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第六節 リアラルト訓練学校編

第108幕 試験の日程発表

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 アウラン先生の口から討伐試験がある、と言われた日から二日後……寮の方の掲示板に詳しい張り紙がしてあった。
 試験は今日を除いた七日後。それまでにそれぞれの級から二人ずつ――合わせて六人でチームを作って用紙に記入し、シューレッド先生の元へと提出するようにとのことだった。

 シューレッド先生って聞いたことない名前だったが、ミシェラに聞いたところによると黄色みの帯びた茶色――固い木の実の皮のような黄褐色の髪と目をしている壮年の男性らしい。

 柔らかな物腰の先生で、A級の――シエラのクラスの担任なのだとか。

 ……ちなみにその張り紙には下の方に小さく俺とミシェラだけは名指しで書かれていて、用紙の提出はアウラン・シューレッドの両教師に行うようにと書かれていた。
 今回の討伐試験では、この二人が試験官としての役割を担っているようだ。

 わざわざ名指しで書かれているところから、俺たち二人だけは別の目標を設定されているということだろう。


 ――


 掲示板の張り紙を見て早速名乗りを上げてきたレグルと、たまたま一緒に帰ってきたミシェラの三人で部屋の中に入ると、シエラが既に帰ってきていてのんびりと……制服のままベッドに寝転んでいた。

「グレ……ファ、おかえりなさい」

 俺の方に気付いてこっちを見たシエラは、俺の後ろにいる二人に気付いた瞬間居住まいを正していた。
 だからちょっとだらけ過ぎだというんだ。

 幸い二人共シエラの方は見ていなかったようだが、わざわざ慌てるくらいなら、俺が帰ったときくらい少しは気を使うことだな。

「ただいまシエラ。寮の前の張り紙、見たよな?
 その件で組むことになった二人、というわけだ」
「シエラちゃんこんにちはー」
「教室ぶりだな、シエラ」

 片手で上げて嬉しそうに笑うミシェラと、少し軽い感じで挨拶するレグル。

「張り紙……ああ、討伐試験のやつね。
 ということは、グレファが見つけてきたのがその二人ってわけね」
「そうだ。ミシェラはまあ俺とセットみたいな扱いをされてたけどな。
 で、たまたま出会ったレグルと一緒にここに来たというわけだ」

 シエラもそれで納得するような表情を浮かべてはいたが、それでも『いきなりはやめて欲しい』という感情がありありと見えた。

「それじゃあ私と、グレファ、ミシェラ、レグルと……後二人ってことになるのね」
「そういうことだな」

 G級二人、A級二人が今ここに揃っている。
 問題はB級二人というわけだ。ひとまず当てがあるか聞いてみる必要がある。

「それで残ったのはB級の生徒二人なんだが……」
「B級ねー……他の級の子とはあまり話さないから私はお手上げ状態ね」

 両手を上げて降参するかのようなポーズをシエラは取るが、俺と同時期に編入した彼女に対し、特に期待していない。
 ここで期待しているのは――

「俺は一人くらいならなんとか出来ると思いますよ」

 そう、正に今発言してくれたレグルだった。
 ミシェラは俺がやってくるまで一人だったし、俺自身はシエラと同じで編入してそれなりに時間はたったが、他の級の生徒と交流するほどではない。

 自然と残る選択肢はレグル、ということになり、彼はその期待に見事に答えてくれた。

「ああ、でも聞いてみないとわからないですからね?」
「……というか、なんでレグルはグレファにそんな敬語使って話してるの?」
「そりゃあアレだ! グレファは俺の師匠だからな!」

 ジトッとした視線をシエラがこっちに向けてくるが、俺はそれにスッと視線を逸らしてしまう。
 彼女の言いたいことはわかる……が、仕方がない。
 今はただ、何も聞かないでくれ。

「僕のおにいちゃんでもあるよ!」
「いや、正確にはおにいちゃんじゃないでしょう……」

 そしてそれに張り合うかのように『ふふん』とどこか嬉しそうに両手を腰に当てて胸を張って上体を軽く逸らしていた。
 それを嗜めるように呆れた顔でシエラは頭を左右に振りながら訂正していた。

「レグルが一人連れてこれるっていうなら、残りは一人か……その一人が厄介そうだけどな」
「そう? 他の魔人の子たちに比べたら大分簡単だと思うけど?」
「それは掲示板の但し書きがなかったら……だろうけどな。
 ざっとだが、俺とミシェラは本来より難しい課題が用意されてる可能性が高い」

 よくわかってない顔をしたシエラは恐らく大雑把にしか見てなかったんだろうな、と思いながら軽く説明する。
 それでも彼女はあまり気にしていないようで、少々へらっとした表情をしていた。

「それでもなんとかなるでしょ。心配することないじゃない」

 それは彼女が俺との付き合いが長いせいもあるだろう。
 なにせ最初に魔人の国で出会った女の子だし、それから一年ぐらいは共に行動した。
 勇者と戦ったときも側にいたからこそ信頼してくれているんだろう。

 そういうことを知らない相手と組むことになるんだから、簡単じゃないと言っているんだがなぁ……。

 確定ではないけど残り一人……とりあえずB級のクラスに行ってみることにするか。
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