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第3章・面倒事と鬼からの招待状
86・生命を形に、想いを力に
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――アシュル視点――
あ、危なかったです。
カザキリさんの繰り出した『無音天鈴』のせいで一瞬気を失ってしまいました。
ギリギリ意識が戻りましたので、なんとか『ヒールベネディクション』で回復しましたが、意識が途切れ途切れになってイメージもロクに出来ないほどで……なんとか動ける程度には元に戻りました。
しかし、流れた分の血は戻りませんから、依然として厳しい状態は続いてるみたいですけどね。
やはり『リヒジオン』を外した時に使おうと思っていた奥の手をさっさと使ってしまったほうが良かったのかもしれませんね……。
あの『無音天鈴』が発動した時はもう気が動転してしまってその選択肢があることすら忘れてしまったのも失態の一つです。
まさか音が消えて、自分の声どころか呼吸音すら聞こえなくなったのには驚きを隠せませんでした。
『リヒジオン』が命中したあの時……一瞬でも勝てるんじゃないかと思ったのが間違いだったということでしょう。そんな甘い相手じゃなかったのは先刻承知だったはずです。ちょっと欲を出してしまった結果がこれですよ。
これがティファさまだったら絶対そんな油断なんかしなかったんだと思います。
カザキリさんが腰に挿している片刃剣に切り替えた時点で、自分も武器を抜き放っていたはずです。
「次はないでござるよ?」
カザキリさんは再び鞘に収められたそれに手を掛け、もう一度『無音天鈴』の構えを取っていました。
今度こそトドメを刺すつもりですか……。
「構いませんよ……。私、も、これ以上時間を掛けるわけには行きませんから」
「ほう……それではそちらもようやく本気を見せてくれると、そういうわけでござるな?」
「ええ、今度は……こっちの番です!」
ティファさまから教えていただいた魔導……これを最初使った時は反動で七日ほど寝込んでしまいました。
この魔導は私の魂を映しているのだと、ティファさまはおっしゃっていました。長所も短所も己の力に変えるのがこの魔導だと。
同時に一度使ったら、どんなに自分が成長しても魔導で一度創り出したものは一切変わることはないという欠点を教えてもらいましたが。
「行きます……。『人造命剣「クアズリーベ」』」
私の胸のから現れたのは剣柄。それを抜いて顕現したのは水色の――いえ、まさに剣の形をした水そのものと言える武器が姿を見せました。
刃の幅は普通の長剣より多少大きく、ツバの方にはきれいな装飾が施されているように見え、その全てが透き通る色合いをしていて尚更美しいです。
「……なんでござるか? その魔法は……」
いぶかしむように私をみるカザキリさんはいつでも『無音天鈴』を解き放つ準備をしているようです。
あの技……今の私では見切ることは無理でしょう。正直、あれは速すぎて笑えてくるぐらいですよ。
ですが、見切る必要なんてないでしょう。私にはこの『クアズリーベ』がいます。
「なんのことはなく、これは私自身ですよ。私の一部です」
この剣は私の内面の一つを表す鏡のようなものです。
私はティファさまとずっと、一生共に在りたい。誰よりもずっとお側にいたい。誰よりも貴方をお守りしたい。この『好意』に決して嘘ではありません。
でも、時折『不安』になります。私では決してティファさまに追いつけないのではないか? もし、私の未熟さでティファさまを失ってしまえば……。
――もし、もし私の想いを受け止めてくださらなかったら。
『怖い』んです。拒絶されるのが、否定されるのが。だから『臆病』になるんです。
でももし、受け止めてくださるのだったら……そんな淡い『希望』に期待してしまう自分もいるんです。
そんな色んな感情が時に穏やかで、時に激しい。様々な顔を魅せる海のように、押し寄せては引いていく波のように、私の胸の中では様々な感情がたった一人の為に流れているんです。
だから、これはその方の為の武器。その方に捧ぐ剣。それこそが『クアズリーベ』。
「……私も覚悟を決めました。だから、行きます!」
私は剣を構え、カザキリさんに向かって走り出しました。
大仰に剣を出した割には私が愚直に向かってくる姿を見て、失望したかのような様子のカザキリさんでしたけど……私がそのまま行くわけないじゃないですか。
ティファさまの……聖黒族の契約スライムを甘く見ないでほしいものです!
「『無音天――』っ……!」
走りながら地面に『クアズリーベ』を突き刺さすと、カザキリさんのいる地面から大きな水の剣が出現して、『無音天鈴』の体勢を崩させました。
そして抜いてすぐに私は円を描くように軌跡を描くと、そこから複数の水の剣が姿を表し、一斉にカザキリさんに向けてその力を解き放ちました。
「……くっ、なんでござるかその剣は!」
「言ったはずですよ。『人造命剣「クアズリーベ」』だと!」
そのまま複製した水の剣の一つを手に持ち、一気にカザキリさんに肉薄しました。
刀を収めた状態から抜いた状態で私を迎え撃ってきました。
「これだけ激しく攻めれば『無音天鈴』も使えないですよね?」
「……それはどうでござるかな?」
「ふふ、だったら使ってみてくださいよ。使えるものならね!」
苦々しげに私を見るのは良いですけど、あの剣技の弱点くらいひと目でわかりますよ。
あれは鞘に収めた状態でのみ使える技。要は鞘からさえ抜けば使うことは出来ないはずです!
右から左、左から右に双剣から繰り出される剣戟を次々にさばいて、私の一瞬の隙きをついて反撃に転ずるカザキリさんですが、複製した方の水の剣を地面に突き刺すように投げると、再び大きな剣が地面からそそり立ち、彼の攻撃を防いでくれます。
その間にもう一度宙に円を描いて次々と水の剣を作り出し、再び双剣の構えに。
「随分厄介でござるな。それがアシュル殿の隠し玉と言うやつでござるか」
「そういうことですよ。でもこの剣の力はまだまだこれからですよ」
ニヤリと笑う私に戦慄し――いえ、これは不敵に笑っているのでしょう。
実際、今の私ではこの剣の性能を満足に引き出すことが出来ません。
本来であればもっと変幻自在に操ることが出来る剣ですし、訓練の時の用に相当集中すれば剣の長さや形状を変えることもわけない代物です。
ですが今は戦闘中。全神経を『クアズリーベ』に向けなければ操れない以上、そんなことやってたら負けてしまうことうけあいですよ。
集中的に特訓した結果、この双剣状態と複数の剣を軌跡を描きながら作り出して飛ばすことはマスター出来ましたが、それ以上は時間が足りませんでした。
ですので、今のは全くのハッタリというわけです。これを見切られでもしたら正直勝ち目はないと言っても過言ではないでしょう。
そうなる前に決着を付けなければ。
万が一にも『無音天鈴』を発動させるわけにはいかないと、カザキリさんに果敢に攻め立てていきますが、やはり未だに双剣は慣れていないせいで動きに違和感を感じてしまいます。
「くっ……!」
「ふっ、ははは! ならばこれならどうでござるか!?」
私から離れるように距離を取ったカザキリさんですが、『無音天鈴』を警戒している私のことをあざ笑うかのように鞘には収めず、構えたままの状態でした。
「『風風・風神一刀』!」
「……っ」
私は再び地面に剣を突き刺すような姿勢を取っていましたが、魔法の方が飛んでくるとは思わず、反応が遅れてしまいました。
片腕での防御は不得手でなため、かなりの距離を飛ばされてしまいました。
しかし、あの魔法はこちらに近寄ってくる魔法でもあったはずです。
そう思い立ち、近距離戦に向けて警戒を強めたのですが――
「『火風・鎌鼬』!」
接近してきたと思っていたはずのカザキリさんは何故か遠くにいて虚を突かれてしまいました。
「くっ、うぅ……」
「拙者は『無音天鈴』だけの者ではござらんよ」
あの技の強さに驚かされていましたが、それだけじゃないと言わんばかりの怒涛の魔法。これでは近寄ろうにも……。
「『リヒジオン』!」
『火風・鎌鼬』を斬り払った直後、『クアズリーベ』の方を地面に突き立て、カザキリさんの足元に剣を出現させました。
回避に転じた隙きを見計らい『リヒジオン』を発動させたのですが……。
「それはすでに予測済みでござるよ」
光がカザキリさんの胸に集約しつつあったはずでしたが、一振りで掻き消してしまいました。
「斬られた……!?」
「拙者の刀とて魔剣の類でござるよ? 斬れぬわけないでござろう」
いや知りませんよ。そんなこと……と、口を突いて出そうになりましたがそんな余裕はありません。
こうして驚いている間にも、カザキリさんの『無音天鈴』や魔法の警戒をしなくてはならないのですから。
「『火火・火影乃舞』」
「『クアローバスト』!」
下手に喋ってる暇があったら攻撃しなければやられてしまう……!
カザキリさんが新しく見せた魔法は、炎が踊るかのように舞ったかと思うと、まるで炎の壁でも作り出したのかと思うほどの無数の斬撃のような軌跡を描き、私の方に襲いかかってきました。
それに対抗するために魔導を放ち、カザキリさんの『火火・火影乃舞』と数対数の戦いに。
しばらく拮抗を保っていましたが、徐々に私の魔導が競り勝ち、打ち破ることが出来ました。
「やった……!」
「……終わりでござるよ。――『無音天鈴』」
「……!? しまっ………!」
火の影に隠れて見えていませんでしたが、いつの間にかあの構えを取っているのが見えます。
最初からこれのために繰り出したのですか……。完全に一歩先をいかれてしまいました……!
最初にあの技を食らったときと同じく静寂が辺りを支配し、再び何も聞こえない空間になってしまいました。
これはまずいです……。持っていた複製の剣を突き刺し、妨害を試みたのですが……水の剣が出現してすぐに例の鈴の音が聞こえ、半ばで切断されてしまいました。
……もっと『クアズリーベ』が使いこなせていたら………! 完璧に性能を活かせていたら……!
「『―、―――――』! ……『―――――』!」
なんとか中断させようと『リヒジオン』を対応できなさそうな眼前と足元に複数展開させたのですが、鈴の音が聞こえたかと思うと爆発のために集まりつつあった光が両断されてしまいました。
……これでもダメですか………。なら、残るは――
あ、危なかったです。
カザキリさんの繰り出した『無音天鈴』のせいで一瞬気を失ってしまいました。
ギリギリ意識が戻りましたので、なんとか『ヒールベネディクション』で回復しましたが、意識が途切れ途切れになってイメージもロクに出来ないほどで……なんとか動ける程度には元に戻りました。
しかし、流れた分の血は戻りませんから、依然として厳しい状態は続いてるみたいですけどね。
やはり『リヒジオン』を外した時に使おうと思っていた奥の手をさっさと使ってしまったほうが良かったのかもしれませんね……。
あの『無音天鈴』が発動した時はもう気が動転してしまってその選択肢があることすら忘れてしまったのも失態の一つです。
まさか音が消えて、自分の声どころか呼吸音すら聞こえなくなったのには驚きを隠せませんでした。
『リヒジオン』が命中したあの時……一瞬でも勝てるんじゃないかと思ったのが間違いだったということでしょう。そんな甘い相手じゃなかったのは先刻承知だったはずです。ちょっと欲を出してしまった結果がこれですよ。
これがティファさまだったら絶対そんな油断なんかしなかったんだと思います。
カザキリさんが腰に挿している片刃剣に切り替えた時点で、自分も武器を抜き放っていたはずです。
「次はないでござるよ?」
カザキリさんは再び鞘に収められたそれに手を掛け、もう一度『無音天鈴』の構えを取っていました。
今度こそトドメを刺すつもりですか……。
「構いませんよ……。私、も、これ以上時間を掛けるわけには行きませんから」
「ほう……それではそちらもようやく本気を見せてくれると、そういうわけでござるな?」
「ええ、今度は……こっちの番です!」
ティファさまから教えていただいた魔導……これを最初使った時は反動で七日ほど寝込んでしまいました。
この魔導は私の魂を映しているのだと、ティファさまはおっしゃっていました。長所も短所も己の力に変えるのがこの魔導だと。
同時に一度使ったら、どんなに自分が成長しても魔導で一度創り出したものは一切変わることはないという欠点を教えてもらいましたが。
「行きます……。『人造命剣「クアズリーベ」』」
私の胸のから現れたのは剣柄。それを抜いて顕現したのは水色の――いえ、まさに剣の形をした水そのものと言える武器が姿を見せました。
刃の幅は普通の長剣より多少大きく、ツバの方にはきれいな装飾が施されているように見え、その全てが透き通る色合いをしていて尚更美しいです。
「……なんでござるか? その魔法は……」
いぶかしむように私をみるカザキリさんはいつでも『無音天鈴』を解き放つ準備をしているようです。
あの技……今の私では見切ることは無理でしょう。正直、あれは速すぎて笑えてくるぐらいですよ。
ですが、見切る必要なんてないでしょう。私にはこの『クアズリーベ』がいます。
「なんのことはなく、これは私自身ですよ。私の一部です」
この剣は私の内面の一つを表す鏡のようなものです。
私はティファさまとずっと、一生共に在りたい。誰よりもずっとお側にいたい。誰よりも貴方をお守りしたい。この『好意』に決して嘘ではありません。
でも、時折『不安』になります。私では決してティファさまに追いつけないのではないか? もし、私の未熟さでティファさまを失ってしまえば……。
――もし、もし私の想いを受け止めてくださらなかったら。
『怖い』んです。拒絶されるのが、否定されるのが。だから『臆病』になるんです。
でももし、受け止めてくださるのだったら……そんな淡い『希望』に期待してしまう自分もいるんです。
そんな色んな感情が時に穏やかで、時に激しい。様々な顔を魅せる海のように、押し寄せては引いていく波のように、私の胸の中では様々な感情がたった一人の為に流れているんです。
だから、これはその方の為の武器。その方に捧ぐ剣。それこそが『クアズリーベ』。
「……私も覚悟を決めました。だから、行きます!」
私は剣を構え、カザキリさんに向かって走り出しました。
大仰に剣を出した割には私が愚直に向かってくる姿を見て、失望したかのような様子のカザキリさんでしたけど……私がそのまま行くわけないじゃないですか。
ティファさまの……聖黒族の契約スライムを甘く見ないでほしいものです!
「『無音天――』っ……!」
走りながら地面に『クアズリーベ』を突き刺さすと、カザキリさんのいる地面から大きな水の剣が出現して、『無音天鈴』の体勢を崩させました。
そして抜いてすぐに私は円を描くように軌跡を描くと、そこから複数の水の剣が姿を表し、一斉にカザキリさんに向けてその力を解き放ちました。
「……くっ、なんでござるかその剣は!」
「言ったはずですよ。『人造命剣「クアズリーベ」』だと!」
そのまま複製した水の剣の一つを手に持ち、一気にカザキリさんに肉薄しました。
刀を収めた状態から抜いた状態で私を迎え撃ってきました。
「これだけ激しく攻めれば『無音天鈴』も使えないですよね?」
「……それはどうでござるかな?」
「ふふ、だったら使ってみてくださいよ。使えるものならね!」
苦々しげに私を見るのは良いですけど、あの剣技の弱点くらいひと目でわかりますよ。
あれは鞘に収めた状態でのみ使える技。要は鞘からさえ抜けば使うことは出来ないはずです!
右から左、左から右に双剣から繰り出される剣戟を次々にさばいて、私の一瞬の隙きをついて反撃に転ずるカザキリさんですが、複製した方の水の剣を地面に突き刺すように投げると、再び大きな剣が地面からそそり立ち、彼の攻撃を防いでくれます。
その間にもう一度宙に円を描いて次々と水の剣を作り出し、再び双剣の構えに。
「随分厄介でござるな。それがアシュル殿の隠し玉と言うやつでござるか」
「そういうことですよ。でもこの剣の力はまだまだこれからですよ」
ニヤリと笑う私に戦慄し――いえ、これは不敵に笑っているのでしょう。
実際、今の私ではこの剣の性能を満足に引き出すことが出来ません。
本来であればもっと変幻自在に操ることが出来る剣ですし、訓練の時の用に相当集中すれば剣の長さや形状を変えることもわけない代物です。
ですが今は戦闘中。全神経を『クアズリーベ』に向けなければ操れない以上、そんなことやってたら負けてしまうことうけあいですよ。
集中的に特訓した結果、この双剣状態と複数の剣を軌跡を描きながら作り出して飛ばすことはマスター出来ましたが、それ以上は時間が足りませんでした。
ですので、今のは全くのハッタリというわけです。これを見切られでもしたら正直勝ち目はないと言っても過言ではないでしょう。
そうなる前に決着を付けなければ。
万が一にも『無音天鈴』を発動させるわけにはいかないと、カザキリさんに果敢に攻め立てていきますが、やはり未だに双剣は慣れていないせいで動きに違和感を感じてしまいます。
「くっ……!」
「ふっ、ははは! ならばこれならどうでござるか!?」
私から離れるように距離を取ったカザキリさんですが、『無音天鈴』を警戒している私のことをあざ笑うかのように鞘には収めず、構えたままの状態でした。
「『風風・風神一刀』!」
「……っ」
私は再び地面に剣を突き刺すような姿勢を取っていましたが、魔法の方が飛んでくるとは思わず、反応が遅れてしまいました。
片腕での防御は不得手でなため、かなりの距離を飛ばされてしまいました。
しかし、あの魔法はこちらに近寄ってくる魔法でもあったはずです。
そう思い立ち、近距離戦に向けて警戒を強めたのですが――
「『火風・鎌鼬』!」
接近してきたと思っていたはずのカザキリさんは何故か遠くにいて虚を突かれてしまいました。
「くっ、うぅ……」
「拙者は『無音天鈴』だけの者ではござらんよ」
あの技の強さに驚かされていましたが、それだけじゃないと言わんばかりの怒涛の魔法。これでは近寄ろうにも……。
「『リヒジオン』!」
『火風・鎌鼬』を斬り払った直後、『クアズリーベ』の方を地面に突き立て、カザキリさんの足元に剣を出現させました。
回避に転じた隙きを見計らい『リヒジオン』を発動させたのですが……。
「それはすでに予測済みでござるよ」
光がカザキリさんの胸に集約しつつあったはずでしたが、一振りで掻き消してしまいました。
「斬られた……!?」
「拙者の刀とて魔剣の類でござるよ? 斬れぬわけないでござろう」
いや知りませんよ。そんなこと……と、口を突いて出そうになりましたがそんな余裕はありません。
こうして驚いている間にも、カザキリさんの『無音天鈴』や魔法の警戒をしなくてはならないのですから。
「『火火・火影乃舞』」
「『クアローバスト』!」
下手に喋ってる暇があったら攻撃しなければやられてしまう……!
カザキリさんが新しく見せた魔法は、炎が踊るかのように舞ったかと思うと、まるで炎の壁でも作り出したのかと思うほどの無数の斬撃のような軌跡を描き、私の方に襲いかかってきました。
それに対抗するために魔導を放ち、カザキリさんの『火火・火影乃舞』と数対数の戦いに。
しばらく拮抗を保っていましたが、徐々に私の魔導が競り勝ち、打ち破ることが出来ました。
「やった……!」
「……終わりでござるよ。――『無音天鈴』」
「……!? しまっ………!」
火の影に隠れて見えていませんでしたが、いつの間にかあの構えを取っているのが見えます。
最初からこれのために繰り出したのですか……。完全に一歩先をいかれてしまいました……!
最初にあの技を食らったときと同じく静寂が辺りを支配し、再び何も聞こえない空間になってしまいました。
これはまずいです……。持っていた複製の剣を突き刺し、妨害を試みたのですが……水の剣が出現してすぐに例の鈴の音が聞こえ、半ばで切断されてしまいました。
……もっと『クアズリーベ』が使いこなせていたら………! 完璧に性能を活かせていたら……!
「『―、―――――』! ……『―――――』!」
なんとか中断させようと『リヒジオン』を対応できなさそうな眼前と足元に複数展開させたのですが、鈴の音が聞こえたかと思うと爆発のために集まりつつあった光が両断されてしまいました。
……これでもダメですか………。なら、残るは――
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