109 / 415
第六節 リアラルト訓練学校編
第108幕 試験の日程発表
しおりを挟む
アウラン先生の口から討伐試験がある、と言われた日から二日後……寮の方の掲示板に詳しい張り紙がしてあった。
試験は今日を除いた七日後。それまでにそれぞれの級から二人ずつ――合わせて六人でチームを作って用紙に記入し、シューレッド先生の元へと提出するようにとのことだった。
シューレッド先生って聞いたことない名前だったが、ミシェラに聞いたところによると黄色みの帯びた茶色――固い木の実の皮のような黄褐色の髪と目をしている壮年の男性らしい。
柔らかな物腰の先生で、A級の――シエラのクラスの担任なのだとか。
……ちなみにその張り紙には下の方に小さく俺とミシェラだけは名指しで書かれていて、用紙の提出はアウラン・シューレッドの両教師に行うようにと書かれていた。
今回の討伐試験では、この二人が試験官としての役割を担っているようだ。
わざわざ名指しで書かれているところから、俺たち二人だけは別の目標を設定されているということだろう。
――
掲示板の張り紙を見て早速名乗りを上げてきたレグルと、たまたま一緒に帰ってきたミシェラの三人で部屋の中に入ると、シエラが既に帰ってきていてのんびりと……制服のままベッドに寝転んでいた。
「グレ……ファ、おかえりなさい」
俺の方に気付いてこっちを見たシエラは、俺の後ろにいる二人に気付いた瞬間居住まいを正していた。
だからちょっとだらけ過ぎだというんだ。
幸い二人共シエラの方は見ていなかったようだが、わざわざ慌てるくらいなら、俺が帰ったときくらい少しは気を使うことだな。
「ただいまシエラ。寮の前の張り紙、見たよな?
その件で組むことになった二人、というわけだ」
「シエラちゃんこんにちはー」
「教室ぶりだな、シエラ」
片手で上げて嬉しそうに笑うミシェラと、少し軽い感じで挨拶するレグル。
「張り紙……ああ、討伐試験のやつね。
ということは、グレファが見つけてきたのがその二人ってわけね」
「そうだ。ミシェラはまあ俺とセットみたいな扱いをされてたけどな。
で、たまたま出会ったレグルと一緒にここに来たというわけだ」
シエラもそれで納得するような表情を浮かべてはいたが、それでも『いきなりはやめて欲しい』という感情がありありと見えた。
「それじゃあ私と、グレファ、ミシェラ、レグルと……後二人ってことになるのね」
「そういうことだな」
G級二人、A級二人が今ここに揃っている。
問題はB級二人というわけだ。ひとまず当てがあるか聞いてみる必要がある。
「それで残ったのはB級の生徒二人なんだが……」
「B級ねー……他の級の子とはあまり話さないから私はお手上げ状態ね」
両手を上げて降参するかのようなポーズをシエラは取るが、俺と同時期に編入した彼女に対し、特に期待していない。
ここで期待しているのは――
「俺は一人くらいならなんとか出来ると思いますよ」
そう、正に今発言してくれたレグルだった。
ミシェラは俺がやってくるまで一人だったし、俺自身はシエラと同じで編入してそれなりに時間はたったが、他の級の生徒と交流するほどではない。
自然と残る選択肢はレグル、ということになり、彼はその期待に見事に答えてくれた。
「ああ、でも聞いてみないとわからないですからね?」
「……というか、なんでレグルはグレファにそんな敬語使って話してるの?」
「そりゃあアレだ! グレファは俺の師匠だからな!」
ジトッとした視線をシエラがこっちに向けてくるが、俺はそれにスッと視線を逸らしてしまう。
彼女の言いたいことはわかる……が、仕方がない。
今はただ、何も聞かないでくれ。
「僕のおにいちゃんでもあるよ!」
「いや、正確にはおにいちゃんじゃないでしょう……」
そしてそれに張り合うかのように『ふふん』とどこか嬉しそうに両手を腰に当てて胸を張って上体を軽く逸らしていた。
それを嗜めるように呆れた顔でシエラは頭を左右に振りながら訂正していた。
「レグルが一人連れてこれるっていうなら、残りは一人か……その一人が厄介そうだけどな」
「そう? 他の魔人の子たちに比べたら大分簡単だと思うけど?」
「それは掲示板の但し書きがなかったら……だろうけどな。
ざっとだが、俺とミシェラは本来より難しい課題が用意されてる可能性が高い」
よくわかってない顔をしたシエラは恐らく大雑把にしか見てなかったんだろうな、と思いながら軽く説明する。
それでも彼女はあまり気にしていないようで、少々へらっとした表情をしていた。
「それでもなんとかなるでしょ。心配することないじゃない」
それは彼女が俺との付き合いが長いせいもあるだろう。
なにせ最初に魔人の国で出会った女の子だし、それから一年ぐらいは共に行動した。
勇者と戦ったときも側にいたからこそ信頼してくれているんだろう。
そういうことを知らない相手と組むことになるんだから、簡単じゃないと言っているんだがなぁ……。
確定ではないけど残り一人……とりあえずB級のクラスに行ってみることにするか。
試験は今日を除いた七日後。それまでにそれぞれの級から二人ずつ――合わせて六人でチームを作って用紙に記入し、シューレッド先生の元へと提出するようにとのことだった。
シューレッド先生って聞いたことない名前だったが、ミシェラに聞いたところによると黄色みの帯びた茶色――固い木の実の皮のような黄褐色の髪と目をしている壮年の男性らしい。
柔らかな物腰の先生で、A級の――シエラのクラスの担任なのだとか。
……ちなみにその張り紙には下の方に小さく俺とミシェラだけは名指しで書かれていて、用紙の提出はアウラン・シューレッドの両教師に行うようにと書かれていた。
今回の討伐試験では、この二人が試験官としての役割を担っているようだ。
わざわざ名指しで書かれているところから、俺たち二人だけは別の目標を設定されているということだろう。
――
掲示板の張り紙を見て早速名乗りを上げてきたレグルと、たまたま一緒に帰ってきたミシェラの三人で部屋の中に入ると、シエラが既に帰ってきていてのんびりと……制服のままベッドに寝転んでいた。
「グレ……ファ、おかえりなさい」
俺の方に気付いてこっちを見たシエラは、俺の後ろにいる二人に気付いた瞬間居住まいを正していた。
だからちょっとだらけ過ぎだというんだ。
幸い二人共シエラの方は見ていなかったようだが、わざわざ慌てるくらいなら、俺が帰ったときくらい少しは気を使うことだな。
「ただいまシエラ。寮の前の張り紙、見たよな?
その件で組むことになった二人、というわけだ」
「シエラちゃんこんにちはー」
「教室ぶりだな、シエラ」
片手で上げて嬉しそうに笑うミシェラと、少し軽い感じで挨拶するレグル。
「張り紙……ああ、討伐試験のやつね。
ということは、グレファが見つけてきたのがその二人ってわけね」
「そうだ。ミシェラはまあ俺とセットみたいな扱いをされてたけどな。
で、たまたま出会ったレグルと一緒にここに来たというわけだ」
シエラもそれで納得するような表情を浮かべてはいたが、それでも『いきなりはやめて欲しい』という感情がありありと見えた。
「それじゃあ私と、グレファ、ミシェラ、レグルと……後二人ってことになるのね」
「そういうことだな」
G級二人、A級二人が今ここに揃っている。
問題はB級二人というわけだ。ひとまず当てがあるか聞いてみる必要がある。
「それで残ったのはB級の生徒二人なんだが……」
「B級ねー……他の級の子とはあまり話さないから私はお手上げ状態ね」
両手を上げて降参するかのようなポーズをシエラは取るが、俺と同時期に編入した彼女に対し、特に期待していない。
ここで期待しているのは――
「俺は一人くらいならなんとか出来ると思いますよ」
そう、正に今発言してくれたレグルだった。
ミシェラは俺がやってくるまで一人だったし、俺自身はシエラと同じで編入してそれなりに時間はたったが、他の級の生徒と交流するほどではない。
自然と残る選択肢はレグル、ということになり、彼はその期待に見事に答えてくれた。
「ああ、でも聞いてみないとわからないですからね?」
「……というか、なんでレグルはグレファにそんな敬語使って話してるの?」
「そりゃあアレだ! グレファは俺の師匠だからな!」
ジトッとした視線をシエラがこっちに向けてくるが、俺はそれにスッと視線を逸らしてしまう。
彼女の言いたいことはわかる……が、仕方がない。
今はただ、何も聞かないでくれ。
「僕のおにいちゃんでもあるよ!」
「いや、正確にはおにいちゃんじゃないでしょう……」
そしてそれに張り合うかのように『ふふん』とどこか嬉しそうに両手を腰に当てて胸を張って上体を軽く逸らしていた。
それを嗜めるように呆れた顔でシエラは頭を左右に振りながら訂正していた。
「レグルが一人連れてこれるっていうなら、残りは一人か……その一人が厄介そうだけどな」
「そう? 他の魔人の子たちに比べたら大分簡単だと思うけど?」
「それは掲示板の但し書きがなかったら……だろうけどな。
ざっとだが、俺とミシェラは本来より難しい課題が用意されてる可能性が高い」
よくわかってない顔をしたシエラは恐らく大雑把にしか見てなかったんだろうな、と思いながら軽く説明する。
それでも彼女はあまり気にしていないようで、少々へらっとした表情をしていた。
「それでもなんとかなるでしょ。心配することないじゃない」
それは彼女が俺との付き合いが長いせいもあるだろう。
なにせ最初に魔人の国で出会った女の子だし、それから一年ぐらいは共に行動した。
勇者と戦ったときも側にいたからこそ信頼してくれているんだろう。
そういうことを知らない相手と組むことになるんだから、簡単じゃないと言っているんだがなぁ……。
確定ではないけど残り一人……とりあえずB級のクラスに行ってみることにするか。
0
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる