11 / 415
第一節 アストリカ学園編
第11幕 エセルカ対ティーチ
しおりを挟む
グレリアくんの励ましを受けて、私はクルスィ先生の待つリング場にあがることになった。
「はぁい、ガール。僕と戦うなんてユー、ついてないね」
「は、はぁ……」
なんだか話し方が独特過ぎて……私には彼がなにを言ってるのかさっぱりわからない。
まるで自分とは全然違うものをみているようで、すごく怖い。
でも……でも頑張らなきゃ。
――頑張ってこい。
グレリアくんが言ってくれたその一言。それが私に力を与えてくれた。
私はあんまり人と喋るのが得意じゃなくて……この学園に通うかも知れないって時に一つ決めたことがあったの。
それは……一番最初に会った人と、お友達になるってこと。
それがどんな人でも私の精一杯で話して、お友達になって……少しでも人と仲良くなれるしよう、そう思ったんだ。
それで一番最初に会ったのが……通う前になっちゃったけど、グレリアくんだった。
私、いつもおどおどしてて、こんな自分がちょっと嫌になるけど……それでも、変えようと思って話しかけた、初めての人。
グレリアくんは北の村から来たって言ってたけど、すごく話しやすくて、まだ通ってもないのについつい学園の案内なんてしちゃって……すごく楽しかった。
あんなに人と話したのは初めてだったし、何も知らないグレリアくんに教えてる私は、ちょっとお姉さんになったようですごく誇らしかった。……いや、背はグレリアくんの方が高いんだけどね。
それから学園での試験とか、クラスももちろん一緒で、お隣の席で……今もそう。
グレリアくんにはいっぱい、いっぱい勇気貰ってる。だから……その勇気分は答えたいなって、そう、思ったの。
――◇――
エセルカはちょっと怖気づいてる……いや、やっぱ人見知りでもしていそうな雰囲気を醸し出していた。
相手のティーチってのはなんというか……すごくナルシストな感じが伝わってくる。
ふふん、とその緑色の髪をかきあげる仕草とか、その細い身体で一々ポージングを決めてる姿とか……見ていて相当萎えてくる。
ただ、悪い人物ではなさそうだ。嫌なやつだったらまず間違いなくL組から野次が飛んでくるからな。
クルスィが双方にちょっとしたルール確認をした後……互いに武器を構えて試合が始まった。
エセルカはやはり両刃のそれなりに太い細剣で、ティーチの方は刺突剣――というか完全にレイピアだ。
あんな細い武器で戦いに出るなんてよくやると思ったが……動きは結構鋭い。
軽やかなステップを踏んで剣先を相手に突きつけて常にその半歩後ろに身体を下げている。
それが意外と様になっていて、ただ単に貴族の道楽ってわけでもなさそうだ。
シュシュッとした軽やかな動きから繰り出される刺突はまるで羽のようにふわりとしている。
エセルカはそれを困った顔のままいなしてるから焦ってるのか余裕なのかよくわからん。
ただ、足取りや剣の動きは相当しっかりしてるから、ティーチの動きはかなり見えてるのだろう。
俺から見ても危なげのない試合運びだ。この調子で行けば余裕で勝つことが出来るだろう。
俺の予想通り、エセルカは徐々に攻勢を見せてきて、ティーチは苦しそうな顔を見せていた。
そりゃそうだ。エセルカの剣はしっかりと戦闘にも使うことが出来るもので、重さもそれなりにある。
というか、両手で握りしめてるとはいえ、よくそんな体型で剣を扱えるもんだ。
剣戟の音が鳴り響き、ティーチの突きを上手くかわして懐に潜り込んだエセルカは、そのレイピアのガード部分に振り上げた剣が当たり、レイピアはあえなく弾かれた形で宙を舞い、ティーチは弾かれたその姿のまま動けなくなってしまった。
「こ、これで……終わり、です……!」
その隙を逃すほどエセルカの方も優しい方じゃなく、そのまま流れるように剣を首筋に。
諦めたかのように嘆息し、首を左右に振るティーチは、やっぱりどこか気取っているように見えた。
「ま、まいったよ……サレンダーってやつだね」
「はい、試合終了です!」
クルスィの合図とともに、そのまま試合は終了。蓋を開けてみれば楽な戦いだったと言えるだろう。
「君、すごくストロングだね。僕、とってもびっくりだよ。正にサプライズってやつだね」
「え? あの、あ、ありがとう……」
馬鹿にしてるのかしてないのかよくわからない言葉遣いだが、まあ多分褒めてるんだろう。
なんだかんだ言ってあいつもいい奴ってこと、かもしれないな。
「エセルカ、お疲れ様」
「あ、ありがとう、グレリアくん」
ティーチと一言二言かわして戻ってきたエセルカを激励すると、彼女はまた小動物に戻ってしまった。
戦ってるときはまだ闘志があってよかったんだけどなぁ……。
「はい、次はグレリア・エルデ。対するはアルフォンス・吉田」
お、次は俺……ってアルフォンス・吉田ってのは俺が初めてここに来た時に出くわした貴族か!
ばっとA組側を見てみると、二人の取り巻きを引き連れて偉そうにしている金髪の少年。
「あれが俺の対戦相手かよ……」
「え、えっと……頑張って! グレリアくん!」
どうにも頑張る気力が起きそうにないが……選ばれた以上やるしかないだろう。
「はぁい、ガール。僕と戦うなんてユー、ついてないね」
「は、はぁ……」
なんだか話し方が独特過ぎて……私には彼がなにを言ってるのかさっぱりわからない。
まるで自分とは全然違うものをみているようで、すごく怖い。
でも……でも頑張らなきゃ。
――頑張ってこい。
グレリアくんが言ってくれたその一言。それが私に力を与えてくれた。
私はあんまり人と喋るのが得意じゃなくて……この学園に通うかも知れないって時に一つ決めたことがあったの。
それは……一番最初に会った人と、お友達になるってこと。
それがどんな人でも私の精一杯で話して、お友達になって……少しでも人と仲良くなれるしよう、そう思ったんだ。
それで一番最初に会ったのが……通う前になっちゃったけど、グレリアくんだった。
私、いつもおどおどしてて、こんな自分がちょっと嫌になるけど……それでも、変えようと思って話しかけた、初めての人。
グレリアくんは北の村から来たって言ってたけど、すごく話しやすくて、まだ通ってもないのについつい学園の案内なんてしちゃって……すごく楽しかった。
あんなに人と話したのは初めてだったし、何も知らないグレリアくんに教えてる私は、ちょっとお姉さんになったようですごく誇らしかった。……いや、背はグレリアくんの方が高いんだけどね。
それから学園での試験とか、クラスももちろん一緒で、お隣の席で……今もそう。
グレリアくんにはいっぱい、いっぱい勇気貰ってる。だから……その勇気分は答えたいなって、そう、思ったの。
――◇――
エセルカはちょっと怖気づいてる……いや、やっぱ人見知りでもしていそうな雰囲気を醸し出していた。
相手のティーチってのはなんというか……すごくナルシストな感じが伝わってくる。
ふふん、とその緑色の髪をかきあげる仕草とか、その細い身体で一々ポージングを決めてる姿とか……見ていて相当萎えてくる。
ただ、悪い人物ではなさそうだ。嫌なやつだったらまず間違いなくL組から野次が飛んでくるからな。
クルスィが双方にちょっとしたルール確認をした後……互いに武器を構えて試合が始まった。
エセルカはやはり両刃のそれなりに太い細剣で、ティーチの方は刺突剣――というか完全にレイピアだ。
あんな細い武器で戦いに出るなんてよくやると思ったが……動きは結構鋭い。
軽やかなステップを踏んで剣先を相手に突きつけて常にその半歩後ろに身体を下げている。
それが意外と様になっていて、ただ単に貴族の道楽ってわけでもなさそうだ。
シュシュッとした軽やかな動きから繰り出される刺突はまるで羽のようにふわりとしている。
エセルカはそれを困った顔のままいなしてるから焦ってるのか余裕なのかよくわからん。
ただ、足取りや剣の動きは相当しっかりしてるから、ティーチの動きはかなり見えてるのだろう。
俺から見ても危なげのない試合運びだ。この調子で行けば余裕で勝つことが出来るだろう。
俺の予想通り、エセルカは徐々に攻勢を見せてきて、ティーチは苦しそうな顔を見せていた。
そりゃそうだ。エセルカの剣はしっかりと戦闘にも使うことが出来るもので、重さもそれなりにある。
というか、両手で握りしめてるとはいえ、よくそんな体型で剣を扱えるもんだ。
剣戟の音が鳴り響き、ティーチの突きを上手くかわして懐に潜り込んだエセルカは、そのレイピアのガード部分に振り上げた剣が当たり、レイピアはあえなく弾かれた形で宙を舞い、ティーチは弾かれたその姿のまま動けなくなってしまった。
「こ、これで……終わり、です……!」
その隙を逃すほどエセルカの方も優しい方じゃなく、そのまま流れるように剣を首筋に。
諦めたかのように嘆息し、首を左右に振るティーチは、やっぱりどこか気取っているように見えた。
「ま、まいったよ……サレンダーってやつだね」
「はい、試合終了です!」
クルスィの合図とともに、そのまま試合は終了。蓋を開けてみれば楽な戦いだったと言えるだろう。
「君、すごくストロングだね。僕、とってもびっくりだよ。正にサプライズってやつだね」
「え? あの、あ、ありがとう……」
馬鹿にしてるのかしてないのかよくわからない言葉遣いだが、まあ多分褒めてるんだろう。
なんだかんだ言ってあいつもいい奴ってこと、かもしれないな。
「エセルカ、お疲れ様」
「あ、ありがとう、グレリアくん」
ティーチと一言二言かわして戻ってきたエセルカを激励すると、彼女はまた小動物に戻ってしまった。
戦ってるときはまだ闘志があってよかったんだけどなぁ……。
「はい、次はグレリア・エルデ。対するはアルフォンス・吉田」
お、次は俺……ってアルフォンス・吉田ってのは俺が初めてここに来た時に出くわした貴族か!
ばっとA組側を見てみると、二人の取り巻きを引き連れて偉そうにしている金髪の少年。
「あれが俺の対戦相手かよ……」
「え、えっと……頑張って! グレリアくん!」
どうにも頑張る気力が起きそうにないが……選ばれた以上やるしかないだろう。
1
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる