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66・気付かなかった感情
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何度となく金剛覇刀を避けて、それを掻い潜るように剣で応戦していく……のだけど、少し精彩に欠いてしまう事は先程の言葉が尾を引いていたからだ。
「どうした? 動きが鈍ってるじゃねぇか!」
決して彼の動きについて来れない訳じゃない。乱された心の中でも戦えてるのはそれだけ彼と能力の差があるという事なんだけれど……それでも、いつまでも続けていい事じゃない。
なら――
「だったら……もっと私を本気にさせてみなさい。もっと……貴方の本気を見せてみなさいな」
「……面白え。ならば――」
刀での斬り合いや避け合いには飽きたと言うかのように後ろに下がった。次に繰り出すのは……魔導か。
「『焔嵐・炎之戦風』!!」
雪雨から繰り出された炎の竜巻は凄まじい勢いで激しい炎が膨らんでいく。これは凄い。今まで見た中でこれに並ぶのはハクロ先輩の『殺生石』くらいじゃないかな。
それに対抗するイメージを私の中で構築する。炎を消し、風を吹き飛ばす……水の竜巻のイメージ。
「『アクアサイクロン』!」
丁度彼の魔導を打ち消す程度の魔力を込めて繰り出したそれは、激しくぶつかりあって拮抗して……あっという間に消滅した。
「『焔地・火土龍鳳演舞』!!」
互いの魔導が消滅したと同時に斬りかかってくると思っていたのだけれど……予想とはかなり違った展開になってきた。
雪雨の魔導で現れたのは炎の鳥と土の龍。どちらもさっきの魔導より強化されている。
「……ここまでの魔導を見せてくれるなんてね」
白に近い色で燃える鳥は、まるで太陽の化身みたいな感じだし、土の龍は、そのどっしりとした色合いに形で、大地の守護者のようでもある。
一瞬魅入られた私は、このまま直撃を許しても良いかもしれない……そう思う程度には心が動かされていた。
でも――
「ふ、ふふふ、ふふふふふふ……」
知らず知らず笑みが溢れていった。私を倒そうと、殺そうとさえしている程の力を感じて……それがすっごくおかしくて……。
「……どうした?」
ここで挑発しようと思っていたのか、笑みを浮かべていた雪雨は、不審そうな顔をして私を見ていた。
――そうね。ちょっとだけ、教えてあげましょう。
全てが緩やかに感じる。炎の鳥も、地の龍も……雪雨自身でさえも。
――こんなにも飢えていて、どうしようもなく渇いている彼に。
放つ魔導は決まっていた。イメージは私の武器となり、力となる。あらゆるものを滅する魔導を。全てを白く塗り潰す……最高傑作の一撃!
「『エアルヴェ――』」
魔導を発動させる瞬間……私は昔の事を思い出していた。あの日の絶望。希望すら見出せなかった暗闇。射した光は身を焼くほどだった。あの日の怒りを、苦しみを……悲しさを忘れた事はない。それらを全て思い出しながら、最後のキーワードを発動させた。
「『――シュネイス』」
瞬間に世界は脈動した。範囲を絞り、魔力を抑えて尚、有り余る力の胎動。
『な、なんじゃ……あれは……』
呟く視線に合わせる事なく、その発動を見届ける。
ぎりぎり雪雨は範囲に入らなかったけれど、炎の鳥と土の龍は問題ない。
上空がまるでガラスのようにひび割れ、そこから僅かに光が差し込んできた。そして……光が触れた部分は全て掻き消えてしまう。白一色に塗り潰されたそこには、炎の鳥と地の龍と白い光が激しくぶつかり合うような音が聞こえて、私ごと全てを真っ白に染め上げる。
白以外一切存在しない世界の光景を、私はどこか懐かしい気持ちで見つめていた。しばらくしたらこの白も薄まって……元の彩り溢れる世界に戻るだろう。私以外の全てをその白の中に包み込んで……。
「久しぶり……本当にいつぶりだろう。これを発動させたのは」
昔……地面も空も、あらゆるものが白に染まった光景を強引に突き破った男がいた。彼は私と全く真逆で、その全てを黒に染める魔導を使っていて……まるで私の心の中に入り込んでくるような、そんな気がしていた。
相反するからこそ、わかってしまった。彼もまた私と同じように生きてきたんだって。
――そんな彼はここにはいない。この脆弱を破れる人は……存在しない。
改めてわかっていた事を思い知らされた気分になった。威力を出来る限り抑えたこの魔導ですら雪雨は打ち破る事は出来ないだろう。結局……私はここでも一人きりなんだね。
心に寄り添ってくれる人はいても、この力は……戦いの場では誰もついて来れないんだって事を。
本当に静かな場所。ここにいると少しずつ気分が落ち着いてくる。だけどそれもそろそろ晴れる。
……ここで少しだけ、意識を切り替えよう。ハクロ先輩の時もそうだったけど、雪雨の実力は大体わかった。正直な話、彼はハクロ先輩よりもずっと強い。あの大きな刀――金剛覇刀から繰り出される重い一撃。臨機応変な動きを可能にする反応速度。そこから繰り出される魔導……どれを取っても彼は今まであった中でも一番だ。
……本当に、力を隠そうとか、上手くやろうとか思っていた事が嘘のように戦う事を考えてる。やっぱり私は……雪雨が言った通りだったのかも知れない。
「どうした? 動きが鈍ってるじゃねぇか!」
決して彼の動きについて来れない訳じゃない。乱された心の中でも戦えてるのはそれだけ彼と能力の差があるという事なんだけれど……それでも、いつまでも続けていい事じゃない。
なら――
「だったら……もっと私を本気にさせてみなさい。もっと……貴方の本気を見せてみなさいな」
「……面白え。ならば――」
刀での斬り合いや避け合いには飽きたと言うかのように後ろに下がった。次に繰り出すのは……魔導か。
「『焔嵐・炎之戦風』!!」
雪雨から繰り出された炎の竜巻は凄まじい勢いで激しい炎が膨らんでいく。これは凄い。今まで見た中でこれに並ぶのはハクロ先輩の『殺生石』くらいじゃないかな。
それに対抗するイメージを私の中で構築する。炎を消し、風を吹き飛ばす……水の竜巻のイメージ。
「『アクアサイクロン』!」
丁度彼の魔導を打ち消す程度の魔力を込めて繰り出したそれは、激しくぶつかりあって拮抗して……あっという間に消滅した。
「『焔地・火土龍鳳演舞』!!」
互いの魔導が消滅したと同時に斬りかかってくると思っていたのだけれど……予想とはかなり違った展開になってきた。
雪雨の魔導で現れたのは炎の鳥と土の龍。どちらもさっきの魔導より強化されている。
「……ここまでの魔導を見せてくれるなんてね」
白に近い色で燃える鳥は、まるで太陽の化身みたいな感じだし、土の龍は、そのどっしりとした色合いに形で、大地の守護者のようでもある。
一瞬魅入られた私は、このまま直撃を許しても良いかもしれない……そう思う程度には心が動かされていた。
でも――
「ふ、ふふふ、ふふふふふふ……」
知らず知らず笑みが溢れていった。私を倒そうと、殺そうとさえしている程の力を感じて……それがすっごくおかしくて……。
「……どうした?」
ここで挑発しようと思っていたのか、笑みを浮かべていた雪雨は、不審そうな顔をして私を見ていた。
――そうね。ちょっとだけ、教えてあげましょう。
全てが緩やかに感じる。炎の鳥も、地の龍も……雪雨自身でさえも。
――こんなにも飢えていて、どうしようもなく渇いている彼に。
放つ魔導は決まっていた。イメージは私の武器となり、力となる。あらゆるものを滅する魔導を。全てを白く塗り潰す……最高傑作の一撃!
「『エアルヴェ――』」
魔導を発動させる瞬間……私は昔の事を思い出していた。あの日の絶望。希望すら見出せなかった暗闇。射した光は身を焼くほどだった。あの日の怒りを、苦しみを……悲しさを忘れた事はない。それらを全て思い出しながら、最後のキーワードを発動させた。
「『――シュネイス』」
瞬間に世界は脈動した。範囲を絞り、魔力を抑えて尚、有り余る力の胎動。
『な、なんじゃ……あれは……』
呟く視線に合わせる事なく、その発動を見届ける。
ぎりぎり雪雨は範囲に入らなかったけれど、炎の鳥と土の龍は問題ない。
上空がまるでガラスのようにひび割れ、そこから僅かに光が差し込んできた。そして……光が触れた部分は全て掻き消えてしまう。白一色に塗り潰されたそこには、炎の鳥と地の龍と白い光が激しくぶつかり合うような音が聞こえて、私ごと全てを真っ白に染め上げる。
白以外一切存在しない世界の光景を、私はどこか懐かしい気持ちで見つめていた。しばらくしたらこの白も薄まって……元の彩り溢れる世界に戻るだろう。私以外の全てをその白の中に包み込んで……。
「久しぶり……本当にいつぶりだろう。これを発動させたのは」
昔……地面も空も、あらゆるものが白に染まった光景を強引に突き破った男がいた。彼は私と全く真逆で、その全てを黒に染める魔導を使っていて……まるで私の心の中に入り込んでくるような、そんな気がしていた。
相反するからこそ、わかってしまった。彼もまた私と同じように生きてきたんだって。
――そんな彼はここにはいない。この脆弱を破れる人は……存在しない。
改めてわかっていた事を思い知らされた気分になった。威力を出来る限り抑えたこの魔導ですら雪雨は打ち破る事は出来ないだろう。結局……私はここでも一人きりなんだね。
心に寄り添ってくれる人はいても、この力は……戦いの場では誰もついて来れないんだって事を。
本当に静かな場所。ここにいると少しずつ気分が落ち着いてくる。だけどそれもそろそろ晴れる。
……ここで少しだけ、意識を切り替えよう。ハクロ先輩の時もそうだったけど、雪雨の実力は大体わかった。正直な話、彼はハクロ先輩よりもずっと強い。あの大きな刀――金剛覇刀から繰り出される重い一撃。臨機応変な動きを可能にする反応速度。そこから繰り出される魔導……どれを取っても彼は今まであった中でも一番だ。
……本当に、力を隠そうとか、上手くやろうとか思っていた事が嘘のように戦う事を考えてる。やっぱり私は……雪雨が言った通りだったのかも知れない。
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