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173・久しぶりの故郷
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竜人族の国ドラグニカから私達の国ティリアースに帰ったのはズーラの25の日になった。魔王祭の本選が始まったのがパトオラの10の日だったから……一か月半といったところか。順調にいけば一か月くらいで終わるって話だったけれど……私とライニーが決闘する為に必要になった時間。それとドラグニカから中継都市を経由してティリアースに戻る時の日程を考えたら、比較的に早い方って事だろう。
ワイバーン発着場に辿り着いた私達を出迎えてくれたのは、潮の香りを含んだ風と、懐かしい風景だった。
空を飛んでいる時にも同じ風を感じていたけれど、実際地面に足をつけてゆっくりと深呼吸をすると、全く違う気持ちになる。
「なんだか、帰ってきたぁ~! って気分になるね」
「そうだな。久しぶりに学園の奴らとも会いたくなってくるぜ」
腕を回しながら嬉しそうにフォルスは遠い場所を見ているようだけれど、私は早く家に帰ってお父様達の顔を見たい。なんだかんだ言って夏休みが終わって一か月しかここにいなかったんだから、ゆっくりと家で休みたいという気持ちが湧き上がって当然だろう。お土産も渡したいし、ジュールとも会いたい。メイドの子が淹れてくれた深紅茶も久しぶりに飲んでみたい。やりたいことはいっぱいあるけれど、主に館に帰ってからの事だった。
「私は久しぶりにお魚が食べたくなってきたなぁ」
「僕は本屋に行ってみたいな」
みんな行きたいところを言いながら、懐かしさを噛み締めている中、一人だけ私に視線を向けてくる子がいた。
「あの……エールティア様。僕との約束の事なのですが……」
「言いたいことはわかってる。けれど、とりあえず帰ってきてすぐじゃなくてもいいでしょう? そうね……二日後の27の日にお父様に紹介してあげるから」
「――! ありがとうございます!!」
具体的な日数を言ったのが幸いしたのか、雪風は嬉しそうに微笑んでくれた……んだけれど、それを聞きつけたレイアが怪しいものでもみるかのような目で私達を見てきた。
「ティアちゃん、紹介するってまさか――」
「雪風が聖黒族に憧れているそうだから、お父様を紹介しようと思って」
「……ああ、そっか。ティアちゃんのお父様ってそうだっけ」
聖黒族として生を受けたお父様は私と同じように年齢と不相応なくらい幼い。だからこそ、たまに義兄妹かなにかと勘違いしている人もいる。そのせいか、人々の理想像の――大人のお父様が独り歩きしている事も多い。後、あまりお父様と私が似ていないのも原因の一つだろう。
「ティアちゃんのお母様は魔人族?」
「いいえ、スライム族よ。ただ、【契約】したときにあの姿に生まれ変わったって言ってた」
普通の聖黒族は幼くて歳を取っても見た目が変わらないのだけれど、お母様の方は大人の女性な姿をしているのはそういう理由だった。これでお母様が聖黒族だったら、王位継承権はお母様にあるからそっちの方が面倒が少なくて良かったんだけれどね。
なんでもお父様は【契約】後のお母様の姿を見て『やっぱり……』って思ったんだそうだ。それから一緒にいて、互いに愛し合って私が生まれた――というのをいちゃいちゃしながら話してくれた。そろそろ二人目が云々言っていたから、多分大人になる前に弟か妹が出来るんじゃないかな。
……妹だったら、神輿として担ぎ上げてきそうな輩が出てくるかもだから、出来れば弟の方が良い。
「へえ……そうなんだー」
「『そうなんだー』……って、ここで生活してるんだから、少しは覚えておきなよ……聖黒族はスライム族以外の他種族とは結婚しないんだよ」
「し、知ってるってば」
レイアがあまり興味なさげに聞いていたからか、リュネーは念押しに軽く後ろに身体を引いていた。
「みんなご苦労だったな」
「ベルーザ先生……。これからどうするんですかー?」
ベルーザ先生がワイバーン発着場の人と話していたから、ついつい話し込んでしまった。
「まずはお疲れ様と言わせてくれ。お前達がこの魔王祭で得た物、気付いた事。それらはきっと、来年の――いや、お前達の人生の役に立つことだろう」
私達全員が視界に収まるような場所まで歩いて、一人一人の顔をしっかりと確かめているようだった。
「この場に及んであまり長い話をする事もないだろう。ワイバーン発着場まで戻った。今回の長い旅もこれで終わりだ。本を買いに行ってもいい。何かを食べに行ってもいい。……が、明日は学園にやってくることをくれぐれも忘れないように! それでは解散だ!」
先生は多少力強くらしい事を言ったかと思うと、そのまま解散宣言をして、彼自身はワイバーン発着場の人達のところに戻っていった。最初の方は困惑が広がっていたけれど……むしろベルーザ先生があっさりとしていたおかげで、これで本当に帰ってきたんだ……という実感が湧き上がってきた。
「よし、それじゃあ早速、帰ってきたって気持ちを確かめに行くかな」
「僕も一緒に行くよー」
フォルスとウォルカは、早速町の方に向かうようで、残った三人も後に続くような形で別々に私達の故郷――アルファスを歩き回ることにしたようだ。
一緒に行こうと誘われたけれど、今は館の方に――私の家族に、ただいまを言いたかった。
ワイバーン発着場に辿り着いた私達を出迎えてくれたのは、潮の香りを含んだ風と、懐かしい風景だった。
空を飛んでいる時にも同じ風を感じていたけれど、実際地面に足をつけてゆっくりと深呼吸をすると、全く違う気持ちになる。
「なんだか、帰ってきたぁ~! って気分になるね」
「そうだな。久しぶりに学園の奴らとも会いたくなってくるぜ」
腕を回しながら嬉しそうにフォルスは遠い場所を見ているようだけれど、私は早く家に帰ってお父様達の顔を見たい。なんだかんだ言って夏休みが終わって一か月しかここにいなかったんだから、ゆっくりと家で休みたいという気持ちが湧き上がって当然だろう。お土産も渡したいし、ジュールとも会いたい。メイドの子が淹れてくれた深紅茶も久しぶりに飲んでみたい。やりたいことはいっぱいあるけれど、主に館に帰ってからの事だった。
「私は久しぶりにお魚が食べたくなってきたなぁ」
「僕は本屋に行ってみたいな」
みんな行きたいところを言いながら、懐かしさを噛み締めている中、一人だけ私に視線を向けてくる子がいた。
「あの……エールティア様。僕との約束の事なのですが……」
「言いたいことはわかってる。けれど、とりあえず帰ってきてすぐじゃなくてもいいでしょう? そうね……二日後の27の日にお父様に紹介してあげるから」
「――! ありがとうございます!!」
具体的な日数を言ったのが幸いしたのか、雪風は嬉しそうに微笑んでくれた……んだけれど、それを聞きつけたレイアが怪しいものでもみるかのような目で私達を見てきた。
「ティアちゃん、紹介するってまさか――」
「雪風が聖黒族に憧れているそうだから、お父様を紹介しようと思って」
「……ああ、そっか。ティアちゃんのお父様ってそうだっけ」
聖黒族として生を受けたお父様は私と同じように年齢と不相応なくらい幼い。だからこそ、たまに義兄妹かなにかと勘違いしている人もいる。そのせいか、人々の理想像の――大人のお父様が独り歩きしている事も多い。後、あまりお父様と私が似ていないのも原因の一つだろう。
「ティアちゃんのお母様は魔人族?」
「いいえ、スライム族よ。ただ、【契約】したときにあの姿に生まれ変わったって言ってた」
普通の聖黒族は幼くて歳を取っても見た目が変わらないのだけれど、お母様の方は大人の女性な姿をしているのはそういう理由だった。これでお母様が聖黒族だったら、王位継承権はお母様にあるからそっちの方が面倒が少なくて良かったんだけれどね。
なんでもお父様は【契約】後のお母様の姿を見て『やっぱり……』って思ったんだそうだ。それから一緒にいて、互いに愛し合って私が生まれた――というのをいちゃいちゃしながら話してくれた。そろそろ二人目が云々言っていたから、多分大人になる前に弟か妹が出来るんじゃないかな。
……妹だったら、神輿として担ぎ上げてきそうな輩が出てくるかもだから、出来れば弟の方が良い。
「へえ……そうなんだー」
「『そうなんだー』……って、ここで生活してるんだから、少しは覚えておきなよ……聖黒族はスライム族以外の他種族とは結婚しないんだよ」
「し、知ってるってば」
レイアがあまり興味なさげに聞いていたからか、リュネーは念押しに軽く後ろに身体を引いていた。
「みんなご苦労だったな」
「ベルーザ先生……。これからどうするんですかー?」
ベルーザ先生がワイバーン発着場の人と話していたから、ついつい話し込んでしまった。
「まずはお疲れ様と言わせてくれ。お前達がこの魔王祭で得た物、気付いた事。それらはきっと、来年の――いや、お前達の人生の役に立つことだろう」
私達全員が視界に収まるような場所まで歩いて、一人一人の顔をしっかりと確かめているようだった。
「この場に及んであまり長い話をする事もないだろう。ワイバーン発着場まで戻った。今回の長い旅もこれで終わりだ。本を買いに行ってもいい。何かを食べに行ってもいい。……が、明日は学園にやってくることをくれぐれも忘れないように! それでは解散だ!」
先生は多少力強くらしい事を言ったかと思うと、そのまま解散宣言をして、彼自身はワイバーン発着場の人達のところに戻っていった。最初の方は困惑が広がっていたけれど……むしろベルーザ先生があっさりとしていたおかげで、これで本当に帰ってきたんだ……という実感が湧き上がってきた。
「よし、それじゃあ早速、帰ってきたって気持ちを確かめに行くかな」
「僕も一緒に行くよー」
フォルスとウォルカは、早速町の方に向かうようで、残った三人も後に続くような形で別々に私達の故郷――アルファスを歩き回ることにしたようだ。
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