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第十六節・一つの決着 セイル編
第282幕 進むは暗闇
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カン、カンと音を鳴らして、周囲に広がる暗闇をかき分けながら俺たちは先を進んでいく。相変わらず深い闇で、知ってる者じゃなければ、ここが地下に続いてるなんて思いもしないだろう。
「相変わらず深いねー……」
「そうだな。少し気が滅入るが、それでも進んでいくしかないだろ」
二人とも『身体強化』の魔方陣を使って長ったらしい階段を降りた後、一度大きな広場を挟んで以降は、ずっと電車の通り道を進んで行ってる。スパルナがうんざりするのも仕方がないだろう。
本当ならスパルナに鳥になってもらって、彼に一気に下っていくのが一番なんだけど、その大きな姿は的になりやすい。
それを防ぐ為に、俺たちは自分の足で先に進むことを選んだ……わけなんだけど、本当に正しかったのかと首を傾げそうになってきた。
「ねぇ、お兄ちゃーん。やっぱりぼく、鳥になった方が……」
「……何も言うな」
男には、一度口にしたからには引けない事がある。それが今だ。なんて安い誓いを胸にしまって、ただひたすらと駆け抜けていく。太陽や月が出たりする訳じゃないから、時間がさっぱりわからない。どこか狂ってるんじゃないかと思い始めた矢先、ようやく下り終わり、駅と呼ばれる場所に到着する事ができた。
そこからしばらく歩いて行くと光が差し込んできて……俺たちはスラヴァグラードとは違うが、再び地下都市へと足を踏み入れる事が出来たのだった。
――
初めて来たこの都市は、スラヴァグラードとは違って司やくずはに近い人種が多い場所だった。街並みも向こうとは全然違っていて、あの時とは別の未来でも見ているようだった。
周囲を歩く人? はこっちに視線を向けるけれど、ひそひそ喋りながら通り過ぎるのと、あまり興味なさそうにさっさと歩いて行ってしまうのが大半だった。時折、変な箱をかざして光を浴びせてくるけど、それ以外の事はされなかった。
「むー、まぶしい」
「とりあえず、適当なところで服を買おう。スラヴァグラードでも上で使ってた硬貨が普通に使えてたし、ここでも大丈夫だろうしな」
「わーい!」
新しい服が買ってもらえるのが嬉しいのか、ぴょんぴょんと飛び跳ねてスパルナは喜んでいた。上とこことでは服装に違いがありすぎて俺たちは逆に目立ちすぎる。かといってスラヴァグラードで買ったものがここに合ってるのかもわからない。時折見たことのない格好をしている者がいる以上、慎重になっておいた方がいいだろう。
「言っておくが、遊びに来た訳じゃないからな?」
「わかってるよー!」
これからしばらくの間、地下都市を拠点として活動して行くことになる。グランセストの様子も気になるし、すぐにでも行動した方がいいんだろうけど……基地や工場の場所もわからないからなぁ……。
まずは地図を手に入れて、それから色々と探ってみるのがいいだろう。
「お兄ちゃーん、早く、早くー!」
こっちはごちゃごちゃと色んなことを考えてるのに、スパルナは気楽でいいな。切り替え方が上手いとでも言った方が良いのかもしれない。
俺もこれだけ気楽に行けたらもう少し人生を楽に過ごせてたかもしれないけど……いかんせん、身体を鍛えて本ばっか読んでいたせいか、どうにも考えすぎる傾向がある。あんまり頭が良いと言うわけでもないのにな。
「ああ、行くぞ」
「うん!」
……今これ以上考えても仕方がない。目の前を走って行くスパルナを追いかけるように走る。すぐに隣に並び立って、互いに笑みを交わしながら、俺たちはゆっくりと歩いて行くことにした。まるで兄弟みたいだな、なんて思いながら、な。
その後は手頃な店で服装はきちんと整えたんだけど……スパルナはやっぱり女の子用の服を勧められていた。それに猛抗議したスパルナを宥めるように色々と選んだ結果……店員がボーイッシュ? な服装がいいのでは、と提案してくれたので、ようやく落ち着く形になった。俺の方も無難にスーツに近い服装にして、店から出ると……何故か更に目立っているようだった。
「服装もこっちに合わせたのになんでだ?」
女性からの視線が結構目について、『格好良い』とか『可愛い』とかの声が聞こえてくる。そんな風に見られた事がないからか、少しくすぐったくなる。
「ねーねー、お兄ちゃん。イケメンってなに? お姉さんたちが言ってるんだけど」
「……さあ? なんかの飲み物じゃないのか?」
池って言葉がつくぐらいだからな。つまり、池のように広い面を持つ飲み物なんだろう。なんで俺を見て言ってるのかはわからないけど。
「とりあえず、次は……地図を手に入れて宿を探そう。スパルナもそれでいいよな?」
「うん! お兄ちゃんに任せるね!」
結局、別の意味で目立ってしまって、完全に逆効果になってしまったけど……気を取り直して適当に活動拠点になりそうな場所を取るとしよう。
流石の俺もあんな暗闇の中をずっと突っ切ってきたし、結構疲労が溜まっているのがわかる。スパルナも元気そうに振る舞ってるけど、やっぱり少し疲れてるようだしな。
「相変わらず深いねー……」
「そうだな。少し気が滅入るが、それでも進んでいくしかないだろ」
二人とも『身体強化』の魔方陣を使って長ったらしい階段を降りた後、一度大きな広場を挟んで以降は、ずっと電車の通り道を進んで行ってる。スパルナがうんざりするのも仕方がないだろう。
本当ならスパルナに鳥になってもらって、彼に一気に下っていくのが一番なんだけど、その大きな姿は的になりやすい。
それを防ぐ為に、俺たちは自分の足で先に進むことを選んだ……わけなんだけど、本当に正しかったのかと首を傾げそうになってきた。
「ねぇ、お兄ちゃーん。やっぱりぼく、鳥になった方が……」
「……何も言うな」
男には、一度口にしたからには引けない事がある。それが今だ。なんて安い誓いを胸にしまって、ただひたすらと駆け抜けていく。太陽や月が出たりする訳じゃないから、時間がさっぱりわからない。どこか狂ってるんじゃないかと思い始めた矢先、ようやく下り終わり、駅と呼ばれる場所に到着する事ができた。
そこからしばらく歩いて行くと光が差し込んできて……俺たちはスラヴァグラードとは違うが、再び地下都市へと足を踏み入れる事が出来たのだった。
――
初めて来たこの都市は、スラヴァグラードとは違って司やくずはに近い人種が多い場所だった。街並みも向こうとは全然違っていて、あの時とは別の未来でも見ているようだった。
周囲を歩く人? はこっちに視線を向けるけれど、ひそひそ喋りながら通り過ぎるのと、あまり興味なさそうにさっさと歩いて行ってしまうのが大半だった。時折、変な箱をかざして光を浴びせてくるけど、それ以外の事はされなかった。
「むー、まぶしい」
「とりあえず、適当なところで服を買おう。スラヴァグラードでも上で使ってた硬貨が普通に使えてたし、ここでも大丈夫だろうしな」
「わーい!」
新しい服が買ってもらえるのが嬉しいのか、ぴょんぴょんと飛び跳ねてスパルナは喜んでいた。上とこことでは服装に違いがありすぎて俺たちは逆に目立ちすぎる。かといってスラヴァグラードで買ったものがここに合ってるのかもわからない。時折見たことのない格好をしている者がいる以上、慎重になっておいた方がいいだろう。
「言っておくが、遊びに来た訳じゃないからな?」
「わかってるよー!」
これからしばらくの間、地下都市を拠点として活動して行くことになる。グランセストの様子も気になるし、すぐにでも行動した方がいいんだろうけど……基地や工場の場所もわからないからなぁ……。
まずは地図を手に入れて、それから色々と探ってみるのがいいだろう。
「お兄ちゃーん、早く、早くー!」
こっちはごちゃごちゃと色んなことを考えてるのに、スパルナは気楽でいいな。切り替え方が上手いとでも言った方が良いのかもしれない。
俺もこれだけ気楽に行けたらもう少し人生を楽に過ごせてたかもしれないけど……いかんせん、身体を鍛えて本ばっか読んでいたせいか、どうにも考えすぎる傾向がある。あんまり頭が良いと言うわけでもないのにな。
「ああ、行くぞ」
「うん!」
……今これ以上考えても仕方がない。目の前を走って行くスパルナを追いかけるように走る。すぐに隣に並び立って、互いに笑みを交わしながら、俺たちはゆっくりと歩いて行くことにした。まるで兄弟みたいだな、なんて思いながら、な。
その後は手頃な店で服装はきちんと整えたんだけど……スパルナはやっぱり女の子用の服を勧められていた。それに猛抗議したスパルナを宥めるように色々と選んだ結果……店員がボーイッシュ? な服装がいいのでは、と提案してくれたので、ようやく落ち着く形になった。俺の方も無難にスーツに近い服装にして、店から出ると……何故か更に目立っているようだった。
「服装もこっちに合わせたのになんでだ?」
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「とりあえず、次は……地図を手に入れて宿を探そう。スパルナもそれでいいよな?」
「うん! お兄ちゃんに任せるね!」
結局、別の意味で目立ってしまって、完全に逆効果になってしまったけど……気を取り直して適当に活動拠点になりそうな場所を取るとしよう。
流石の俺もあんな暗闇の中をずっと突っ切ってきたし、結構疲労が溜まっているのがわかる。スパルナも元気そうに振る舞ってるけど、やっぱり少し疲れてるようだしな。
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