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37・激戦の銀狐
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『さあ、いよいよやってまいりました! 特待生クラス二年生のハクロ・コウラン。そして一年生のエールティア・リシュファスの両者が出そろい、決闘開始を待つばかりです! まずは本日の決闘官をご紹介します!』
『どーもなのにゃ。今回の決闘を見届ける事になった、シニアン・ケシルですにゃ』
決闘当日の訓練場。司会のヘリッド先輩が盛り上げてくれてる光景はもう見慣れたものだった。隣にいる決闘官が猫人族だったのは意外だったけど。あんなにもふもふしてて暑くないのかな? って思う。観客は前よりまた増えたみたいだし、リュネーとレイアは今回は観客席の最前線にいるようだった。そんな中、私は一人……ハクロ先輩と睨み合っている。眼鏡の奥底に宿っている冷たくも怒りの宿るそれに晒されながら、私はただまっすぐ彼を射貫くように視線を向けていた。
『今回は直接攻撃を禁止し、魔導のみの決闘らしいですが……シニアン決闘官、周囲への影響は大丈夫なのでしょうか?』
『それは問題ないにゃ。ぼくが魔導で結界を張るし、結界具には周囲を守る効果もあるのにゃ。二重の結界で防げない魔導なんて、まずありえないのにゃ!』
自信満々に胸を張るシニアン決闘官は、どこか微笑ましいものがある。なんていうか、癒される。
『うーん! これです! 決闘が始まる前の問答はこうでなくては!』
……なんでかヘリッド先輩は感動したようだけど、そこに感動するのはおかしいような気がする。
『さ、それじゃあそろそろ決闘を始めるにゃ。二人とも、準備は良いかにゃ?』
私達に確認を取るような視線を向けたシニアン決闘官に、ゆっくりと頷く。準備なんて初めから出来てる。それは……ハクロ先輩の方も同じだった。
『よし、それじゃあ結界具を起動するにゃ。司会くん、後はお願いにゃ』
『それでは任されました! 両者決闘……開始!』
「『クロスファイア』!」
ヘリッド先輩の開始の合図と同時に、ハクロ先輩は魔導を発動させてきた。彼の左右から放たれる炎は、まっすぐ私に向かって伸びてくる。
――いきなり先制攻撃なんて……やってくれるじゃない!
「『アクアカーテン』!」
炎には水。ということで水の壁――というよりもカーテンを強くイメージして魔導を放つ。同時に放たれた炎を防いだその後ろで、更にイメージを――
「遅い……!」
私の作り出した『アクアカーテン』を突き破ってハクロ先輩は襲い掛かってきた。
「なっ……!」
「物理攻撃は禁止だが、近接攻撃は禁止されていない……! 『フレアショット』!」
私の目の前に突き出されたその魔導からは、無数の炎の弾が放たれた。それに私は一瞬驚くけれど……同時に妙に納得した。それはそうだ。魔導による攻撃なら、何しても構わないんだから。
「……『ミラー・アバター』」
炎弾が命中する寸前、私は魔導で鏡を作り出し、鏡の中の私と交代する。今の二度の魔導で見定めた彼の強さに合ったほど良い私。きちんと影もついていて、本物と見分けはつかない……んだけど、利き手が左右逆になる。
ハクロ先輩には悪いけれど、まずは実力を測らせてもらう。その上で、彼とどう戦うか決めさせてもらおう。どんな相手でも決して侮らない。しっかりと実力を見せてもらうのが私のやり方だ。『フレアショット』で立ち込めた煙が止む前に、私は『シャドウハイド』って魔導で鏡の私の影に隠れた。
「……何をした?」
私の様子が変わった事に気付いたのか、ハクロ先輩は怪訝そうな顔で鏡の私を睨みつけていた。
「何って、見てわからない?」
私がするように、少し小馬鹿にするような笑みを浮かべてる鏡の私に対して、ハクロ先輩は怒りを覚えてるようだった。
「『アイシクルストーム』!」
鏡の私に放たれたのは、鋭い氷の塊が混じった嵐。吹き荒ぶ風が、鏡の私に襲い掛かるけれど、それに応戦するように魔導を発動させる。
「『ガシングフレア』!」
それに対抗するように周囲に黒い霧――ガスが立ち込めて、嵐を飛ばす勢いで炎が爆発していく。ハクロ先輩と戦うために生み出したとはいえ、私の得意としてる魔導がこの程度の威力に下がるなんてがっかりしてしまう。だけど、あれくらいの威力で丁度良かった。ハクロ先輩は目の色を変えたようだった。
「……なるほど。才能だけで成り上がってきた割には、やるじゃないか」
「……才能?」
「王家の血があるからこそ、お前の力に価値がある。その血筋のおかげで、お前は力を手にしたんだ」
まるで非難するような視線を向けてくるけど……ハクロ先輩のそれは私が『努力をしていない』と言いたいみたいだ。確かに私自身は他の――凡人と呼ばれる人物とは違う。それでも……努力をしなかったわけじゃない。
「そう。なら本当に血筋だけのものか、確かめさせてあげる……!」
あまりの言い方に、私も少しカチンと来た。鏡の私にもそれが伝わったようで、好戦的な笑みを浮かべて、ハクロ先輩と対峙していた。それからの戦いは――炎が燃え盛り、風が吹き荒ぶ……激闘と呼ぶに相応しい展開に発展していった。
『どーもなのにゃ。今回の決闘を見届ける事になった、シニアン・ケシルですにゃ』
決闘当日の訓練場。司会のヘリッド先輩が盛り上げてくれてる光景はもう見慣れたものだった。隣にいる決闘官が猫人族だったのは意外だったけど。あんなにもふもふしてて暑くないのかな? って思う。観客は前よりまた増えたみたいだし、リュネーとレイアは今回は観客席の最前線にいるようだった。そんな中、私は一人……ハクロ先輩と睨み合っている。眼鏡の奥底に宿っている冷たくも怒りの宿るそれに晒されながら、私はただまっすぐ彼を射貫くように視線を向けていた。
『今回は直接攻撃を禁止し、魔導のみの決闘らしいですが……シニアン決闘官、周囲への影響は大丈夫なのでしょうか?』
『それは問題ないにゃ。ぼくが魔導で結界を張るし、結界具には周囲を守る効果もあるのにゃ。二重の結界で防げない魔導なんて、まずありえないのにゃ!』
自信満々に胸を張るシニアン決闘官は、どこか微笑ましいものがある。なんていうか、癒される。
『うーん! これです! 決闘が始まる前の問答はこうでなくては!』
……なんでかヘリッド先輩は感動したようだけど、そこに感動するのはおかしいような気がする。
『さ、それじゃあそろそろ決闘を始めるにゃ。二人とも、準備は良いかにゃ?』
私達に確認を取るような視線を向けたシニアン決闘官に、ゆっくりと頷く。準備なんて初めから出来てる。それは……ハクロ先輩の方も同じだった。
『よし、それじゃあ結界具を起動するにゃ。司会くん、後はお願いにゃ』
『それでは任されました! 両者決闘……開始!』
「『クロスファイア』!」
ヘリッド先輩の開始の合図と同時に、ハクロ先輩は魔導を発動させてきた。彼の左右から放たれる炎は、まっすぐ私に向かって伸びてくる。
――いきなり先制攻撃なんて……やってくれるじゃない!
「『アクアカーテン』!」
炎には水。ということで水の壁――というよりもカーテンを強くイメージして魔導を放つ。同時に放たれた炎を防いだその後ろで、更にイメージを――
「遅い……!」
私の作り出した『アクアカーテン』を突き破ってハクロ先輩は襲い掛かってきた。
「なっ……!」
「物理攻撃は禁止だが、近接攻撃は禁止されていない……! 『フレアショット』!」
私の目の前に突き出されたその魔導からは、無数の炎の弾が放たれた。それに私は一瞬驚くけれど……同時に妙に納得した。それはそうだ。魔導による攻撃なら、何しても構わないんだから。
「……『ミラー・アバター』」
炎弾が命中する寸前、私は魔導で鏡を作り出し、鏡の中の私と交代する。今の二度の魔導で見定めた彼の強さに合ったほど良い私。きちんと影もついていて、本物と見分けはつかない……んだけど、利き手が左右逆になる。
ハクロ先輩には悪いけれど、まずは実力を測らせてもらう。その上で、彼とどう戦うか決めさせてもらおう。どんな相手でも決して侮らない。しっかりと実力を見せてもらうのが私のやり方だ。『フレアショット』で立ち込めた煙が止む前に、私は『シャドウハイド』って魔導で鏡の私の影に隠れた。
「……何をした?」
私の様子が変わった事に気付いたのか、ハクロ先輩は怪訝そうな顔で鏡の私を睨みつけていた。
「何って、見てわからない?」
私がするように、少し小馬鹿にするような笑みを浮かべてる鏡の私に対して、ハクロ先輩は怒りを覚えてるようだった。
「『アイシクルストーム』!」
鏡の私に放たれたのは、鋭い氷の塊が混じった嵐。吹き荒ぶ風が、鏡の私に襲い掛かるけれど、それに応戦するように魔導を発動させる。
「『ガシングフレア』!」
それに対抗するように周囲に黒い霧――ガスが立ち込めて、嵐を飛ばす勢いで炎が爆発していく。ハクロ先輩と戦うために生み出したとはいえ、私の得意としてる魔導がこの程度の威力に下がるなんてがっかりしてしまう。だけど、あれくらいの威力で丁度良かった。ハクロ先輩は目の色を変えたようだった。
「……なるほど。才能だけで成り上がってきた割には、やるじゃないか」
「……才能?」
「王家の血があるからこそ、お前の力に価値がある。その血筋のおかげで、お前は力を手にしたんだ」
まるで非難するような視線を向けてくるけど……ハクロ先輩のそれは私が『努力をしていない』と言いたいみたいだ。確かに私自身は他の――凡人と呼ばれる人物とは違う。それでも……努力をしなかったわけじゃない。
「そう。なら本当に血筋だけのものか、確かめさせてあげる……!」
あまりの言い方に、私も少しカチンと来た。鏡の私にもそれが伝わったようで、好戦的な笑みを浮かべて、ハクロ先輩と対峙していた。それからの戦いは――炎が燃え盛り、風が吹き荒ぶ……激闘と呼ぶに相応しい展開に発展していった。
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