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138・考えなしの少女

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レイアを無事に見つける事が出来た私は、そのまま彼女の手を握ってエンドラル学園へと行く事になった。
途中で店の人に聞いたりしてなんとか辿り着くことが出来たんだけど……色々余計な事をしてしまったせいですっかり日が暮れてしまった。もうすっかり暗くなって、星も見えている。

「あ、あの……ティアちゃん、本当にごめんね」
「気にしないで。友達でしょう?」

そう言うと、レイアは少しだけ顔を俯かせるけれど、嬉しそうに笑っていることがわかる。
あの時――レイアの姿を見つけた時。エルフ族……だと思う男が手を差し伸ばしていたのが見えた。それに嫌な予感がして声を上げて呼びかけたんだけど……レイアのところに着いた時には、その男の姿はなかった。

ちょっと人が邪魔をして見えなかった隙にいなくなったらしい。

こんな場所で騒動になるのなんてごめんだったから、良かったんだけど……あの男は何だったんだろう。
後、丁度エルフ族の男の隣にも誰かいたようだったけれど、それは男や人に隠れていて良く確認できなかった。レイアに聞いても、あまり怖くない魔人族の男の人だった事くらいしかわからなかった。

その男の事が何故か気になって……もやもやした気持ちを抱えたまま、エンドラル学園の門のところまで行くと――そこにはベルーザ先生が待っていた。

「ベルーザ先生。待っていてくれたの?」
「……当たり前だ。お前達は僕の生徒だからな」
「だったら探しに来てくれたらいいのに」
「馬鹿を言うな。ここはリーティファ学園じゃないんだ。他の生徒を守るのも僕の役目だからな」

言っている事だけは立派だけど、要は何にもしなかったって事なんじゃないだろうか?
なんて思っていると、それを察したかのようにベルーザ先生は深いため息を吐いた。

「お前の後を誰も追いかけようとしなかったのはどうしてだと思う?」

それは、リュネーも雪風も、自分まではぐれる訳にはいかないって思いがあったからじゃ……と思った私を小馬鹿にするような表情を浮かべている先生に、内心苛立ちを感じてしまう。

「誰も彼もがお前の考えている通りに動いている訳じゃない。僕が止めなかったら、みんながバラバラでレイアを探すことになっていたんだぞ? それがどういう事になるか……考えつかないお前でもないだろう」

そこまではっきり言われて、私もようやく事の重大さを悟る事になった。
もし、ベルーザ先生が止めずに探すことを決めていたら……きっともっと深刻な事態になっていただろう。あんなエルフ族がいたという事実が、私に尚更そう思わせる。

「利口ぶるのも良い。先生である僕が言うのもなんだけど、お前は自分勝手が出来るほどの力を持っている。本当なら、学園で学ぶこともないのかもしれない。だが――」

きつく睨んだその目に、何も言えずに一歩後ろに下がってしまう。悪い事をしたという自覚が、私の意識を自然とそうさせてしまった。気圧されている私に、ベルーザ先生はあくまで冷静なまま。

「――だが、お前はまだ子供だ。どんなに賢くてもな。お前がレイアを大切な友達だと思っているのはよくわかる。だけど、それと同じくらい……いや、それ以上にお前を大切に思ってくれている人だっている。それをちゃんと学んでいけ」
「……わかりました」
「よし、なら早く入りなさい。本当は学園長に挨拶しなければならないところだけど……お前達も歩き回って疲れただろう。明日の朝に会えるように向こうと話を付けておいたから、今日はもう休め」

言いたいことだけ言ったベルーザ先生は、さっさと学園の中に行こう……として、戻ってきた。

「どうしたんですか?」
「いや……そういえば寮の場所を伝え忘れていたな……と思ってな」

どこか抜けているところを見せてくれたベルーザ先生は、みんなが滞在している寮の位置を教えてくれた。最後にビシッと決めてくれていたら少しは格好良いものの、これじゃあ台無しだ。

「そういえば……エールティアは少し覚悟して寮に向かえよ?」
「……え、それはどういう――」

どういうことか、と聞こうとしたけれど、答えを聞く前に察してしまった。流石にあの話を聞かされて思いつかない程鈍感じゃなかった。

「リュネーと雪風がどれだけお前の事を心配したと思っているんだ。存分に怒られるといいさ」

それだけ言って、今度こそ本当にベルーザ先生はどこかに行ってしまった。

「みんな、心配してるよね……」
「でしょうね。これはもう……私達が悪いという事からね」
「う、うん」
「大丈夫。みんな心配して怒ってるだけだから」

どれだけ怒られるかわからないからか、少し不安げな表情をしているレイアを、出来るだけ優しく宥める。誰もレイアが迷子になったことを責めたりはしない。心配していただけだからね。

「さ、こうしていても仕方ないし、行きましょうか」
「あ……うん」

中々歩こうとしないレイアの手を握って、寮の方に向かって歩き出した。
何か言いたげな声を上げていたけれど、このままここにいても始まらないしね。

大人しく、二人で怒られるとしよう。
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