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91・中庭のお茶会
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フェッツから現在のシルケットやリュネーを取り巻く環境について話が終わって、私達は部屋から外に出ていた。
「ここからまっすぐ歩けば、リュネー殿下がお茶をしている中庭の方に辿り付けますにゃ。それと……貴女様に話した情報は、くれぐれもご内密にお願いしますにゃ」
「ええ。こんな事、リュネーと話しても仕方ないしね」
話すならもっと楽しい話をする。それに、本当はあまり話すべき事柄じゃなかったはずだ。それをわざわざ話してくれたのだから、裏切るような真似はしたくなかった。
「ありがとうございますにゃ」
「貴方はどうするの? リュネーのところに一緒に行く?」
「行けませんですにゃ。そろそろ職務に戻らなければなりませんにゃ。それに……せっかくのお友達との時間を邪魔するほど、無粋ではないですにゃ」
「そう。じゃあ、最後に一つ。教えてもらって良い?」
「はいですにゃ。なんですかにゃ?」
猫人族が語尾に『にゃ』とか『みゃ』とか付けて話すのが普通なのは、私も知ってる。そんな環境で育ったリュネーも本当の喋り方はそっちの方だということも十分理解出来る。だけど――
「リュネーの笑い方。『にゃは』って、あの子の本当の笑い方なの?」
鳥車の中で、リュネーは確かにそういう風に笑ってた。あまりにも自然だからなにも言わなかったけど、今までそんな笑い声を上げる子じゃなかったから、印象に残っていたのだ。
そんな私の質問に身構えていたフェッツは、急に呆れたような苦笑いを浮かべてきた。
「そうですにゃ。多分、彼女のお父様である国王陛下の笑い方が移ったのだと思いますにゃ。ですが学園に入学する時に少しばかり問題が起きましたにゃ。リュネー殿下に近い姿――獣人族の子息は、私達みたいに喋ることはしませんにゃ。あの方はそれを気にして……」
だから学園では本来の自分が出ないように気遣ってたって訳か。それでも、リュネーが自分の国に招待してくれたという事は、その分信頼されてるって事なんだろう。
「……そう。よくわかった。ありがとう」
「いいえ。出来ればこれからも、リュネー殿下とは仲良くしていただけたら、嬉しく思いますにゃ」
フェッツはそれだけ言うと、リュネーのところに行くように促してくれた。とりあえず頷いて、彼女の待っている中庭に足を踏み入れると……そこは綺麗な花の道や花壇が存在していた。
綺麗に彩られたその中央。開けた場所に屋根のついた小さな建物に、椅子とテーブルが設置されている。
「あ、ティアちゃーん。こっちにゃー」
嬉しそうに耳をぴくぴくさせて、笑顔で手を振ってる。振り返しながらリュネーのところに行くと、いきなり立ち上がって頭を下げてきた。
「さっきはごめんなさいにゃ。私……」
「別に気にしてないわ。それより、ジュールはこっちに来た?」
「ジュールちゃん? うん、来たにゃ」
フェッツに案内して貰ってる間、ジュールとすれ違うかもと思ったけれど、全く会わなかった。タイミング悪かったのかも知れない……と思ったけど、やっぱりその通りだったみたい。
「いきなり謝られたけど……なにかあったのかにゃー?」
かなりリラックスしてるのか、語尾のせいも相まってふわふわしてるような雰囲気を醸し出してるような気がする。
「多分、雪桜花でぼこぼこにされたのが原因だと思う」
「……向こうでも巻き込まれたのかにゃ?」
心配そうに私の事を見てくるリュネーの視線は、さっきのフェッツの疑った目とは大きな違いがあった。
「リュネーは雪雨って知ってる?」
「えっと……鬼人族の事はあまり知らないにゃ。ティリアースの事はそれなりに教えられたけどにゃ」
「出雲大将軍って偉い鬼人族の子息よ。戦うのが大好きで、それが関わらなかったら、それなりに知性的な一つだったわね」
「狂戦士かにゃ?」
「うーん、どうなんだろう」
確かに、戦っている間はかなりテンションが高いというか……戦意が凄かった。だけど、狂ってるって言われると……首を傾げてしまう。
「多分、知性は残ってるだろうから、違うかもね。で、彼がジュールを挑発して……そのせいで彼と決闘する事になったの。しかも、肝心のジュールはボロボロにされて負けてね……」
「あー……でも、それで私に謝るのって、何か関係してるのかにゃ?」
それは……多分、学園で結構辛辣な事を言ってたからじゃないのかな? なんて言いかけたけど……結局、言わなかった。
普通だったら気付いてもおかしくないのに、それでもきょとんとしてるんだから、本当にわからないのだろう。
「思い当たる事、あるんじゃない?」
「うーん……ないんだよにゃー。強いて言えば、学園でちょっときつい言葉を投げられたけど……それだけだしにゃー」
「そう? それなら、とりあえず受け取っておけばいいんじゃない? 無下にするよりはずっと良いでしょう」
「うーん……そうかもにゃ」
とりあえず納得した様子やリュネーと一緒に、私はお茶会を続けた。
ちょっと予想外な事はあったけれど、ジュールが私以外に率先してそんな事を言うなんて思っても見なくて……つい、嬉しさで頬が緩んで仕方なかった。
「ここからまっすぐ歩けば、リュネー殿下がお茶をしている中庭の方に辿り付けますにゃ。それと……貴女様に話した情報は、くれぐれもご内密にお願いしますにゃ」
「ええ。こんな事、リュネーと話しても仕方ないしね」
話すならもっと楽しい話をする。それに、本当はあまり話すべき事柄じゃなかったはずだ。それをわざわざ話してくれたのだから、裏切るような真似はしたくなかった。
「ありがとうございますにゃ」
「貴方はどうするの? リュネーのところに一緒に行く?」
「行けませんですにゃ。そろそろ職務に戻らなければなりませんにゃ。それに……せっかくのお友達との時間を邪魔するほど、無粋ではないですにゃ」
「そう。じゃあ、最後に一つ。教えてもらって良い?」
「はいですにゃ。なんですかにゃ?」
猫人族が語尾に『にゃ』とか『みゃ』とか付けて話すのが普通なのは、私も知ってる。そんな環境で育ったリュネーも本当の喋り方はそっちの方だということも十分理解出来る。だけど――
「リュネーの笑い方。『にゃは』って、あの子の本当の笑い方なの?」
鳥車の中で、リュネーは確かにそういう風に笑ってた。あまりにも自然だからなにも言わなかったけど、今までそんな笑い声を上げる子じゃなかったから、印象に残っていたのだ。
そんな私の質問に身構えていたフェッツは、急に呆れたような苦笑いを浮かべてきた。
「そうですにゃ。多分、彼女のお父様である国王陛下の笑い方が移ったのだと思いますにゃ。ですが学園に入学する時に少しばかり問題が起きましたにゃ。リュネー殿下に近い姿――獣人族の子息は、私達みたいに喋ることはしませんにゃ。あの方はそれを気にして……」
だから学園では本来の自分が出ないように気遣ってたって訳か。それでも、リュネーが自分の国に招待してくれたという事は、その分信頼されてるって事なんだろう。
「……そう。よくわかった。ありがとう」
「いいえ。出来ればこれからも、リュネー殿下とは仲良くしていただけたら、嬉しく思いますにゃ」
フェッツはそれだけ言うと、リュネーのところに行くように促してくれた。とりあえず頷いて、彼女の待っている中庭に足を踏み入れると……そこは綺麗な花の道や花壇が存在していた。
綺麗に彩られたその中央。開けた場所に屋根のついた小さな建物に、椅子とテーブルが設置されている。
「あ、ティアちゃーん。こっちにゃー」
嬉しそうに耳をぴくぴくさせて、笑顔で手を振ってる。振り返しながらリュネーのところに行くと、いきなり立ち上がって頭を下げてきた。
「さっきはごめんなさいにゃ。私……」
「別に気にしてないわ。それより、ジュールはこっちに来た?」
「ジュールちゃん? うん、来たにゃ」
フェッツに案内して貰ってる間、ジュールとすれ違うかもと思ったけれど、全く会わなかった。タイミング悪かったのかも知れない……と思ったけど、やっぱりその通りだったみたい。
「いきなり謝られたけど……なにかあったのかにゃー?」
かなりリラックスしてるのか、語尾のせいも相まってふわふわしてるような雰囲気を醸し出してるような気がする。
「多分、雪桜花でぼこぼこにされたのが原因だと思う」
「……向こうでも巻き込まれたのかにゃ?」
心配そうに私の事を見てくるリュネーの視線は、さっきのフェッツの疑った目とは大きな違いがあった。
「リュネーは雪雨って知ってる?」
「えっと……鬼人族の事はあまり知らないにゃ。ティリアースの事はそれなりに教えられたけどにゃ」
「出雲大将軍って偉い鬼人族の子息よ。戦うのが大好きで、それが関わらなかったら、それなりに知性的な一つだったわね」
「狂戦士かにゃ?」
「うーん、どうなんだろう」
確かに、戦っている間はかなりテンションが高いというか……戦意が凄かった。だけど、狂ってるって言われると……首を傾げてしまう。
「多分、知性は残ってるだろうから、違うかもね。で、彼がジュールを挑発して……そのせいで彼と決闘する事になったの。しかも、肝心のジュールはボロボロにされて負けてね……」
「あー……でも、それで私に謝るのって、何か関係してるのかにゃ?」
それは……多分、学園で結構辛辣な事を言ってたからじゃないのかな? なんて言いかけたけど……結局、言わなかった。
普通だったら気付いてもおかしくないのに、それでもきょとんとしてるんだから、本当にわからないのだろう。
「思い当たる事、あるんじゃない?」
「うーん……ないんだよにゃー。強いて言えば、学園でちょっときつい言葉を投げられたけど……それだけだしにゃー」
「そう? それなら、とりあえず受け取っておけばいいんじゃない? 無下にするよりはずっと良いでしょう」
「うーん……そうかもにゃ」
とりあえず納得した様子やリュネーと一緒に、私はお茶会を続けた。
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