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第8章・エルフ族達との騒乱
197・魔王様、赤面して慌てる
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ここまでアシュルがまっすぐ私のことを見て好意を伝えてくれた事が今まであったろうか?
親愛の視線を向けられた事はあっても、ここまでの恋慕の気持ちを伝えられたことはなかった。
だから私も、真剣に考えて返事をしなければならないだろう。
「アシュル、私もアシュルのこと、好きよ。
それこそ貴女がいない暮らしなんて考えられないくらいには想ってる。
でもアシュルは本当に私でいいの?
私は多分、他の人とも付き合っていかなければならないわ。
いずれは後継ぎを――子どもを作ることになるだろうし……」
なんだかしどろもどろにいう私は自分が想像以上にアシュルのことを意識していると気づいた。
だってあんな風にはっきり告白されたのなんて初めてだし、いますごく顔が熱い。
まともにあの子の顔を見ることが出来なくて……上手く言葉を言うことが出来ない。
真剣に考えて、なんて思いながらも、全然思考がまとまらないのだ。
なんて言おうか悩んで、結局私は自分の国の為にしなければならないこと。
流石に好きでもない男の子どもは産むつもりは全く無いのだけれど、それでもいずれはそうなるだろう。
ああもう! 本当に、つくづく『愛してる』なんてこうもまっすぐ伝えられたら、嬉しくて涙が出そうになる。しかもずっと一緒にいてくれたこの子に言われたらなおさらだ!
それは私が一番言われたかった言葉で、転生前は終ぞ言われる事がなかった言葉。
カザキリにも告白はされたけど……彼の時は会ったばかりだったし、なによりそこまで興味はなかったからなんとも思わなかった。
セツキにも似たようなこと言われ続けてるけど、やはり出会いが出会いなだけに感情が波立つ事もなかった。
だけどアシュルは……私も少なからず想っていることを感じていた自分がいた。
そう、多分初めて送魂祭の時から、この子に惹かれていたんだと思う。
どこまでも私に対してまっすぐな彼女。
私の事第一で、どこまでも付いてくる子。私の為なら命を投げ出そうとする子。
そんな子だから、私もこんな風な態度をとってしまうのだろう。
「だから、あの、その……えっと……」
いつもの私でいられない。
アシュルの告白が嬉しかったというか……妙に恥ずかしいというか……。
どう返事をしようかとかなり迷いながらなんとか言葉にしようと思っていると、今度はアシュルの方が顔を真っ赤にしてなにか大事なことを忘れていたとでも言うかのように迷いを見せていた。
もしかして今更言ってて恥ずかしくなったとでも言うのだろうか? それとも全く違うこと?
「ア、アシュル……?」
「えっとですね、私も伝えなくてはならないことがありまして……それをティファさまのお陰で思い出したといいますか……そのせいで更に恥ずかしくなったといいますか……」
お互いしどろもどろしているその姿は、多分他から見たらもどかしく映るんじゃないだろうか?
自分で思うのも何だが、こういう時間も妙に愛おしく感じる。
しかし……アシュルが思い出した伝えなくてはならないことって、一体何なんだろう?
二人して顔を赤らめて胸がドキドキしていて、ただただこの空気の居心地の良さを感じながら、私はただただアシュルの言葉を待つことにした。
なんとなくではあるが、私が答えを口にするには彼女の言葉が欠かせないと思っていたからだ。
「えっと、ティファさま、驚かないで聞いてくださいね?」
「え、ええ」
改めてそういう風に言われると、余計に身構えてしまう。
スーハーと深呼吸をして体と気持ちを落ち着かせているようだけど、やっぱり赤いままの顔はより一層恥ずかしさに染まり、決意したかのようにゆっくりと言葉を紡いでいった。
「契約したスライムが姿を変える事は知ってますよね?」
「……ええ、貴女も私の目の前で変わったし、それはもちろん」
何を言うかと思ったら、いきなり初歩の初歩である契約スライムのことに関してだった。
今ここでそれを言うってことはどういうことなんだろうか?
「で、ですね……それでも人形……種族として認められてる種の……。
あ、猫人族とかリザードマン族とかの契約スライムもですよ? で、その種族の形を取ることが出来たスライムはですね……その、子どもを作ることが出来るんですよ」
それは私も初めて聞いた。が、それと同時に納得がいくこともある。
普通のスライムであれば分裂するというのが一般的な増え方だ。
それはフェンルウやエイリといった契約スライムも同じことだろう。
ロマンは……彼も下半身の部分がスライムのままだし、そこから新しいスライムが……契約していな普通のスライムが産まれてくるだろう。
そう考えたらまるでロマンが産卵してるみたいで相当萎えてくるが……そんなことを考えてる場合じゃない。
契約スライムが種族固有の――オーク族や鬼族のなどの姿をきちんと取れているスライムは、普通に他者と交わり、子どもを作る事ができるってことだ。
つまり――
「アシュルも子どもを作れるってこと?」
「はい!」
顔を赤らめながら満面の笑みで答えてくれるアシュルなんだけど、それを今告白する必要があるのか? と思わず感じてしまう。
だって、それでもアシュルと私は女の子だ。
同性で子どもを作ることなんて、出来るわけがない。
しかし、アシュルは更に衝撃的な事実を私に告げてきた。
「で、ですね。子どもを作れるようになったスライムは……両性具有といいますか……。
どっちの性別にも対応することが出来るっていうか……創り変えられるんですよ」
それを聞いた瞬間、私は自分の考えがギギギと鈍い音を立てて固まっていくのを感じた。
今、この子、とんでもないこと口走ろうとしてる……?
私の考えをよそに、アシュルは暴走気味にわたわたと矢継ぎ早に言葉を口にする。
「だ、だから、ですね! ティファさまのために下だけ男の子に変えたり女の子に変えたり……両方にしたりとか……出来るんですよ……!!」
「え、えっと……アシュル?」
「あ、あの、だから、私とティファさまが一緒になっても問題ありませんよ! 子どもなら私が孕ま――」
「ちょ、ちょっとまったーーー!!」
一気に現実感が戻ってきて、さっきとは別の意味で顔が赤くなっていく私は、不意に誰かの視線を感じたような気がして、すごく周囲を見回している。
良かった……誰もいない。その事実に思わず胸を撫で下ろし、改めてアシュルに向き直る。
彼女は自分が何を口走っていたのかよくわかっていないらしく、キョトンとした様子で私の方を微妙に上目遣いでじーっと見ている。
というかなんだかちょっと怒りがにじみ出てきてしまった。
なんで私がこんな恥ずかしい思いをしてるのに、この子はこんなにも涼しい顔をしているんだ。
一人で慌てて一人でドキドキして……これじゃあまるで私がバカみたいじゃないか!
こうなったら……もう後のことなんて知ったことか!
「あのね……それじゃまるで私が貴女に子どもを催促してるみたいじゃないの!」
「え? あ……」
ようやく自分が何を口走っていたのか気づいたのか、彼女の方も今までとは別の意味で赤面して……涙目になっているようだった。
「なに? 私そんなにはしたない子だと思われてるの? ねえ!」
「えっと、そういう意味で言いたかったわけじゃなくて……あう……」
わたわたとしているアシュルを見ながら、私は徐々に落ち着きを取り戻して、呆れながら彼女のその様子を見つめ――そのまま黙らせるようにキスをした。
幼い、子どものように軽く唇と唇を触れ合わせる程度のライトキス。
だけどそれはアシュルを黙らせるには十分なようだった。
お互い真っ赤な相手の顔を見ているのがわかる。
驚き。戸惑い。そして嬉し恥ずかしといった表情をアシュルがしたかと思うと、不意に夜空から大きな音を綺麗な色が広がっていくのがわかった。
既に花火の時間が来ていたらしく、美しい花火が、まるで生命の脈動を祝福するかのように夜空を彩っている。
「あ、あの、ティファさま」
「私も大好きよ、アシュル。だからずっと……一緒にいましょう?」
笑いかけた私の言葉が信じられないのか、しばらくじっーっと私の顔を見ていたけど、徐々にその返答が染み渡ってきたのか、今にも泣き出しそうな顔でアシュルは笑い返してくれていた。
「う、うぅ……ティファさまぁ……」
「ほら、せっかくだからもっとくっついてみましょうよ。
愛してる……んでしょ?」
「……はい!」
私達は腕を絡めて手を握り直し、二人で寄り添うように花火を見上げる。
ベリルちゃんのこととか、一緒に来ているフレイアールのこととか……今は全部忘れて……。
ただのティファリスとアシュルとして、私達は夜空を舞うように咲き誇る火の花を、いつまでもいつまでも眺めていた――。
親愛の視線を向けられた事はあっても、ここまでの恋慕の気持ちを伝えられたことはなかった。
だから私も、真剣に考えて返事をしなければならないだろう。
「アシュル、私もアシュルのこと、好きよ。
それこそ貴女がいない暮らしなんて考えられないくらいには想ってる。
でもアシュルは本当に私でいいの?
私は多分、他の人とも付き合っていかなければならないわ。
いずれは後継ぎを――子どもを作ることになるだろうし……」
なんだかしどろもどろにいう私は自分が想像以上にアシュルのことを意識していると気づいた。
だってあんな風にはっきり告白されたのなんて初めてだし、いますごく顔が熱い。
まともにあの子の顔を見ることが出来なくて……上手く言葉を言うことが出来ない。
真剣に考えて、なんて思いながらも、全然思考がまとまらないのだ。
なんて言おうか悩んで、結局私は自分の国の為にしなければならないこと。
流石に好きでもない男の子どもは産むつもりは全く無いのだけれど、それでもいずれはそうなるだろう。
ああもう! 本当に、つくづく『愛してる』なんてこうもまっすぐ伝えられたら、嬉しくて涙が出そうになる。しかもずっと一緒にいてくれたこの子に言われたらなおさらだ!
それは私が一番言われたかった言葉で、転生前は終ぞ言われる事がなかった言葉。
カザキリにも告白はされたけど……彼の時は会ったばかりだったし、なによりそこまで興味はなかったからなんとも思わなかった。
セツキにも似たようなこと言われ続けてるけど、やはり出会いが出会いなだけに感情が波立つ事もなかった。
だけどアシュルは……私も少なからず想っていることを感じていた自分がいた。
そう、多分初めて送魂祭の時から、この子に惹かれていたんだと思う。
どこまでも私に対してまっすぐな彼女。
私の事第一で、どこまでも付いてくる子。私の為なら命を投げ出そうとする子。
そんな子だから、私もこんな風な態度をとってしまうのだろう。
「だから、あの、その……えっと……」
いつもの私でいられない。
アシュルの告白が嬉しかったというか……妙に恥ずかしいというか……。
どう返事をしようかとかなり迷いながらなんとか言葉にしようと思っていると、今度はアシュルの方が顔を真っ赤にしてなにか大事なことを忘れていたとでも言うかのように迷いを見せていた。
もしかして今更言ってて恥ずかしくなったとでも言うのだろうか? それとも全く違うこと?
「ア、アシュル……?」
「えっとですね、私も伝えなくてはならないことがありまして……それをティファさまのお陰で思い出したといいますか……そのせいで更に恥ずかしくなったといいますか……」
お互いしどろもどろしているその姿は、多分他から見たらもどかしく映るんじゃないだろうか?
自分で思うのも何だが、こういう時間も妙に愛おしく感じる。
しかし……アシュルが思い出した伝えなくてはならないことって、一体何なんだろう?
二人して顔を赤らめて胸がドキドキしていて、ただただこの空気の居心地の良さを感じながら、私はただただアシュルの言葉を待つことにした。
なんとなくではあるが、私が答えを口にするには彼女の言葉が欠かせないと思っていたからだ。
「えっと、ティファさま、驚かないで聞いてくださいね?」
「え、ええ」
改めてそういう風に言われると、余計に身構えてしまう。
スーハーと深呼吸をして体と気持ちを落ち着かせているようだけど、やっぱり赤いままの顔はより一層恥ずかしさに染まり、決意したかのようにゆっくりと言葉を紡いでいった。
「契約したスライムが姿を変える事は知ってますよね?」
「……ええ、貴女も私の目の前で変わったし、それはもちろん」
何を言うかと思ったら、いきなり初歩の初歩である契約スライムのことに関してだった。
今ここでそれを言うってことはどういうことなんだろうか?
「で、ですね……それでも人形……種族として認められてる種の……。
あ、猫人族とかリザードマン族とかの契約スライムもですよ? で、その種族の形を取ることが出来たスライムはですね……その、子どもを作ることが出来るんですよ」
それは私も初めて聞いた。が、それと同時に納得がいくこともある。
普通のスライムであれば分裂するというのが一般的な増え方だ。
それはフェンルウやエイリといった契約スライムも同じことだろう。
ロマンは……彼も下半身の部分がスライムのままだし、そこから新しいスライムが……契約していな普通のスライムが産まれてくるだろう。
そう考えたらまるでロマンが産卵してるみたいで相当萎えてくるが……そんなことを考えてる場合じゃない。
契約スライムが種族固有の――オーク族や鬼族のなどの姿をきちんと取れているスライムは、普通に他者と交わり、子どもを作る事ができるってことだ。
つまり――
「アシュルも子どもを作れるってこと?」
「はい!」
顔を赤らめながら満面の笑みで答えてくれるアシュルなんだけど、それを今告白する必要があるのか? と思わず感じてしまう。
だって、それでもアシュルと私は女の子だ。
同性で子どもを作ることなんて、出来るわけがない。
しかし、アシュルは更に衝撃的な事実を私に告げてきた。
「で、ですね。子どもを作れるようになったスライムは……両性具有といいますか……。
どっちの性別にも対応することが出来るっていうか……創り変えられるんですよ」
それを聞いた瞬間、私は自分の考えがギギギと鈍い音を立てて固まっていくのを感じた。
今、この子、とんでもないこと口走ろうとしてる……?
私の考えをよそに、アシュルは暴走気味にわたわたと矢継ぎ早に言葉を口にする。
「だ、だから、ですね! ティファさまのために下だけ男の子に変えたり女の子に変えたり……両方にしたりとか……出来るんですよ……!!」
「え、えっと……アシュル?」
「あ、あの、だから、私とティファさまが一緒になっても問題ありませんよ! 子どもなら私が孕ま――」
「ちょ、ちょっとまったーーー!!」
一気に現実感が戻ってきて、さっきとは別の意味で顔が赤くなっていく私は、不意に誰かの視線を感じたような気がして、すごく周囲を見回している。
良かった……誰もいない。その事実に思わず胸を撫で下ろし、改めてアシュルに向き直る。
彼女は自分が何を口走っていたのかよくわかっていないらしく、キョトンとした様子で私の方を微妙に上目遣いでじーっと見ている。
というかなんだかちょっと怒りがにじみ出てきてしまった。
なんで私がこんな恥ずかしい思いをしてるのに、この子はこんなにも涼しい顔をしているんだ。
一人で慌てて一人でドキドキして……これじゃあまるで私がバカみたいじゃないか!
こうなったら……もう後のことなんて知ったことか!
「あのね……それじゃまるで私が貴女に子どもを催促してるみたいじゃないの!」
「え? あ……」
ようやく自分が何を口走っていたのか気づいたのか、彼女の方も今までとは別の意味で赤面して……涙目になっているようだった。
「なに? 私そんなにはしたない子だと思われてるの? ねえ!」
「えっと、そういう意味で言いたかったわけじゃなくて……あう……」
わたわたとしているアシュルを見ながら、私は徐々に落ち着きを取り戻して、呆れながら彼女のその様子を見つめ――そのまま黙らせるようにキスをした。
幼い、子どものように軽く唇と唇を触れ合わせる程度のライトキス。
だけどそれはアシュルを黙らせるには十分なようだった。
お互い真っ赤な相手の顔を見ているのがわかる。
驚き。戸惑い。そして嬉し恥ずかしといった表情をアシュルがしたかと思うと、不意に夜空から大きな音を綺麗な色が広がっていくのがわかった。
既に花火の時間が来ていたらしく、美しい花火が、まるで生命の脈動を祝福するかのように夜空を彩っている。
「あ、あの、ティファさま」
「私も大好きよ、アシュル。だからずっと……一緒にいましょう?」
笑いかけた私の言葉が信じられないのか、しばらくじっーっと私の顔を見ていたけど、徐々にその返答が染み渡ってきたのか、今にも泣き出しそうな顔でアシュルは笑い返してくれていた。
「う、うぅ……ティファさまぁ……」
「ほら、せっかくだからもっとくっついてみましょうよ。
愛してる……んでしょ?」
「……はい!」
私達は腕を絡めて手を握り直し、二人で寄り添うように花火を見上げる。
ベリルちゃんのこととか、一緒に来ているフレイアールのこととか……今は全部忘れて……。
ただのティファリスとアシュルとして、私達は夜空を舞うように咲き誇る火の花を、いつまでもいつまでも眺めていた――。
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