108 / 415
第六節 リアラルト訓練学校編
第107幕 討伐試験
しおりを挟む
シエラと同室だった件をきっかけに始まった決闘……そして俺を師匠だと慕うようになったレグルと、おにいちゃんと慕うミシェラ……。
そして俺によく話しかけるようになってきたルットと共に勉学に励む日々はあっという間に過ぎていき……季節が移り変わっていくそんなある日の事だ。
「おにいちゃんおはよー!」
「ああ、おはようミシェラ」
いつもどおり隣の席に座っているミシェラと挨拶をかわす。
元気よく片手を上げて笑顔で微笑む彼は、相変わらず(男だけれど)少女だ。
「みなさん、おはようございまーす」
しばらくミシェラとの雑談に付き合っていると、アウラン先生が扉を明けてのんびりとした様子で教壇に向かっていった。
相変わらずの様子の先生はおっとりとした様子で笑顔を浮かべていた。
「えっとですね……知っている方もいるでしょうが、近々進級のための試験を行う予定になってます。
内容は魔物の討伐試験。G・A・B級の中から二人ずつ……六人一組で行いますから、用紙に記入して先生に提出してくださいねー。
詳しい日程は明日の放課後、寮の掲示板に張り出す予定なので、必ず見てくださいね」
「「「「はーい!」」」」
「はい、それでは朝のホームルームを始めますよー」
生徒の元気な声を受けて頷いたアウラン先生は出席を取り始めた。
それにしても……討伐試験、か。
初めて聞くが一体どんな魔物を討伐するんだろうか?
詳しいことを聞きたいが知っているのは恐らく先輩ぐらいのものだろう。
上の学年に知り合いは――ああ、いや、いた。
彼との関係は良好だし、少し前なら答えてはくれなかっただろうが、今なら快く教えてくれるだろう。
――
「で、僕のところにきたわけかい?」
ミシェラと共に向かったのはG級2の教室。
試験の内容を知っている人物――つまりルットの元に俺たちはやってきた。
「ルット先輩、教えてくれる?」
「……そうだねぇ、他の後輩も聞いてるだろうし、僕でわかる範囲内だったら答えてあげるよ」
少し考えるような顔で俺たちを見つめていたが、笑顔で頷いて答えてくれた。
「まずこの試験はね、様々な経験を積ませるために行われてる面もあるんだって。
連携したりとかの戦闘経験や物事を広い視野で見られるようにってね。
もちろん個人の強さで突破するのもいるみたいだけど……本来の目的は戦力の底上げ。
強い者の戦いを見て弱い者が学べるようにっていう機会を設けてるってわけさ」
なるほど。俺たちG級の生徒にももちろん強弱はあるし、訓練以外での戦いは見たことがあっても、本格的な戦闘となれば見たことがない者も多いだろう。
実戦経験に勝るものはないって聞くしな。
「その討伐目標ってのは決まってるのか?」
「いいや、それについては毎回違う魔物が対象になってるね。僕のときはホーンウルフっていう一本角を生やした狼型の魔物だったな。
その前はレッドグリズリーとかいう赤い熊の魔物だったはずだ」
なるほど、どっちも戦闘訓練を積んだ兵士たちが複数人いれば討伐することも出来る程度の魔物たちだ。
それくらいなら俺一人でも余裕がある……って俺基準で考えたら駄目か。
少なくともルットくらいの能力があればなんとかなる程度の魔物だろう。
「その二匹だったら僕も戦ったことあるから大丈夫だね!」
生徒一人で戦ったことがある時点で結構問題発言のような気がするが、それはまあ、ミシェラだから……ということで納得するしかないだろう。
「ミシェラとグレファは多分もっと強い魔物を例外的に提示されると思うぞ」
笑顔のミシェラに対し、首を振ってルットはそれをしてきた。
俺の方も多分その通りだと思っている。
「えー? なんで?」
「それはお前と組むのが俺しかいないからだろう。
ミシェラは俺が来るまで一番強かっただろうし、今は俺……G級1のトップ二人が組むってことは他の連中と同じじゃ不公平感が出るだろう」
少なくとも表面上は公平に扱わなくてはならない。
俺たち二人と組んだA級B級が楽をして進級試験をクリアした……なんて噂になったら不平不満が間違いなく噴出する。
逆に俺たち二人と組んだら運がなかったとか……学校側からしたらそっちの方が何かと都合がいいのだろう。
それで余裕だったとしても、明らかに強い魔物を討伐したとなれば文句を言うやつも少ないだろう。
「そういうことだ。ミシェラはグレファ以外と組まないだろうし、ね」
「だっておにいちゃんが一番だしね!」
俺だってミシェラが一人だけ寂しい思いをしている姿を見るのは嫌だ。
それでも彼は普通に笑っていそうだが、それでもそんなのは見ていられないからな。
俺とミシェラ、A級ならシエラも一緒になるだろうし、そうなればレグルも俺の弟子として着いてくることは間違いないだろう。
問題はB級……ここから二人のメンバーを見つけるのは厄介そうだ。
楽に昇級することを目当てにしている連中が集まりにくい理由が出来たことはいいが、下手をしたらB級抜きで……という進言をしなければならないだろう。
流石に試験もなしに不合格にすることはないだろうしな。
とりあえずシエラとレグルに当てがあるか聞いてみるか。
そして俺によく話しかけるようになってきたルットと共に勉学に励む日々はあっという間に過ぎていき……季節が移り変わっていくそんなある日の事だ。
「おにいちゃんおはよー!」
「ああ、おはようミシェラ」
いつもどおり隣の席に座っているミシェラと挨拶をかわす。
元気よく片手を上げて笑顔で微笑む彼は、相変わらず(男だけれど)少女だ。
「みなさん、おはようございまーす」
しばらくミシェラとの雑談に付き合っていると、アウラン先生が扉を明けてのんびりとした様子で教壇に向かっていった。
相変わらずの様子の先生はおっとりとした様子で笑顔を浮かべていた。
「えっとですね……知っている方もいるでしょうが、近々進級のための試験を行う予定になってます。
内容は魔物の討伐試験。G・A・B級の中から二人ずつ……六人一組で行いますから、用紙に記入して先生に提出してくださいねー。
詳しい日程は明日の放課後、寮の掲示板に張り出す予定なので、必ず見てくださいね」
「「「「はーい!」」」」
「はい、それでは朝のホームルームを始めますよー」
生徒の元気な声を受けて頷いたアウラン先生は出席を取り始めた。
それにしても……討伐試験、か。
初めて聞くが一体どんな魔物を討伐するんだろうか?
詳しいことを聞きたいが知っているのは恐らく先輩ぐらいのものだろう。
上の学年に知り合いは――ああ、いや、いた。
彼との関係は良好だし、少し前なら答えてはくれなかっただろうが、今なら快く教えてくれるだろう。
――
「で、僕のところにきたわけかい?」
ミシェラと共に向かったのはG級2の教室。
試験の内容を知っている人物――つまりルットの元に俺たちはやってきた。
「ルット先輩、教えてくれる?」
「……そうだねぇ、他の後輩も聞いてるだろうし、僕でわかる範囲内だったら答えてあげるよ」
少し考えるような顔で俺たちを見つめていたが、笑顔で頷いて答えてくれた。
「まずこの試験はね、様々な経験を積ませるために行われてる面もあるんだって。
連携したりとかの戦闘経験や物事を広い視野で見られるようにってね。
もちろん個人の強さで突破するのもいるみたいだけど……本来の目的は戦力の底上げ。
強い者の戦いを見て弱い者が学べるようにっていう機会を設けてるってわけさ」
なるほど。俺たちG級の生徒にももちろん強弱はあるし、訓練以外での戦いは見たことがあっても、本格的な戦闘となれば見たことがない者も多いだろう。
実戦経験に勝るものはないって聞くしな。
「その討伐目標ってのは決まってるのか?」
「いいや、それについては毎回違う魔物が対象になってるね。僕のときはホーンウルフっていう一本角を生やした狼型の魔物だったな。
その前はレッドグリズリーとかいう赤い熊の魔物だったはずだ」
なるほど、どっちも戦闘訓練を積んだ兵士たちが複数人いれば討伐することも出来る程度の魔物たちだ。
それくらいなら俺一人でも余裕がある……って俺基準で考えたら駄目か。
少なくともルットくらいの能力があればなんとかなる程度の魔物だろう。
「その二匹だったら僕も戦ったことあるから大丈夫だね!」
生徒一人で戦ったことがある時点で結構問題発言のような気がするが、それはまあ、ミシェラだから……ということで納得するしかないだろう。
「ミシェラとグレファは多分もっと強い魔物を例外的に提示されると思うぞ」
笑顔のミシェラに対し、首を振ってルットはそれをしてきた。
俺の方も多分その通りだと思っている。
「えー? なんで?」
「それはお前と組むのが俺しかいないからだろう。
ミシェラは俺が来るまで一番強かっただろうし、今は俺……G級1のトップ二人が組むってことは他の連中と同じじゃ不公平感が出るだろう」
少なくとも表面上は公平に扱わなくてはならない。
俺たち二人と組んだA級B級が楽をして進級試験をクリアした……なんて噂になったら不平不満が間違いなく噴出する。
逆に俺たち二人と組んだら運がなかったとか……学校側からしたらそっちの方が何かと都合がいいのだろう。
それで余裕だったとしても、明らかに強い魔物を討伐したとなれば文句を言うやつも少ないだろう。
「そういうことだ。ミシェラはグレファ以外と組まないだろうし、ね」
「だっておにいちゃんが一番だしね!」
俺だってミシェラが一人だけ寂しい思いをしている姿を見るのは嫌だ。
それでも彼は普通に笑っていそうだが、それでもそんなのは見ていられないからな。
俺とミシェラ、A級ならシエラも一緒になるだろうし、そうなればレグルも俺の弟子として着いてくることは間違いないだろう。
問題はB級……ここから二人のメンバーを見つけるのは厄介そうだ。
楽に昇級することを目当てにしている連中が集まりにくい理由が出来たことはいいが、下手をしたらB級抜きで……という進言をしなければならないだろう。
流石に試験もなしに不合格にすることはないだろうしな。
とりあえずシエラとレグルに当てがあるか聞いてみるか。
0
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる