83 / 337
第3章・面倒事と鬼からの招待状
74・鬼は心の底から、楽しげに
しおりを挟む
――セツキ視点――
ティファリスとの会談は一通り終わった。今あいつは案内の者と共に部屋に向かってる最中だろう。
俺様に対し、堂々とした姿を見せたあの少女……全く、どうにも好みでたまらねえ。
アシュルとかいう契約スライムにはああは言ったが、獣欲に身を任せるのも悪くないと思うくらいにだ。
女としては少しばかり未熟なもんだが、それも愛嬌。ああいう芯の入った女は好きで仕方ねえ。出来るなら決闘後とは言わずにいますぐ娶りたいくらいだ。
「……主! 我が主よ!」
「……ああ」
触り心地の良さそうなサラサラとした黒髪。自分に自信を持ってるであろう強い意思を宿した目。所作に溢れる実力の端々。
声は多少幼く感じるが、どこか惹かれるようなものをしている。
あんなのが覚醒すら出来ないやつらの寄り集まりとまで揶揄された南西地域で産まれただなんてな。
光が見えてすぐにオウキを向かわせたのは良かったが……帰ってきてすぐに受けた報告はこっちも慌ただしかったからな。対処は後に回したが、結果的にそれが良かった。
俺様も近々上位魔王を討ち倒して新しくその座に就くだろうと思っていたディアレイを討ち倒し、国から奪われた魔王シュウラの遺体を奪還。おまけに無所属だったガンフェットの国リンデルもほぼ手中に収めたというじゃねぇか。
あそこは資源豊富な一等地を領土にしている国。セントラルの魔王たちはお互い牽制し合って中々占領することも敵わないからと不可侵条約を互いに交わしてるような場所だ。魔石関連の資源は貴重だと誰もがわかってるからな。
だからこそ流通させることを条件にした条約だったんだが……リーティアスの手に落ちたとなれば今後それも危うい。
今頃周辺で力を付けていた魔王達は大騒ぎだろう。南西地域のぽっと出の魔王に利益をかっさわれちまったんだからな!
ああ、愉快なことこの上ねえ! なにせあそこはフェリベルの息のかかった連中が多いからな!
どいつもこいつも欲の皮突っ張ってるから互いに足を引っ張り合うんだよ。おかげで多少溜飲は下がったがな。
「主! 我が主!」
「っせーな。聞いてる聞いてる」
オウキの話なんぞ適当に流しておけば大丈夫だ。そんなことより今後の方が楽しみなんだからな。
間違いなくティファリスという存在が風を起こす。すでにあいつを手に入れようとフェリベルは動いているようだし、その事では少々出遅れたが、なんとかこちら側に引き込めるところまで持っていけた。
これで俺様が勝とうが負けようがフェリベル側につくことはないと踏んでいいだろう。ま、俺様が負けるなんざ天地が裂けてもありえねぇけどな!
ティファリスが俺様の妻になるにしてもならないにしても、今後はより荒れるだろう。
セントラルに南西の魔王がのこのことやってきた。それだけなら適当にいなしたり食い物にするかのどっちかだっただろう。
だがあいつは力を見せた。周辺国家からは性欲の化身とまで言われ蔑まれていたが、その実力は本物だと言われていたディアレイを倒し、それがまぐれではないことを証明しちまったからな。
これからティファリスの周りには良くも悪くも魔王が集まる。当然フェリベルや他の上位魔王共も、だ。
なにせ恐らく今一番上位魔王に近いのは……他ならぬティファリスなんだからな。
「主! いい加減まともに話を聞いてくださりませ!」
「ああわかったわかった! そう大声で怒鳴るな。うるさい」
「我が主が拙者の話をまともに聞いておらぬからでござりましょう!」
「わかった、ちゃんと聞く。で、なんだって?」
「はぁ……」
ため息つきながら左右にかぶりを振るのはいい度胸だと思うが、そこは俺様とオウキの中というべきものだろう。
今更というやつだ。
「ティファリス女王から受け取った者の処遇についてですが……オーガルは現在牢に閉じ込めており、処刑の準備を進めております」
「そこら辺はオウキに任せているだろう。俺様を愚弄したあの豚は許せんが、執行官が俺様であるならそれ以外は全て一任する」
あの豚は俺様が立会人になった誓約をその汚い足で踏みにじりやがった。しかも他の国の奴を囮に使うなんざ胸くそ悪い事をしてくれやがって。絶対挽肉にしてやる。
「はい。それと、シュウラ様の遺体ですが、現在は霊廟に保管し直しております。是非とも後でお顔をお見せになってください」
「当たり前だ。あの男はこの俺様の先代。俺様も世話になったことがあるからな」
シュウラの遺体も戻ってきた。良いことと悪いことは続くというが、この時ほどその通りだなと思ったことはない。
これで後4人。まだまだ先は長いが、それでも一歩前進っていうやつだ。
全員魔王のときよりは大分弱くなってやがるだろうが、それでも仮にも鬼を治めた魔王。並の覚醒魔王なんざ足元にも及ばねぇ強さを持ってるだろう。
死体だから恐怖を抱くこともない、足が飛ぼうが腕が飛ぼうが迷わず標的に向かって突き進む都合のいい戦士。
『隷属の腕輪』といいこれといい、エルフの考えてることはつくづく悪趣味だということがわかるな。
「早く他の魔王様方も我らが故郷に帰っていただけるようにしていただきたいものです……」
「……シュウラという切り札を一つ使ってきた。これからは他の魔王たちも戦場に投入してくるだろ」
ティファリスのところに現れたのなら、これからもあいつのところに出現する可能性が高い。
そうなればその頃にはどう転んでも同盟を結んでいるであろう俺様達の国に返還されるのは間違いない。
現にシュウラはここに戻ってきたからな。
「だから決闘を? こちらもティファリス女王という切り札を手に入れる為に」
「よくわかってるじゃねぇか。ま、それはもう建前みたいなもんだ。直接姿を見てから気が変わった」
「……と申しますと?」
「はっ、わざわざ聞くかオウキよ。っていうかなんで隠してた? 俺様が容姿を聞いた時なんざ適当にはぐらかしやがって」
「美しい見た目ですがまるで男のように戦場を駆けると申したではござりませぬか」
こいつはまたいけしゃあしゃあと……お前が報告したのは本当にそれだけじゃねぇか。それじゃあ男みたいな女を想像しちまうだろうが!
……オウキの野郎、よく見たら目が笑ってやがる。こいつ、もしかしてワザとか!?
そういや他のことについては詳しく報告してたのにティファリスの事に関してだけは必要最低限の情報しか渡してこなかった。
あの時は別に必要ないからいいかと割り切っていたが、俺様の驚く様見たさこれだけのことをしやがったってわけか……。
ま、良い意味で驚いたもんだし悪くはねえ。おかげで俄然にやる気が出てきたからな。
「……」
「……」
お互い腹を探るように視線を交わしあい、なにを言ってやろうかと俺様が思案する一方、実に楽しげにこっちを伺ってるオウキの姿に若干苛立ちを覚え始めそうになるが……どうにか頭を冷静にさせる。
最近悪い出来事も多かったし、俺様もパーラスタへの抗議やらなんやらでピリピリしていた。こいつにとってはちょっとしたサプライズのつもりだったんだろう。
畜生が! 成功してる分余計に腹が立つ。なんか「どうですか? 驚きましたか?」とか言わんばかりの顔をしているようにしか見えない。
「……はぁ、まあいい。なんにせよ、後はティファリスの実力を実際確かめてみればいいだろう」
これ以上容姿に関する会話を続けるのはあまり得策じゃないと判断し、俺様はそろっと話の流れを別方向に向かわせることにした。
俺様がオウキの好みをしっかり把握しているのと同じように、オウキも俺様の好みをがっちり把握している。あの方面で会話を続けていたら不利なのは俺様、ということだ。
「今、露骨に話を逸らされましたね?」
「さあ、なんのことだ?」
くそっ、微妙に勝ったような顔してやがる。
オウキのやつめ……覚えてやがれよ……。
「……ティファリス女王の実力は拙者が報告したあの時点より明らかに上回っていると考えて間違いないでござりましょう」
「だろうな。ま、お前が立ち会った戦いは覚醒も果たしていない魔王との一戦だったわけだが」
「それを言われてはなんとも……」
困ったような顔してるが、こいつはどうせ対して困ってなんぞいない。
本当のことだし、言われるだろうなぁ……程度にしか考えてないだろ。
こいつはそういう男だ。
「もし、でござりまするが……主の目論見より遥かに下だった場合、どうされるのでござりますか?」
先程のような困った振りなんぞなかったことに。掛け値なしの本気の目で真っ直ぐ見据えてきた。
これはこっちも本気で答えてやらんとならないな。
オウキが聞きたいのはティファリスが覚醒はしているが、魔力一辺倒だった場合について聞いてるんだろう。
あの女王の魔力は言うことなしだということは報告を受けている。セツオウカでも寒い時期に降る雪のようなものを降らせ、触れたものを焼き尽くす魔法。
鎮獣の森付近での戦いに使ったという白い炎が線状に解き放たれ、正面の軍のことごとくを消し飛ばしたらしい魔法……とてもじゃないがセントラルの魔王でもそう簡単に出来るものじゃない。
ティファリスが非常に優れた魔法使いであるのは間違いない。問題は他の部分ってわけだ。
「その時は俺様の背後で好き放題魔法を使わせりゃいいさ。それかあの契約スライムの言う通り、愛でるだけにしておくか。はっはっはっ」
「我が主よ……」
「割と本気で言ってるぜ? 夜の顔もじっくり堪能しておきたいってな!
だが俺様の想像の上をいっていたなら……」
万が一そうであるならば、これ以上頼もしい戦力はいない。
「誘いますか。例の『あれ』に」
「ああ、ティファリスが本物であったなら、俺様の陣営であることをアピールするのは得策だ。
違ったとしたらティファリスは俺様の妻になっているというわけだし、得しかねぇな」
思わず笑みが溢れてくる。
今回の決闘、ティファリス側からしたら俺様という強大な国家と同盟を結べるチャンス。本来であれば有り得ないほどの話だ。
対する俺様の方はティファリスという未知の存在を実際確かめる事ができ、妻にするにしても同盟を結ぶにしても不利益は全くない。
だから遠慮なく試させてもらうぜ。俺様の隣に立つに値するか、俺様が愛でるだけの存在に成り下がるか……。
精々満足させてくれよ? この戦いを統べる鬼から産まれ落ちた戦神である……唯一無二の鬼神族であるこの俺様をよ。
ティファリスとの会談は一通り終わった。今あいつは案内の者と共に部屋に向かってる最中だろう。
俺様に対し、堂々とした姿を見せたあの少女……全く、どうにも好みでたまらねえ。
アシュルとかいう契約スライムにはああは言ったが、獣欲に身を任せるのも悪くないと思うくらいにだ。
女としては少しばかり未熟なもんだが、それも愛嬌。ああいう芯の入った女は好きで仕方ねえ。出来るなら決闘後とは言わずにいますぐ娶りたいくらいだ。
「……主! 我が主よ!」
「……ああ」
触り心地の良さそうなサラサラとした黒髪。自分に自信を持ってるであろう強い意思を宿した目。所作に溢れる実力の端々。
声は多少幼く感じるが、どこか惹かれるようなものをしている。
あんなのが覚醒すら出来ないやつらの寄り集まりとまで揶揄された南西地域で産まれただなんてな。
光が見えてすぐにオウキを向かわせたのは良かったが……帰ってきてすぐに受けた報告はこっちも慌ただしかったからな。対処は後に回したが、結果的にそれが良かった。
俺様も近々上位魔王を討ち倒して新しくその座に就くだろうと思っていたディアレイを討ち倒し、国から奪われた魔王シュウラの遺体を奪還。おまけに無所属だったガンフェットの国リンデルもほぼ手中に収めたというじゃねぇか。
あそこは資源豊富な一等地を領土にしている国。セントラルの魔王たちはお互い牽制し合って中々占領することも敵わないからと不可侵条約を互いに交わしてるような場所だ。魔石関連の資源は貴重だと誰もがわかってるからな。
だからこそ流通させることを条件にした条約だったんだが……リーティアスの手に落ちたとなれば今後それも危うい。
今頃周辺で力を付けていた魔王達は大騒ぎだろう。南西地域のぽっと出の魔王に利益をかっさわれちまったんだからな!
ああ、愉快なことこの上ねえ! なにせあそこはフェリベルの息のかかった連中が多いからな!
どいつもこいつも欲の皮突っ張ってるから互いに足を引っ張り合うんだよ。おかげで多少溜飲は下がったがな。
「主! 我が主!」
「っせーな。聞いてる聞いてる」
オウキの話なんぞ適当に流しておけば大丈夫だ。そんなことより今後の方が楽しみなんだからな。
間違いなくティファリスという存在が風を起こす。すでにあいつを手に入れようとフェリベルは動いているようだし、その事では少々出遅れたが、なんとかこちら側に引き込めるところまで持っていけた。
これで俺様が勝とうが負けようがフェリベル側につくことはないと踏んでいいだろう。ま、俺様が負けるなんざ天地が裂けてもありえねぇけどな!
ティファリスが俺様の妻になるにしてもならないにしても、今後はより荒れるだろう。
セントラルに南西の魔王がのこのことやってきた。それだけなら適当にいなしたり食い物にするかのどっちかだっただろう。
だがあいつは力を見せた。周辺国家からは性欲の化身とまで言われ蔑まれていたが、その実力は本物だと言われていたディアレイを倒し、それがまぐれではないことを証明しちまったからな。
これからティファリスの周りには良くも悪くも魔王が集まる。当然フェリベルや他の上位魔王共も、だ。
なにせ恐らく今一番上位魔王に近いのは……他ならぬティファリスなんだからな。
「主! いい加減まともに話を聞いてくださりませ!」
「ああわかったわかった! そう大声で怒鳴るな。うるさい」
「我が主が拙者の話をまともに聞いておらぬからでござりましょう!」
「わかった、ちゃんと聞く。で、なんだって?」
「はぁ……」
ため息つきながら左右にかぶりを振るのはいい度胸だと思うが、そこは俺様とオウキの中というべきものだろう。
今更というやつだ。
「ティファリス女王から受け取った者の処遇についてですが……オーガルは現在牢に閉じ込めており、処刑の準備を進めております」
「そこら辺はオウキに任せているだろう。俺様を愚弄したあの豚は許せんが、執行官が俺様であるならそれ以外は全て一任する」
あの豚は俺様が立会人になった誓約をその汚い足で踏みにじりやがった。しかも他の国の奴を囮に使うなんざ胸くそ悪い事をしてくれやがって。絶対挽肉にしてやる。
「はい。それと、シュウラ様の遺体ですが、現在は霊廟に保管し直しております。是非とも後でお顔をお見せになってください」
「当たり前だ。あの男はこの俺様の先代。俺様も世話になったことがあるからな」
シュウラの遺体も戻ってきた。良いことと悪いことは続くというが、この時ほどその通りだなと思ったことはない。
これで後4人。まだまだ先は長いが、それでも一歩前進っていうやつだ。
全員魔王のときよりは大分弱くなってやがるだろうが、それでも仮にも鬼を治めた魔王。並の覚醒魔王なんざ足元にも及ばねぇ強さを持ってるだろう。
死体だから恐怖を抱くこともない、足が飛ぼうが腕が飛ぼうが迷わず標的に向かって突き進む都合のいい戦士。
『隷属の腕輪』といいこれといい、エルフの考えてることはつくづく悪趣味だということがわかるな。
「早く他の魔王様方も我らが故郷に帰っていただけるようにしていただきたいものです……」
「……シュウラという切り札を一つ使ってきた。これからは他の魔王たちも戦場に投入してくるだろ」
ティファリスのところに現れたのなら、これからもあいつのところに出現する可能性が高い。
そうなればその頃にはどう転んでも同盟を結んでいるであろう俺様達の国に返還されるのは間違いない。
現にシュウラはここに戻ってきたからな。
「だから決闘を? こちらもティファリス女王という切り札を手に入れる為に」
「よくわかってるじゃねぇか。ま、それはもう建前みたいなもんだ。直接姿を見てから気が変わった」
「……と申しますと?」
「はっ、わざわざ聞くかオウキよ。っていうかなんで隠してた? 俺様が容姿を聞いた時なんざ適当にはぐらかしやがって」
「美しい見た目ですがまるで男のように戦場を駆けると申したではござりませぬか」
こいつはまたいけしゃあしゃあと……お前が報告したのは本当にそれだけじゃねぇか。それじゃあ男みたいな女を想像しちまうだろうが!
……オウキの野郎、よく見たら目が笑ってやがる。こいつ、もしかしてワザとか!?
そういや他のことについては詳しく報告してたのにティファリスの事に関してだけは必要最低限の情報しか渡してこなかった。
あの時は別に必要ないからいいかと割り切っていたが、俺様の驚く様見たさこれだけのことをしやがったってわけか……。
ま、良い意味で驚いたもんだし悪くはねえ。おかげで俄然にやる気が出てきたからな。
「……」
「……」
お互い腹を探るように視線を交わしあい、なにを言ってやろうかと俺様が思案する一方、実に楽しげにこっちを伺ってるオウキの姿に若干苛立ちを覚え始めそうになるが……どうにか頭を冷静にさせる。
最近悪い出来事も多かったし、俺様もパーラスタへの抗議やらなんやらでピリピリしていた。こいつにとってはちょっとしたサプライズのつもりだったんだろう。
畜生が! 成功してる分余計に腹が立つ。なんか「どうですか? 驚きましたか?」とか言わんばかりの顔をしているようにしか見えない。
「……はぁ、まあいい。なんにせよ、後はティファリスの実力を実際確かめてみればいいだろう」
これ以上容姿に関する会話を続けるのはあまり得策じゃないと判断し、俺様はそろっと話の流れを別方向に向かわせることにした。
俺様がオウキの好みをしっかり把握しているのと同じように、オウキも俺様の好みをがっちり把握している。あの方面で会話を続けていたら不利なのは俺様、ということだ。
「今、露骨に話を逸らされましたね?」
「さあ、なんのことだ?」
くそっ、微妙に勝ったような顔してやがる。
オウキのやつめ……覚えてやがれよ……。
「……ティファリス女王の実力は拙者が報告したあの時点より明らかに上回っていると考えて間違いないでござりましょう」
「だろうな。ま、お前が立ち会った戦いは覚醒も果たしていない魔王との一戦だったわけだが」
「それを言われてはなんとも……」
困ったような顔してるが、こいつはどうせ対して困ってなんぞいない。
本当のことだし、言われるだろうなぁ……程度にしか考えてないだろ。
こいつはそういう男だ。
「もし、でござりまするが……主の目論見より遥かに下だった場合、どうされるのでござりますか?」
先程のような困った振りなんぞなかったことに。掛け値なしの本気の目で真っ直ぐ見据えてきた。
これはこっちも本気で答えてやらんとならないな。
オウキが聞きたいのはティファリスが覚醒はしているが、魔力一辺倒だった場合について聞いてるんだろう。
あの女王の魔力は言うことなしだということは報告を受けている。セツオウカでも寒い時期に降る雪のようなものを降らせ、触れたものを焼き尽くす魔法。
鎮獣の森付近での戦いに使ったという白い炎が線状に解き放たれ、正面の軍のことごとくを消し飛ばしたらしい魔法……とてもじゃないがセントラルの魔王でもそう簡単に出来るものじゃない。
ティファリスが非常に優れた魔法使いであるのは間違いない。問題は他の部分ってわけだ。
「その時は俺様の背後で好き放題魔法を使わせりゃいいさ。それかあの契約スライムの言う通り、愛でるだけにしておくか。はっはっはっ」
「我が主よ……」
「割と本気で言ってるぜ? 夜の顔もじっくり堪能しておきたいってな!
だが俺様の想像の上をいっていたなら……」
万が一そうであるならば、これ以上頼もしい戦力はいない。
「誘いますか。例の『あれ』に」
「ああ、ティファリスが本物であったなら、俺様の陣営であることをアピールするのは得策だ。
違ったとしたらティファリスは俺様の妻になっているというわけだし、得しかねぇな」
思わず笑みが溢れてくる。
今回の決闘、ティファリス側からしたら俺様という強大な国家と同盟を結べるチャンス。本来であれば有り得ないほどの話だ。
対する俺様の方はティファリスという未知の存在を実際確かめる事ができ、妻にするにしても同盟を結ぶにしても不利益は全くない。
だから遠慮なく試させてもらうぜ。俺様の隣に立つに値するか、俺様が愛でるだけの存在に成り下がるか……。
精々満足させてくれよ? この戦いを統べる鬼から産まれ落ちた戦神である……唯一無二の鬼神族であるこの俺様をよ。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
凶器は透明な優しさ
楓
恋愛
入社5年目の岩倉紗希は、新卒の女の子である姫野香代の教育担当に選ばれる。
初めての後輩に戸惑いつつも、姫野さんとは良好な先輩後輩の関係を築いていけている
・・・そう思っていたのは岩倉紗希だけであった。
姫野の思いは岩倉の思いとは全く異なり
2人の思いの違いが徐々に大きくなり・・・
そして心を殺された
軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~
takahiro
キャラ文芸
『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。
しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。
登場する艦艇はなんと57隻!(2024/12/18時点)(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。
――――――――――
●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。
●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。かなりGLなので、もちろんがっつり性描写はないですが、苦手な方はダメかもしれません。
●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。
●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。またお気に入りや感想などよろしくお願いします。
毎日一話投稿します。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【第2部完結】勇者参上!!~究極奥義を取得した俺は来た技全部跳ね返す!究極術式?十字剣?最強魔王?全部まとめてかかってこいや!!~
Bonzaebon
ファンタジー
『ヤツは泥だらけになっても、傷だらけになろうとも立ち上がる。』
元居た流派の宗家に命を狙われ、激戦の末、究極奥義を完成させ、大武会を制した勇者ロア。彼は強敵達との戦いを経て名実ともに強くなった。
「今度は……みんなに恩返しをしていく番だ!」
仲間がいてくれたから成長できた。だからこそ、仲間のみんなの力になりたい。そう思った彼は旅を続ける。俺だけじゃない、みんなもそれぞれ問題を抱えている。勇者ならそれを手助けしなきゃいけない。
『それはいつか、あなたの勇気に火を灯す……。』
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる