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第3章・面倒事と鬼からの招待状
64・魔王様、成敗する
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――リンデル・首都スレードフォム――
朝目が覚めて、朝食もそこそこに済ませた私達は早速城下町へと繰り出した。
相変わらず身長差のおかしいドワーフたちが街中を闊歩しているけど、もう気にしないことにした。あれだ、気にしたら負けっていうやつだ。
「そういえばフラフはここについてなにか知ってる?」
「……」
首を左右に振るフラフを見ながらやっぱりねぇ……と私は思った。
彼女はクルルシェンドの出だし、そこの兵士だったわけだ。自分の国の魔王より強い者が治めている国に行くことなんてそうそうないだろうし、そういうことに疎いのは仕方がないだろう。
「しょうがないわね。とりあえず適当にうろつきましょう? 見てるだけで新鮮なってこともあるでしょう」
「うん」
ちょっとうつむきがちになりつつあったフラフに気にすることはないというように笑顔で接する。
そうすると彼女も釣られて笑ってくれるし、この子の笑顔は中々可愛くて私も好きだから良しとしよう。
で、結局フェアシュリーのときと同様、適当に歩いて楽しむことになった。それにしてもこの街は鉱石を発掘してる都市だけあって、大体が汚れに強そうな作業服を来ている者が多い。
それと同時に傭兵やハンター……どこかで武芸を嗜んでるような動きをするものもいる。商人なんかも買い付けに来てるみたいだし、今まで見た中で一番色んな種族が歩いてるように見えた。
「ドワーフ族の作った武器、質のいいの多い。買い付けに来てる国も、多い」
「そんなにいいものなの?」
「うん、元々そういうの、得意な種族だから。鍛冶師、他の国でも優遇される」
私が今まで使ってきた剣ってリーティアスにあったのを適当に持ってきたのと、『フィリンベーニス』ぐらいしかなかったから……ドワーフ族の作った武器がどれほどのものなのかはわからない。
そういう話を聞いたらちょっと興味が湧いてきた。
「せっかくだから、見に行く?」
気になっていたのがフラフに伝わったのか、そんな事を言ってくれた。
うーん……そうだな。一度見に行ってみるのもありかもしれない。ディアレイの率いていたグロアス王国軍は装備していたかもしれないけど、ほとんど見ることも無いまま消し炭にしてたし、その後もロクに見ようともしなかったからなぁ。
「そうね。それじゃ行ってみましょうか」
「おー」
というわけで行き先も決まったわけだし、早速ドワーフ族の武具がどれだけのものなのか確かめに行こうじゃないか。
――
とりあえず目についた場所に入ることに決めた私達が訪れたドワーフ族の店の一つ『武防店エルドルゴ』はすごく大きい所だった。
剣は剣、槍は槍と種類別にきっちり分けられていて武器は一階、防具は二階といった感じだった。
「はー……随分広い店ね。武具屋なんて結構雑多的な所が多いイメージが合ったけど、大分違うわね」
「あたしも、そう思った。すごく、見やすい」
転生前は私が想像していたような感じの適当に色々置いてる店で買ってたし、『人造命具』の魔導を覚えてからは名剣の類やいい防具は、貴族や所有者に見せてもらうだけだったからこんなところには全く縁がなかった。
勇者の一部は自分の名声の為に装備を身に着けている者もいたけど、正直自分が信頼して任せられない装備に私は価値は無いと思っていたから興味も湧かなかった。
ある程度目利き出来るだけの素養があれば十分だったし、たかだか見栄張るためだけに装備を買うなんてもったいないこと、出来るわけがない。
だからこそこの眼の前の光景はものすごく新鮮だった。整然と並べられた装備は店の奥に行くにつれていい装備になっているようだ。
種類も剣ではレイピアからツーハンデッドソードまで幅広く扱っていて、戦斧や槍なんかの……総じてポールウェポンと呼ばれる武器。投擲用の物や弓なんかもレパートリーが広い。
「ティファリスさま、見て。これ、すごい大きい」
フラフが手にとったのはツヴァイハンダーと呼ばれる大剣の部類に入る武器だ。あまりの大きさにちょっとふらついてるのがちょっとハラハラする。
剣身の根本にも持ち手があって、その部分を持って振り回すことも出来る。大剣ってのは長い分隙が大きい。それを多少でもいいから軽減するためにある部分だとか。
「斬るというより切り潰すことを目的とした武器ね。一般的には重く振り下ろす攻撃には向いていないから、常人が使う場合は振り回して使う物よ。
ディアレイのように魔王や、それに準ずる能力を持つ者だったら、普通の長剣のように扱うことはあるかもだけど」
「へー、ティファリスさま、物知り」
フラフの羨望の視線を浴びるのがちょっと恥ずかしいけど、悪い気持ちではない。
大剣を戻そうとふらふらしてるフラフを支えるように手を取ってちゃんとした場所に戻してあげる。
そんなことをしていたら、入ってきたばかりの客……をよそおっていたのが丸出しの奴らが私達の方を見て嫌な笑いを浮かべていた。
「ははっ、見ろよ。あんなのまでいるぜ?」
「あんな細い体で持てるわけねぇのにな。女ってのはバカばっかりだなおい」
「「はははははっ!」」
「むっ……」
私達をバカにしたようなセリフを吐いている傭兵っぽいのが数人がこっちを見ながらへらへら笑ってるのが確認出来る。
構成はドワーフ族と魔人族の集団で、典型的な感じの悪い男共のようだ。
全く、人を……というか女性をバカにするのも結構だが、発言には注意して欲しいものだ。入り口に溜まるかのように陣取ってるし、非常に迷惑な連中だ。ここはちょっと礼儀について教えてやろう。
「いるのよね。他人を馬鹿にする程度のことしか出来ない、低俗な連中が」
「あぁん?」
私がわざと大きく声を上げて、馬鹿どもを釣ると、見事に引っかかってくれる。
敵意むき出しで私の方を見ているけど、それを向ける相手の実力もロクにわからない程度の不幸な男にそんなの向けられてもなんとも思えない。
人が路端の石ころに気にかけないのとおんなじだ。
「お嬢ちゃん、それは俺達に向かっていってるのか?」
傭兵の一人が威嚇するような目でこっちに向かってきている。後ろの連中も微妙にこわ……いや、いやらしい笑みでへらへらしてる。
私達になにかしようというような雰囲気がもうみえみえでうんざりしてきた。恐らく、というか最初からそういうつもりで私達に聞こえるような声で言ってきたんだろう。
「別に貴方達に向かって言ったわけじゃないわ。自分が低俗だと思ってからじゃないの?」
「ははははっ、面白い冗談だな。そこまで真正面から向かっていうとは、お嬢ちゃんは随分と世間知らずだな?
いけないなぁ。人をバカにするとどうなるか、その可愛らしい身体に教え込んでやるよ」
うわぁ、なんていうか……そういう言葉がよくもそうスラスラと出てくるもんだ。というかこんな店中でなんてこと言ってるんだろう。
こんな本物の馬鹿な連中の相手なんてする必要もないんだけど……さっきから他の客に敵意をばら撒いて相当迷惑をかけてるからね。
睨み返す者もいるけど、その強面な様子から萎縮する者までいて酷い有様だ。
売り言葉に買い言葉、迷惑な奴らは早々に叩き出してやろう。
「いいわ、教え込んでもらおうじゃない」
ヒューと口笛を吹いてより一層笑みを深める傭兵達。「実は結構ヤッてるんじゃないか?」とか囃し立てはじめたバカまで出る始末。
さっさとぶちのめしてお引き取り……いや、警備兵たちに突き出してやろう。私のことを魔王と知らずに喧嘩売ってきたことを後悔させてやろう。
「ティファリスさま、やる?」
「ええ、私に任せてちょうだい」
私が何をしようとしているのか察したのか、フラフは微妙にイタズラを思いついた子どものような笑顔を浮かべている。
同じくらいにやっと笑い返してあげると、私達は傭兵たちに連れられるように出ていった。中には何事かと不安そうに、同情するような目を向けてたけど……結局見送るんじゃあどうしようもない。
こういう時に根性見せた男こそ評価されると思うんだが、よく考えたらこんな集団に一人で突っ込む馬鹿はいないわな。
店から出てすぐに私を逃さないと言わんばかりに肩を抱いてきたから、思いっきり肘鉄を腹にごちそうしてやり、胸ぐらを掴んで地面に叩きつけ、手加減して頭を蹴り飛ばしてやる。さすがに殺すのはやりすぎだろうからね。
「な、なにすんだこのやろう!」
「文句言いながら突っ立ってる暇があったら、攻撃の一つくらいしたらどう?」
睨みつけたまま目で訴えかけてきてる男の方に足払いをかけて転ばせてやる。そのまま手加減なしに足を踏み砕いてやると、無様な叫び声をあげながら地面に横たわる二人目。
慌てて掴みかかろうとしたドワーフ族の方はその腕を掴んで思いっきりこっちに引っ張ってやると、前のめりに倒れていく。その無防備な腹を問答無用で膝で打ち抜き、くぐもった悲鳴を上げながら腹を抑えるてる間に横っ腹を蹴り抜いてあげる。
「ぐがっ……!」
みっともない声を上げながら飛んでいく馬鹿。
自体に気づいた残り二人がようやく私のことを油断できない敵だと認識したのか、さっきまでの舐めきった態度から一変してきた。
「ほらどうしたの? 私を可愛がってくれるんじゃなかったのかしら?」
「ちっ……調子に乗るんじゃねぇぞ……ぶち犯してやるからなぁ!!」
その腰につけた質の低い武器を抜き放ったかと思うと、一直線に私に斬りかかってくる。が、その程度の遅い動きじゃ調子に乗っても仕方ないというもの。
剣の軌道を見ながらゆっくりと避けてやり、剣の腹に拳を叩きつけてあげる。たかだかそれくらいのことであっさりと折れてしまうとは、本当に粗悪品というものは質が悪い。
よくもまあ、こんな適当に拾った木の棒と変わらない武器に自分の命を預けようと思ったものだ。
驚愕に顔を歪ませて、私に殴ってくださいと言わんばかりにその顔を差し出してきたものだから……顔面が砕けて変形する程度に力を込めて殴り抜いてやる。
またたく間に始末された四人を見て戦意を無くした最後の一人が、武器を捨てて逃げ出そうとしたけどそうはいかない。
「『ガイストート』」
恒例の死ぬほどの痛みを与える魂削りの影の刃が幾重にも襲いかかり、逃走しようとした男を串刺しにする。
「ぎゃ、ぎゃあああああああああ!!」
あまりの痛みにみっともない叫びを何度もひねり出したかと思うと、そのまま気絶してしまった。
ふむ、思ったより身体が軽い。『人造命具』を呼び出してからと前とじゃ大違いだ。
しかも日が経つ毎に身体に馴染むような感覚がある。このままだと、また手加減の仕方を考えないと行けないかもしれないな。
なんて考えながら『チェーンバインド』でバカどもを縛り上げ、警備兵たちに突き出してやった。
その際に私が魔王であることを打ち明けてやると、青ざめた顔で後悔するように私を見ていたことが印象的だった。
朝目が覚めて、朝食もそこそこに済ませた私達は早速城下町へと繰り出した。
相変わらず身長差のおかしいドワーフたちが街中を闊歩しているけど、もう気にしないことにした。あれだ、気にしたら負けっていうやつだ。
「そういえばフラフはここについてなにか知ってる?」
「……」
首を左右に振るフラフを見ながらやっぱりねぇ……と私は思った。
彼女はクルルシェンドの出だし、そこの兵士だったわけだ。自分の国の魔王より強い者が治めている国に行くことなんてそうそうないだろうし、そういうことに疎いのは仕方がないだろう。
「しょうがないわね。とりあえず適当にうろつきましょう? 見てるだけで新鮮なってこともあるでしょう」
「うん」
ちょっとうつむきがちになりつつあったフラフに気にすることはないというように笑顔で接する。
そうすると彼女も釣られて笑ってくれるし、この子の笑顔は中々可愛くて私も好きだから良しとしよう。
で、結局フェアシュリーのときと同様、適当に歩いて楽しむことになった。それにしてもこの街は鉱石を発掘してる都市だけあって、大体が汚れに強そうな作業服を来ている者が多い。
それと同時に傭兵やハンター……どこかで武芸を嗜んでるような動きをするものもいる。商人なんかも買い付けに来てるみたいだし、今まで見た中で一番色んな種族が歩いてるように見えた。
「ドワーフ族の作った武器、質のいいの多い。買い付けに来てる国も、多い」
「そんなにいいものなの?」
「うん、元々そういうの、得意な種族だから。鍛冶師、他の国でも優遇される」
私が今まで使ってきた剣ってリーティアスにあったのを適当に持ってきたのと、『フィリンベーニス』ぐらいしかなかったから……ドワーフ族の作った武器がどれほどのものなのかはわからない。
そういう話を聞いたらちょっと興味が湧いてきた。
「せっかくだから、見に行く?」
気になっていたのがフラフに伝わったのか、そんな事を言ってくれた。
うーん……そうだな。一度見に行ってみるのもありかもしれない。ディアレイの率いていたグロアス王国軍は装備していたかもしれないけど、ほとんど見ることも無いまま消し炭にしてたし、その後もロクに見ようともしなかったからなぁ。
「そうね。それじゃ行ってみましょうか」
「おー」
というわけで行き先も決まったわけだし、早速ドワーフ族の武具がどれだけのものなのか確かめに行こうじゃないか。
――
とりあえず目についた場所に入ることに決めた私達が訪れたドワーフ族の店の一つ『武防店エルドルゴ』はすごく大きい所だった。
剣は剣、槍は槍と種類別にきっちり分けられていて武器は一階、防具は二階といった感じだった。
「はー……随分広い店ね。武具屋なんて結構雑多的な所が多いイメージが合ったけど、大分違うわね」
「あたしも、そう思った。すごく、見やすい」
転生前は私が想像していたような感じの適当に色々置いてる店で買ってたし、『人造命具』の魔導を覚えてからは名剣の類やいい防具は、貴族や所有者に見せてもらうだけだったからこんなところには全く縁がなかった。
勇者の一部は自分の名声の為に装備を身に着けている者もいたけど、正直自分が信頼して任せられない装備に私は価値は無いと思っていたから興味も湧かなかった。
ある程度目利き出来るだけの素養があれば十分だったし、たかだか見栄張るためだけに装備を買うなんてもったいないこと、出来るわけがない。
だからこそこの眼の前の光景はものすごく新鮮だった。整然と並べられた装備は店の奥に行くにつれていい装備になっているようだ。
種類も剣ではレイピアからツーハンデッドソードまで幅広く扱っていて、戦斧や槍なんかの……総じてポールウェポンと呼ばれる武器。投擲用の物や弓なんかもレパートリーが広い。
「ティファリスさま、見て。これ、すごい大きい」
フラフが手にとったのはツヴァイハンダーと呼ばれる大剣の部類に入る武器だ。あまりの大きさにちょっとふらついてるのがちょっとハラハラする。
剣身の根本にも持ち手があって、その部分を持って振り回すことも出来る。大剣ってのは長い分隙が大きい。それを多少でもいいから軽減するためにある部分だとか。
「斬るというより切り潰すことを目的とした武器ね。一般的には重く振り下ろす攻撃には向いていないから、常人が使う場合は振り回して使う物よ。
ディアレイのように魔王や、それに準ずる能力を持つ者だったら、普通の長剣のように扱うことはあるかもだけど」
「へー、ティファリスさま、物知り」
フラフの羨望の視線を浴びるのがちょっと恥ずかしいけど、悪い気持ちではない。
大剣を戻そうとふらふらしてるフラフを支えるように手を取ってちゃんとした場所に戻してあげる。
そんなことをしていたら、入ってきたばかりの客……をよそおっていたのが丸出しの奴らが私達の方を見て嫌な笑いを浮かべていた。
「ははっ、見ろよ。あんなのまでいるぜ?」
「あんな細い体で持てるわけねぇのにな。女ってのはバカばっかりだなおい」
「「はははははっ!」」
「むっ……」
私達をバカにしたようなセリフを吐いている傭兵っぽいのが数人がこっちを見ながらへらへら笑ってるのが確認出来る。
構成はドワーフ族と魔人族の集団で、典型的な感じの悪い男共のようだ。
全く、人を……というか女性をバカにするのも結構だが、発言には注意して欲しいものだ。入り口に溜まるかのように陣取ってるし、非常に迷惑な連中だ。ここはちょっと礼儀について教えてやろう。
「いるのよね。他人を馬鹿にする程度のことしか出来ない、低俗な連中が」
「あぁん?」
私がわざと大きく声を上げて、馬鹿どもを釣ると、見事に引っかかってくれる。
敵意むき出しで私の方を見ているけど、それを向ける相手の実力もロクにわからない程度の不幸な男にそんなの向けられてもなんとも思えない。
人が路端の石ころに気にかけないのとおんなじだ。
「お嬢ちゃん、それは俺達に向かっていってるのか?」
傭兵の一人が威嚇するような目でこっちに向かってきている。後ろの連中も微妙にこわ……いや、いやらしい笑みでへらへらしてる。
私達になにかしようというような雰囲気がもうみえみえでうんざりしてきた。恐らく、というか最初からそういうつもりで私達に聞こえるような声で言ってきたんだろう。
「別に貴方達に向かって言ったわけじゃないわ。自分が低俗だと思ってからじゃないの?」
「ははははっ、面白い冗談だな。そこまで真正面から向かっていうとは、お嬢ちゃんは随分と世間知らずだな?
いけないなぁ。人をバカにするとどうなるか、その可愛らしい身体に教え込んでやるよ」
うわぁ、なんていうか……そういう言葉がよくもそうスラスラと出てくるもんだ。というかこんな店中でなんてこと言ってるんだろう。
こんな本物の馬鹿な連中の相手なんてする必要もないんだけど……さっきから他の客に敵意をばら撒いて相当迷惑をかけてるからね。
睨み返す者もいるけど、その強面な様子から萎縮する者までいて酷い有様だ。
売り言葉に買い言葉、迷惑な奴らは早々に叩き出してやろう。
「いいわ、教え込んでもらおうじゃない」
ヒューと口笛を吹いてより一層笑みを深める傭兵達。「実は結構ヤッてるんじゃないか?」とか囃し立てはじめたバカまで出る始末。
さっさとぶちのめしてお引き取り……いや、警備兵たちに突き出してやろう。私のことを魔王と知らずに喧嘩売ってきたことを後悔させてやろう。
「ティファリスさま、やる?」
「ええ、私に任せてちょうだい」
私が何をしようとしているのか察したのか、フラフは微妙にイタズラを思いついた子どものような笑顔を浮かべている。
同じくらいにやっと笑い返してあげると、私達は傭兵たちに連れられるように出ていった。中には何事かと不安そうに、同情するような目を向けてたけど……結局見送るんじゃあどうしようもない。
こういう時に根性見せた男こそ評価されると思うんだが、よく考えたらこんな集団に一人で突っ込む馬鹿はいないわな。
店から出てすぐに私を逃さないと言わんばかりに肩を抱いてきたから、思いっきり肘鉄を腹にごちそうしてやり、胸ぐらを掴んで地面に叩きつけ、手加減して頭を蹴り飛ばしてやる。さすがに殺すのはやりすぎだろうからね。
「な、なにすんだこのやろう!」
「文句言いながら突っ立ってる暇があったら、攻撃の一つくらいしたらどう?」
睨みつけたまま目で訴えかけてきてる男の方に足払いをかけて転ばせてやる。そのまま手加減なしに足を踏み砕いてやると、無様な叫び声をあげながら地面に横たわる二人目。
慌てて掴みかかろうとしたドワーフ族の方はその腕を掴んで思いっきりこっちに引っ張ってやると、前のめりに倒れていく。その無防備な腹を問答無用で膝で打ち抜き、くぐもった悲鳴を上げながら腹を抑えるてる間に横っ腹を蹴り抜いてあげる。
「ぐがっ……!」
みっともない声を上げながら飛んでいく馬鹿。
自体に気づいた残り二人がようやく私のことを油断できない敵だと認識したのか、さっきまでの舐めきった態度から一変してきた。
「ほらどうしたの? 私を可愛がってくれるんじゃなかったのかしら?」
「ちっ……調子に乗るんじゃねぇぞ……ぶち犯してやるからなぁ!!」
その腰につけた質の低い武器を抜き放ったかと思うと、一直線に私に斬りかかってくる。が、その程度の遅い動きじゃ調子に乗っても仕方ないというもの。
剣の軌道を見ながらゆっくりと避けてやり、剣の腹に拳を叩きつけてあげる。たかだかそれくらいのことであっさりと折れてしまうとは、本当に粗悪品というものは質が悪い。
よくもまあ、こんな適当に拾った木の棒と変わらない武器に自分の命を預けようと思ったものだ。
驚愕に顔を歪ませて、私に殴ってくださいと言わんばかりにその顔を差し出してきたものだから……顔面が砕けて変形する程度に力を込めて殴り抜いてやる。
またたく間に始末された四人を見て戦意を無くした最後の一人が、武器を捨てて逃げ出そうとしたけどそうはいかない。
「『ガイストート』」
恒例の死ぬほどの痛みを与える魂削りの影の刃が幾重にも襲いかかり、逃走しようとした男を串刺しにする。
「ぎゃ、ぎゃあああああああああ!!」
あまりの痛みにみっともない叫びを何度もひねり出したかと思うと、そのまま気絶してしまった。
ふむ、思ったより身体が軽い。『人造命具』を呼び出してからと前とじゃ大違いだ。
しかも日が経つ毎に身体に馴染むような感覚がある。このままだと、また手加減の仕方を考えないと行けないかもしれないな。
なんて考えながら『チェーンバインド』でバカどもを縛り上げ、警備兵たちに突き出してやった。
その際に私が魔王であることを打ち明けてやると、青ざめた顔で後悔するように私を見ていたことが印象的だった。
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