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第3章・面倒事と鬼からの招待状
間話・ひとひらの思い出、不安と決意の出来事
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時は少し遡り、祭りの最中にティファリスがアシュルを受け止めた辺りに移る。
――アシュル視点――
こけそうになった時に受け止められたのにはすごく驚きました。
ティファさま、華奢な身体をしてるのに力強くて……思わずじっと見てしまいました。
あの時ティファさまの顔がとても印象に残ってます。
心の底から心配してくれていて……私の顔をじっくり見たかと思うと顔を真っ赤にされて……思わず私も赤面してしまいました。
周りの人からも「女の子同士で……ありかも知れんっ」とか囃し立てられてて余計に熱くなっていくのがはっきりとわかりました。
結局ティファさまはこれ以上いられないといった感じでそのまま手を握って屋台の方に向かうことに。
ぐいぐい引っ張ってくれるティファさまの後ろ姿はやっぱりすごく綺麗です。
黒い浴衣とやらもとても似合ってますし、いつもの服とは違った印象を与えてくれます。
私もすごくドキドキして、胸の高鳴りが止まなくなりそうなほどです。
「アシュル?」
「は、はい!」
ティファさまと急接近した時に柔らかくも優しい甘い匂いを頭の中で思い返していると、いつの間にか屋台についたのか、ティファさまが私の方を覗き込んでいました。
身長的には私の方が少し高くて、ティファさまはちょっと見上げるような感じになるのですが、それがまたすごく可愛らしいです。
「アシュルは焼きスパ食べる?」
「え、あ、はい、お願いします」
「ん、わかった」
焼きスパの屋台のおじさんにティファさまが注文してると、おじさんの方はちょっとデレッとした様子で一つおまけをしてくれました。
ティファさまってこういうところあるんですよね。本人は絶対に自覚してないんでしょうけど、結構人目を引いてたり、話しかけられた屋台の人とか普通におまけしてくれますからね。
城門で待ってたあの時だって私を見てる人は多かったですけど、ティファさまが来られた時からその数はどんどん増えていってましたし……その時だけ微妙に視線を気にしていたような感じがしてましたけど、大方私に対しての視線だと勘違いしてたんじゃないでしょうか?
あまり気にされてないというか、自分にそういう好意を向けられてるって気づいてないというか……すごく鈍感なんですよね。
私がこんなに好意を伝えてるっていうのに、ほとんどストレートに伝えないとどうも伝わらないというか……そういうことに非常に疎いと思います。
逆に悪意や敵意に関してはすごく敏感で、すぐにそれに合わせた対応をするんですけどね……。
だからきっと私の想いも半分くらいは気づいてないんだと思うんです。
離れたがらない、甘えたがりみたいに思ってるんじゃないでしょうか……。
本当はこんなにティファさまのことが大好きなのに。伝わらない想いがすごくもどかしい。
もうちょっと私の気持ちをわかって欲しいとか、もっと理解して欲しいとか……。
「ほら、アシュル、今度はあっちに行きましょう?」
「あ、待ってください! ティファさま!」
そんな悩みを私が抱いてることなんて、ティファさまは知らないでしょう。
思わずため息が出そうになりそうです。いつになったらこの想いが伝わるのでしょうか……。
なんてことを考えていたらいつの間にかティファさまがビスケットみたいなのと――あれはなんでしょうか?
「ティファさま、その串に刺さってるのってなんですか?」
「え? ああ、これね。飴っていう舐めると甘いお菓子よ。美味しいわよ?」
なんていいながらペロペロ舐めてるその姿が非常に可愛らしくて、ちょっと直視できないです。
しかも美味しいのかちょっとうっとりしてるように見えます。ティファさまは美味しいものを食べてる時、妙に色っぽいんですよね。
そんなティファさまが一生懸命飴を舐めてるお姿……大変素晴らしいものを見れました!
ティファさまが嬉しそうに微笑んでる姿を見ていると、先程の悩みなんて消えそうなほど私も嬉しくなってきます。
やっぱり私も単純ってことでしょうかね? 自分でそう思うのもなんだか情けない気がしますが。
「アシュル? アシュルはなにか買わないの?」
「私ですか?」
そういわれましても……私はティファさまの喜んでるお顔を拝見できただけでお腹も満たされると申しますか……。
キョロキョロとなにかめぼしいものはないかと見回していると、とある屋台が目に付きました。
黄色い――たまご焼きっていう食べ物の屋台です。名前的に卵を使ってるのはわかるんですけど……なにを使ってるんでしょうか?
「ティファさま、あれが食べてみたいです」
「あれ?」
ティファさまが屋台の方に顔を向けると、途端に嬉しそうに笑顔を浮かべるのがわかります。
見たことがないもの、美味しそうなものは好きですからねー。
他にもアクセサリーとかなんだか不思議なものを売ってるお店もあったんですけど、ティファさまは今回は完全に気にしていない御様子ですね。
私はティファさまが食べる姿を見るのが好きですからいいんです……こっそりあの髪飾りはティファさまに似合うんじゃないかなとか妄想するだけで十分美味しいですからね!
ああ、また思考がそれてしまいました。えっと、たまご焼きですけど、色が違うものとか見た目が少し違うものとか……なぜかすごく種類が豊富です。
たまご焼きの屋台だけでも三つくらい並んでますし、情熱を感じますね。
「うーん……これは、悩むわね」
ティファさまがお腹と相談するように手で擦ってました。可愛いです。
「一つずつ買うのもいいんじゃないですか?」
「いえ……これ以上お腹が膨れて動けなくなる事態は避けたい」
そういえば前に一緒に行ったアールガルムの食堂でも意外と量が多くて、食べ終わった後はまともに動けなくなってましたね。
あの時も残すのは悪いからと最後は必死に頬張ってました。
「でしたらおすすめのものを一つずつ買いましょう。色んな味も試せますし、二人で食べてしまえばなんとか出来ますよ」
「んー……そうねぇ……」
お店の人が苦笑いするほど真剣に悩んで、結局二つはティファさまが。残り一つは私が選んで買いました。
このときもお店の人がおまけしてくれそうになったんですけど、流石に食べられないということで遠慮するとじゃあかわりにと安くしてくれました。
「……なんだか結構いっぱい買っちゃいましたね。適当なところで食べませんか?」
「え、ああ、そうね。ついつい夢中になってたわ」
ティファさまと隣り合いながら歩いていたんですが、両手にいっぱいの食べ物を提げていることもありますし、そろそろどこかで休憩しようと提案すると、ティファさまも座れる場所を探してくれてるようでした。
「あ、アシュル。あそこが空いてるわよ」
しばらく探していたら人通りが少なくなった所にあるちょうどいい長椅子を見つけて座りました。
ちょっと歩き続けでしたのでちょっと休むことに。
ティファさまがのんびりたまご焼きに手を付けてるのを眺めながら、私は一息ついて飴を空に透かして見てみると、結構綺麗でちょっと食べるのが惜しいくらいです。
そういえばティファさまは食べるのばっかりであまりお酒とか飲まれなかったので、その手のことを話してたんですけど、どれほど飲んでも酔わないと言っておられましたね。
酔った拍子に……というのをちょっと期待していたんですけど、そういうのも難しそうです。
戦いも強いし、お酒も強いっていうのもすごいです……なんて考えてたらいきなり爆発音が聞こえてきてすごくびっくりしました。
ティファさまに促されて空を見上げてみると、夜空を使って絵を描くように魔法の火が灯っていくが見えます。
こんな夜空を魔法で彩るなんて見たこともなかったので思わずため息が出るほど見入ってしまいました。
しばらく初めて見るこの光景に思わず息を飲んで見とれていたんですが、ふとティファさまの視線を感じて顔を向けると、慌てて謝られてしまいました。
だけどそのままティファさまの若干赤くなってるお顔を見ていると、なぜかすごく不思議な気分に……いえ、胸が高ぶり、高揚感と不安がないまぜになったような気持ちになった気がします。
こんなにすぐ近くにティファさまがいらっしゃるのに、目を閉じて開けた瞬間にはどこか別の場所に行ってしまわれるんじゃないか……と、そんな気がして仕方がなかったんです。
……本当は今回のことの決闘でもそれは感じました。
セツキ王もカザキリさんも私よりずっと強くて、私はティファさまの隣に立てるほどの実力も、ティファさまに大好きだと伝える勇気もない。スライム族には契約してくれた方に伝えなければいけないことがあることもあるのに、未だに言えずじまい。
なのにセツキ王やカザキリさんは普通に結婚の話をしたり、そういう気持ちをストレートに伝えてきたりして……嫉妬しそうなほど羨ましかったです。
私もそれだけ真っ直ぐに想いを伝えられたらどれほど良かったかと。
ですが、いつかは……私の口から言わなければならないでしょう。
その時が来てほしいようなほしくないような気がして……でもその時には貴女の隣に立つのに相応しい私でいたくて……いられなくて……。
不安で、胸が張り裂けそうになって。今回の決闘でもし負けたらティファさまがセツキ王のものになってしまうかもしれないっていうことが余計にそれを助長させて……。
すごくティファさまの温もりが欲しくなって、このままいなくなられるくらいだったら私の不安な気持ちを聞いてほしくて、そっと近づいていったんです。
肝心のティファさまがたまご焼きを押し潰してしまったせいで台無しになってしまいましたけどね。
……狙ってやったんじゃないかと疑いそうになるほどのタイミングでしたけど、ティファさまにそんな器用なことが出来るわけありませんし、普通に事故ったんでしょうね……。
はぁ……もう少しでティファさまの……あの、その……唇を奪えてたかもしれませんのに……。
うわー、思い返しただけで顔が真っ赤になってきました。
なんといいますか、あの夜に二人きりで、夜空にはちょっと音がうるさいですが綺麗な魔法が彩っていて、その明かりがティファさまをほんのり照らしていて……そりゃ少し冷静さを失うのも仕方がないってものですよ!
ただでさえちょっとメンタル不安定になってるんですから! うん、そう思うことにしましょう。
未だ勇気を持つことも、想いを伝えることもできそうにありませんが……それでも頑張っていこうと思います。
ティファさまを誰にも渡さないために。ちゃんと気持ちを伝えて、私を選んでくれるように……例え他の国の魔王様でも、私より強いスライムが相手でも……負けたくはありませんから。
――アシュル視点――
こけそうになった時に受け止められたのにはすごく驚きました。
ティファさま、華奢な身体をしてるのに力強くて……思わずじっと見てしまいました。
あの時ティファさまの顔がとても印象に残ってます。
心の底から心配してくれていて……私の顔をじっくり見たかと思うと顔を真っ赤にされて……思わず私も赤面してしまいました。
周りの人からも「女の子同士で……ありかも知れんっ」とか囃し立てられてて余計に熱くなっていくのがはっきりとわかりました。
結局ティファさまはこれ以上いられないといった感じでそのまま手を握って屋台の方に向かうことに。
ぐいぐい引っ張ってくれるティファさまの後ろ姿はやっぱりすごく綺麗です。
黒い浴衣とやらもとても似合ってますし、いつもの服とは違った印象を与えてくれます。
私もすごくドキドキして、胸の高鳴りが止まなくなりそうなほどです。
「アシュル?」
「は、はい!」
ティファさまと急接近した時に柔らかくも優しい甘い匂いを頭の中で思い返していると、いつの間にか屋台についたのか、ティファさまが私の方を覗き込んでいました。
身長的には私の方が少し高くて、ティファさまはちょっと見上げるような感じになるのですが、それがまたすごく可愛らしいです。
「アシュルは焼きスパ食べる?」
「え、あ、はい、お願いします」
「ん、わかった」
焼きスパの屋台のおじさんにティファさまが注文してると、おじさんの方はちょっとデレッとした様子で一つおまけをしてくれました。
ティファさまってこういうところあるんですよね。本人は絶対に自覚してないんでしょうけど、結構人目を引いてたり、話しかけられた屋台の人とか普通におまけしてくれますからね。
城門で待ってたあの時だって私を見てる人は多かったですけど、ティファさまが来られた時からその数はどんどん増えていってましたし……その時だけ微妙に視線を気にしていたような感じがしてましたけど、大方私に対しての視線だと勘違いしてたんじゃないでしょうか?
あまり気にされてないというか、自分にそういう好意を向けられてるって気づいてないというか……すごく鈍感なんですよね。
私がこんなに好意を伝えてるっていうのに、ほとんどストレートに伝えないとどうも伝わらないというか……そういうことに非常に疎いと思います。
逆に悪意や敵意に関してはすごく敏感で、すぐにそれに合わせた対応をするんですけどね……。
だからきっと私の想いも半分くらいは気づいてないんだと思うんです。
離れたがらない、甘えたがりみたいに思ってるんじゃないでしょうか……。
本当はこんなにティファさまのことが大好きなのに。伝わらない想いがすごくもどかしい。
もうちょっと私の気持ちをわかって欲しいとか、もっと理解して欲しいとか……。
「ほら、アシュル、今度はあっちに行きましょう?」
「あ、待ってください! ティファさま!」
そんな悩みを私が抱いてることなんて、ティファさまは知らないでしょう。
思わずため息が出そうになりそうです。いつになったらこの想いが伝わるのでしょうか……。
なんてことを考えていたらいつの間にかティファさまがビスケットみたいなのと――あれはなんでしょうか?
「ティファさま、その串に刺さってるのってなんですか?」
「え? ああ、これね。飴っていう舐めると甘いお菓子よ。美味しいわよ?」
なんていいながらペロペロ舐めてるその姿が非常に可愛らしくて、ちょっと直視できないです。
しかも美味しいのかちょっとうっとりしてるように見えます。ティファさまは美味しいものを食べてる時、妙に色っぽいんですよね。
そんなティファさまが一生懸命飴を舐めてるお姿……大変素晴らしいものを見れました!
ティファさまが嬉しそうに微笑んでる姿を見ていると、先程の悩みなんて消えそうなほど私も嬉しくなってきます。
やっぱり私も単純ってことでしょうかね? 自分でそう思うのもなんだか情けない気がしますが。
「アシュル? アシュルはなにか買わないの?」
「私ですか?」
そういわれましても……私はティファさまの喜んでるお顔を拝見できただけでお腹も満たされると申しますか……。
キョロキョロとなにかめぼしいものはないかと見回していると、とある屋台が目に付きました。
黄色い――たまご焼きっていう食べ物の屋台です。名前的に卵を使ってるのはわかるんですけど……なにを使ってるんでしょうか?
「ティファさま、あれが食べてみたいです」
「あれ?」
ティファさまが屋台の方に顔を向けると、途端に嬉しそうに笑顔を浮かべるのがわかります。
見たことがないもの、美味しそうなものは好きですからねー。
他にもアクセサリーとかなんだか不思議なものを売ってるお店もあったんですけど、ティファさまは今回は完全に気にしていない御様子ですね。
私はティファさまが食べる姿を見るのが好きですからいいんです……こっそりあの髪飾りはティファさまに似合うんじゃないかなとか妄想するだけで十分美味しいですからね!
ああ、また思考がそれてしまいました。えっと、たまご焼きですけど、色が違うものとか見た目が少し違うものとか……なぜかすごく種類が豊富です。
たまご焼きの屋台だけでも三つくらい並んでますし、情熱を感じますね。
「うーん……これは、悩むわね」
ティファさまがお腹と相談するように手で擦ってました。可愛いです。
「一つずつ買うのもいいんじゃないですか?」
「いえ……これ以上お腹が膨れて動けなくなる事態は避けたい」
そういえば前に一緒に行ったアールガルムの食堂でも意外と量が多くて、食べ終わった後はまともに動けなくなってましたね。
あの時も残すのは悪いからと最後は必死に頬張ってました。
「でしたらおすすめのものを一つずつ買いましょう。色んな味も試せますし、二人で食べてしまえばなんとか出来ますよ」
「んー……そうねぇ……」
お店の人が苦笑いするほど真剣に悩んで、結局二つはティファさまが。残り一つは私が選んで買いました。
このときもお店の人がおまけしてくれそうになったんですけど、流石に食べられないということで遠慮するとじゃあかわりにと安くしてくれました。
「……なんだか結構いっぱい買っちゃいましたね。適当なところで食べませんか?」
「え、ああ、そうね。ついつい夢中になってたわ」
ティファさまと隣り合いながら歩いていたんですが、両手にいっぱいの食べ物を提げていることもありますし、そろそろどこかで休憩しようと提案すると、ティファさまも座れる場所を探してくれてるようでした。
「あ、アシュル。あそこが空いてるわよ」
しばらく探していたら人通りが少なくなった所にあるちょうどいい長椅子を見つけて座りました。
ちょっと歩き続けでしたのでちょっと休むことに。
ティファさまがのんびりたまご焼きに手を付けてるのを眺めながら、私は一息ついて飴を空に透かして見てみると、結構綺麗でちょっと食べるのが惜しいくらいです。
そういえばティファさまは食べるのばっかりであまりお酒とか飲まれなかったので、その手のことを話してたんですけど、どれほど飲んでも酔わないと言っておられましたね。
酔った拍子に……というのをちょっと期待していたんですけど、そういうのも難しそうです。
戦いも強いし、お酒も強いっていうのもすごいです……なんて考えてたらいきなり爆発音が聞こえてきてすごくびっくりしました。
ティファさまに促されて空を見上げてみると、夜空を使って絵を描くように魔法の火が灯っていくが見えます。
こんな夜空を魔法で彩るなんて見たこともなかったので思わずため息が出るほど見入ってしまいました。
しばらく初めて見るこの光景に思わず息を飲んで見とれていたんですが、ふとティファさまの視線を感じて顔を向けると、慌てて謝られてしまいました。
だけどそのままティファさまの若干赤くなってるお顔を見ていると、なぜかすごく不思議な気分に……いえ、胸が高ぶり、高揚感と不安がないまぜになったような気持ちになった気がします。
こんなにすぐ近くにティファさまがいらっしゃるのに、目を閉じて開けた瞬間にはどこか別の場所に行ってしまわれるんじゃないか……と、そんな気がして仕方がなかったんです。
……本当は今回のことの決闘でもそれは感じました。
セツキ王もカザキリさんも私よりずっと強くて、私はティファさまの隣に立てるほどの実力も、ティファさまに大好きだと伝える勇気もない。スライム族には契約してくれた方に伝えなければいけないことがあることもあるのに、未だに言えずじまい。
なのにセツキ王やカザキリさんは普通に結婚の話をしたり、そういう気持ちをストレートに伝えてきたりして……嫉妬しそうなほど羨ましかったです。
私もそれだけ真っ直ぐに想いを伝えられたらどれほど良かったかと。
ですが、いつかは……私の口から言わなければならないでしょう。
その時が来てほしいようなほしくないような気がして……でもその時には貴女の隣に立つのに相応しい私でいたくて……いられなくて……。
不安で、胸が張り裂けそうになって。今回の決闘でもし負けたらティファさまがセツキ王のものになってしまうかもしれないっていうことが余計にそれを助長させて……。
すごくティファさまの温もりが欲しくなって、このままいなくなられるくらいだったら私の不安な気持ちを聞いてほしくて、そっと近づいていったんです。
肝心のティファさまがたまご焼きを押し潰してしまったせいで台無しになってしまいましたけどね。
……狙ってやったんじゃないかと疑いそうになるほどのタイミングでしたけど、ティファさまにそんな器用なことが出来るわけありませんし、普通に事故ったんでしょうね……。
はぁ……もう少しでティファさまの……あの、その……唇を奪えてたかもしれませんのに……。
うわー、思い返しただけで顔が真っ赤になってきました。
なんといいますか、あの夜に二人きりで、夜空にはちょっと音がうるさいですが綺麗な魔法が彩っていて、その明かりがティファさまをほんのり照らしていて……そりゃ少し冷静さを失うのも仕方がないってものですよ!
ただでさえちょっとメンタル不安定になってるんですから! うん、そう思うことにしましょう。
未だ勇気を持つことも、想いを伝えることもできそうにありませんが……それでも頑張っていこうと思います。
ティファさまを誰にも渡さないために。ちゃんと気持ちを伝えて、私を選んでくれるように……例え他の国の魔王様でも、私より強いスライムが相手でも……負けたくはありませんから。
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