。【カラフル・リフレクション】が緑色に変わったという事は、風に関する系統。半透明なのは私を致死たらしめる事はないってところだ。
「えっ……!?」
隠れていたであろう子供の声と、驚きに顔を歪める三人を横目に、速やかに集団の内側に潜り込む。
一番早く復帰したリーダーの子が対応してくるけれど、反応が遅い。
近くにいた女の子の足を払うように蹴って、バランスを崩す。そのまま地面に倒れる前にかかと落としを浴びせる。まともに頭に当たったからか、くぐもった悲鳴を上げながら、動く事も出来ずに地べた這いつくばった。
「くそっ……子供に向かってそこまでやるかよ!」
「当たり前じゃない。命を狙ってきたのだから、それ相応の覚悟をしてもらわないとね。手加減してあげてるのだから、この慈悲をしっかりと噛み締めなさい」
例え子供だろうと、命を狙ってくるのであれば敵でしかない。レイアの時みたいに誰かに脅されている……というのなら話は別だけど、彼らはその類じゃない。
虐げられている弱者は、常に何かに怯えて生きている。彼らの中にもそれは見えたけど……質が違う。それに、人を殺す事にも躊躇がなさすぎる。そんな暗殺者もどきを優しく扱うことなんて、する訳がない。
――それは、ジュールも例外じゃなかった。彼らの幼さに上手く手が出せず、苦戦すると思っていたんだけれど、倒した子供を魔導で束縛する事で上手く戦っていた。
「ティア様!」
「そこの建物の影にも一人いるから、お願い!」
「はい!」
笑顔を見せながら、周囲の警戒を怠らない彼女の姿に成長を感じて、残った二人を相手にすることにした。
「くそっ、話と違うじゃないか…….!」
「残念だけど、貴方程度じゃ相手にもならないわね。これでおしまい。【フレアミスト】」
遠慮なく炎の霧を生み出す魔導を発動させて、残った二人の身体を焼く――のは流石に後味が悪いから、軽く火傷する程度の火力で留めておいた。
「あっ、ぎゃあぁぁぁ!!」
それでも全身に広がる痛みに耐えられるわけもなく、苦しそうに悲鳴を上げて転がっている二人。炎の霧が収まっても苦しんでいる二人の意識を絶つ為の一撃を浴びせてやった。
このまま痛みにもがき続けるよりはずっとマシだろう。いや、この後の尋問も合わせたら、後の方がずっと苦しいかもしれないけどね。
「ティア様、お怪我はありませんか?」
「ええ。これくらい平気よ。それより……来て早々、面倒な事になったわね」
地面に転がっている彼らを見下ろして、深いため息が出そうになる。
三日もしない内にこんなのが動き出すなんて、本当に先が思いやられる。あらかじめ計画されているって事は、リティアにいる間はいつも以上に気を張る必要があるって事になる。
去年はいきなり襲ってくるなんてなかったのに、これも王位継承争いに加わるのが原因なのかもしれない。
とりあえず……【ナイトメアトーチャー】で情報を引き出してからお父様達に引き渡そう。先に渡してしまったら、どんなのが後ろにいるのか教えてもらえないかもしれないしね。
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