【獣人×人間ＢＬ】いつか君の名前を呼ぶ獣声

１５・彼のメーデーをやっと受け入れられた瞬間

　改めて、
　一絆君はこれまでのあらましと、今日どうしてこうなってしまったかを分析したもの、
　それと、俺への謝罪と感謝、
　自分が、実はクラスで馴染むことを諦めていたこと、
　それを補ってあまりあるほどに、部活動が楽しくてしかたがなかったこと、
　だからこそ、俺を心配させたくなかったこと、
　それが、間違いであったとわかったこと、
　そして……

（一絆君にお願いするのは、凄く申し訳ない気分でいっぱいになるんだけれど……助けて欲しいんだ。僕が努力する、その手助けをお願いしたいんだ）

　震える指が、そう打ち終えたところで、
　一絆君が俺を抱き締めた。
　今日、四回目の包容だ。
　俺を助けようとして、
　俺の無事に安堵して、
　俺の涙になにかを思って、
　そして、
　四回目のこれは……ヘルプのサインか、
　メーデー、だろうか。
　全身全霊の、俺へと向けた救難信号。
　熱いなにかが、俺の胸を満たしていく。

「一絆君……」

　俺は、強く抱き締め返す。
　こんなボディランゲージなんて、今まではしたことがなかった。
　俺は、あんまりボディタッチが多い性格じゃない。そういうのはむしろ、元部長のほうが凄かった。
　元部長は、嬉しいことがあるとすぐに抱き締めてきたっけか。
　あのときも、まあ照れくさいとか、恥ずかしいとか感じたものだけれど、それ以上になんだか嬉しかったのを覚えている。
　けれど、
　けれど一絆君のこれは、
　なんだか、違う感覚が胸に積もる。
　それと比例して、強くなる思いが胸の中で火を灯す。
　一絆君の、助けになりたい。
　彼からのメーデーを、全身全霊で受け止めたい。
　そう、強く思ったんだ。