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第二十一節・凍てつく大地での戦い編
第354幕 終焉の狼煙
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新しく手に入れた武器に魔方陣。今自分が出来る事、使える能力の把握に努めている内にこちら側もあちら側も準備が整ったらしく……とうとうその日が訪れた。
――
「中々壮観だな。これは」
ずらっと並んだ魔人の兵士たちを見て、思わずそう呟いてしまった。残ったシアロルとイギランスの二国を攻略する為に集まった彼らは圧巻としか言いようがない。
「この数……凄いな。気合い入れてるって言うのかな」
「なんだか、そういう風に言うとちょっと安っぽい感じがするね」
呑気にセイルとシエラが呆然としながら眺めてる一方で、エセルカは妙に緊張して固まってしまっていた。
「エセルカ」
「は、はいっ!」
「お前は後方での支援担当なんだからそう固まるな。戦闘は前線の兵士たちに任せておけ」
「……でも、私――」
「直接戦うことだけが全てじゃない。後ろで見守ってるのも、また戦いだ」
我ながら言ってて反吐が出る。そんな薄っぺらい事を言うくらいには彼女のことが大切だということか。傷ついて欲しくないから、ワザと遠ざけるようなことを言って……いや、はっきり言って俺は彼女に負い目を感じている。それはこれからも変わらないだろう。彼女には生きて幸せを掴んでもらいたい……これだ俺の本心だ。そこに俺はいないだろうが、彼女がそれで幸せになれるなら、それでもいい。だから……今は生きてもらいたい。
散々誰かを殺めてきた俺が思うのもおこがましいものだろうな。
「……グレリアくん、死なないでね。ちゃんと……帰ってきて」
「ああ。生きて帰る。俺もまだ、こんなところで死ぬわけにはいかないからな」
じっと潤んだ瞳で見つめてくるエセルカに目を合わせる事ができず……視線を逸らしながら答えることがやっとだった。ちらっとだけエセルカの方に視線だけ向けると、どこかはにかむように笑っていた。
「えへへ。それじゃあ……戦争が終わったら、また、ね」
「……ああ」
エセルカは別れを惜しむように時折ちらちらとこっちを見ながら……静かに後方へと下がっていった。
「良かったのか? 最後がアレで」
くずはとの別れを済ませたのか、どこか清々しい顔をしていた。
「もう、会わないつもりなんだろう?」
「やっぱりわかったか」
「兄貴が本当に帰ってこようって思ってるなら、あんな態度取らないだろう」
「……良いんだよ。それより、そっちはどうなんだ?」
「あ、はは。……ま、俺は兄貴と違って、帰れるって保証はないからな。それでも、やれることはやるよ。そのうえで生きて帰ってみせるさ」
決心じみた表情をしているセイルを見てると、自分が彼らとは違うのだと思い知らされるような気がする。こういう若いからこその自信というものは、きっと今だけのものなのだろう。
「相変わらず自分勝手な男たちだよね。恋人を待ち焦がれてる女の想い、わかってないでしょう?」
「……シエラ」
「別に言い訳して欲しい訳じゃないから。ただ、貴方たちが考えているよりずっと、大切に想ってる子たちがいるって事、忘れないで欲しいの」
シエラはそのまま俺たちから離れるように歩いていく。彼女は後方を守る部隊に配属されているからな。
しかし……今の言葉には痛いものがあった。ちらっとセイルの方を見ると同じような事を考えていそうな顔をしていた……が、スパルナが近寄ってきてからはそんな雰囲気は全く見せず、あの子の兄貴分を貫き通していた。
「全く……随分とたくましく育ったものだ……」
こうして見ると、如何に自分の成長が遅いか痛感させられる。伸び代の大きいみんなと違って、一度最後まで人生を歩んだ俺の伸び代は小さい。わかっていた事だ。だが、こうもむざむざと見せつけられるのは少し思うところもある。
そんな風に考えていた時……魔方陣による大きな炎が空へと打ち上げられた。
これは……そうだ。確か敵の軍がこちらに攻めてきた時の合図だ。いよいよ……攻めてきたというわけか。
「敵襲、か。三人とも、準備はいいか?」
「ああ、もちろんだ」
「ぼくも準備はいいよー!」
「……いよいよ、ね」
少し硬くなっているシエラはゆっくりと深呼吸をして心を鎮め、自分のいるべき場所へと戻っていった。
残された俺は何も不安を感じていなかった。それはセイルもスパルナも同じような気持ちだったと思う。彼らの顔つきは凛々しくて、力強さに満ち溢れていたから。
「セイル、わかってるな」
「ああ。ヘルガか皇帝……どちらかに出会うまでは共闘、だろう?」
「それで、ロンギルス皇帝だったら……ぼくたちが戦う……だよね?」
「そうだ。二人共、死ぬな……とは言わない。だが、どんな結果になろうとも、後悔が残るような戦いだけはするな。これが最後。全てを出し切って、終わらせるぞ」
頷く二人の顔を見て、俺ももう一度頷く。これで……今度こそ、終わりにしてみせる。その為の力はここにある。
――さあ、行こう。最後の戦場へ。この戦いの結果で、どちらかの国が終焉を迎える。その狼煙は……今、ここに。
――
「中々壮観だな。これは」
ずらっと並んだ魔人の兵士たちを見て、思わずそう呟いてしまった。残ったシアロルとイギランスの二国を攻略する為に集まった彼らは圧巻としか言いようがない。
「この数……凄いな。気合い入れてるって言うのかな」
「なんだか、そういう風に言うとちょっと安っぽい感じがするね」
呑気にセイルとシエラが呆然としながら眺めてる一方で、エセルカは妙に緊張して固まってしまっていた。
「エセルカ」
「は、はいっ!」
「お前は後方での支援担当なんだからそう固まるな。戦闘は前線の兵士たちに任せておけ」
「……でも、私――」
「直接戦うことだけが全てじゃない。後ろで見守ってるのも、また戦いだ」
我ながら言ってて反吐が出る。そんな薄っぺらい事を言うくらいには彼女のことが大切だということか。傷ついて欲しくないから、ワザと遠ざけるようなことを言って……いや、はっきり言って俺は彼女に負い目を感じている。それはこれからも変わらないだろう。彼女には生きて幸せを掴んでもらいたい……これだ俺の本心だ。そこに俺はいないだろうが、彼女がそれで幸せになれるなら、それでもいい。だから……今は生きてもらいたい。
散々誰かを殺めてきた俺が思うのもおこがましいものだろうな。
「……グレリアくん、死なないでね。ちゃんと……帰ってきて」
「ああ。生きて帰る。俺もまだ、こんなところで死ぬわけにはいかないからな」
じっと潤んだ瞳で見つめてくるエセルカに目を合わせる事ができず……視線を逸らしながら答えることがやっとだった。ちらっとだけエセルカの方に視線だけ向けると、どこかはにかむように笑っていた。
「えへへ。それじゃあ……戦争が終わったら、また、ね」
「……ああ」
エセルカは別れを惜しむように時折ちらちらとこっちを見ながら……静かに後方へと下がっていった。
「良かったのか? 最後がアレで」
くずはとの別れを済ませたのか、どこか清々しい顔をしていた。
「もう、会わないつもりなんだろう?」
「やっぱりわかったか」
「兄貴が本当に帰ってこようって思ってるなら、あんな態度取らないだろう」
「……良いんだよ。それより、そっちはどうなんだ?」
「あ、はは。……ま、俺は兄貴と違って、帰れるって保証はないからな。それでも、やれることはやるよ。そのうえで生きて帰ってみせるさ」
決心じみた表情をしているセイルを見てると、自分が彼らとは違うのだと思い知らされるような気がする。こういう若いからこその自信というものは、きっと今だけのものなのだろう。
「相変わらず自分勝手な男たちだよね。恋人を待ち焦がれてる女の想い、わかってないでしょう?」
「……シエラ」
「別に言い訳して欲しい訳じゃないから。ただ、貴方たちが考えているよりずっと、大切に想ってる子たちがいるって事、忘れないで欲しいの」
シエラはそのまま俺たちから離れるように歩いていく。彼女は後方を守る部隊に配属されているからな。
しかし……今の言葉には痛いものがあった。ちらっとセイルの方を見ると同じような事を考えていそうな顔をしていた……が、スパルナが近寄ってきてからはそんな雰囲気は全く見せず、あの子の兄貴分を貫き通していた。
「全く……随分とたくましく育ったものだ……」
こうして見ると、如何に自分の成長が遅いか痛感させられる。伸び代の大きいみんなと違って、一度最後まで人生を歩んだ俺の伸び代は小さい。わかっていた事だ。だが、こうもむざむざと見せつけられるのは少し思うところもある。
そんな風に考えていた時……魔方陣による大きな炎が空へと打ち上げられた。
これは……そうだ。確か敵の軍がこちらに攻めてきた時の合図だ。いよいよ……攻めてきたというわけか。
「敵襲、か。三人とも、準備はいいか?」
「ああ、もちろんだ」
「ぼくも準備はいいよー!」
「……いよいよ、ね」
少し硬くなっているシエラはゆっくりと深呼吸をして心を鎮め、自分のいるべき場所へと戻っていった。
残された俺は何も不安を感じていなかった。それはセイルもスパルナも同じような気持ちだったと思う。彼らの顔つきは凛々しくて、力強さに満ち溢れていたから。
「セイル、わかってるな」
「ああ。ヘルガか皇帝……どちらかに出会うまでは共闘、だろう?」
「それで、ロンギルス皇帝だったら……ぼくたちが戦う……だよね?」
「そうだ。二人共、死ぬな……とは言わない。だが、どんな結果になろうとも、後悔が残るような戦いだけはするな。これが最後。全てを出し切って、終わらせるぞ」
頷く二人の顔を見て、俺ももう一度頷く。これで……今度こそ、終わりにしてみせる。その為の力はここにある。
――さあ、行こう。最後の戦場へ。この戦いの結果で、どちらかの国が終焉を迎える。その狼煙は……今、ここに。
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