聖黒の魔王

灰色キャット

文字の大きさ
上 下
112 / 337
第4章・南西地域の騒動と平穏

100・魔王様、それでも伝えたい事 前

しおりを挟む
 ミトリ亭でミットラと『夜会』の料理について話してその数日後、私はようやく自分の仕事に一区切りがついたことから、自分の国の訓練場を訪れていた。

 私自身、この国で魔王を努めてはいるが、訓練場に訪れたことはほとんど……というか一~二回ぐらいしかなかった。
 国境平原での一戦後は全く、と言ってもいいほどだ。

 オーク族がゴブリン族や魔人族から迫害じみたものを受けているという話を聞いても、忙しさのあまり中々行けず、いつか……いつか話しをしようとおもっていたのだけれど、今回はようやくその機会に恵まれたというわけだ。

 私としては今やオーク族の村はリーティアスの国内生産を底上げしてくれる立派な農村になってきているし、他の村や町ともそれなりに良好な関係を築きはじめている。
 ディトリアに住む人々も終戦直後はかなりぎくしゃくしていたし、喧嘩などの騒動も多かったが、今はかなり落ち着いている。
 いや、そういう考えが裏に潜んでいるのかもしれない。が、表は比較的に落ち着きを取り戻しているということだ。
 これもフェーシャ達が私の代わりに尽力してくれたおかげだ。感謝してもしきれない。

 だけどその中でも未だに奥深い傷が残っているところがある。それがリーティアス軍の面々だ。
 なまじ強い恨みで軍に入隊した者も多い。中にはエルガルムのオーク族に恋人を奪われた者。村をめちゃくちゃにされた者も少なからずいる。

 女だてらに魔法使いとして、衛生兵として……軍に入る者も多い。
 それだけ彼ら――オーク族の魔王であったオーガルのやったことは許すことが出来ない者も多いんだ。

 そんな人達に無理にオーク族と仲良くしろ、とは言えない。それを強要する権利は私にだってない。
 たとえそんな事をしたところで反発されるのがオチだし、私はそれを決して悪いことだといい切ることは出来ない。

 これがあくまで住民……となれば一年やそこいらで心の傷が癒えるとも思えない。もう少し様子見も必要だろうと結論づけていたかもしれない。
 だけど、今回の対象は軍。国民の命を守り、生活を守る者たちが集うところだ。

 下手をしたらオーク族の村を守ることを放棄する輩が現れかねない。そんなことになってしまえば、兵士の一部は激しく消耗してしまう。オーク族の兵士たちはいつ後ろから斬りかかられるかと余計に神経を尖らせながら軍役につくことになるだろう。
 それに現在は他の種族も兵役についている為、彼らにも影響を及ぼす可能性だってある。

 もちろん、そんなことが起こらないように出来るだけ互いに距離をとって運用するつもりではあるけど、それだって絶対じゃない。
 だから私は自分の考えをしっかり伝え、それを含めてゆっくり考えてほしいと思ったのだ。同じリーティアスを思う者として。

 リカルデと一緒に訪れた訓練所は、既にそれぞれの訓練を始めているようだった。
 体力づくりに自分に合った武器……基本的に剣・槍・弓の中から選んで訓練していると行った感じだ。
 大概の者は剣を選んでるようだが、やはり中には別の武器を習得しているものも多いそうだ。

 今はちょうど互いに打ち合ってる時間のようで、剣と槍を扱っている兵士たちは互いに打ち合っているようだ。
 私はこういうところで剣を振るったことはないが、その真剣さがビシビシ伝わってくる。

 初心者……というか打ち合いがあまり得意ではない者達は同じ武器種で打ち合って、それなりに訓練を積んでるように見える者たちは槍対剣というような構図で、互いに有利不利を考えながら戦っているようだ。

 槍は剣よりも間合いが広いこともあって攻めやすいが、剣は短いリーチでいかにして懐に飛び込むか……そういうことを思案しているようにも見える。

「中々様になってるじゃない」
「ありがとうございます」

 これは実にいいところに来た。
 オーク族の者たちも一緒くたに訓練しているようで、彼らは珍しくも大きな槌やら斧やらを武器にしている。
 ガッシリとした重鎧を着込んで、中にはその頭をすっぽりと覆うヘルムを付けているものもいて、中々の迫力を醸し出している。

 元々ゴブリン族や魔人族よりも身体が大きく、まるで山のようにどっしりと構えた者達の多い種族なわけだし……そんな彼らが一列に並んでる所は圧巻だ。
 他の種族が弓に槍にと、多彩な武器種を選んでる中、オーク族だけは槌、斧のどちらかだ。

 中には盾もちもいることから、より重厚な雰囲気が伝わってくる。

 どうやら次に打ち合うのはその盾持ちの槌を握りしめたオーク族の男と、両手剣をしっかりと握りしめた魔人族の男のようだ。
 盾を持っているせいか、両手で武器を持っているオークのものよりもいささか小ぶりの槌を握りしめてるけど……それでも相当大きい。

 両手剣より若干短いぐらい……といったところだろうか。リーチは魔人族のほうが有利だけど、オーク族の方はその佇まいが落ち着いた雰囲気を醸し出している。

「それでは、はじめス!」

 立会人となっているゴブリン族の掛け声とともに激しくぶつかりあう双方。
 金属音が鳴り響き、剣を盾で受け止めるオーク族の力強さに感服するほどだ。

「いかがですか? お嬢様には少々退屈でしょうが」
「そんな事ないわ。私達魔王とはまた違うのだから。彼らなりの強さがしっかり伝わってくる」

 彼らの戦いは確かに魔王の一騎当千ぶりに比べたらいささか劣るだろう。だけどそれはそれ、これはこれだ。
 私達と彼らでは果たすべき役割が違う。

 しばらく眺めていたけど、やはり盾での剣の捌き方、その隙をつく攻撃の仕方が上手いオーク族に軍配が上がったようだ。
 終始盾による防御の姿勢を見せ、的確なカウンターを浴びせるその姿は、どれだけ叩いても拒み押し戻す壁のように見えた。

「そこまで!」

 リカルデが大声を発したところからようやく私達の存在に気づいたのか、急にガヤガヤと騒ぎ立てる。

「訓練の途中だが、一度中断とする! ティファリス様がお前たちのオーク族の扱いについて伺いたいことがあるとのことだ!」

 いつもの、私に話しかける時のリカルデとは少し雰囲気が違う。そりゃ私と話すような態度では兵士たちに舐められかねないだろうけど、妙に新鮮な気分になってくる。

「お嬢様」
「え、ええ……」

 私に話しかける時は途端に「お嬢様」呼びになるんだからくすぐったく感じる。
 彼だけはどう言っても呼び方を変えてくれないもんだから、私の方はもう諦めてるんだけど。

 一気に多種多様な視線が私の方に集中する。それこそ尊敬していると言ってもいい者から、いかにもなにかいいたそうな目をしてる者まで様々だ。

 さて、まずなにから言おうか……。

「……言いたいことはおおよそ見当がついている者もいるだろうけど、私がここに来た理由は一つ。リーティアスではオーク族も積極的に受け入れ政策を取り入れてるわ。だけど、それについて不満を持ってる者も多い。
 民の間では比較的落ち着いてきたようだけれども……軍の内部だけが未だ是正されず、オーク族を虐げている者がいるという報告が通ってきているわ。この自体は到底放置することが出来ないということで私がここに来た、ということよ」

 その言葉に若干表情を歪めた者たちが複数いたが……あからさますぎるでしょうがと言ってやりたい。
 苦々しげにこっちを見ているが、黙ったままではラチがあかないとも思わないものかね。

「最初はじっくり話を聞こうと思ったのだけれど……」

 スッと、先程から私を睨みつけてる連中に目線を向けてやると慌てて顔を伏せたり、横を向いたりしたものがいる中、何人かはそのまままっすぐこっちを見据えている。

「私になにか言いたいことがあるようだから、そちらから話を聞こうじゃない」

 少々威圧的に会話を進めているが、私は彼らの頂点。そんな彼らに甘く見られることだけは王として、率いる者としてあってはならないことだと思うからね。
 ……自分が彼らの魔王としての姿をきちんと見せられているかはどうかは不安だけどね。

 私がしばらく視線を合わせていると、観念したと言うかのように一人のゴブリン族の男が言葉を投げかけてきた。

「魔王様、放置することが出来ないと言ってますけど……魔王様はオーク達が何をしてきたかわかって言ってるんですか?」

 慣れない敬語を使っているのだろう。多少怯えが混じりながらもしっかりと私を見据え、確かな怒りをその心の奥に宿しながら話しかけてきた。
 先程の観念した様子とは全くの別人のように見える。

「知ってるわ。リーティアスの元首都であるフィシュロンドがまだエルガルムの領土にされていた時、偵察部隊を組んで出したことがある。その時の様子ははっきりと伝え聞いてるわ」
「……なら! ならなぜそんな言葉が言えるんです!」

 おおう、私の答えに完全に怒りを露わにしてきたな。
 荒ぶるようにおもいっきり睨みつけてくれているけど、周りの兵士たちも多少同調する意思を見せていいる一方、一部のゴブリン族の者たちは信じられないというような目で彼をみていた。

 大方……というか間違いなく彼は蹂躙された町の生き残りなんだろう。
 どれほど辛い目にあったか……あるいはその光景を見てきたかは知らない。

 拳が震える程のことがあったんだろう……ということは予想できるけどね。

 特段表情が変わった様子のなかった私に更に怒りを高めて畳み掛けるように怒声を浴びせてきた。

「先代の魔王だってこいつらオーク族に苦渋を飲まされて、殺されたっていうのに……娘のあんたはなんで平気な顔をしてオーク族のことを優遇してるんだよ!」

 いや、別に優遇したことなんて一度たりともないんだけど。
 確かに彼らがこのディトリアに集まった時には多少の援助は行った。それは着の身着のままこの地に来たということもあるし、助けなければそのまま南西地域のオーク族は滅亡していた可能性だってある。

 別に奴隷として連れてきたわけでも、衰弱していく姿を楽しむためにわざわざ連れて帰ったわけじゃない。
 そりゃあまあ、完全に善意でやったわけでもないんだけどさ。

 これがこちらに攻め入ってきた……言わば略奪の限りを尽くしてきたオーク族の兵士たちだったら私も冷酷な処罰を降していただろう。

 だけど彼らはオーク族の中でも虐げられている部類に入っていたわけだし、私としては別に問題を起こすような者達に見えなかった。

 そういうことを考えたら手助けすることくらいなんの問題もない。……まあ、感情論から言うなら彼の気持ちもわからないでもないけど。

 この手のタイプには正論をぶつけても仕方がないが、それでも話し合わなければならない時がある。
 今がその時ということだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

離縁された妻ですが、旦那様は本当の力を知らなかったようですね? 魔道具師として自立を目指します!

椿蛍
ファンタジー
【1章】 転生し、目覚めたら、旦那様から離縁されていた。   ――そんなことってある? 私が転生したのは、落ちこぼれ魔道具師のサーラ。 彼女は結婚式当日、何者かの罠によって、氷の中に閉じ込められてしまった。 時を止めて眠ること十年。 彼女の魂は消滅し、肉体だけが残っていた。 「どうやって生活していくつもりかな?」 「ご心配なく。手に職を持ち、自立します」 「落ちこぼれの君が手に職? 無理だよ、無理! 現実を見つめたほうがいいよ?」 ――後悔するのは、旦那様たちですよ? 【2章】 「もう一度、君を妃に迎えたい」 今まで私が魔道具師として働くのに反対で、散々嫌がらせをしてからの再プロポーズ。 再プロポーズ前にやるのは、信頼関係の再構築、まずは浮気の謝罪からでは……?  ――まさか、うまくいくなんて、思ってませんよね? 【3章】 『サーラちゃん、婚約おめでとう!』 私がリアムの婚約者!? リアムの妃の座を狙う四大公爵家の令嬢が現れ、突然の略奪宣言! ライバル認定された私。 妃候補ふたたび――十年前と同じような状況になったけれど、犯人はもう一度現れるの? リアムを貶めるための公爵の罠が、ヴィフレア王国の危機を招いて―― 【その他】 ※12月25日から3章スタート。初日2話、1日1話更新です。 ※イラストは作成者様より、お借りして使用しております。

転生した復讐女のざまぁまでの道のり 天敵は自分で首を絞めていますが、更に絞めて差し上げます

はいから
ファンタジー
冴えない地味女は長年幼馴染の天敵・愛理に食いモノにされていた。 お気に入りの人形、彼氏、そして異世界転生したいからというトンデモナイ妄想のせいで命まで! 神様の眷属を無意識のうちに助けていて、神様が大分過保護な特典をつけ転生した。 天敵はこの世界に主人公はいないと思っているので、関わらずに今世は自分の為に生きようとしていたが、王子の婚約者候補の集いで天敵と再会。 前世と全く変わらないクズは、主人公の従者に目を付けた。 また自分から奪おうとするのかと、主人公は復讐(お仕置き)することを決意する。 前世での鬱憤、ここで倍返ししてやる!!! ※ざまぁまでかなり長いです。ざまぁだけ読みたい方は、Side天敵と第2章からを推奨します。 ある事情で病弱な主人公が同じ症状の王族を救ったり、獣人や異民族を迫害から守り知らない間に慕われたり、新しい食や道具を探訪したり、神玉と言われる魔石のようなものの研究をしたり・・・。 最終地点「ざまぁ」までに、無意識のうちに善行を積んでいく!! 意識しなくても天敵を追い詰めていく主人公と、全てが空回っているがそれに気づかない天敵。 そして病弱な主人公に対して過保護気味な周りの物語。 ※閑話は視点が主人公以外 or 主人公が出てこない話です。 ※旧タイトル:転生した元地味女の復讐(1/30変更しました。) ※現在少女編です。第一章は主人公幼女です。

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。 「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。 魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。 ――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?! ――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの? 私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。 今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。 重複投稿ですが、改稿してます

駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』 という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。 それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。 そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。 まず、夫が会いに来ない。 次に、使用人が仕事をしてくれない。 なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。 でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……? そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。 すると、まさかの大激怒!? あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。 ────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。 と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……? 善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。 ────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください! ◆小説家になろう様でも、公開中◆

転生前から生粋の悪役令嬢は、百合ヒロインから逃亡したい!

木東
ファンタジー
自他ともに認めるいじめっ子だった彼女は、刺されて死んだ。 転生後、斜め読みした小説の悪役令嬢になり、そのまま回避行動をすることなく、いじめっ子として成長した。 そう、彼女ローズ・レフレイムは妃候補のライバル、リリー・ライレイニというヒロインをイジメに虐めたのです。 結果、告白されました。 好かれる心当たりなど心当たりもないし、どんなに嫌われるような行動を取っても リリーの想いは強くなるばかり。 ローズのいじめが無効化されるレベルの好かれっぷり。 妃の候補ライバルのリリーにべったりくっつかれるローズ、 その評判が広まったおかげで、皇太子の婚約者…妃選定も難航してしまった。 皇太子が妃を選ぶ18歳のお誕生日まであと少し… こうして妃を選ぶための試験が始まった。 これは、深刻そうに見せかけたコメディー物語!!(と思ったら深刻かも)

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰しのための奮闘が賞賛される流れに~

果 一
ファンタジー
リクスには、最強の姉がいる。  王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。  類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。 『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』    何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。  そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。 「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」  その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。  英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?  これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。  ※本作はカクヨムでも公開しています。カクヨムでのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「話が違う!!」  思わず叫んだオレはがくりと膝をついた。頭を抱えて呻く姿に、周囲はドン引きだ。 「確かに! 確かに『魔法』は使える。でもオレが望んだのと全っ然! 違うじゃないか!!」  全力で世界を否定する異世界人に、誰も口を挟めなかった。  異世界転移―――魔法が使え、皇帝や貴族、魔物、獣人もいる中世ヨーロッパ風の世界。簡易説明とカミサマ曰くのチート能力『魔法』『転生先基準の美形』を授かったオレの新たな人生が始まる!  と思ったが、違う! 説明と違う!!! オレが知ってるファンタジーな世界じゃない!?  放り込まれた戦場を絶叫しながら駆け抜けること数十回。  あれ? この話は詐欺じゃないのか? 絶対にオレ、騙されたよな?  これは、間違った意味で想像を超える『ファンタジーな魔法世界』を生き抜く青年の成長物語―――ではなく、苦労しながら足掻く青年の哀れな戦場記録である。 【注意事項】BLっぽい表現が一部ありますが、BLではありません      (ネタバレになるので詳細は伏せます) 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 2019年7月 ※エブリスタ「特集 最強無敵の主人公~どんな逆境もイージーモード!~」掲載 2020年6月 ※ノベルアップ+ 第2回小説大賞「異世界ファンタジー」二次選考通過作品(24作品) 2021年5月 ※ノベルバ 第1回ノベルバノベル登竜門コンテスト、最終選考掲載作品 2021年9月 9/26完結、エブリスタ、ファンタジー4位

処理中です...