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第二十三節・最終決戦
第391幕 終戦の結末
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「ありがとう兄貴。おかげで少し落ち着いた」
二階の部屋に戻って食事を摂った俺は、わざわざ持ってきてくれた兄貴に礼を言った。
流石に食堂のあの状況で、何かを食べるなんて気にもなれなかったから、こういう気遣いは本当に嬉しかった。
それと……スラヴァグラードで倒れた後の事も色々と聞いた。ロンギルスとヘルガが倒れた後、兄貴はゴーレムの生産工場を潰しに行ったそうだ。あの巨大な炎の剣を作り出す魔方陣がある以上、それくらい出来て当然といったところだろうな。
意識を取り戻したルッセルが俺を担いでくれたようで、後で礼を言っておけと兄貴は言っていた。だけど、ロンギルスと戦った時にあれだけ嫌っていたあいつがそんな事をしてくれるなんて思ってもみなかった。初めて会った時から気が合わないと思っていたんだけれど……案外いい奴なのかもしれない。
「戦争は……やっぱり終わったんだな」
「そうだな。エンデハルト王、ロンギルス皇帝という二大指導者を失ったのだからな。それに……あのゴーレムも作れない。脱出した後はグランセストの軍と一緒にシアロル軍を叩いて終わりだ」
「そうか……」
「今はシアロルを押さえたグランセストはイギランスの制圧に向けて準備中だ。問題は……シアロルの貴族共がかなり抵抗している、といったところだろうな。それももう少ししたら鎮圧出来るだろう」
――長かった。色んなものを失った戦いだった。いや、正確に言ったらまだ戦いは終わってないんだけど、それも時間の問題だろう。少なくとも、あれだけの大きな戦争はもう起きないはずだ。
四日くらい眠っていて、気が付いたら終わってた……というのは少し締まらないような気がしたけれど、それは仕方ないだろう。
未来の事を考えると、頭の中によぎったのはやっぱりスパルナの事だった。それを兄貴は見抜いたようで、少し悲しげな顔をしていた。
「セイル。スパルナの事は……残念だったな」
「……いや、あれは俺のせいだ。兄貴の責任じゃないさ」
兄貴の申し訳なさそうな顔をして頭を下げてるから、ゆっくりと頭を左右に振った。
……あの時は確かに兄貴がもう少し早く来てくれたら、と思った。それでも……兄貴がそれを背負うのは間違ってる。
「俺は……あいつに託されたんだ。あいつの分まで生きる。だから……」
「……わかった」
兄貴はそれ以上何も言うことはなかった。しばらくどうにも重たい雰囲気が立ち込めてる中、俺は……意を決して前から考えていた事を口にした。
「兄貴。一つだけ……頼みがあるんだ」
「……どうした?」
俺の真剣な表情を見た兄貴は、鋭い目で俺の事をみていた。その顔は凄く真面目で、威圧感に飲まれそうになる。
「俺と、戦って欲しい」
「……それは、本気で、って事で良いんだな?」
「ああ」
「どっちかが死ぬかもしれない。それでも……良いんだな?」
兄貴の濃密な殺気に気圧されてしまう。だけど――
「ああ。本気で、戦ってくれ」
――俺は、はっきりと宣言した。本気の……殺し合いをしたい、と。
「わかった。やるなら早い方が良い。そうだな……お前の万全を期して、十日後にしよう」
「貴族はまだ抵抗を続けてるんじゃなかったのか?」
「その程度の小競り合いで、俺を使うわけにはいかないんだとさ。ミルティナ女王からは拠点のあるこの町を守るように言われているし、余裕はある」
そんな話になっていたのか……だけど、丁度いい。本当なら今すぐにでも始めたいところだけれど、流石に体力の回復しきっていない内にやっても仕方ない。最高の状態で最強の敵と戦う――それが今の俺の望みだった。
「ふ、ふふっ」
「どうした?」
「いや、スパルナの分まで生きると言った割に、命がけの戦いをしようとするのだからな」
「仕方ないだろ。それが俺の望みなんだから。それに……死ぬつもりは全くない」
「ははっ、自信あるみたいだな。それじゃあ……十日後にな」
「ああ。十日後に」
兄貴はそれだけ言って、部屋から出ていった。本気で戦う以上、馴れ合いはしたくない――そういうニュアンスを込めた言葉だけを残して。
兄貴もいなくなって……俺はどっと疲れが噴き出してきた。ベッドに横たわって、宿の天井を眺める。
――俺が、兄貴を超える。
ずっと考えていた。何度もそんな事は出来ないと思っていた。誰かと会う度、誰かと戦う度……そんな気持ちが湧き上がって、そういう風に消えていった。
……だけど、やっぱり、俺には……諦めきれなかったみたいだ。
「スパルナ。見ていてくれ。俺の……最高の生き方を……!」
ただ『生きて欲しい』って願いを込めて言ったわけじゃない。あいつは……俺にあいつの分まで『楽しんで』生きてくれと願ったんだ。いつかスパルナと出会った時に、力の限り人生を生き抜いて、戦い抜いたんだと誇れるような自分でありたい。流石『ぼくのお兄ちゃんだね!』って笑顔で迎えられるように。
だから……これはその一歩だ。十日後、兄貴を超えて……俺は――!
二階の部屋に戻って食事を摂った俺は、わざわざ持ってきてくれた兄貴に礼を言った。
流石に食堂のあの状況で、何かを食べるなんて気にもなれなかったから、こういう気遣いは本当に嬉しかった。
それと……スラヴァグラードで倒れた後の事も色々と聞いた。ロンギルスとヘルガが倒れた後、兄貴はゴーレムの生産工場を潰しに行ったそうだ。あの巨大な炎の剣を作り出す魔方陣がある以上、それくらい出来て当然といったところだろうな。
意識を取り戻したルッセルが俺を担いでくれたようで、後で礼を言っておけと兄貴は言っていた。だけど、ロンギルスと戦った時にあれだけ嫌っていたあいつがそんな事をしてくれるなんて思ってもみなかった。初めて会った時から気が合わないと思っていたんだけれど……案外いい奴なのかもしれない。
「戦争は……やっぱり終わったんだな」
「そうだな。エンデハルト王、ロンギルス皇帝という二大指導者を失ったのだからな。それに……あのゴーレムも作れない。脱出した後はグランセストの軍と一緒にシアロル軍を叩いて終わりだ」
「そうか……」
「今はシアロルを押さえたグランセストはイギランスの制圧に向けて準備中だ。問題は……シアロルの貴族共がかなり抵抗している、といったところだろうな。それももう少ししたら鎮圧出来るだろう」
――長かった。色んなものを失った戦いだった。いや、正確に言ったらまだ戦いは終わってないんだけど、それも時間の問題だろう。少なくとも、あれだけの大きな戦争はもう起きないはずだ。
四日くらい眠っていて、気が付いたら終わってた……というのは少し締まらないような気がしたけれど、それは仕方ないだろう。
未来の事を考えると、頭の中によぎったのはやっぱりスパルナの事だった。それを兄貴は見抜いたようで、少し悲しげな顔をしていた。
「セイル。スパルナの事は……残念だったな」
「……いや、あれは俺のせいだ。兄貴の責任じゃないさ」
兄貴の申し訳なさそうな顔をして頭を下げてるから、ゆっくりと頭を左右に振った。
……あの時は確かに兄貴がもう少し早く来てくれたら、と思った。それでも……兄貴がそれを背負うのは間違ってる。
「俺は……あいつに託されたんだ。あいつの分まで生きる。だから……」
「……わかった」
兄貴はそれ以上何も言うことはなかった。しばらくどうにも重たい雰囲気が立ち込めてる中、俺は……意を決して前から考えていた事を口にした。
「兄貴。一つだけ……頼みがあるんだ」
「……どうした?」
俺の真剣な表情を見た兄貴は、鋭い目で俺の事をみていた。その顔は凄く真面目で、威圧感に飲まれそうになる。
「俺と、戦って欲しい」
「……それは、本気で、って事で良いんだな?」
「ああ」
「どっちかが死ぬかもしれない。それでも……良いんだな?」
兄貴の濃密な殺気に気圧されてしまう。だけど――
「ああ。本気で、戦ってくれ」
――俺は、はっきりと宣言した。本気の……殺し合いをしたい、と。
「わかった。やるなら早い方が良い。そうだな……お前の万全を期して、十日後にしよう」
「貴族はまだ抵抗を続けてるんじゃなかったのか?」
「その程度の小競り合いで、俺を使うわけにはいかないんだとさ。ミルティナ女王からは拠点のあるこの町を守るように言われているし、余裕はある」
そんな話になっていたのか……だけど、丁度いい。本当なら今すぐにでも始めたいところだけれど、流石に体力の回復しきっていない内にやっても仕方ない。最高の状態で最強の敵と戦う――それが今の俺の望みだった。
「ふ、ふふっ」
「どうした?」
「いや、スパルナの分まで生きると言った割に、命がけの戦いをしようとするのだからな」
「仕方ないだろ。それが俺の望みなんだから。それに……死ぬつもりは全くない」
「ははっ、自信あるみたいだな。それじゃあ……十日後にな」
「ああ。十日後に」
兄貴はそれだけ言って、部屋から出ていった。本気で戦う以上、馴れ合いはしたくない――そういうニュアンスを込めた言葉だけを残して。
兄貴もいなくなって……俺はどっと疲れが噴き出してきた。ベッドに横たわって、宿の天井を眺める。
――俺が、兄貴を超える。
ずっと考えていた。何度もそんな事は出来ないと思っていた。誰かと会う度、誰かと戦う度……そんな気持ちが湧き上がって、そういう風に消えていった。
……だけど、やっぱり、俺には……諦めきれなかったみたいだ。
「スパルナ。見ていてくれ。俺の……最高の生き方を……!」
ただ『生きて欲しい』って願いを込めて言ったわけじゃない。あいつは……俺にあいつの分まで『楽しんで』生きてくれと願ったんだ。いつかスパルナと出会った時に、力の限り人生を生き抜いて、戦い抜いたんだと誇れるような自分でありたい。流石『ぼくのお兄ちゃんだね!』って笑顔で迎えられるように。
だから……これはその一歩だ。十日後、兄貴を超えて……俺は――!
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